超能力者のトラブる 作:留年の危機学生
人より大きな岩がお空に浮かんでいらっしゃる。下手人は俺。
実は超能力が扱える俺ではあるが、普段はそれを隠しながら生活している。そんなことがバレたら絶対面倒なことになるからだ。実際、引っ越した理由もその辺りにあるし。
んじゃなしてこんな昼間に堂々と超能力を使っているかというと、目の前の人が感心している。
「すごい! すごいですよタローさん!」
「あはは、ありがとうございます静さん」
このすごいを連呼しているのは村雨静さん、彩南高校の2年生で俺の先輩だ。
そして超能力仲間でもある。出会い頭に強力サイコキネシスをブッパしてきたのはこの人である。あれから謝罪を受けて色々事情を聞かされたのだ。そこで、静さん――意気投合してあだ名で呼ぶ仲になった――が超能力者であること、そしてもう1つのことを知れた。
静さんは黒髪の超絶美少女なのだが、とある秘密を抱えていた。
なんと、彼女は幽霊なのだ。
最初はついに俺の頭はおかしくなってしもうたか、なんて思ったけどマジらしい。だって目の前で幽体離脱されればねぇ?
御門さん――あの時のナイスボディ白衣美女――が体を作って幽生を謳歌しているらしい。
寿命がなくて老化しないというバラ色ロードを歩んでいる静さんは悩んでいた。それは、感情が高ぶるとサイコキネシスが暴走して、周囲に被害を出してしまうことだった。
そこで、けっこう悩んでいらっしゃった黒髪美少女に手を差し伸べたのが俺だ。かれこれ10年以上、超能力と付き合っているので力になれると思ったのだ。
この誘いを静さんは快諾。晴れて俺は黒髪美少女と二人きりで超能力制御特訓をすることになったのだ。
家に帰ってから勝利の雄叫びを上げたね。
いや聞いてほしい。だって静さんはすごい美少女なんだぜ?
背中の中ほどまである黒髪は、烏の濡れ羽色という言葉がぴったりな艶やかさ。顔立ちは綺麗と可愛いが共存していて、黄金比と言ってもいい程整っている。その肢体は女性的なもので美しい。双丘も大きすぎず小さすぎずの、まさにパーフェクト美少女。
ぶっちゃけ超好みです。ストライクゾーンど真ん中。
そんな人と二人で秘密特訓できるのだ。これはもう人生勝ち組ですわ。
「―――あの、タローさん? 聞いてますか?」
「ハッ!? すみません考え事してました。」
「もー、ちゃんと聞いてください!」
両頬を膨らませて怒る静さん。
めっちゃかわええ……!
「だから、もう念力を暴走させずに済むんじゃないかって話です!」
「あー……いやぁ、流石にそれは早いんじゃ……」
「でもでも、タローさんが付きっきりで教えてくださったのでだいぶ腕を上げました!」
「そりゃまぁ、最初の頃に比べるとそうですがね」
「まあまあ、ものは試しに一回やってみましょうよ」
うーん……、確かに制御は上手くなったけどなぁ。
この人の場合、一番の問題はその出力の高さにある。あまりに高いそれは、感情をトリガーにして発現するレベルの、いい方は悪いけど化け物級のモノだ。
そのサイコキネシスをパニクっている状態で制御できるかと言えば、正直不安しかない。
「お願いします! 一回、一回だけでいいですから!」
おねだりする姿もかわええなぁ! よっしゃちょっくら頑張ってみるか!
超絶プリティーなおねだりに負けた俺は指パッチンした。
すると静さんの足元に今までいなかったものが現れた。これぞ瞬間移動よ。そして、現れたものは―――
「ワンッ!」
犬である。ただの犬である。
実は静さん、犬が大の苦手であるらしい。念力発現するレベルの重篤なものだ。大丈夫やで、俺は猫派だから。
その犬は静さんの足にじゃれついている。
「キ」
あやっべ、なんか肌がビリビリする。
「キャアアアァアァァァ!!」
念力暴走。知ってた。
予想してたので防御する。フハハまだまだよな静さん。
「ん?」
そこで違和感。なぜか体が引っ張られる感覚がある。
「やっべ、吹き飛ばすんじゃなくて引き寄せるほおおぉぉおぉお!?」
そっちの対策はしてなかったなぁ……。
「ちょ、静さん! 静さん!? 正気に戻って!?」
奮闘虚しく近づく俺たち。
でもよく考えたら静さんと合法的に接触できるチャンスなのでは?
