失恋したから剣にて空を目指した男のラブコメ学園生活   作:神の筍

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チラシ裏でも呼んでくれている人がいる。
当作がチラシ裏である理由は、原作より大きく設定が変わっているからであり、表で望まれているものではないため。
そしてなにより、チラシ裏は書きやすい。
原作を借りたオリジナル話を書くのは、プロット作成含め楽しいんだ!!


だって、たまに気付いた人がフラットやってきて、にやっとしながら表へ帰っていく。まるで秘密基地のようだ。





八刀目!

 それは沖田が実家兼天然理心流道場に帰った矢先に起こった。

 

「――こら沖田!てめぇ勝手に道着持ち出してどこに行ってんだ!」

 

「ぎゃあっ!」

 

 ——鷲掴み。

 アイアンクロー、いわゆる脳天締め。沖田の顔程大きい掌が脳を締め付ける。まさか自分の実家で襲われると思っていなかったため身構えることなく捕らえられた。

 

「この痛みは土方さんっ!?」

 

「人を痛みで覚えんな、失礼な奴だな」

 

 もはや足が浮いた状態でばたつかせる沖田に逃げ場はない。

 土方と呼ばれた男はそのまま沖田に問う。

 

「沖田。通常の道着はともかく天然理心流の桜道着を外に持ってくのはいつも一言言えって言ってんだろ。わざわざ学校に持ってくなんてなにしてんだ。見せびらかしてきたんじゃねえだろうな?」

 

「なっ、なわけないですよ!今日は部活動紹介で模擬実戦して欲しいとあったのでそのために……」

 

「部活動紹介?……昨日言ってたやつか」

 

 ようやく力が緩み沖田は解放される。思はず地べたに膝をついて息をするのは決して力不足ではない。こと土方という男は沖田の仕置のさいに関しては倍以上に力が出るのだ。

 

「相変わらずの馬鹿力……」

 

「誰とやったんだ?」

 

「武蔵さんと剣心くんです」

 

「ああ、二天一流の麒麟児か」

 

「武蔵さんのことを知ってるんですか?」

 

「逆にお前が知らなかったことが驚きだ。

 二天一流の宮本武蔵。そもそも二天一流にとって武蔵(・・)という名前がどれだけ大事か知ってるか?剣術宮本家において開祖と同じ名前を持つのは先祖返りか、その技量に到達した者のみ。後名(あとな)が武蔵ならともかく、元名(もとな)が武蔵なのは開祖を除いた今代の、つまりお前があったその宮本武蔵だけだ」

 

「開祖宮本武蔵……じゃあ武蔵さんは」

 

おかると(・・・・)を信じるわけじゃねえが、その武蔵が産まれたときになにか天命でも降ったんだろうな。一昔前から武蔵の名前は武人の間では良く聞いた」

 

「なるほど」

 

「まあ、お前が天才剣士って言われてるのに対し向こうは麒麟児。いや、おそらく‟児”は超えて成体にすら届いてるかも知れん。二天一流の奥義は見たことはないがとんでもないもんと聞く。不甲斐ない鍛錬ばかりしてるとあっという間に置いてかれるぞ」

 

「わ、わかってますよ。道場に行ってきます」

 

 決着付かずの模擬実戦。決して自分が劣っているとは思わない、思えない。それほどまでに積んできた鍛錬と確かな実力への自負。だが、同世代にも勝敗が見えぬ相手がいるならばそれは確実に沖田総司という人間をさらに成長させる糧となる。

 

「持って行った道着、洗濯機に出すのを忘れるなよ」

 

 早足に去る沖田の背に土方は適当に投げかけた。良い発破になったか、と考えるとともにその環境を少し羨む。

 あの二天一流の麒麟児が隣にいるのだ。開祖宮本武蔵が書いた『五輪書』は穴が空くほど読んでいる。剣術家ならばその人生で必ず読む本と言って良い。

 しかし、もう一つ土方には心残りがあった。

 

「剣城剣心、か」

 

 名前に剣が入っているが土方の聞いた範囲では著名な実力者はいない。特別な家系でもなければ、一応は平凡な一族のはずだ。それよりも気になるのは沖田が入学初日で話したその流派。

 

「――徳仁難門那陰流(とくにんなんもんないんりゅう)が本当に存在していたとはな」

 

 曰く――魔王の系譜。

 正式な継承者はその時代において必ず一人しか存在せず、不確かな流出を防ぐために流派の師匠は幼い頃から適当な子を攫う。そしてありとあらゆる流派から、ありとあらゆる技を洗脳のような環境の中教え込み、産まれた一人の剣士は伝えられた技を完璧に模倣、モノにして新しい技を作り出す。

 その形から、

 

 ――剣術を記録するための流派

 

 と言われている。

 

「幻の流派。噂話程度の眉唾だと思ったが……はぁ」

 

