PSO2 ~煌々たる白明~   作:クビキリサイクル

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約束は守る男だ。なので依頼もきっちりこなさなきゃ気が済まないタイプ。なんだけどさぁ……

 

 

 

「貴方に伝えるべき事がある。それはひとつの揺らぎである」

 

 

 開口一番、そう言われた。

 帰還してから採ってきた素材を用いてマイルームで武器の調整や新しい武装の開発に励み、そろそろ寝るかという前に、シオンに会いに来たのである。

 こいつとの会話は、理解に時間が掛かるからスムーズに行かない。

 

 

「因果が収束を見せている。一つの事象を産み出しつつある。その手で掴めるほどに」

 

「…………偶時とやらが集まって、必然とやらが生まれそう。ってことか?」

 

 

 シオンは頷く。

 

 

「それは恐らく、運命という概念への冒涜だ。しかし、それこそが私と私達が渇望し、切望したことである」

 

「あーはいはい。そういうのいいから」

 

 

 右手を見せつけるようにぷらぷらさせる。

 運命とか。

 鼻で笑うわ。

 

 

「生憎、俺は神を信じてないもんでね。出来る事と、起きた事だけを信じる。運命とか世界の意思とか、そういうのぶっちゃけどーでもいいんだよ」

 

「…………」

 

 

 ……? なんで黙るんだよ。

 なんかマズイことでも言ったか?

 

 

「……私は謝罪する」

 

 

 何故か謝られた。

 

 

「曖昧な言葉では貴方達に伝わり難いことを理解せず、失念していた」

 

「そうかい。これからは気を付けて…………達?」

 

 

 俺の他に誰かいるか?

 ショップエリアは今は閑散としていて、いるのはショップに常駐している店員ぐらいのものだ。

 にも関わらず……達?

 なんで複数形?

 

 

「思考を修正し、伝える。これは、私から貴方達への依頼である」

 

 

 俺の疑問を解消しようとせず、シオンは言う。

 

 

「惑星ナベリウスに向かってほしい」

 

「……ナベリウスに?」

 

「理由は答えない。答えられない。答えは、貴方の未来にのみ存在する」

 

 

 ……詳しい内容は秘密、報酬は後払いってか。

 ここまで滅茶苦茶な依頼も初めてだ。

 しかし彼女は、そこに希薄ながらも切実なる願いを込める。

 

 

「私は観測するのみ。観測しか、出来ない」

 

 

 そう言って、彼女は姿を消した。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 キャンプシップから伸びた光線が、宇宙空間に伸びていく。

 巨大な円形の空間が生まれ、キャンプシップはそこに飛び込んだ。

 ガラスが割れるように空間が割れ、膨大な光に照らされる。それでもなお、キャンプシップは進んでいく。

 そしてすぐにまた宇宙空間が広がる。

 キャンプシップが飛んでいく先には、緑に包まれた惑星ナベリウスが見えた。

 

 

「……はぁ」

 

 

 溜息を一つ。

 シオンとの会話の翌日、俺は惑星ナベリウスへと向かっていた。

 あの怪しい女の怪しい依頼を受けて、である。

 

 

「あんな無茶苦茶な依頼、断ってもよかったっつーのに。なんで受けちゃうかな俺は……」

 

 

 頼まれたら断らない性格なわけではなく、嫌ならはっきりと嫌という俺である。NOと言えるアークスだ。

 だというのに、シオンの切実さに押されて、今こうして報酬も分からない依頼を遂行しようとしているのである。

 自分に嫌気が差す。

 というか、あいつと話すとどーにも調子が狂うよな。

 全てを見透かしてるみたいで、そのくせ自己評価は低いというか。

 観測しかできない。

 それしか出来ない自分の無力さを嘆いてるような。

 

 

「ま、いいか。これでこのマターボードとかいうやつの正体が分かると思えば」

 

 

 キャンプシップがナベリウス上空に到着する。

 後はこのテレプールに飛び込めば、ナベリウスの地上に降り立つ。

 シオン以外の依頼は、ルベルトのしか受けていないし、また素材を集めて一儲けするとしますか。

 両手で頬を叩いて、気合を注入。

 

 

「さて、鬼が出るか蛇が出るか……」

 

