失恋したから剣にて空を目指した男のラブコメ学園生活   作:神の筍

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 一分後に投稿設定したつもりが、2022年になってました。


三十五刀目!

 

 ロッジへ戻ると、外のテラスで涼んでいる武蔵がいた。

 

「――あ、おかえり」

 

「ただいま」

 

「ただいま戻りましたよー」

 

 予定の集合時刻は十八時だったが、それよりも二時間早く帰って来た。日没まではあと三時間はあるはずだ。武蔵も同じようで、浜をのんびりと眺めていた様子から収穫も十分だったのだろう。

 

「む、まさかそれは筍さん」

 

「偶然剣心くんが見つけまして、採ってきましたよ」

 

「早めに水に漬けてあく抜きをしておこう。この大きさだと一時間以上は浸していないといけないだろうな」

 

「武蔵さんはどうでした?」

 

「リビングへどうぞ」

 

 にやりと笑いながら武蔵が言った。

 

 

 

 

 

一、

 

 

 

 

 

「おおー!」

 

 リビング――テーブルの上、備え付け用品である大鍋の中に入った多種多様な海産物を見て沖田さんは声を上げた。

 

「凄いな。釣りに自信があるとは言ったものの……」

 

「でしょう? 心頭滅却すれば魚も寄ってくる! 海になることで、魚は釣られたことも気付かないのです」

 

 言っていることはいまいち意味わからないが、この成果は素直に驚嘆する。釣っても二、三種類になると思っていたので、五種類以上の魚が並んでいるのは見るだけでも楽しいものだ。また、魚だけではなく貝や海藻もあった。

 

「海藻はどうやって取ったんだ?」

 

「思ったより早く魚が釣れたから、浅瀬で生えてたものを集めたの。味噌はあるみたいだからお味噌汁も飲めるよ」

 

 山菜に豊富な海産物、米は用意されていたものを使えば十分な食事を作ることが可能だ。飢えるつもりはまったく無かったが、ここまで旬の採れたてを食べられるとなれば快適な合宿を送れそうだ。

 武蔵の成果に舌を巻きつつも、こちらも山菜成果を見せる。

 

「――ヤマモモだ!」

 

「知っていたか。これはこのまま食べても美味しいぞ」

 

「これも筍?」

 

「チシママザサだな。日本海側でよく見られるんだが、恐らく過去の島民が持ち込んだものが運良く根付いたんだろう」

 

 小さく、細長いスイートコーンのような山菜だ。採れたてを生で齧ってもあっさりとしており、塩を一つまみするとさらに美味しい。

 

「今日はある程度の散策も出来ましたのでもう夕食の準備を始めちゃいますか? 夜は少しお話したいこともありますし……」

 

 沖田さんの言うお話――それはこの島に来る以前より感じていた違和感。なぜこの島が開拓されずに放置されているか、といったものだろう。武蔵も何となく察していたのか特に構うことなく了承すると大鍋をキッチンの方へ持って行った。

 

「あれ……」

 

 軽快な足取りは数歩で止まる。小首を傾げながら武蔵が呟いた。

 

「……タコが消えた」

 

「――探せっ」

 

「――もっと早く気付いてくださいよ!」

 

 

 

 

 

二、

 

 

 

 

 

 さて――本来ならば、島への行き道で初日から遊ぼうと話していたのだが、勝手知らずや人の家で色々作業に手間取りそうだったので明日から鍛錬と遊びを平行して行うことにした。初日でこのロッジの使い方を把握していたほうが残り四日も過ごしやすいだろうということだ。

 地平線では夕日が落ちようとし、東からは夜のとばりが迫ってきている。

 温泉でも湧いていないかと期待したが、地下水から引いた風呂を堪能した俺は未だ若干濡れている髪にタオルを掛けながらリビングに入った。沖田さんと武蔵は先に入っており、自分が最後である。

 

「タコは無事締めることが出来たか?」

 

「あ、剣心くん。ちゃんと出来ましたよ」

 

 先に夕食の準備を進めておくことは聞かされていたため、まな板の上で白くなったタコにはさほどの反応もせず近づく。広げた両手よりも大きく、脚の太い立派な身体を持っている。既に塩洗いはしたようでぬめりは取れていた。

 

「もう、ちゃんと乾かさないと将来禿げるよ」

 

 そう言いながら武蔵が被ったタオルをわちゃわちゃと動かしてきた。唐突なことに頭を振るも、笑いながら辞めてくれず、仕方ないので手首を掴んだ。

 

「俺の家は代々禿げはいないから安心しろ」

 

 祖父も祖母もふさふさである。

 

「禿げって遺伝子で決まるの?」

 

「だいたいはそうだろう? テレビでもよく見るぞ」

 

「まじか……どうしよう。私のお爺ちゃん髪の毛殆ど無いや……」

 