 土方は雑に頭を掻いて元いた居間に戻る。

 

「今年はあいつにとっての厄年だな」

 

 普段は厳しい目で見ているがそれでも妹分。幼少の頃から付き添った保護者の立場もある。ならば、その素性は調べておかなければならないだろう。

 

「道場に招く、か」

 

 当人にとっては幸い、土方も師範としての仕事や道場には予定が半年は詰まっている。仮に近いうちに呼ぶとしたらそれは――七月以降、夏休みになるだろう。

 剣心にとって過酷か否か、知らぬところで目をつけられたのであった。

 

 

 

 

 

一、

 

 

 

 

 

 春狩目黒『今日のお三方、すごかったです』

 

 剣城剣心『別にそんなことはない』

 

 春狩目黒『いえ、そう謙遜なさらないでください。刀を振るう剣城君はかっこよかったですよ』

 

「……」

 

「なにニヤニヤしてんのお兄」

 

「別に」

 

「あらあら、息子もついに彼女の一人や二人連れてくるのかしら?」

 

「いやお母さん二人連れてこられたら困るでしょ」

 

「その二人が認知してたらかまわないわよ。お母さん孫はたくさんの方が良いもの」

 

「えぇ……」

 

 

 

 

 

二、

 

 

 

 

 差し込む光は暖かく、開けた窓からは風吹いて埃を攫っていく。

 俺たちがいるのは真剣術部の活動拠点となる旧講堂体育館。六限までの授業が終わり、初日から本格的に活動はせず、使用させてもらう礼儀で自ら掃除に勤しんでいる。

 

「雑巾掛けで一日終わりそうです」

 

「その前に上の埃落とすからな」

 

「高いところは苦手ですか?」

 

「特にそういうのはない。足を滑らせないように気をつけよう」

 

 俺と沖田さんは二階構造になっている、いわゆるキャットウォークからできるだけ埃を落としてしまう仕事を担当。武蔵は講堂脇の部屋を部室扱いにしようと中を整理している。

 借りてきた掃除用具で壁や窓枠を叩くが面白いように埃が湧いてくる。これは業務用の掃除機も借りてこればよかったかもしれない。

 

「くぅ、中々の埃っぽさ。けほっけほっ」

 

「大丈夫か?」

 

「すみません……」

 

 咳き込んだ背中を撫でる。

 ――む、これは下着のホック。後ろ派か。

 

「一通り叩き終わるまでそっちで休んでいてもかまわないぞ。落ち着いたらここからさらに下へ埃を落としてくれ。上の埃を落とすよりはマシだろう」

 

 俺はそう言うと、二階の座席部分に持ってきていた霧吹きをかける。湿った座席を使っていないタオルで拭くと座れるように整えた。

 

「ありがとうございます、剣心くん」

 

「気にするな」

 

 少し距離を開けた位置で作業を開始する。沖田さんが座っている場所は一際風通しが良い場所なので届かないだろう。

 沖田さんの方を見ると口に巻いていたタオルをとって窓の外を眺めている。時折顔に影ができていることから鳥でも飛んでいるのか。

 

「昔から埃とかが苦手でよく咳き込んでいたんです」

 

「喘息のような感じか?」

 

「はい。器官が弱くて小さい頃は頻繁に熱を出して両親を困らせていました」

 

「そうは見えなかったがな」

 

「今は剣術を始めてから少し丈夫になったんです。体を動かすことくらいなら大丈夫なんですが、さすがに埃に当たると厳しいです」

 

「ならば尚の事綺麗にしなければならんな。斬り合って咳き込んで、見せられた背中は斬り難い」

 

「いやそこは斬れないって言いましょうよっ!」

 

「ふっ、つまらぬものを斬ってしまったな」

 

「残酷ですね!というか斬ること前提!」

 

 沖田さんと意味のない会話を交わしながら、小さな蜘蛛の巣も排除していく。粘着性のある液体を箸に塗ってはくるくると回せば容易い。使った箸を入れる袋には殺虫性の餌が仕込んであるため出てくる心配もない。

 

「武蔵さん、武人の間ではすごい有名な人なんですよ。なにやら麒麟児とか、知ってました?」

 

 完全に昨日の受け売りなのだが剣心は知らない。

 

「そうなのか……?まあ、確かにあの技量があれば麒麟児と呼ばれても不思議はないな」

 

「ですよねぇ。天才剣士とか言われてちょっと調子乗っていた私が少し恥ずかしいです」

 

 冗談めかした様子で沖田さんは言った。

 麒麟児、か。あの場で単純な技量は確実に武蔵が一番だった。ただの技量とは少し違い、身体の使い方が巧い。最後の斬りを足裏で流されたこともそうだが、完全に二刀を手足のように扱っていた。

