黒兎の唄   作:サハクィエル

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Reasonts

 ある所に、一人の妖怪が居た。

 

 彼は生まれた時から、周囲では争いが耐えなかった。それは運命の悪戯か、はたまた彼の素質か、今となっては分からないがーーそんな環境で力を付けた彼にはいつしか、「土地に染み着いた負のエネルギーを人の形へ押し留め、それを使役する程度の能力」が宿っていた。

 

 その妖怪は、妖怪人間問わず、数多もの恨みが詰まった土地、魔法の森に住み着き、その奥地に能力で創造した生物の帝国を作った。

 

 暫く、その帝国の安寧たる日々は続いた。だが、この世に永遠は存在しない。その日々は、ある出来事によって崩れ去った。

 

 それが、「紅霧異変」ーー。こことは違う、別の世界から来た吸血鬼が引き起こした異変である。

 

 幻想郷規格で起こったその異変は、数々の妖怪や人間に恐怖を植え付けたというが。しかして、彼もその一人であったのだ。

 

 その妖怪は、極端に恐怖心や猜疑心などといった、負の感情が強かった。

 

 だからだろうか。異変を極端に恐れた彼は、必死で自身を高める情報をかき集め、そして、発見した。

 

 『Evol Driver(エボルドライバー)』という、使い方次第では星1つ滅ぼすことのできる兵器を。その設計図は幻想入りしており、「深淵に棲むもの」を使役させれば、設計図自体は簡単に手に入った。

 

 それで、彼はその設計図に同封されていた、「トランスチームガン」なるものを完成させ、技術力を確かめたうえで、そのエボルドライバーを苦心して作り上げた。

 

 しかし、そこからが問題だった。

 

 その兵器を使うための条件があったのだ。

 

 先ず、「ハザードレベル」なる肉体の順応数値が5.0であること。そして、世界のエレメントをボトルの形に押し留めることで完成するものとは違う、ドライバー用のボトルーー。ドラゴンコブラボトルとエボルライダーボトルを用意すること。

 

 ハザードレベルの確保もそうだが、何よりも、ボトルの確保が大変だった。彼は竜の妖怪だったので、自分のDNAを抽出すればなんとかなったが、エボルライダーボトルの入手法など皆目見当もつかなかったのだ。

 

 そこで。彼は考えた。「ライダーシステム」という概念を創造してやろう、と。

 

 エボルドライバーを模倣した存在、ビルドドライバーを作り出し、それに順応できる「深淵に棲むもの」を創造。ついでに、自分の記憶からラビットボトルとタンクボトルを作り、それで、その「深淵に棲むもの」が完全にドライバーに順応したところで回収する手はずを立てた。そいつがビルドドライバー、エボルドライバーの模倣存在に適応すれば、「ビルドドライバーによるライダーシステム」という概念が出来上がり、そこで、そいつの中には「ライダーシステム」のDNAが出来る。

 

 計画は完璧。しかし、それを実行した場所が良くなかった。

 

 彼は、その「深淵に棲むもの」の帝国の中で作ってしまった。

 

 その妖怪の能力は、「土地に染み着いた負の感情を利用する」もの。その能力は、帝国に染み着いた、「能力を操り損ねたくない」というそいつ自身の感情を読み取り、具現化してしまった。

 

 結果。そのベルトには、「暴走」のための深紅のスイッチが取り付けられ、外すことができなくなってしまう。

 

 彼は激烈に、その存在を恐れた。衝動的に、その「深淵に棲むもの」を魔法の森に放り出すほどには。その妖怪は帝国の奥地で、計画を練り直した。

 

 彼は、一先ずその「深淵に棲むもの」を放置して、ハザードレベルを高めよう、と試みたのだ。

 

 手に入れた資料には、ハザードレベルはライダーシステムでのみ上昇させることができる、と記されていた。それが本当なら、ビルドドライバーを放置した状態ではハザードレベルを上昇させられない筈だが、彼は、他人から「生命エネルギー」やら、「存在力」やらといった「力」を奪うことで、それを可能にした。

 

 その力を奪うために召致されたのが、能力者の人間、霧凪だった。彼は劣化と略奪の霧を操作できる能力者で、恋人をダシに脅されていたのだ。だから、半ば強制的に、その妖怪へと忠誠を誓わせれていた。

 

 その後。彼は、部族から追放された鬼、霊鬼族の「喰らうもの」を仲間にし、ビルドドライバー回収用の遊撃部隊の隊長へと就任させて、準備を完全にした。その時、彼は「喰らうもの」の能力で、森に結界を張っていた。少々無理矢理ではあるが、これで計画の核は逃げられなくなったのだ。

 

 その妖怪は、自らを「ナイトローグ」と名付け、帝国、「ビトレイヤーズ」の総力を以てビルドドライバーを回収することを宣言した。

 

 ーーあの少年に記憶がないのは当然である。彼には記憶の元となる経験が欠如しているのだから。唯一残った記憶の断片のようなものは、負の感情の元となった人間のものであり、本当の彼の記憶ではない。

 

 計画は進み。その妖怪は、は成果が芳しくないことを聞き付けると、危険と知りながらその少年の出来具合を確認しに行った。

 

 そして。そこで、後一回でも「暴走」すれば「ライダースシテム」という概念が出来上がることを確認すると、彼は計画を大詰めまで進めるために、「深淵に棲むもの」の部隊を編成すると、それを集め、「征伐」という名目でドライバーの回収に向かった。それが、確認から数時間後のことだった。

 

 その最中、彼は暴走の引き金とするため、あの少年と親しい存在、魔理沙を拐い、その記憶からバットフルボトルとエンジンフルボトルを作り出してから、適度に痛め付けようとした。

 

 しかし、そこで手痛い反撃に遭う。彼女はそれなりに「できる」人間であった。

 

 戦闘が始まり、少しした頃、ふと、彼女のポケットから一本のボトルが落ちた。それは、森に散布されていた霧の成分が詰まったボトルだった。

 

 彼はそれを拾い、そして、自分に突き刺した。少しでもハザードレベルを上げようという腹積もりだったのだろう。

 

 そこで異変が起きた。なんということか。手に握っていたバットフルボトルの形が変容したのだ。ーートランスチームガンに順応する形へと。

 

 彼はそれを上手く使い、戦闘を有利に進めた。

 

 しかし、そのシステムには1つ問題があった。装甲があまり強くないそのスーツ、「ナイトローグ」のスーツは、魔理沙の使う「光」の魔法によって浄化されてしまうのだ。

 

 これにより、次第に、ボトルは元の形を取り戻していく。それに伴って、スーツの存在も稀薄になっていった。

 

 そんな中で彼は、決死の思いで翼を広げ、タックルをかました。状況を打開するために。

 

 そして、それが項をそうした。それにより、彼女の腕を潰し、飄々として、いつ裏切ってもおかしくないと思っていた霊鬼を消し飛ばし、あの少年の元へと辿り着いたのだ。そのうえ、霧凪によるハザードレベル上昇が入り、資料にあった「エボルマッチ」が使える状況が整った。

 

 これこそ運命。彼は笑い出しそうだった。

 

 その妖怪は迷うことなくボトルをベルトに挿入し、変身した。

 

 そこで、彼は「マッドローグ」となった。

 

 狂気の悪は、黒兎を駆るーー。

 

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