でも目は冴えてる不思議。
ねえ、過去を視る描写ってどうやって書くの?
とてとてと幼い足取りで小町が本部の通路を歩いていく。目をキョロキョロと動かして、まるで猫のように見つからないように警戒していた。
途中、目つきの悪いA級の男とすれ違い、嫌な過去を見せつけられたこともあって小町の顔は不機嫌そうに歪んでいた(常に不機嫌だけれども)。
(さっさと訓練終わらせて帰りましょう。彼らに見つかったらめんどくさいですし…)
そう思うと自然に歩くスピードが早くなる。仕方ない。本当にめんどくさいんだから…
「小町」
「…げ」
聞き覚えのある声に思わず口からうめき声が漏れてしまう。恐る恐る振り向くと、案の定というかなんというか、小町が想像した通りの人物がそこにいた。
「げ、とはご挨拶だな」
「言われるようなことをしてくるからですよ、風間さん」
A級3位の実力者、風間蒼也が全くの無表情で言う。
背は小町とそう変わらないが、一応21歳である。そして小町にとっては先輩であり、よく指導してくれるいい人だ。
……小町がお願いしているわけではない。
小町を気にかけて、風間が勝手に指導してくれているだけである。
「…それで、何のご用でしょうか?こまちはこれから訓練に…」
「ウチの隊に入隊するという件は考えてくれたか?」
風間のその言葉に小町は顔を思いきりしかめた。一応、先輩である。敬意の欠片もない。
小町が風間を見て「…げ」と言ってしまった理由はこれである。風間は会うたびに入隊しろと言ってくるので小町はうんざりしていた。
「その件は丁重にお断りしたはずです。風間さんには学習能力がないですか」
「相変わらず刺してくるな。だが、俺は諦めないと言ったはずだ」
風間の頑固な物言いに小町は深くため息をついた。一体いつになれば自分はこの人から解放されるのだろうか。
小町はもう一度はっきり断ろうと口を開き――
「あら、小町ちゃんに風間さん。こんなところで何を話しているの?私も混ぜてもらっていいかしら?」
やって来たA級6位の加古望によって遮られた。
この人にも会いたくなかったと小町は心のなかで呟く。残念ながら加古には聞こえなかったようだ。
「いえ、小町はもう行くので…ごゆっくりどうぞです」
「あら、なら私も一緒に行くわ。私が話したいのは小町ちゃんだし」
「(ノД`)ノ」
ニコニコと加古は言う。小町はため息をついた。
「は、話したいこととは」
「ウチの隊に入らない?」
「ですよね…」
風間と一緒だ。何度断っても諦めてくれない。もっと才能溢れる人材をスカウトすればいいのにと思うが、風間も加古も、頑固だということは嫌というほど知っている。
「おい、加古。無理やり入隊させようとするな。困ってるだろう」
「え、それを風間さんが言うですか」
風間の言うことはもっともなのだが、お前が言うなと言いたい。この男は自分の発言がブーメランになっているということに気づいていないのだろうか。
「あらあら。どの口がそんなことを言えるのかしら。それにこれは無理やりじゃないわ。圧力…いえ、スカウトよ」
「今圧力って言いましたか?詐欺まがいのことはやめていただけるとありがたいです」
妙なことを口走った加古を、小町は見逃さなかった。
が、小町の悲痛な訴えは無かったことにされる。
「ウチに来ればチャーハン食べ放題よ?食費には困らないでしょ?風間さんのところよりもウチのほうがいいと思わない?」
「命の危険があるので遠慮するです」
「ほら聞いた?風間さん。小町ちゃんはウチがいいんですって」
「話を聞いてくださいファントムばばぁ」
さりげなく悪口も混ぜてみるが、加古は全く気にしていない。むしろ上機嫌である。
「随分と耳が遠くなったようだな加古。もう老化が始まってるのか?今小町は俺の隊に入ると言ったんだ」
「だからあなたがそれを言うですか。入りませんて。聞いてます?」
バチバチと火花を散らしている風間と加古。
来るんじゃなかったと後悔するが時すでに遅し。こうなったら第三者が全力で止めなければ終わらない。
ああ…!誰か助けて…!具体的には迅さんとか鋼さんとか兄様とか! 神様、どうか自分に救いを…!
