超能力者のトラブる   作:留年の危機学生

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総合日間ランキングに(たぶん)一瞬だけ入っていた記念投稿!
ありがたやありがたや
こんな妄想読んでくれて謝謝茄子!
気合入れていつもより長めに書いたで!それでも五千しかないけど
一万とか書くお方たちはバケモノかな?


年をとると説教臭くなってかなわんわぁ

「へ? お食事会?」

「そうそう。今度知り合いの家に食べに行くんだけど黒咲も一緒にどうだ? 飯作ってやれないからさ」

「ご飯作ってくれないの!? それは困るなぁ……」

「相手の方からお前も一緒にって誘われたからハブられる心配もねぇぞ?」

 

 翌日の朝。いつものように俺と黒咲は肩を並べて歩きながら結城邸へお誘いしている。

 知り合いの知り合いってだけでも及び腰になるのに初対面で一緒にご飯食べましょうは確かに難易度が高い。でも、こいつも結城家の皆様も社交的だから問題ないと俺は思う。

 けれど黒咲の態度は芳しくない。

 

「別に行ってももいいけど、いつ行くの?」

「あっ」

「……知らないで約束したの?」

 

 ニヤニヤしながら顔を覗き込んでくる。それを押し戻し反論を試みる。

 

「いやいや、ワザとですよワザと。俺くらいの超能力者になると読心とか余裕ってもんですよ!」

「無暗に使わないのがポリシーなんでしょ?」

「…………」

「ホラホラ~、自分の非を認めなよタロ~」

「だああっ! つんつんするな鬱陶しい!?」

「あははは!」

 

 くっそ、このアホに馬鹿にされると何かムカつく……!

 

「はいはい悪ぅございました。まぁ1~2週間後辺りだとは思う」

「ふーん、そうなんだ。ちなみにその人のお名前は?」

「結城美柑ちゃんって言うんだ。そのお兄さんは先輩だぞ。ホラ例のあの人、結城リト先輩」

「…………結城リトせんぱい」

 

 あ、あれ? なんか様子が変なんですけど。

 

「うーん、今回は止めておくよ。これから少し忙しくなりそうだし」

「そか。んじゃ不参加ってことで伝えとくわ」

「うん。…………、聞いてこないの?」

「聞いて欲しいのか?」

「…………ありがと」

 

 そう言って僅かに俯く。丁度いい高さに来た頭を乱暴に撫でる。

 

「わわっ!?」

「ええい落ち込むならしくないっ」

 

 嫌がる黒咲に構わず更に撫でまわす。良い感じにボサボサになったので解放してやる。

 

「何するの~」

「別にいいじゃねぇか変身(トランス)で元に戻るだろ」

「そういう話じゃないのっ!」

 

 うぅっと呻きながら手櫛で髪を直す黒咲。

 その姿を見て俺は声をかける。

 

「お前が不安に思う気持ちは分かるよ。俺もそうだし」

「へ?」

 

 黒咲が間抜けな顔しながらこちらを見る。何時もならからかってやるところだが、今はそういう時じゃないので自重する。

 

「もし宇宙人バレしたらって思って遠慮してるんだろ? 実は今回のお食事会にはもう1人宇宙人が来る予定なんだ。そのことも相手は知ってるし、その宇宙人とは仲がいい。だからお前とも仲良くしてくれるよ。断言してもいい」

 

 ただ、と続けて空を見上げる。うーん、本日も晴天なり。真っ青なお空だ。人の心もあれくらいなんも無くて分かりやすかったらいいのにね。

 

「そんな事知ったこっちゃねぇよなぁ……」

 

 空を見つつ歩いている姿を見られたら変人の誹りを受けてしまう。俺は一般的な青少年なんで前を見て歩くことにする。

 

「他の奴にどう言われたって怖いもんは怖いし、安心しろっつても安心なんかできる訳ねぇ。実際に触れあって話し合ってみるまで実感は生まれないもんね」

 

 黒咲は宇宙人であることを隠している。さっき変身(トランス)を使わずに髪を直したことから確実だろう。部屋ではばんばん使っているけど外で使っているのは見たことが無い。