 

 階段を降りてから走り、テレプールの海へと飛び込む。

 全身が浸かるように入って行けば、後は転移を開始するのみ――――――

 

 

 

 

 

 ――――――運命は、変化する。

 

 

 

 

 

 視界がブラックアウトした。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 眼前に広がるのは、これで三度目のナベリウスの緑。

 原生種の鳴き声や、澄み渡った空気の匂いも変わらない。

 

 

(……なんだったんだ、今のは)

 

 

 転移した時に、シオンの声が聞こえた。

 しかもその瞬間、今までの転移には無かった、視界のブラックアウト。

 それに、この光景。

 同じナベリウスにしたって、見覚えがあり過ぎるような……。

 

 

「……い。おい、相棒! どーしたんだよ、ぼーっとして?」

 

「……え?」

 

 

 声が聞こえた隣を見れば、そこには。

 連れてきた覚えのないアフィンがいた。

 

 

「……アフィン?」

 

「……ほんとにどうしたんだよ相棒」

 

「いや、お前なんで……転移場所が被ったのか? にしたってなんでこんな近くに……」

 

「なんでって……はっはーん。わかったぜ」

 

 

 アフィンは、俺の混乱する様を面白がるように。

 こう言った。

 

 

 

 

 

()()()()だしな、緊張してんだろ?」

 

 

 

 

 

「…………は?」

 

「わかるわかる、すげーよくわかるよ。気楽に……ってのは無理かもだけど、力を合わせてがんばろーぜ、相棒」

 

「いや、おいおい何言ってんだよ」

 

 

 頭を振る。

 修了任務?

 これから?

 

 

「修了任務なんて、ついこの前、二日前に終わったとこだろ? 俺達はもうアークス。二回も受けるなんて聞いたことねぇよ」

 

「? お前こそ何言ってるんだよ。おれ達はまだ訓練生で、これからアークスになるために修了任務を受けたんだろ? おれと相棒の二人でさ」

 

「だって、ほら。マグだってここに」

 

 

 右肩上の宙を見る。

 何も無かった。

 

 

「っ!!?」

 

「マグ? ってあれか。正規アークスに支給されるっていう」

 

 

 アフィンの言葉を無視して、デバイスからスクリーンを呼び出す。

 アイテムパックの中身は、デバイスから確認できる仕様だ。そうでなければ、中に何が入ってるのかが分からなくなる。カテゴリ別に分けることも可能で、なんならアークスシップのビジフォンにある、アイテムを大量に保管するための倉庫へと直接繋ぐことも可能だ。

 本来なら倉庫へと送る事しか出来ないが、俺の改造が入ったそれは倉庫からアイテムを取り出す事も出来る。加えて倉庫の容量も無制限。カテゴリ別に分けるくらいしか整理の必要がないのだ。

 持ち歩く物は今の所アイテムパックの分で事足りるから倉庫の出番は素材の保管くらいだが、今はそれはどうでもいい。

 マグは、アイテムパックの中にあった。

 俺の右肩上に浮いてないだけで、無くなったわけではないようだ。

 しかし、それ以上の問題が発生、発覚した。

 スクリーン右上にある、時刻表示。

 

 

「……おい。どういうことだよ……」

 

「相棒?」

 

 

 そこに表示された日付と時間は。

 ()()()()()()()()のそれだった。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 アフィンには転移酔いしたと言って、一旦離れたところに来た。

 木に寄り掛かって座り込む。

 

 

「……状況を整理しよう」

 

 

 現在時刻。

 二日前の修了任務開始直後。

 持ち物。

 俺が持っていたアイテムパックそのまま。

 人。

 俺の隣に、一緒にキャンプシップに乗った覚えのないアフィン。

 場所。

 修了任務の時に、アフィンと降下した場所そのまま。

 これらを繋ぎ合わせて出てくる答えは。

 

 

「……俺の状態や持ち物はそのままに、二日前にまで()()()()()()()()?」

 

 

 直感的に頭に浮かんだ答えをそのまま口にしてみた。

 ……ハン。

 有り得ねー。

 座標を特定すればアイテム使って空間転移だって可能なアークスの技術だって、四次元の干渉には届かなかった。

 それが急に俺の身に起こったって?

