「よかったね、アリス。いっぱいお友達と遊べたのね」
それは何処でもない、此方より彼方。
あるはずもない幻想、誰の為でもない空想。
見ることも出来ない。起こるはずもない。何もない、虚空に消える夢想。
―――そう、これはゆめ。どこにもないゆめ。けれど確かに、聞こえてくる夢。
「おぼえていてくれて、ありがとう。忘れないでいてくれて、うれしかった」
誰かの為の―――声が聞こえる。
誰かがいて、誰かを想って、誰かに語って、誰かが見ている。
誰かは誰かを忘れてなくて、いつも目を閉じれば思い出す。
「アリス、やさしいアリス。やさしかったアリスだから、しあわせなの」
ぼんやりと形のない影法師。
この手がまだあるうちに、消えてしまう前に、夢を見ているのなら。
もう一度、不思議の世界へ行けたなら……夢の中へ行けるなら。
その手を取って、一緒に手を繋いで、また冒険して、この手で抱きしめて。
「ほんもののアリス。泣かないで、あたしの知ってるほんとのアリス」
子どもたちの英雄は歌う―――
寂しいアナタに悲しいワタシ。
多くの子供たちが、夢を見続けるかぎり。
物語は永遠に続く。悲しい読み手が、現実を拒み続けるかぎり。
―――何度でも、夢の中では笑顔でいられるように。
優しいアナタへ、嬉しいワタシが歌にのせて。
「起きて、アリス―――ほら、よんでるよ?
……行ってあげて、あたしのアリス……次の目覚めも、がんばって」
吸い寄せられるように眩しく輝いている光。
例え灯りのない夢の中でも、決して消えない小さな灯火。
絶望の暗闇から抜け出すための―――人はああいうモノを、希望の光と呼んでいた。
『繰り返すページのさざなみ、押し返す草の栞―――行ってくるわ、あたしのありす』
夢は形を成して、まどろみから目を覚ます。
助けを呼ぶ声、誰かの為の―――誰かの為に動き出す物語。
夢は壊させない。笑顔は忘れない。約束は必ず守る。
バッドエンドで終わらせたりはしない。
冷たい雪の中でも負けないあなた。雨に濡れても止まらないあなた。
吹き荒ぶ嵐に踏ん張り、熱い炎を潜り抜け、見果てぬ夢へと旅立つあなた。
雪は振り終わり、いつかは溶けて行くことでしょう。
風の音が聞こえます。冬の寒さから春の訪れを待ちながら、新しい朝がやってきました。
さあ、その手を出して?この手で掴んで?
ページを開いて、挟んだ栞から―――新しい続きの物語へ。
「こんにちはすてきなあなた―――夢見るように出会いましょう?」
おわりのはじまり。