 

「現に俺だって怖いから超能力者だってこと隠してるし。もしバレて関係が壊れるかもって考えるとマジで怖い。嫌われるかもって思ったら更に怖い」

 

 金さんにはドンパチに巻き込まれてバレてしまっているがそれはノーカン。地球人で超能力者である(この)ことを知っているのは引っ越す前にお世話になった施設の皆と幽霊の静さんだけ。そういえば御門先生って宇宙人だったんだよね、ぱっと見では気づけんだろアレ。

 

「だから無理しなくていいんだ、急ぐモンでもねぇし。話してみてこの人なら安心できる、信頼できるって思う人たちにだけ話しゃいい。ま、ゆっくり頑張って行こうぜ」

 

 ここまで言ってふと黒咲の顔を見る。

 

 何言ってんのこいつみたいな目で見られてるわ。

 

「―――ッ! と言われても俺じゃ説得力ねぇけどな!? HAHAHAHA!!」

 

 勢いで誤魔化して顔をそむける。

 ああああああああ!! これじゃ説教じゃねぇか!? 恥ずかしいなあもおおおおおぉぉ!!

 クソッ、漫画とかで敵にSEKKYOする奴苦手なんだけど俺がそうなるなんてなぁ!?

 

 

 

 

 

 顔をそむけて頭を掻きむしる姿を見つめる。自分が言った言葉を恥ずかしがっているんだろう。

 残念ながらタローの言っていることは外れている。私が遠慮したのは結城リトに接触するにはまだ早いと思ったから。けど、まあ、怖いっていうのもあながち間違いじゃない。

 けど、まるでこちらに言い聞かせる様な声だったなぁ。この声を聞くのは二度目だ。だからどうしても思い出す。一度目の時を。私の、大切な思い出を。

 

 

 

★   ☆   ★   ☆   ★   ☆

 

 

 

 その日、タローと晩ご飯の買い出しに行った帰りに襲われた。覚えてなかったけど私が過去に叩きのめした奴らだった。勿論、なんの問題も無く撃退できた。けど、タローに宇宙人だとバレてしまったんだ。

 だから私はタローに襲い掛かった。

 

『メア。隣に住む男と仲良くするのは良いが、もしトランス兵器であることがバレたのなら痛めつけてやれ。ただし殺すな。アレは少しばかり興味深い者でな。あぁ、もちろん逃がすのも無しだ。新たな下僕にするからな。』

 

 こうマスターに言われていた。だから攻撃した。マスターの命令は絶対だから。何故か痛む胸を無視して刃に変わった髪を差し向けたのだ。

 

 だけど、タローは普通じゃなかった。

 

 刃は素手で掴まれた。銃撃は見えない壁に防がれた。高速移動して斬りかかったがそれ以上のスピードで躱された。髪を幾つもの砲身に変化させ放った渾身の砲撃は手も触れずに握りつぶされた。

 何をしても無駄だった。どうやっても傷つかなかった。私以上のバケモノ、普段なら嬉々として突撃するはずなのに私は怖くなって逃げたのだ。結局それも見えざる壁に阻まれたが。

 

「ふぎゅっ!?」

「まったく……、やっと落ち着いたかこのおてんば娘」

 

 鼻を押さえて彼を睨む。彼はいつも通りの顔でやれやれと首を振っていた。

 

「あなた、一体何なの」

「超能力者だよ。そういうお前はもしかしなくても宇宙人? 宇宙人と会うのはこれで2人目だよ、快挙だ快挙」

「超能力者? そんなものが私を完封したの?」

「確かに俺は頭おかしいレベルで扱えるけど、さっきのおてんばの事なら俺のせいじゃないぞ」

「何を言って――」

「そりゃ素人()でも分かるくらい迷いのある攻撃に、あんな苦しそうな顔してりゃね」

「――本当に、何を言ってるの」

 

 私が迷ってた? トランス兵器であるこの私が?

