「まほそれでは駄目です!」
まほを叱るしほ。
その間に入ってなだめるアンチョビ。
「まほあなたは次期西住の後継者です。これぐらいはできて当然です」
しほが追い打ちをかけるように厳しくしかる。
一体どんなことをしているのだろう。
答えは一つ・・・。
「まほ西住の人間は料理ができて当然です」
アンチョビによる料理教室であった。
現在は黒森峰とアンツィオの戦車を常夫が整備しており、空いた時間でしほがまほに料理の指導をしている。
だがしほもあんまり料理は得意ではないのでアンチョビに教えてもらっているのだ。
「家元の意外な一面ね」
「そうですねエリカさん」
逸見エリカと赤星小梅が調理室の入り口からその様子を見ていたのだ。
いや意外とも言えない。
まほとしほは親子で料理が下手なのはそっくりである。
それに好きな人の為に料理を練習するところはそっくりである。
それに・・・。
「まほ料理は愛情です」
愛情(意味深)がどんどん料理に入っていく。
アンチョビはそれうんうんと頷いていた。
異常に思えるが、ここにいる人間すべて正常ではない。
もう既に正常な人間は居ない。
こういう言葉がある。
『異常の中の正常は異常』
つまり異常の中に居る正常な人間は異常な人間のように扱われる。
サンダース、プラウダ、黒森峰、聖グロリアーナ、アンツィオ、大学選抜はもう既にこの状況だ。
「(私もこれくらいしないといけないんだな・・・)」
アンチョビは心の中で思った。
「(巧さんが振り向かなかったのは料理への愛情がなかったから・・・)」
アンチョビが思いにふけっていると正常者が入ってきた。
「しほさん全車いつでもいけるよ」
しほの夫の常夫であった。
このメンバーで唯一の正常者で常識人である。
「ありがとう常夫さん。私のティーガーも用意してくれた?」
「うん。それよりしほさん指切ったの?大丈夫?」
しほの指から血が滴り落ちていた。
まほも同様で指から血が出ている。
「気にしないで。まほの教育の(彼を西住にする)為よ」
常夫が絆創膏を2人の指に貼って応急手当をした。
その時コツコツと歩いてくる足音が近づいていた。
「相変わらず料理も出来ないんだね。お姉ちゃん」
調理室の扉から声が聞こえた。
そこには大洗女子学園の制服に身を包み、伊藤巧ボコを抱きかかえている西住みほが居た。
「みほ!?」
まほは驚いていた。
ここに黒森峰が居ることは黒森峰とアンツィオの生徒と熊本の西住の人間しか知らないはずだからだ。
「みほは私が呼んだのです」
しほがそう明かすとまほや周りの人間も納得した。
それとしほがみほの後ろに居る少女を見つけた。
「あら角谷さん久しぶりね」
同じ大洗女子学園の制服を着た大洗女子学園の生徒会長の角谷杏が居た。
だが杏は少し怯えた表情をしていた。
しほが杏に近づいて行き、耳元で小さい声で言った。
「言う事聞かなければ・・・わかってますね?」
杏がビクッと体を震わした。
実はしほからの入れ知恵でみほが杏を脅しているのだ。
~★~
少し時を遡る。
大洗女子学園の生徒会室に伊藤巧ボコを抱きかかえたみほと杏だけしか居なかった。
「会長。あなたがやった事が公になれば廃校になるのですよ?」
「に、西住ちゃん何の冗談?」
みほが普段絶対に言わない事に杏が驚いていた。
「冗談じゃありません。西住の力を使えば情報を偽造して廃校にできるのですよ?」
杏は嫌な汗をかいていた。
額をつたる汗が床に落ちた。
「西住さん・・・廃校にはしないでください・・・」
普段はヘラヘラしている杏が珍しく敬語で頭を下げた。
「会長。今すぐに戦車道履修者を集めて静岡のアンツィオ高校に行きます」
「はい・・・」
杏には拒否権はない。
逆らえば自分の大好きな母校を廃校にされる。
それだけでなく、生徒たちを危険にさらしてしまうからだ。
~★~
そして時は今に巻き戻る。
「これより大洗も黒森峰とアンツィオ同盟に参加します」
大洗女子学園の戦車道隊長のみほが独断で同盟に加盟したのだ。
そもそもみほの意見が最優先になっているから大洗は誰も逆らえないのである。
「だから常夫さん大洗の戦車も整備お願いね」
「わかったよしほさん」
常夫が調理室のから出て行く。
そのすれ違いざまにみほが自分の父である常夫を睨んだのだ。
「!?」
常夫は立ち止まりみほと顔を合わせる。
「どうしたの?お父さん」
何事もなかったのようにみほは笑顔で答えた。
「い、いや何でもない・・・(気のせいか?)」
常夫は違和感を覚えつつ調理室を後にした。
気のせいではなく、みほは数年前の常夫が巧を逃がしたことをずっと恨んでいたのだ。
「大洗の戦車が整備が終わり次第このまま北上して島田の小娘とプラウダを潰します」
しほが各校の隊長に指示を仰いだ。
これにより三校の
『重戦車による力』
『敵を翻弄する機動力』
『突発的な事態に対処できる指揮官』
三つの長所により強大な同盟になってしまっている。
だが当然としてしほの携帯が鳴った。
基本しほの携帯電話には仕事関係と家族、もちろん巧もだが、これくらいしか電話番号を知らないはずだ。
非通知だが電話が来てるのは非常事態の事なのだ。
しほが電話に出た。
「もしもし」
その電話の相手は・・・
『もしもししほさん?僕です」
伊藤巧であった・・・。
次回は遂に数話ぶりの主人公が登場!