どこまでも手を伸ばす   作:ナナシ名無し

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新生活って思ってたよりキツイんだなぁ。


クライムの師匠と防具の新調

□【拳士】アーテム

 

パーティーを組んで数日が経過し、僕らの〈エンブリオ〉は皆第二形態へと進化した。

三人での連携にもそこそこ慣れて来て、順調にレベルを上げていた。

上げていたのだけど、・・・。

 

 

 

「どうしてこんなことしてるの、クライム?」

 

「どうしてこうなるのよ、クライム!」

 

 

 

僕らは、セーブポイントである噴水広場で、先程クライムの持ってきたクッキーを子供達に配っているのだった。

 

 

『お兄ちゃんたち、ありがとうーーー!』

 

 

 

 

 

「モヒカン師匠に言われたんだよ。“無法者たるもの、弱者を助け強者を挫くべし”と」

 

『いや、誰だよ』

 

「モヒカン師匠はモヒカン師匠だよ。お前ら知らねーのか?」

 

「知らないわよ」

「どうでもいいよ」

 

「然り気無く毒舌だなアーテム。まあいいか、良い機会だから教えてやるよ。モヒカン師匠はーーーー」

 

『だからいいって』

 

「何でだよ!格好いいんだぜ?モヒカン師匠は」

 

 

「そんなことより早く次の町に行く準備しましょ?もうそろそろ行けるレベルでしょ」

 

「そうだね。ポーションが心もとないからその補充と、・・・投擲用のナイフが欲しいな」

 

「お金もそこそこあるし、防具を新調してもいいわね」

 

確かに防具は新調しても良いかもしれない。僕なんかずっと初期装備だし。それに、今の狩場にも飽きてきていた所だ。

僕の〈エンブリオ〉、強いのは良いんだけど使うとあんま戦ったって感じがしないのが難点だよなぁ。もっと骨のあるやつが相手なら良いんだけど。

 

そういう点でも、次の町には早く行きたい。僕の主目的はその道中のボスモンスターだけど。

 

「・・・俺を無視して進めんじゃねーよ。ていうか随分仲良くなったなぁお前ら。」

 

『そう?』

 

ハモった。

 

「やっぱ仲いいな、お前ら」

 

自分でも不思議だ。何であのファーストコンタクトから数日でこうも気が合うのだろう。まあどうでもいいか。

 

「そういえば、クライムは何か新調しなくて良いの?武器は〈エンブリオ〉で事足りるだろうけど、ポーションだけでも買っといた方が良いんじゃない?」

 

「さっきのクッキーで有り金の大半使ったから、そんな金残ってねーぞ」

 

「いや、どんなクッキーならそんなに金かかるの?」

「馬鹿じゃなくて大馬鹿だったのね」

 

「褒めても何もやれねーぞ?」

 

そりゃそうだろうね。お金ないからね!

 

『何でそこで偉そうにするの 、お前は』

 

またハモった。

 

「モヒカン師匠からの教えだ。“無法者たるもの、金に糸目はつけるな”とな」

 

そして、会話は振り出しに戻った。

モヒカン師匠はもう良いよ。

 

 

 

 

□【拳士】アーテム

 

さて、モヒカン師匠を語り続けるクライムを無視しながらやって来たのは王都の大通りにある武具店。

ネットでも、“王国プレイヤーはまずここで装備を整えよう”と書かれている程の有名店だ。

メインは金属鎧や剣、槍などだけど、軽装系も多数販売している。

 

クライムは防具の新調。クミンは今別の店にポーション類を買いに行っている。

クライムにはパーティー共用の金から幾らか出して渡しておいた。

そして僕はというと、

 

「・・・もう少し軽いのは無いんですか?」

 

「・・・あのなぁ、お前の要求に沿って要所だけを守る設計のライトアーマー引っ張り出して来たんだぞ!?これ以上軽いの欲しかったらオーダーメイドしかねぇぞ。金あんのか?」

 

武具店の店主と絶賛口論中である。

でもそうか、流石にこのスポーツウェアと変わらない位の重さは無理だよな。ゲームだしそういうのも出来ると思ったけど。

オーダーメイドしてもいいけど、多分金足りないよなぁ。

 

・・・我慢してこのライトアーマーにするか。

 

「・・・分かりました。このライトアーマーで良いです」

 

「すげー不服そうな顔だなぁ、お前。まあ、俺も鬼じゃねぇ。お前がオーダーメイド品に見合う実力を身に付けて来たら考えてやるよ。それまではこれで我慢しな、ルーキー」

 

「いくらですか?」

 

「7200リル」

 

高い。でも品質は良い。僕の理想の重さじゃないだけでかなりの品だ。

要所にのみ装甲を配し、ルーキーでも手の届く価格に抑えながらも、そこそこな防御力と防御スキルを付けている。

 

仕方ないか。

 

「分かりました。買います」

 

「おらよ、大切に使いな」

 

さて、防具は買ったし後は投擲用のナイフだけか。

 

「この投擲用ナイフ三束程下さい」

 

「あいよ。強くなったらまた来な」

 

さて、後はクライムの防具だね。外で待ってるか。

店を出て、近くにあったベンチに座る。新しい防具の重さに若干の違和感を覚えながら、メニューバーを開き、〈エンブリオ〉の欄を見る。

 

 

フラカン

TYPE:テリトリー

到達形態:Ⅱ

 

『保有スキル』

 

《爆天》:

MPを消費することで体を強く打ち出し加速する。

アクティブスキル。

 

《風刃の衣》:

手足に風の刃を纏う。

※刃の攻撃力は、AGIに依存する。

※発動中、毎秒1ずつのMP消費が生じる。

アクティブスキル。

 

 

クミンとの決闘の際使用したのは、一つ目の《爆天》だけだった。しかし、レベリングによく使っているのは、二つ目の《風刃の衣》の方だ。

説明に書いてある通り、風の刃を纏うスキルなんだけど、実際に使ってみると非常に強く、使い勝手が良く、そして…、つまらない能力だった。

 

 

何故なら、このスキルを使うと、ただの殴る・蹴るの動作だけで相手を倒せてしまう。初心者狩場にいるモンスター達では、耐久力があまりに無くて、首を掴むだけでも殺せる。

はっきり言ってつまらない。

 

 

ボスモンスターとかみたいな、もっと上位のモンスターなら普通に耐えられるんだろうけどなぁ。

始めにこのスキルを見たときは、少ないダメージを着実に与えていくタイプのスキルだと思っていたのだけど。

 

 

「早く、次の町に行きたいな…」

 

 

 

「おーい、アーテム。聞いてるか?もう買い物終わったぞー」

 

「…ああ、ごめん。考え事してて気付かなかった」

 

「まったく…、シャキッとしなさいよね」

 

いつのまにか買い物を終えて、新品の装備を身につけたクライムと、ポーション類が押し込められた紙袋を抱えたクミンが、ベンチに座る僕の前に立っていた。

 

 

 

 

「それじゃあ行こうか。決闘の町、ギデオンに」

 

 

 


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