 有り得る筈がない。

 だが―――。

 

 

「だったら、この反応の無さはなんだよ……?」

 

 

 さっきからPM(フォトンマップ)を展開しているが、そこには原生種の反応が掛かるのみ。

 ダーカーの反応は一つもない。

 昨日あった筈の探索では、どこ行っても最低10体はいたというのに。

 

 

「昨日今日であの数のダーカー達が全滅、なんてのは絶対にない。六芒均衡が全員動いたって無理だ」

 

 

 それこそ、惑星ごとぶった斬るくらいじゃなきゃ。

 そんなことが出来るなら、わざわざ大勢のアークスをナベリウスに送るなんてことしない。

 

 

「心当たりと言えば、あのシオンって奴以外にはない。転移の時に聞こえた声も、あいつのだったからな」

 

 

 くそ。何が観測することしか出来ない、だよ。

 こんなこと出来る奴が、なんであんな自虐的になってんだよ。

 腹立つ。

 

 

「……いや、これがマターボードって奴の導きなのか?」

 

 

 時間が巻き戻ったのであれば無い筈のマターボードは、確かにデバイス内にある。

 マターボード。

 偶時を拾い集め、必然と為す。

 

 

「マターを集めれば、時間遡行を起こすことさえ可能、だってか」

 

 

 いや、可能というのは違うか。

 俺は今一度修了任務を繰り返しやりたいなどと思ってはいない。めんどい作業を無意味にやること程苦痛なものはないと思っている。しかも、もしこれから起こることも同じだと言うのなら、あのダーカー大発生まで起こるのだ。ゼノさん達に会えたのは僥倖だったが、あんなの一度でたくさんだ。

 にも関わらずシオン、或いはこのマターボードはこの時間にまで、俺を巻き戻させた。

 どちらが巻き戻したにせよ、ここに来たのはシオンの依頼があってこそ。ならば、これはシオンの意思ということだ。

 

 

「つまりシオンは、この時間のこのナベリウスで、俺に()()をさせようって魂胆だってことか」

 

 

 ……よし。

 口に出しながら考えを纏めることで、頭の中は整理できた。

 落ち着いて考えよう。

 あいつは、俺がこのナベリウスに来ることだけを依頼し、それ以上は何も言わなかった。ただ時間遡行をさせたいだけなら、俺はここで帰ってもいい。しかし、もし一方通行だと、過去に飛べても未来に飛べず、元の時間に戻れないとするならば、それを考えると修了任務を放棄するわけにはいかない。せっかく苦労してアークスになったというのに、ここでめんどくさがってそれが無かったことになるなんてのは耐えられない。

 シオンの狙いが何なのかも気になる。

 ……スタンスは決まったな。

 アフィンのところへと戻る。

 俺が近付いてきたことに気付いたアフィンは、声を掛けてきた。

 

 

「お、相棒。もういいのか?」

 

「ああ、なんとか落ち着いたよ」

 

「まさか相棒が転移酔いなんてなー。それで? これからどうする?」

 

「指定ポイントまで真っ直ぐ進む」

 

「え? 討伐はいいのかよ?」

 

「道中で遭遇する分で十分だろ。さっさと行って、さっさと任務完了しちまおうぜ」

 

「それには同意するけどさ…………っておい! 待てって相棒! おれを置いていくなよ!」

 

 

 過去の時間で前と違う行動をすることで、世界が歪むとか言われるが。

 そんなこと知るか。

 記憶を頼りに楽して、正面突破だ。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 案の定、原生種は道中で指定討伐数を達成した。

 アフィンが銃で動き回るガルフを狩っていく隣で、俺は逃げていくナヴ・ラッピーをフォイエっていく。

 遠距離からバッタバッタと薙ぎ倒す感じだ。

 

 

「相棒。最初は近接で感触を覚えたいって言ってたけど、それはいいのか?」

 

「いーんだよ。考えてみりゃ、安全迅速に修了任務達成することに比べりゃ、感触なんて何時でも覚えられるようなもん、後回しにしてもなんの問題もねぇだろ」

 

「そっか。まぁ、俺もその方が安心できるし、いっか」

 

 