 あくまでも推測だが、技量は武蔵、速度は沖田さん、力比べは俺といったところか。

 それでも三人は名前が付いた技を出していない。本当に戦えば下馬評など簡単に覆る。

 

「いや、天才に恥じぬ突きだったぞ。あの速度の突きを連続されていれば受けられなくなるか、舞台から弾かれていたかのどちらかだったな」

 

「えへへ。沖田さん天才ですから」

 

 おい謙遜どこ行った。

 

「武蔵さんももちろん気になるんですが、剣心くんのアレはどうやったんですか?」

 

「アレ?」

 

「ええ……下駄音がして、私たちの間を抜けて背後を取った技です」

 

「難しいことはしていないぞ。それに、なんとなくわかってるんじゃないか?」

 

「予想ですが」

 

 目線で続きを話すよう促す。

 

「反応――反射ですかね?それを利用されたような気がします」

 

 さすがである。

 

「初心者や素人は基本見て打つ(・・)が当たり前ですが、私たちや玄人の領域に入ると目で見るのは二番手、一番手に気配や直感というものが殆どです。それは決して適当なものではなく、言うなれば無意識に相手の動きすべてから予測し、体が勝手に動いている状態と言えましょう。

 それを、剣心くんは反射的な動きに繋がる聴覚を利用した。あの音の踏み込みは最速で私たちに突起してくる、だからこそ刀を剣心くんのほうに向けて迎え打とうとした」

 

 大正解だ。

 

「単純な技ですが、それは寧ろああ言った世界で生きる人間にとっては致命的な隙に繋がる要因にもなりうる」

 

「あの場は三人、一対一じゃないからこそ引っかかったこともあるが」

 

 目で一人を見るならば、あとの一人はそれ以外で捉えなければならない。ならば次に信用するのは聴覚と決まっている。さすがに一対一のときに小手先過ぎるあれは使わない。

 

「ですが剣心くん。剣心くんの刀の使い方はああじゃないですよね?」

 

「……」

 

「私はてっきり武蔵さんのような二刀の構えで来ると思ったのですが……それは良いでしょう。

 納刀の仕方です。剣心くんは右手に持った刀を左手で一度持ち替えて、刀を回しわざわざ逆手にして納めていました。以前から少し疑問に思っていたんですが、普通刀は反りが下向きに下げますよね?」

 

 今は掃除中で、三人とも刀は近くに置いている。現に俺と沖田さんは最初に埃を落とした窓際に立てかけていた。腰にかかってはいないが、幻視するように見てくる沖田さん。

 

「本来の構え方は――右手に正手、左手に逆手の形じゃないんでしょうか」

 

「む、さすがだな。ああ、言っておくがあの場で真剣ではなかったわけじゃないぞ。まだ未熟ゆえ、逆手を持つと寸止めができる保障が無いんだ」

 

 未だ発展、空には依らず。

 帯刀許可書はもらったが師匠からのお墨付きはもらっていない。何も言われていないが、それは恐らく自分がまだ未熟だからこそ。勝手にその意を汲んで危険を避けるしか無かったのだ。

 

「いえいえ。それは私も同じですから……なにが起こるのかわからないのが勝負の常、私の突きも多少の鈍りがありました」

 

 沖田さんめ、それは宇宙支配軍の親玉と同じくまだまだ強化状態があるという遠回しな言い方だな!

 

「いつか本気の太刀合いは必ずくる。そのときはよろしく頼むぞ」

 

「もちろん!私が勝ちますけどね!」

 

「いや俺が勝つ」

 

「いえ私が勝ちます」

 

「いやそれ以上に俺が勝つ」

 

「いえそれ以上の以上に私が勝ちます」

 

「俺はまだ三倍強くなるから俺が勝つ」

 

「私は六倍は強くなるので勝ちますね」

 

「勝負着来たら百二十倍は強くなるから絶対勝つ」

 

「私も勝負着を来たら二百八十倍は強くなるので絶対の絶対勝ちますし」

 

 勝負下着も着ろ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――へっくし。窓が小さいから換気がし難いや。沖田と剣心のほうは終わったかな……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局終わりの見えない小競り合いは武蔵が作業に一区切りを付けるまで続いた。まあ、二階のほうはとりあえず埃は片付いたので良しとしよう。

 

 

 




・天然理心流道場
学園から南へいくと新都。学園から北東に電車で一時間ほどのとこで道場。

・土方さん
バーサーカー。沖田さんの兄貴分。婚約者がいる。

・後ろ派
わかるか?
おそらく晒しを巻いているであろう、本来の沖田のキャラクター性を現代になじませることで、大きな胸をきつく巻いているのではなくブラジャーをつけるこのエロさ。
前もいいが、取るときは沖田さんの白い首筋を見ながらとる、この後ろという尊さ!!!

・その他
「勝負下着も着ろ!」っていうツッコミ初めて書いた。


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