誰の目も視ない少女   作:十六夜月乃

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案の定遅れました。すいやせん

千佳たん登場!千佳たんマジ天使!
遊真ァ…可愛すぎ…

ちなみに、ここでハッキリと言っておきますが、作者は迅さんも修も大好きです。
修の扱いの悪さは設定上どうしても…。けれど小町はそこまで修のことを嫌ってるわけじゃないです。いきなり殴ったりしません。

迅さんは…その…イジると楽しいから…つい…


第8話 トリオンモンスター(前編)

「明日、遊真のあとついていってくれない?」

 

迅と顔を合わせ数十秒後、遠回しに「ストーカーしてこい」と言われ、小町は不審と軽蔑の念をこめて迅を見た。

 

「通報しますね」

「えっなんで!?」

 

スマホを取りだし110番通報しようとする小町。迅は悲痛な声をあげた。

スマホの画面を見ると、あとは通話ボタンを押すだけで警察署に繋がるだけの表示になっていた。まさか本気だったのか!?と迅は冷や汗をかく。

 

「なんでと言われましても?ただえさえ日頃から女性のおしりを撫で回し被害を出しているというのに…今度はこまちを使ってストーカーですかいい度胸です流石実力派エリートですねここまでしておいて通報されないと思うあなたには軽蔑の念を隠しきれませんよ、この間だって沢村さんのおしり触ったんでしょう?両手が塞がっているところを狙うなんてゲスの極みですよ最低ですというかそれを毎回視せられるこまちの身にもなってほし」

「わ、分かった!ごめん、ごめんなさい!反省するので許してください!」

 

小町が捲し立てるように言うと、迅はいよいよ年上としてのプライドをも捨て去ったのか佐鳥にも劣らない見事な土下座をかました。

ボーダー本部の、しかも廊下で、周りの目も気にせず年下の少女に土下座する自称実力派エリート(笑)

 

「謝る相手はこまちでないと思うんですが。…まぁいいでしょう。どうせ三輪先輩たちが絡んでるんですよね?こまちに何ができるか分かりませんが、一応コンタクトをとってみます」

「ありがと…物言いはキツいけど小町って優しいよね…」

「寒気がするのでやめてもらっていいですか」

「迅さんのライフはもう0よ?そろそろ許して」

 

 

―次の日―

 

 

カラカラと自転車を押しながら歩く遊真。小町から事の顛末を聞き、少々不機嫌そうな彼女を見て、苦笑した。

 

「へぇ。それで昨日おれに今日の予定聞いてきたのか」

「そうです。…“未来はできるだけ変えてほしくないけど遊真のサポートをしてやってくれ”って。どんな未来が視えたのかは知りませんが、こまちのことは空気だと思って進んでください」

「いやいや…」

 

昨日、迅に頼まれたあとすぐ、小町はハンバーガーショップへ直行した。案の定遊真はいて(今回はトマトバーガーだった)、小町は遊真に明日の予定はなんだと問い詰めたのだ。

 

「あんな胸ぐら掴んで聞かなくてもさぁ…」

「?」

「なんでもない」

 

そうこう言っているうちに、待ち合わせ場所の橋の下に着く。小町はチラリと遊真の持ってきた自転車を一瞥すると、ふと疑問に思ったのか、遊真に訊いた。

 

「そういえば、自転車乗れるんですか?」

「乗れないけど」

「即答ですか。だろうと思いました。…こまちも乗れませんけど」

「乗れないの?」

「乗れません」

 

なので教えられません、あてにしないでくださいと真面目な顔をして言う小町。

 

「…ニホンジンだよね?」

「日本人が全員乗れると思うなよ」

「なんでキレ気味なのさ」

 

遊真は肩をすくめ、やれやれと息を吐いた。

やがて自転車の練習を始める。小町は少し離れたところから辺りを警戒しながらそれを見ていた。

 

「…ん?」

 

遊真がようやく2メートル進めてきた頃、小柄なアホ毛の少女が橋の下に現れた。

 

「…雨取、千佳」

 

過去を視た小町には、目の前の少女の個人情報が手に取るように分かる。プライバシーなんて関係ない。

チラッと負の過去が視えたが、小町は顔色ひとつ変えることなく必死に自転車と格闘している遊真に視線を戻した。

 

そのうち、遊真と千佳が喋り出す。千佳は自転車に乗れるようで、遊真に自転車の乗り方を教えていた。

微笑ましいと思いながら小町は空を見上げる。あのメガネ、呼び出しておいて一向に姿を見せないじゃないか。

まあ、遊真いわく、待ち合わせ時間よりかなり早めに来たらしいが…小町は待たされるのが嫌いなのだ。

ただえさえあのメガネに会うのは嫌なのに、セクハラ無職め、覚えてろ。

 

