失恋したから剣にて空を目指した男のラブコメ学園生活   作:神の筍

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十八刀目!

 

 《星詠学園剣術三本勝負》

 

・真剣術部と剣術部 両部による三対三の勝負である

・前提とし 両部に属している者のみが参加資格を持つ

・種目は問わず 

・武器は問わず

 ( 刃引きされた真剣 模擬刀 木刀 その他いずれも可 )

・制限時間はなし

・範囲は剣術部が使用している 基本的な正方形( 二〇×二〇 )の枠にて行う

・枠から全身が出た場合 その者の負けとする

・枠内での決着は どちらかが負けを認めた場合 もしくは 戦闘不能を判断した場合である

 

 以上。

 

 

 

 

 

一、

 

 

 

 

 

 急遽、山内主将の粋な計らいによって剣術部と三本勝負をすることになってしまった俺たちは、今すぐ行うことは剣術部側が実力を発揮しきれないという理由で金曜日の放課後、即ち三人が山内主将から頼まれた最終日に執り行うこととなった。

 ちなみに剣術部側の実力とは、昨日決まった時点で結果的に発端となってしまった口宮副主将、一番の実力者である山内主将はいるが、三人目がいないからであるという。

 しかし、剣術部は実力主義と聞いたが、二人に迫る部員がいるのだろうか……?

 夕飯を終え、風呂も済ませて部屋で明日の準備をしているとベッドの上に置いていたスマホ——連絡アプリLOPEが鳴った。

 

 猫屋敷『明日の三本勝負、頑張ってください』

 

 てっきり沖田さんか武蔵、次いで他愛もない話をする春狩だと思ったが猫屋敷からのメッセージだった。

 

「『頑張って』か。仕合う前にそんなことを言われたのは初めてだな」

 

 『ありがとう』と返信をし、相手の反応を見るよりも早く明日のことを考える。

 三本勝負はもちろん、一番は猫屋敷の鍛錬をどうしようか、である。一応、三本勝負が決まったあとも時間はあったので足運びの仕方も見せながら教えた。見様見真似で繰り返すが、さしもの猫屋敷も難しかったのか何度か横向きに転ぶことがあった。細かく脚を働かせる動きは、慣れていない者にとってもう少し時間がかかるだろう。しかしテニスをやっていたおかげ、基礎的な体幹はあったので時間次第だ。

 猫屋敷から再びメッセージが送られてくる。

 

 猫屋敷『勝てますか?』

 猫屋敷『山内主将は強いです』

 

 見た目ぶっきらぼう感じだが、中々心配してくれている。

 『頑張って』と初めて言われ、さらには『勝てますか』の初めてまで奪われた。これはもう責任をとってもらうしかない。

 

 剣心『問題ない』

 

 猫屋敷『すごいですね』

 猫屋敷『剣城さんは強いです』

 猫屋敷『明日、応援しています』

 

 ……俺はそんなに頼りないだろうか。

 この三日ほど付き合って頼り甲斐のある同級生くらいにはランクアップしていると思っていたが、まだまだだったらしい。

 俺は鼻を鳴らすように笑うと、今日は寝ようと最後に武蔵へメッセージを送って電気を消した。

 

 

 

 

 

 剣心『阿呆』

 

 武蔵『馬鹿』

 

 沖田さん『草』

 

 

 

 

 

 ちなみに、仲が悪いわけではない。

 

 

 

 

 

ニ、

 

 

 

 

 曰く——鉄と鉄がなる音。

 たとえ木刀同士、即ち剣が交わり合う音には魔除の効果があるという。

 

 そう言われるようになったのは数百年前か、数千年前から、それはきっと遥か昔に遡る。故に、古来より人々は己が戦士となり、もしくは育て、超常的存在に闘いの讃歌を捧げたのだという。だからこそ、か——星詠学園剣術部、その道場。木枠の窓からは陽射しが入り、霊峰と言われた甲六山(きのえろくさん)から吹き荒ぶ山颪によっていつもより神聖なハレ(・・)の気が漂っている。

 既に集まっている剣術部員たちは、自然と普段より背筋を伸ばし、試合範囲の正方形から二回り距離を取るように囲み座している。 

 道場の出入り口から真っ直ぐ伸びた中心には、本日戦うことになる三人が相手の三人を待ち構えていた。

 

 一人——口宮冬三郎。

 居合術を長所とする田宮神剣流の門下生。未だ師範位に届く実力はないが、近畿に限れば居合という技術においては上位に並ぶ腕前であり、剣術部においては二番手、副主将の位を持つ。

 

 二人——山内理念。

 黒い包帯でわからないが、筋の通った鼻や血色の良い唇から彼女の顔は均整のとれた芸術品的美しさがわかる。

 雰囲気は無論、今の衣装は普段の鍛錬に着用している無地の上衣と袴着ではなく群青色の上衣、黒色の袴着を纏っていた。

 ただでは見えぬが、上衣の裾に書かれた流派の名は————平常無敵(へいじょうむてき)流。江戸時代前期、山内一真により開かれた剣術流派である。

 

 そして、三人目。

 

