今回から新章に突入です。
「最近、漁船がこの島の近くを通ったときに何者かを目撃したらしい…。」
今いる島は、一言で言うならガラクタで出来たような島だった。漂流ごみが波のせいであつまったようなそんな感じだ。
「はぁ?誰か居たって理由で俺たちはわざわざこんなところに行かされてたのかよ。」
同僚が愚痴をこぼしつつ近くのごみの山を蹴り飛ばした。
でも、俺は大本営がここに派遣したわけも納得している。
「お前…ここは今は深海棲艦の占領下じゃあないが、
「まぁ…そうだがよ。」
少し納得していないような曖昧な返事を他所に手に持った銃を構え直す。こんなものあってないような物だが…。
「だったらこんなところに人は居ない、それでいいんじゃ………?」
まだ不満を漏らそうとした同僚がピタリと口を閉ざした。どうしたと思い同僚の方に向くと何かを指差していた。
「…どうやらお前の言った通りみたいだな。」
同僚の指差した先には誰かが生活した跡が残っていた。明らかに布団の様なものまであるので確実だろう。
「誰かが居るのは確かなんだが…どこにいるか…。」
島を見回してもだれも居ない。だが、誰かから見られている気がするのだ。
「なにか見つかったか?」
そんな不快な気分を紛らわそうと同僚に話しかけようとしたが そこには
「…は?」
誰も居なかった。
瞬間、視界が暗転する。そのまま意識は闇の中へ…。
「司令官!しーれーいーかーんー!!」
気持ちよく木陰で昼寝をしていると、今日の秘書艦である吹雪が頬をペチペチと優しく叩いてきた。
「……なに?今日の執務はこなしたはずだけど。」
そう言うと、吹雪は手にもった大本営から送られてきた書類を見せてきた。
「今さっき届きたての書類です!速達できたんですよ!」
「そうだったんだ。また、蒼龍が何かやらかしたのかと思った。」
なにかと、色々やらかすからなぁと考えてると、吹雪がそう言うことでは起こしに来ません!と言ってきた。それはそれで起こしてほしいが…。
とりあえず、届いた書類の封を開け、中身を確認する。内容は…。
「吹雪。」
「は、はい!」
「早急に皆を執務室に集めて。」
吹雪が敬礼をして走り去っていくのを見届けてから立ち上がり、もう一度書類を見る。
【緊急:孤島の調査隊について】
「これは…急がないとよね。」
──────────
時雨ねぇさんと不知火さんとで、食堂で話をしていたら、館内放送で執務室への集合が呼び掛けられた。
執務室に入ると、提督の表情はいつもの気の抜けた感じではなかった。
「今回、集まってもらったのは作戦を伝えるためよ。」
そう言うと、あらかじめ書いておいたホワイトボードを出した。
「前回の偵察で、解放した海域の中にある島で何者かが目撃されたの。」
そう言うとIowaが、わざわざ行かなくてもいいんじゃないの?と提督に尋ねた。
「まぁ、そうなんだけど、事態はそれほど単純じゃないわ。」
「司令、どうしてなのですか?。」
「偵察隊が縄で縛られ食糧や衣服を取られ、船に乗せられて帰ってきたからよ。」
皆の表情が同じものになる。頭の上に?を乗っけた様な顔だ。
蒼龍が「え、?殺されたー、とかじゃなくて?!」と大声をあげた。
「だから、単純じゃないって言ったの。それで、この事から察するにその島の住人は知能を持ってるってことになるわ。」
「でも、確認されてる深海棲艦は見逃すなんて知能は持っていない…。
しかも、もともと深海棲艦の占領下だったからそんな危ない場所に居る誰かって…?」
と時雨が顎に手を当てて唸るように考えていた。
「それを調べるために私たちが行くんですよね!司令官?」
そう吹雪が元気よく聞くと提督はこくりと頷いた。だがその次に出た言葉は予想打にしないものだった。
「島への上陸は私と夕立で。他のみんなは周囲の警戒をお願い。」
『ええええええええええ!!?!?!』
鎮守府に困惑の叫び声がこだました。
「にしても…提督は何を考えているのかな…。」
時雨がさっきよりも酷い顔で唸って考えていた。
「ま…まあ、提督さんにも考えが無いわけではないだろうし…深く考えなくたっていいんじゃないかな…?。」
僕がフォローをいれたが時雨は納得がいかないらしい。
と言うか、僕自身なぜ僕なのかの検討がつかない。
現在提督の乗る小型船を護衛するように回りを取り囲み、進軍している。
と言っても、既にこちら側の領海となった海域だ。風も穏やかで、波も少なく、とても深海棲艦が出るとは思えないような海域だった。
「提督はたまになに考えてるかわからないからねー。」
と飛龍が返してきた。
「
すると小型船の中から「この作戦が終わったら理由がわかるから、それまでは待ってて。」と、提督の声が聞こえた。
理由が知りたいが聞くのは止めておくことにした。
少ししてから目的の島が見えてきた。ゴミで出来た島。僕にはそう見えた。
でも、何故か懐かしい感じがした。