 …………あり得ない。そんな事、あってはならない。

 

「ふざけないでッ!!」

 

 怒りに身を任せ叫ぶ。

 

「さっきアイツらとの話を聞いてたでしょ!? 私は兵器だ!! その私が相手を傷つけるのに躊躇うなんてあり得ないッ!!」

「なに言ってんだ?」

 

 そう言う彼は本当に何を言っているのか分からないといった顔をしている。首をひねった彼は言葉を重ねる。

 

「別にいいじゃねぇか、傷つけるのを嫌う兵器があったって」

「そんなもの兵器じゃない!」

「そういうモンかねぇ……? それより、さっきはどうして逃げようとしたんだ」

「……え?」

「だから、なにゆえ逃げたん?」

「……襲い掛かったことは聞かないの?」

「それも気になる。けどそれ以上になんであんな怯えた表情で逃げようとしたのか気になる」

「―――そ、れは…………」

 

 怯えた、表情。

 ……………………それは。

 

「それは、怖かったから…………」

「―――――怖いってのは俺がか?」

 

 その言葉に首を振って否定する。

 

「違う、そうじゃない。そうじゃないの…………」

 

 無意識で体を抱きしめる。胸の痛みが酷くなってきた。自然に体が震える。

 

「だって、私は兵器で、沢山人を殺して…………。だから、そんな私を知ったらきっとタローは怖がるもん。そしたら私のこと嫌いになって…………。そんな事考えたら、怖くて」

 

 自分でも驚くくらい弱弱しい声だ。別の誰かが変装して演技しているって言われた方がまだ信用できる。

 けど、これは間違いなく私の声だ。私の弱音なのだ。

 

「そっか」

 

 彼はそれ以外何も言わなかった。

 今ならきっと逃げられる。そんな確信があった。けど逃げられなかった。正しくは逃げようとしたけど逃げられなかった。足が地面に縫い合わせられたかのように動かなかった。

 

「さっきの兵器云々な」

 

 長い長い、けれどきっとほんの僅かだった沈黙を破ったのは彼だった。

 

「ある物事を捉える時、1つの面から物事のすべてを理解するのは出来ないと思うんだ。例えば俺。知っての通り、俺はどこにでもいそうな感じに温厚で、思春期の少年で、友達とバカやってる。けれど、さっきみたいに普通じゃない暴力を振るうことができるし、悪い人たちをシバいてる時の顔は鬼みてぇだってヤクザの虎さんに言われたこともある。温厚な俺ってのは間違っちゃいねぇ、けどそれと同時に暴力的っつう悪い俺がいるのも事実だ。どちらか片方だけじゃない、正と負両方の面を持っているのが俺なんだ。やさしいって側面と暴力的だって側面は矛盾したものだけど、それが同時に存在していてもおかしくねぇんだ。」

「…………でも、それはタローが人間だから。私は、兵器だから」

「兵器だって同じさ。ポリ公の持つ拳銃は人を撃ち殺せる負の側面があるけど、誰かを守る為に使えるって側面もある。要は使い方だよ、使い方」

 

 使い方? なら、私は―――。

 

「ッ!! 私は! トランス兵器のメアだ! マスターネメシスに従って沢山の命を奪ってきた!! お前が想像するよりも多くの命をだ!! 私は私自身のために奪い続けた! 誰かのためなんて高尚な思いで動いたことなんてないっ!! だから私は! ―――ッ、私は兵器なんだ! 何も知らない癖に知ったような口を利くな!!」

「…………」

 

 はぁ、はぁ。

 私が怒鳴り散らしても彼は動じない。いつもならふざけて誤魔化すような空気なのに、彼は真剣に私の言葉を聞いていた。

 

「…………。確かに、俺はトランス兵器でいっぱい人を殺してきたメアさんの事は何一つ知らない」

 

 だけど、と彼は続ける。

 

「隣の部屋に住んでて、主食が駄菓子の生活能力皆無で、赤いおさげがかわいくて、ちょっとアホっぽいけど確かな優しさを持ってる彩南高校1年黒咲芽亜の事なら沢山知ってる」

「―――――」

 

