ーー暴走が書きたいので、暴走するまでには多分出しませんけど。
「何? 森に閉じ込められたーー?」
あの瞬間から30分ほど。俺と魔理沙は、「香霖堂」なる道具屋を訪れていた。
尤も、そこは「道具屋」という呼称が似合わないような薄暗い店で、どうやら、売り子は一人として居ないようだった。カウンターには店長らしき白髪の男ーー魔理沙は香霖と呼んでいたーーが就いているが、商売をする気があるのか無いのか分からないような愛想の無さを露呈させている。
「そうなんだよ。変な結界みたいなものがあってさぁ...」
「ーー結界か。大変だな」
ーーと。そこで会話は終わってしまった。朴念人という形容がぴったりな店主はそのまま手元の本に目を落とし、そこからは何も発展しない。
「終わるのかよっ!」
「その結界があって何か困ることがあるのかい? 魔理沙、君は森からあまり出ないじゃないか」
「いや、結構出てるけどーーっと、重要なのはそこじゃない! こいつを永琳のところに連れて行かなくちゃいけないんだ」
魔理沙がそう言った所で、彼は漸くこちらに気付いたらしい。顔を上げ、こちらを見据える。
「君は?」
「ええと、名前は無いんですけど、その....」
どこから何をどう説明していいか分からず、俺は言いあぐねる。
「記憶喪失らしい。永琳のトコ連れてけば何か分かるだろう?」
「ーー君も物好きだね。記憶喪失者を引き取るなんてーー。そういうところは昔から変わらない」
どうやら、彼と魔理沙は昔からの知り合いらしい。道理で、どこか距離が近いわけだ。
「森から出られないとなると、ここで記憶喪失に関する本を探すしかないだろうがーーそうだな、幻想入りした脳科学の書物は少ないんだ。眉唾モノの医学書とか、
「い、いやいや、ここは森から出る方法を探すのが道理でしょう、普通ーー」
それに突っ込むと、魔理沙が「そう言えばそうだな」と反応した。
「で、何かないのかよ? 森から出る方法」
「情報が少なすぎるから何とも言えないな。まあ、別段困ることも無いだろうし、放置しておいていいんじゃないか?」
彼はどこか、浮世離れした価値観を持っているのだと俺は感じた。
「そうだ。君の持っているバック、用途が少しおかしいけれど、何か特別なーー魔術的な物だったりするのか?」
用途がおかしい。その言葉に、俺は少し戸惑う。何を言われているのか分からなかったからだ。
「ああ、そうそう、香霖には道具の使用用途を読む能力があるんだ」
成る程、と俺は合点する。あの言葉はそういうことだったのか。
「魔術的なものではないと思います。まぁ、記憶がないのではっきりしたことは言えませんけど」
「うむ、そうか。じゃあ、僕が断言しよう。それは魔術的な存在、もしくは、能力で作られた存在だ」
俺はその言葉に絶句した。記憶を取り戻す唯一とも言える物的な手がかりが、魔術的な、俗にいうアーティファクトだったとは。いよいよきな臭くなってきた。
「どういうことだ?」
「そのバックの用途は、「ビルドドライバー」なる物をしまうことだ。それだけのためにしか存在していない。他の物をしまうために存在していないんだよ、これは」
そう言うと、彼は開けてもいいかい、と許可を求めてきた。それを承諾すると、彼はチャックを全開にして開け、その中に自分が持っていた小説を挿入しようとする。
しかし、何か見えない壁に阻まれ、その小説はバックの中に入っていかない。
俺は息を呑んだ。見た目はただのバック。しかし、性能はアーティファクトだ。
「ーーつまり、この中に入っているベルトが、「ビルドドライバー」か?」
「多分そうです。これを使うと鎧の戦士に変身できるんです」
そう言い、俺がドライバーを取り出し、彼に突き出すと、彼はわずかに嘆息し、そして、しばし間を置いてから言葉を紡ぎだした。
「ダメだな。このベルト、「用途」が読めない」
「ん? その能力で読めないベルトーーってのはつまり、どういうことだ?」
魔理沙が問いかける。
「つまり、道具じゃないということだよ、これは。何らかの能力で作り出されたものか、はたまた、ベルト型の生物かーー」
俺は改めて、手元のビルドドライバーに目を落とす。
これは、道具じゃない。そう思うと、何故だか親近感が湧いてくるような気がした。
「それにしても、この霧、一層深くなっている。何も見えないな。これじゃ飛行できないかもしれないぜ」
ふと、窓の外を眺めて魔理沙が言った。俺も、それに続いて窓の外を見据える。
そして、気付く。
窓の外、この店から数十メートル前方に、「何かが居る」ことに。
その「何か」は真っ直ぐこちらへと歩いてきており、その姿は、さっき倒した妖怪に酷似していた。唯一異なっている点があるとしたら、それは触腕の数であった。今、現実として現れている奴の触腕は6つもある。さっきの奴はもっと少なかった筈だ。
二人もそれに気付いたようだ。店内の空気が張り詰める。魔理沙に至っては、「八掛炉」と呼称していたあの八角柱を構えていた。戦闘体勢だ。
俺もベルトを装着し、『
「そうだな、どうでもいいが、戦うなら外で、できるだけ静かにやって欲しい。この店が傷付くのは正直避けたい」
しかし、ここの店主はどうやら戦わないようで、相変わらず、座したまま腰を上げようとしない。戦闘能力が無いのだろう。
俺と魔理沙は素早く正面入り口から外へと出る。あの妖怪を迎え撃つために。
霧は相変わらず深く、視界の自由は無いに等しかったが、それでも、なんとかそいつの姿は見えた。目測12メートル。それが奴と俺たちの距離だった。
「ーー「ベルト」ヲ...寄越セ」
ふと。眼前の妖怪は「喋った」。奴には口らしき気管は見当たらないが、その無機質な、本能的な恐怖を誘発する声が、妖怪以外に出せるとも思えなかった。
あいつだ。あいつがこの声をーー。
しかし、ベルトを寄越せ、とは? この腰のビルドドライバーを求めているということか?
「渡すなよ。ーーそいつが妖怪の手に渡ったら、あの力を無遠慮に振るわれるぞ」
魔理沙はこちらにそう言い放つと、八掛炉から左手を離し、カードを取り出した。それはさっき、戦闘中に使えなかったカードであるらしかった。
「
詠唱と同時に、カードが砕け散り、辺りに大量の星が顕現された。
その星の郡は集束し、妖怪に襲いかかる。
次の瞬間、轟音と衝撃が、辺りを貫くように抜けた。
暴走が書きたいとか言っておきながら戦闘すら書けていないこの現状を何とかしたいっ。