 タイミングよく、眼を開いたときに真剣術部の三人——武蔵、沖田、剣心が足を踏み入れる。

 三人の格好は、今週を通して剣術部の指導に当たっていた体操服ではなく、それぞれが部活動紹介のときに見せた格好をしている。強いて挙げるならば、武蔵はブーツを、沖田は足袋を、剣心は下駄を履いておらず裸足のまである。

 互いに三人、視線が交差した瞬間に沖田の口が開いた。

 

「なるほど。昨日ではなく今日にしたのは、三人目があなただったからですか——岡田常良(おかだつねよし)さん」

 

「はははっ、すみません。山内主将から連絡が入りまして、年甲斐もなくはしゃいでここにおります」

 

 三人——剣術部顧問、岡田常良。

 柳剛流師範代、かつては帯刀許可者を目指したが至れなかった武士(もののふ)。しかし、未だ己の道場にて研磨を積みながら高みを目指している実力者である。

 

「剣術部所属だったら問題ないもんね」

 

「ああ、なにも問題はない」

 

「むしろ良いです」

 

 納得したように頷く三人に緊張した様子はない。理念にとって、失礼と思いながらも小さなサプライズだったのだが意味はなかったと苦笑を漏らした。

 

「こんにちは、真剣術部の御三人方」

 

 山内が挨拶をすると、他の面々も挨拶を交わす。

 

「急な催しですが、それでもお付き合いくださること感謝を述べさせていただきます」

 

 そして、三本勝負の説明に入る。

 無制限。範囲は六人が立っている正方形の中であり、全身が出た場合のみ場外反則とする。降参、もしくは審判が戦闘不能と判断した場合は有無を言わせずに勝敗が決まる。

 「有無を言わせず」の部分が厳しい気もするが、ここは道場同士の試合ではなくあくまで部内の試合だ。そのため、後遺症等が残れば部としての成立が危ぶまれるという岡田の判断である。

 そこまで話すと、いよいよ誰が一番手に入るのか決めることになる。周りを囲む部員たちが、どうするのだろうと疑問を浮かべた瞬間、誰よりも早く武蔵が声を上げた。

 

「私は、昨日言ったとおり口宮副主将で良いかな? こうなったのも私が原因だし、一応その延長線上でここにいるわけだから」

 

 名前を出された口宮も含め、五人を見渡して武蔵がそう言った。

 

「俺も異論はありません。昨日言われたように、宮本と俺がやります」

 

 口宮ははっきりとした口調で断言する。

 険しく、しかし山巓を眺望したる眼差しには意志が込められており、踏破せしめたる武威を感じ入るが、彼を前にして武蔵は子供のように笑う。

 それは一重に余裕なのか、本当に楽しんでいるのか判断し難くはあるのだが一試合目は武蔵と口宮に決まった。

 

「二番手と三番手はどうしますか」

 

「ふむ……そうですな。

 まあ、それは巡り合わせということで」

 

「かまわない」

 

「では、そういうことで」

 

 決めることなく残りが決まった。

 岡田は朗らかな面持ちで頭を下げて試合範囲から出る。それに伴い沖田と剣心、そして理念も出ると必然的に武蔵と口宮が相対しながら立つ。

 

「さぁ、宜しくお願いします! 口宮副主将!」

 

「よし——勝負だ、宮本ッ!」

 

「では、一本目の試合は沖田(わたし)が務めます」

 

 

 

 星詠学園剣術三本勝負。

 

 【一本目】——。

 

 真剣術部所属   二天一流

          宮本武蔵 

 

       対

 

 剣術部所属副主将 田宮神剣術流

          口宮冬三郎

 

 

 

「両者構えて……。

 

 

 

 ————始め!」

 

 

 

 

 

三、

 

 

 

 

 

 知っていたのか。

 

 わかっていたのか。

 

 理解していたのか——。

 

 最早、何も考えられない。

 下校中、ただ存在したから蹴られ転がっていく空き缶のように。

 強風の日、風化した留め具が外れてしまい吹かれた看板のように。

 いつの日か、適当に投げ入れられた枝が激流に流されるように。

 

 やりたいことは——考えていた。

 どうすれば勝てるのか、勝つことができるのか、たとえ至らなくとも喰らいつけるのかを。

 

 そのすべてが泡沫のように弾けていく。

 

 声を出そうにも口が動かない。

 麻痺をしたかのように舌の感覚もなく、初めての感触に現を抜かすことを余儀なくされる(・・・)

 ふわわと浮いた身体は——その主……口宮冬三郎の身体は自らが潜っていくかのように床へと沈んでいった。

 

 

 




・口宮冬三郎
 登場人物設定を書いたノートをどっかにやったので書くのがめんどくさい。
 おっぱいが無い。
 拘っていない髪を短くしている。行き当たりばったりな性格をしているが、やる気はあるので後輩に慕われている。
 勝草君の崇拝相手。

・岡田常良
 柳剛流頭目たるや、かつては帯刀許可者を目指していた武人。
 七十を超えてもなお鍛錬を続け、鋼の肉体を持つ。
 かつて、一度だけ帯刀許可者と試合したことがある。
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