 何を、言って。

 

「お前が自分の事を兵器だと言うんなら兵器なんだろうよ。けどな、黒咲芽亜を知っている俺から言わせてもらえば兵器は兵器でも、やさしい兵器だよ」

「―――やさしい、兵器」

「そ、やさしい兵器の黒咲さん」

 

 いつの間にかへたり込んでいたらしい。ずいぶん高い位置に目線がある彼がこちらに歩み寄ってきて座り込む。

 

「それとさ、あんまり自分の事を卑下するのは止めようぜ。友達の自虐って苦手なんだ」

「―――――…………友達?」

「うん? おう友達。俺たち友達だろ? ……え、もしかしてそう思ってたの俺だけなの? やだ恥ずかしい……」

 

 私と、タローが。

 あんなに酷い事したのに、まだ友達って。

 

「…………のかな

 

 胸が、痛い。張り裂けそうだ。

 

「私、タローの隣にいて、いいのかな…………?」

「はぁ? …………まったくお前って奴は」

 

 そう言って彼は私の右手を握って引っ張り上げる。立ち上げられた私を引っ張りながらどんどん歩く。

 

「さっさと帰るぞ。お前のおてんばですっかり遅くなっちまった。これじゃ夜食じゃないか、まったく」

「ちょ、ちょっとタロー!?」

「あと、さっきのな。隣にいるのに許可とかバカバカしいけど欲しいんならやるよ」

 

 そう言ってグイッと強く引き寄せ彼の隣に立たされる。

 

「俺の隣にいろ。むしろ隣を歩きなさい。1人じゃ危なっかしいからな。俺と一緒の時は隣にいること、いいな。…………あと何時まで泣いてるんだよ! ほれ、笑え笑え!」

 

 空いている手で私の頬を引っ張り無理やり笑わされる。それを見た彼も笑った。

 まるでこう笑うんだぞとでも言う様に。

 

「そうそう。お前は笑ってる方が似合ってるよ。いつもみたいに笑ってなさい。一緒にいる時は笑っててね? 女の子に泣かれるとどうすればいいか分からないから」

 

 あぁ、胸が痛い。けど、さっきまでの痛みとは別の痛みだ。比べ物にならないほど胸が痛い。張り裂けそうだ。

 

「お、良いこと思いついた。こんなに遅くなった罰としてご飯作るのに協力すること。拒否権はありません。ちなみにキッチンはクッソ狭いから2人隣り合わせだと肩が触れ合います! フハハハハざま見ろ!? お前は俺に体の柔らかさを堪能されるがいい! HAHAHAHA!!」

 

 そこからはよく憶えていない。ただ。

 とてもあたたかくておいしかった。その感覚だけはよく憶えている。

 

 

 

★   ☆   ★   ☆   ★   ☆

 

 

「…………」

 

 私は未だにうんうん唸っているタローの左手を握りしめる。

 

「え、どうしたんですか」

「なんでもないよ。それより早く学校行こう? 遅刻しちゃう」

「…………ま、それもそうだな。」

 

 気にしてなさそうでよかったぁ……。なんて呟きが聞こえてくる。

 隣にいるタローから。

 

「にへへ」

「急にどうした? あと何時まで手握ってんすか? 誰かに見られたら恥ずかしいんすけど」

「タロー、私はタローのこと安心できて信頼できるって思ってるからね!」

「あ、はい」

「それとね」

 

 

「今日もあたたかい、おいしいご飯作ってね」

 

 

 きょとんとしながら彼が言った。

 

「当たり前だろ」 




タロー
「(ご飯作ってって何時も俺が作る飯美味い言いながら食ってるけどホントは不味いと思ってんのかなだったら見返してやろうじゃないフフフ見ていろってか味わえ黒咲ィ美味しいご飯作りなんて俺くらいになれば)当たり前だろ」

実はこの話プロットになかったりする。
次の話を今回投稿するはずだったんですけど、タローさんが擁護不可能な校長になったので応急処置として作りました。
処置し切れているかは不明。

黒咲芽亜
餌付けされたおさげの娘

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