 思わぬ一撃を放ってしまったが、男女で禿げる年齢は結構変わるのではないだろうか。比較的男のほうが若くして薄毛に悩んでいる気がする――と、こんなことは考えなくとも良いだろう。せめて高校生くらいはこんな悩みは寸分も考えたくない。念のため髪を雑に拭ってタオルを肩に掛けた。

 哀れなり宮本武蔵。

 気を取り直し、小慣れた様子で具材を切っていく沖田さんを見る。

 

「てんぷら粉があったのか」

 

「はい。山菜は炊き込みご飯にするとともにいくつかを天ぷらにしちゃおうと思いまして。魚は武蔵さんが刺身にしてくれたものがあるので、剣心くんは筍の調理を頼めますか?」

 

「ああ、任された」

 

 沖田さんには少し横にずれてもらい、新しいまな板と包丁を取り出す。こうして二人が並んでも余裕があるため、家とは違った新鮮さが僅かに心を躍らせる。しかし、いざ向き合っても俺が作れる料理はしょせん男料理の延長線上なのでどうすれば良いのか迷ってしまう。

 並んでいる調味料はさしすせそと初歩的な中華調味料など。天ぷらと刺身が主食になるならば、俺も和食に寄った物を作るべきであろう。このラインナップならば、掘り返したときに考えていた通り煮物にするのが安定だ。

 

「残っているタコは使うのか?」

 

「大丈夫ですよ。使いますか?」

 

「ああ。余りをくれ」

 

 沖田さんから余っていたタコの脚を貰う。どうやらタコは身を刺身、脚は山菜炊き込みご飯に入れられるようだ。

 予めあく抜きしていた筍を一口サイズよりほんの少し大きいサイズに切っていく。さすがに俺の口でいくと二人には大きいと思うので、彼女たちに合わせている。筍は大きめに切るのがベストと母親が言っていたことを思い出した。そこからさらに流水で洗えばこの時期の筍でも十分美味しく食べられるだろう。タコの脚は二センチ角に合わせていく。味見しておこうと一つだけ口に投げ入れた。

 

「あ、ダメですよ」

 

「……んく、見なかったことにしてくれ」

 

「炊き込みご飯を注ぐときに剣心くんだけタコの量を一つ減らしますからね」

 

 これは手厳しい。

 沖田さんは家の道場でも昼飯を作ることが多く、家庭料理は作り慣れていると言っていた。横目で見る通り包丁捌きは見事なもので暫く眺めていても飽きないだろう。

 

「……」

 

 日本酒、醤油、砂糖――和食の基本的な味付けを食材に施しながら思う。

 これはまるで……夫婦みたいではないかと。

 沖田さんのとんとんと気味の良い包丁を動かす音に、鍋に水を入れて煮込み料理の準備をする俺。これはもう幸せな家庭を作るための共同作業に違いないのではないか。

 調味料を一対一で混ぜた煮物だしを誤魔化すように小指で味見する。このままでは塩っぱいが、水と混ぜるので丁度良いだろう。とはいえ、俺は自分の舌が肥えているとは到底信じていない。戸棚からスプーンを持ち出して水でゆすいでだしを掬う。

 

「沖田さん。味は大丈夫だろうか?」

 

「確認して見ましょう――はむっ」

 

「……!?」

 

 ――俺の馬鹿野郎! っく、完全に何も考えずにスプーンを差し出してしまった。おかしいに決まっているだろう。ここは普通にスプーンとだしの入った器を渡すべきだった。常識的に考えて掬って渡すなんて考えられない。信頼してくれた沖田さんには感謝は当然、仮にここで『あー……スプーンと器くれます?』と、苦笑いをしながら返されれば俺は立ち直れなかっただろう。

 

「ん、良いと思います」

 

「ありがとう」

 

 平常を装って返す。

 ここで選択肢が――――無いに決まっている。大人しく沖田さんが使用したスプーンを流しに置いた。

 

「よし、私のほうはこれで終わりです。天ぷらは剣心くんの煮物が出来てから揚げましょう。熱いうちに食べるのが美味しいですからね。何か手伝いましょうか?」

 

「いや、大丈夫だ。俺もあとは火を入れるだけだからな」

 

「ですね。じゃあ落し蓋だけ作っちゃいます」

 

「助かる」

 

 そうして火をかけて暫く、煮立ち始めた鍋から良い香りがした。ちゃんと出来るのか心配してくれたのかどうなのか、共に鍋を見ていた沖田さんの鼻歌が長閑な時間にマッチしていたことは言うまでもない。

 





 しばらく恋姫のssにハマっていて、ガチで現存するssをほぼ全て読みました。
 結果、自分には描くのは無理だと断念。自分は日本の美術、それも浮世絵専攻なのでこれ以上良いssを作ろうと頑張って歴史の知識を入れるとどこかで破綻しそうです。
 ただ、やはりバトル描写があるssは読んでいて本当面白いです。


 
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