PSO2 ~煌々たる白明~   作:クビキリサイクル

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前話にて一部修正しました。
具体的には、ハクメイが倒れたのは仰向けじゃなくてうつ伏せです。


気味悪い男のおかわりとかいらないんですけど……

 

 

 

 

「……おいシーナ。こいつらは誰だ。どこのどいつだ。さっさと調べろ」

 

「はい……」

 

「!」

 

 

 大柄の男が呼び掛けた先、俺の後ろに立っていたのは、声からして少女だった。

 今は地面に伏せているから姿はわからんが……、さっきこの男と一緒に居たアークスだ。

 仮面の男との戦闘で気付かなかったが、もうここまで近付いてきてたのか。

 しかし、一体何を頼りに……?

 

 

(あ、そうか。あの時打ち上げられたフォイエ)

 

 

 信号弾というわけではないが、上空のあの爆発は遠くからでも見えた筈だ。

 探知範囲内に入っていたこの二人なら、尚更。

 それで異常を察知したと。

 

 

「……?」

 

 

 スクリーンを呼び出してアークス内の情報を探っているらしかった、シーナと呼ばれた少女から首を傾げたような気配。

 

 

「……あの、ゲッテムハルト様。そちらの方の情報、どこにありません」

 

「何?」

 

 

 その言葉に、思わずシーナの方を振り向いた、ゲッテムハルトと呼ばれた大柄な男。

 仮面の男はその隙を逃さず、鋼拳を弾いて鍔迫り合いを解除した。

 

 

「ちぃッ!」

 

 

 苛立たし気にゲッテムハルトは裏拳を繰り出すが、バックステップで逃れる仮面の男。

 そして、仮面の男はそのままひとっ飛びに跳躍して、森の中へと消えて行った。

 

 

「……ちっ、逃げやがったか。中々楽しめそうだったってのに」

 

 

 興が冷めたようにそう言う。

 あの野郎は……やっぱり速いな。もう探知範囲外に消えやがった。

 装備した鋼拳を懐に仕舞うゲッテムハルト。

 

 

「つ、次から次へと、なんなんだよ一体……」

 

「……アフィン。大丈夫だったか?」

 

「あ、ああ。なんとか。相棒こそ大丈夫か?」

 

「こっちもなんとか、回復してきたってところだ」

 

 

 横側に蹴飛ばされたアフィンは、腹を押さえながらこちらに歩み寄ってくる。

 俺も、レスタによる自己回復もあってなんとか身体を起こした。

 ……くそ。あんなヤクザキック一発で、すぐには立てなくなるとか。どういう脚力してやがんだ。

 こちらに歩み寄ってくるゲッテムハルトと、その後ろに控えるような位置に歩くシーナ。

 

 

「よォ、そこのオマエ」

 

「はッ、はい!?」

 

「テメェじゃねぇよ! 黙って端っこで震えてろ!」

 

 

 呼びかけられ、素っ頓狂な声を上げるアフィンに、容赦ない罵声。

 ゲッテムハルトは、顔の左半分のほとんどに刺青を彫ったヒューマンだった。

 筋肉の塊と言える肉体に、目と目の間を通るよう、左から右下がりにつけられた傷跡。まさに野性味溢れる男だと言えよう。

 そして、シーナと呼ばれた少女。

 こちらはかなり小柄で、ゲッテムハルトはおろか俺達と比べてもかなり小さいニューマンだ。

 身体の各パーツは身長と釣り合わないそれだったが、それも目元を覆う程に伸びた緑の前髪のせいで根暗なイメージを作り上げてしまう。

 高速戦闘に向かないような大きな帽子からして、恐らくテクニック職だ。

 

 

「オマエだ、オマエ。今のヤツ、オマエを狙ってたよなぁ? あいつは何だ、ナニモンだ?」

 

「……その前に、先にありがとうって言っとくよ」

 

 

 素直にそう言う。

 実際、この男の横槍がなければ、確実に俺は死んでいただろう。

 あの感じからして、死体さえ残ったか怪しい。

 ……命令口調のコイツに感謝するのは癪だが。ものすごい癪だが。それでも恩知らずではいたくない。

 

 

「んなことはどーでもいい! 聞かれたことだけに答えろ!」

 