 本当はもう感触は覚えてるから、必要ないだけなんだけどな。

 アフィンには、時間遡行したことは言っていない。

 どうやら記憶がそのままなのは俺だけのようで、アフィンの記憶は修了任務の時のものだからだ。そんな状態で「実は俺、未来から来たんだ」とか言ったら、こいつのことだから修了任務を中断してでも俺をメディカルセンターに連れて行くことだろう。

 そんな馬鹿馬鹿しいことで修了任務を中断するわけにはいかない。

 そうして労力は最低限に、前回ダーカー大発生が起きた時に俺達がいた広場までやってきた。

 立ち止まり、通信に集中する。

 

 

「さて、どうなるか……」

 

「ん、相棒? そんなに通信を気にして、どうかしたのか?」

 

 

 場所は前回と同じだが、寄り道しなかった分、前よりもずっと早い時間に辿り着いた。

 普通に考えれば、前の時間通りに緊急回線が入って、俺達の前にダーカーが姿を見せる筈だ。

 だが、ここに来たことが引き金になるのなら、緊急回線が入るのは―――

 

 

 

 警報が鳴った。

 

 

 

「な、なんだあ!?」

 

「……場所優先ってか」

 

 

 突然の警報に騒ぐアフィンの横で、聞こえない程度に呟く。

 続く管理官の声。

 

 

『管制より、ナベリウスに寄港中のアークス各員へ緊急連絡! 惑星ナベリウスにてコードD発令! フォトン係数が危険域に達しています! 繰り返します。惑星ナベリウスにてコードDが発令! 空間浸食を観測、出現します!』

 

「お、おい相棒! あれ!」

 

 

 アフィンが指差す先に、赤黒い靄のような何かを伴って、地面からダーカーが湧き出す。

 ……出てくると分かってりゃ、こうも驚かないもんなのか。

 

 

『ダーカー出現を観測! 空間許容限界を超えています!』

 

「こいつらが……ダーカー? アークスの敵で、宇宙の敵で……全てを喰らい尽くすもの」

 

 

 隣のアフィンが、怯えたようにそいつらを見る。

 

 

「なんでだよ! どうしてだよ! ナベリウスにはいない筈だろ!?」

 

 

 前回と同じ連絡に、アフィンの台詞。……再現性高ぇってか、そのままなんだな。

 ダガンの数も、前と同じ。

 さっさと片付けて、この先でゼノさんと合流するか。

 前と同じように、アフィンに声を掛ける。

 

 

「アフィ」

 

 

 

 

 

 ……助けて

 

 

 

 

 

「ン……あ?」

 

 

 声が、聞こえた。

 女の子が、小さく囁くように。

 まるで直接、頭に響くように。

 十字路の、()()を見る。

 声の方向なんて分からない響き方だったのに、何故かそっち側だと確信していた。

 …………まさか。

 

 

「お、おい相棒! どこ見てるんだよ! 今は目の前のこいつらをなんとかしなきゃ―――」

 

「火杖『フレア』」

 

「だって……え?」

 

「フォイエ・並列起動12」

 

 

 12個の爆炎をダガンの群れに向けて放つ。

 フレアによって増幅された爆炎が連鎖爆発を起こすによって、群れを余すことなく呑み込む爆発が起こった。

 黒煙が晴れた時、ダガン達が全てその姿を消していた。

 

 

「あ、相棒?」

 

「アフィン。予定変更だ」

 

「え? あ、そ、そりゃこうなったら予定も何もないけど、どうするんだよ?」

 

「こっちに行くぞ」

 

 

 俺は、十字路の右側を指差す。

 

 

「こっち? って、そっちは元々の指定ポイントじゃないんだろ? そっちになんかあるのか?」

 

「……声が聞こえた」

 

「え? こ、声が? それ、助けを呼ぶ声だったら、大事だよな」

 

 

 ……アフィンには聞こえなかったか。

 俺の気のせいかもしれないが……もし。

 もし、だ。

 もし今の声が、レダが言っていた『女の子』の声だとするなら。

 戦えない一般人が、この先で助けを求めているとするなら―――

 

 

(くっそ……)

 

 

 一人、悪態をつく。

 

 

(助けに行かなきゃ、後味悪ぃだろうが……!)