そんな願いが通じたのだろうか。
「あれ?風間さんに加古じゃん。なにしてんの?」
呑気な声で首をかしげているのはA級1位の太刀川慶だった。
「おっ!小町じゃねーか!ランク戦すっか!」
「…」
――神様、何故この男をこまちの元に遣わしたのですか。こいつ絶対役に立ちませんよ?
そんな失礼なことを考える。でも実際そうだろう。こんなやつがこの窮地を救ってくれるとは思えない。
初めて会ったとき、太刀川の過去を視て驚いた。
なぜならこの男、視せてくる過去は全てランク戦や防衛任務など戦闘系の類いばかりだったのである。
小町は意識して過去を視るとその人の過去を取捨選択出来るのだが、そんなことは滅多にしない。
なので、自動的にその人がとても思い出に残っている過去を視てしまうのだが、それは大抵嫌な過去、辛い過去であった。何故なら、嫌なこと、辛いことのほうが記憶に残りやすいからである。
だというのに、太刀川慶という男はそんな負の過去を全てスルーし、喜びの感情を詰めこんだ戦闘系の過去を視せてきたのだ。
それを視た小町は思った。こいつ、馬鹿だと。もう手遅れのヤバイやつだと。
だから、この男が風間と加古を止めれるとは思えな―――
と、そこでひらめく。あるじゃないか。たったひとつだけ、この状況を打破できる方法が。
小町は太刀川に向き直って言った。
「太刀川さん、こまちと個人ランク戦しませんか?」
「えっ!?マジで!?いつもは「絶対やだ!」って言って断るのに!」
「今日は戦いたい気分なのです。ほら、早くしないと気が変わっちゃいますよ!」
「オッケーオッケー、今すぐブースに行こう」
そのやりとりを見ていた2人が慌て出す。あっという間に話が進んでいて呆気にとられていたのだ。
「待て、太刀川。今俺と小町が話していた。ランク戦ならあとにしろ」
「なに言ってるのよ風間さんたら。小町ちゃんと話してたのは私でしょ?ほら、太刀川くん、小町ちゃん返して」
ずいと太刀川に詰め寄る風間と加古。太刀川は戸惑ってしまっている。
これはマズイと小町が頭を抱えてうめきだした。
「くっ!あと30秒でこまちはランク戦がしたくなくなってしまう!早く、しないと…!」
かなりの棒読みで言ったが、太刀川は「なんだと!?」と目を見開いた。
「よし、急ぐぞ小町!うおおおおお!!」
小町を抱え、太刀川が全力ダッシュしてブースに向かう。
騙しておいてなんだが、太刀川の将来が心配になる小町だった。
―
「…逃げられたな」
「逃げられたわね」
太刀川の背を見送り、2人はポツリと呟く。
相変わらずな太刀川と、相変わらずな小町の行動に、2人は顔を見あわせ苦笑した。
プロフィール2
木影 小町
サイドエフェクト:過去を視る能力(ボーダーには報告していない)
性格:他人に対する興味が薄い。過去を視ても何も出来ないことなどから人と深く関わるのをやめた。ドライ。敬語だが敬意はこめない。
体格:身長156センチ、髪型は耳の高さのツインテール。低身長だが出ているところは出てる。ロリ巨乳。
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ここからあとがきです。
風間さんと加古さん、太刀川さんを書かせていただきました!皆スキー
キャラ崩壊してるかもです…「やだよこんなの私の好きな風間さんじゃない!」とかあったら申し訳ありません。
一応今は風間さんたちが遠征に行く前のお話です。
評価、感想お待ちしております!