そんなことを考えながら雲が流れていくのをボーッと見ていると、ふいに、川になにかが落ちる音がした。

 

「…?…ん!?」

 

なんか「どぅわー」とかいう声が聞こえた気がする。あわてて遊真たちのいた場所を見ると、そこには千佳しかおらず、その千佳は「わあ!?」などと叫んでいる。

 

「…川に落ちたな?あの馬鹿…」

 

川の近くで自転車の練習をすると聞いて、嫌な予感はしていたが…案の定落ちた。

小町は走って遊真が落ちたと思われる場所まで行くと、千佳と共に遊真と自転車を引き上げた。

 

 

なんとか無事救出された遊真と自転車。彼らはびしょ濡れで、ついでに遊真たちを助けた小町と千佳も少し濡れていた。

 

「いやぁ危なかった。せっかく買ったジテンシャが川の藻屑になるとこだった」

「ついでにあなたもね」

「あはは…」

 

小町の呆れたような言葉に、千佳も苦笑する。

 

「いやでも、確実になにかつかめたな。おまえのおかげで。えーと…」

「あっ、わたしは千佳。雨取千佳」

「そっかチカか。おれは遊真。空閑遊真。そんでこっちが…」

「空気です」

「えっ!?」

「何嘘ついてんの。コマチだよ」

 

さらっと嘘をついた小町だったが、すぐに遊真に看破され、口を尖らせた。

 

「ここに来る前言ったじゃないですか。こまちのことは空気と思ってくださいと。忘れたんですか?」

「まさかとは思ったけど本当に冗談じゃなかったんだな」

「えっと…もしかして聞いちゃいけなかったかな?」

 

言いあいを始める2人の間に挟まれてオロオロする千佳。

そんな彼女を見て、小町は毒気を抜かれたのか、「別に構いません」と首を振った。どうやら本気で空気だと思ってほしかったようで、渋々といったオーラがにじみ出ている。

 

「それより、2人の服ずぶ濡れじゃん。カゼ引くぞ」

「あなたに言われたくないです」

「遊真くんのほうがずぶ濡れだよ」

 

どう見ても自分のほうがずぶ濡れだというのに、2人を心配する遊真。小町と千佳は苦笑した。

小町が貸したハンカチで遊真は顔を拭く。なんとか水気が無くなってきたころ、

 

「…!」

 

ふいに、千佳がバッと後ろ――否、正しく言うのなら、警戒区域の方角を振り向いた。

 

「?どうし…」

 

遊真が不思議そうに千佳に聞こうとして、耳障りなサイレンの音に遮られる。

ウーーーーといういつまでたっても慣れないこの音に、小町は少し顔をしかめた。

 

「おっ、警報」

「近いですね。でも警戒区域の中っぽいので放っておきましょう」

「…コマチってけっこうドライだよな。別にいいけど…」

 

苦笑いで言う遊真に、小町は軽く首を傾げた。

 

「あっ…ごめん、わたし、行くね!」

「え?」

 

突如として去っていく千佳に、遊真はすっとんきょうな声をあげた。しかし無理もないだろう。彼女が走って向かって行った場所は、サイレン鳴り響く警戒区域の方向だったのだから。

 

「おいおい、そっちはネイバーのいる方だぞ?」

 

困惑する遊真。一方の小町はじっと千佳の後ろ姿を見つめ続けている。睨み付けている、と言った方が適当かもしれないほどに。

と、今までずっと黙っていたレプリカが2人に聞こえるよう声を発した。

 

『彼女…警報が鳴る前に襲撃に気づいていたように見えたが…』

「…!?…コマチ、何か視えたか?」

 

遊真の問いに小町は深く息を吐く。そして、こくりと頷いた。

 

「そう、ですね。とりあえず追いかけましょう。…彼女は警戒区域という言葉の意味を理解できていないようです」

「…?まぁいいや。了解」

「自転車は置いていきましょうね」

「……ちぇっ」

 

先ほど千佳のおかげで少し走れたことに味をしめたのか、自転車にまたがり千佳を追いかけようとする遊真。

小町はその首根っこをぐいと掴むと、遊真を自転車から引き剥がした。

 




とりあえず前編です。長い。三輪君出せない。無理。
次回出します。

三輪君…初めて見たときは「三輪先輩」だったのに、今では「三輪君」です。年下になっとる。時間の流れって早いもんですね。
遊真なんて同級生だったのにいつのまにか後輩に。ショタの仲間入り。可愛いよ!

そのうち迅さんも年下になってしまうのでは…
いいけどね。面白そうだし。

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