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 ハクメイとアフィンが、不穏な助けを呼ぶ声の方へ、十字路の右側へと走る。

 その数分後のことである。

 彼等がいた十字路を左側へと進んだ奥地にて、とあるアークス達が戦闘していた。

 

 

「思ってたよりも多いじゃねぇか」

 

「リーダー。どうしますか?」

 

「予定通りだ。ここで分散して、新人達の救援に向かえ。討伐は後回し、人命を最優先にな」

 

 

 キャンプシップより降り立ったその場所で、ダーカー達を殲滅しながら落ち着いて会話をするアークス達。

 彼等は、アークス内でも有名所であるチーム『ブラックレパンド』のメンバーだ。

 黒人の男を筆頭に総勢13名のアークスがおり、チームとしては長い戦歴を持つ、熟練のアークス達で固められたチームだ。一人一人の戦闘力は元より、短くない時間を共に過ごした彼等の連携は、六芒均衡をして目を見張るものがあるとさえ言われる。

 彼等自身も、13人が揃って勝てない敵などいないという自負があった。

 実際に戦歴を遡ってみれば、チーム全員が揃った戦いで敗走したなどという記録は残っていない。実力の高いアークスでも手古摺るような大型エネミーや、強力なダーカーが相手であっても。

 ゆくゆくは、13人の力でもって六芒均衡さえも超えるチームになれるのではとさえ。

 しかし。

 彼等の道は、ここで突如潰えることになる。

 

 

「了解です。それでは―――ん?」

 

 

 命令を受けたサブリーダーが、訝し気な声を発する。

 それを聞き、全員がサブリーダーを見る。

 

 

「どうした?」

 

「いや、その……リーダー。あれ」

 

 

 見ていた全員が、サブリーダーが指差す方へと視線を移す。

 そこに、いた。

 ()()()()()()、アークスのようでアークスでないような男が。

 こちらへと歩いてきていた。

 

 

「……なんだ、お前は」

 

 

 リーダーの不審を孕んだ声に、全員が各々の武器を構える。

 数多くの戦場を潜り抜けてきた彼等には、相手の実力を測るなどお手の物だ。

 戦場において最も大切なのは、実力の見極め。

 リーダーがそれを信条にして、時に戦い、時に備え、時に逃げてきたからこそ、彼等は長く戦い抜き、生き抜いてきたのだ。

 そのリーダーをして、実力の測れない()()

 ()()は、仮面によって表情は窺えず、服装も一切肌を見せない、礼服のような黒々としたものだ。

 

 

「答えろ。お前は……何者だ」

 

「新人か? 仮面を外して、顔を見せろ」

 

 

 彼等は、間違った考えをしていた。

 リーダーである黒人は、不審だったが故に実力を測れなかったのではない。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 その一つの不正解が、彼等の命運を決した。

 

 

「……だ」

 

「ん? 今なんと」

 

 

 男は、仮面でくぐもった声でこう言う。

 

 

 

 

 

「……邪魔だ」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「ん?」

 

 

 ゼノと別れ、キャンプシップで合流地点を目指すエコー。

 ナベリウス上空を、特に襲撃もなく穏やかに飛ぶ彼女の耳に、地響きのような何かが聞こえた。

 地上での戦闘音にしてはやけに大きいな、と思い、彼女は窓際に立つ。

 

 

「……なにあれ」

 

 

 窓から見えた光景に、エコーは思わずそう呟く。

 

 

「あんな大きなクレーター、ナベリウスには無かったよね……?」

 

 

 

 

 

 その日、チーム『ブラックレパンド』は壊滅した。

 死体は一人として残らず、クレーターの傍に、リーダーのものであろう黒い右腕が残されているのみ。

 アークスの公式上ではダーカーとの戦闘中に命を落としたものとされているが、その右腕を発見したアークスはこう述べたという。

 

 

『あれをやった奴は、怪物だ』と。

 

 

 

 

 

 




イベント分けると思ってた? 残念! 一気に来るよ!!
公式に消されたとされている黒人兄貴ですが、自分は詳細を知りませんが流石に可哀想なので、公式ではなく本当に消されたことにしました。どっちが可哀想なのやら。

次回はあの男との戦闘です。ハクメイの秘密もちょっとわかるかも?
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