「よっしゃバッチこい!!」
勢いのあまり数m吹き飛ぶ。
組んづ解れづな状態のまま停止した。
俺の体全体で静さんの柔らかさが感じられる。特に右手の柔らかみは神がかっている。なんか良い匂いまでしてきた。天国かな?
「ご、ごめん静さん! 大丈――夫―――……」
「もう、タローのえっち。でも素敵」
「く」
黒咲イィィィイイイイィイィ!!!
布団を蹴り飛ばして飛び起きる。
「黒咲! お前サイコダイブはダメだってあれほど…………」
「あ、おはようタロー。やっと目が覚めたんだね」
綺麗な赤毛は三つ編みにされている。その表情はこちらをからかうようなもので、彼女の雰囲気と妙にマッチしている。その体は静さんに勝るとも劣らずのボディである。
そしてなぜか裸ワイシャツである。もう一度言おう、裸ワイシャツである。
「なんて格好してんのお前!? 嫁入り前の娘がそんな格好しちゃダメです!?」
サイコキネシスを使って布団を黒咲の体に巻き付ける。あの格好はアカン。健全な男子高校生には荷が重い。
「あはは、照れるな照れるな~♪」
そう言っておさげで頬を突いてくる。えぇい止めんか鬱陶しい!?
「それよりお腹空いた~、速くご飯作ってよ~」
「はいはい、今作るから制服に着替えてきなさい」
「はーい」
そう言い簀巻きのまま窓から出ていく黒咲。姿だけだったらどこのいとこだと言ってやりたくなる。
てかあいつ窓から来やがったのか、合鍵持っとったよな? それ使えやあの阿呆。
「忘れ物はないな?」
「はーい大丈夫でーす」
「かっるいなぁ……」
黒咲と一緒に部屋を出る。ここのところ毎日こいつと登校している気がする。
お隣、つまりこいつの部屋にきてふと思いついてドアノブに手をかける。案の定鍵かかってねぇ。
「ばっかお前鍵はちゃんと閉めろって言ってるだろ」
「えぇ? 大丈夫だよ、盗まれて困るものなんてないし」
「馬鹿野郎お前、この街に第二の校長がいたらどうするんだ。一人暮らしの美少女宅の鍵がかかってないと知った日にゃ、強襲ご自宅訪問するぞ、下着とか根こそぎ持ってかれるぞ」
「う、うーん……分かったよぉ」
なぜカギをかけさせるだけでここまで疲れるのだろうか。
二人並んで通学路を歩く。こいつは黒咲芽亜、彩南高校の1年生でクラスメートだ。引っ越した先がお隣さんだったのだ。最初はそれだけであまり関わることはなかったのだが、近所のスーパーでこいつを何度も見かけたのだ。しかも、その籠の中身は溢れんばかりの駄菓子の山。駄菓子しか入ってなかったのである。それが毎度続くモンだから見かねて声をかけたのである。
お隣のよしみで飯作ったる。
これでも一人暮らしをするにあたって家事全般は出来るようになったのだ。その腕を振るったところ何故かなつかれた。本当に謎である。その後に何やかんやあって黒咲が宇宙人であることを知ったのだ。
最初はついに俺の頭はおかしくなってしもうたか、なんて思ったけどマジらしい。だって目の前で体の一部が変形したらねぇ?
「うん? どうしたのタロー?」
「いや、なぜタローと呼ばれてるのかなって」
宇宙人バレしたときあんなに殺気立ってたのに。
「まま、気にしないで。私とタローの仲じゃないか」
だからどういう仲なんだって。
「仲と言えば、村雨せんぱいとあんなえっちなことしてるんだねぇ?」
「ブフォ!? さ、さー? 何のことだかタロー分かんないわー」
「天国だったんでしょ?」
「ごめんなさい静さんには内密にしてください」
「お菓子二籠で許す」
「別にいいけど、ちゃんとその分飯食いに来いよ? じゃなきゃ栄養偏るからな」
「はーい!」
いっつも返事だけは元気だよな。まあ飯は必ず食いに来るけど。
……ん? 二籠? 二箱じゃなくて?
タロー
名前はタロー、姓はまだない
超能力者で、それ関係のトラブルで引っ越しせざるを得ない羽目に
とらぶるの前にトラブルってね
村雨静
可愛い
ダークネスの中で一番好き
黒咲芽亜
可愛い
ダークネスの中で一番好き