「……アイツに関しちゃ、俺の方が聞きたいくらいだよ」

 

「わからないってか? しらばっくれても、いいコトはねぇぞ?」

 

「しらばっくれるも何も、俺に分かるのはアイツが何故か俺に殺意を向けてきたこと。あと、半端じゃない強さだってことだ。あんたも相当だが、あの野郎は六芒均衡よりも強い。それだけだ」

 

「…………」

 

 

 訝し気に俺を見るゲッテムハルト。

 ったく。俺は男に見られる趣味なんかねぇんだよ。

 美少女を気付かれない程度で舐め回すように見る主義だ。

 

 

「……ふん、その様子だと本当に知らねェみてェだな」

 

 

 それでもなお、俺を見てくるゲッテムハルト。

 

 

「雰囲気はイイ感じだが……弱い。オマエとヤるのは、まだ早そうだな」

 

「……そりゃ、あいつと比べりゃそうだろうよ」

 

 

 ……くっそ。

 見下されてるって分かってるのに、あのザマじゃ何も言えねぇ。

 

 

「それにしても、六芒の野郎共より強い、ねぇ……くふふっ」

 

 

 堪え切れないという風に笑うゲッテムハルト。

 まるで、極上のごちそうを見つけた肉食獣かのようだ。

 コイツの醸し出す雰囲気が、余計にそうさせる。

 

 

「……信じられないかもしれないけど、本当なんです。相棒の見立てだと、あのレギアスより強いって」

 

「ああ、それに関しちゃ疑ってねェよ。あの仮面野郎は、六芒なんぞよりよっぽど強い。()()()()あれなら、尚更なァ」

 

「…………は?」

 

 

 弱、ってた……?

 あの男が……?

 

 

「気付いてなかったのか? 手加減してたわけじゃねェが、ありゃ相当でかく戦った後だ。恐らく、あの野郎と同じくらい強ェヤツとな」

 

「そ、そんな……それじゃあ、あんな奴がもう一人いるってことに……」

 

「そォだ。あそこまでうまそうなヤツが、もう一人いる。考えただけで涎が止まらなくなるだろォがよ。クハハハッ!」

 

 

 楽しそうに、狂おしそうに嗤うゲッテムハルト。

 コイツ……おかしいとは思っちゃいたが、想像以上の戦闘狂だな。あんな奴が二人もいるとわかって、笑うとか。

 リサさんも狂ってると言えば狂ってるが、コイツはベクトルの違う狂い方だ。

 ゲッテムハルトはひとしきり笑うと、背中を見せて歩いていく。

 

 

「帰るぞ、シーナ! とろとろすんな!」

 

「はい、ゲッテムハルト様」

 

 

 乱暴な物言いに嫌な顔一つせず、シーナは答える。

 その背を追う前に、こちらへと一礼。

 

 

「……それでは、ハクメイ様。失礼いたします」

 

 

 ……さっき調べた時に知ったのか。

 向こうはあんななのに、礼儀正しい奴だ。

 過剰なまでに。

 

 

「ああ、じゃあな」

 

 

 それを聞き届け、二人は去って行った。

 訪れる静寂。

 

 

「……はぁ、なんなんだよ一体。なんかどっと疲れちまった。世界って広いんだなぁ、相棒」

 

「……あぁ」

 

 

 アフィンの言葉に、頷く俺。

 俺達も再び、声の主を探しに歩いていく。

 

 

(……負けた)

 

 

 今まで常勝無敗というわけじゃない俺だが、それでもここまで完膚なきまでに負けたのは初めてだ。

 屈辱。

 歯を噛み砕いてしまいかねない程の怒りが込み上げてくる。

 

 

(あの仮面野郎……。この屈辱は、いつか億倍にして返してやらぁ)

 

 

 静かに激しく、俺の胸の内で炎が渦巻いていた。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 疲労故に、俺達の行軍速度はスローペースになっていた。

 それでもこうして休憩せずに歩いているのは、未だに俺を引っ張るような感覚が続いているからだろう。

 道行く中で立ち塞がるダーカー達は、テクニックで消し飛ばしている。

 八つ当たり気味に。

 こうして発散していかないと落ち着かないのが情けなくて、余計にあの仮面野郎に対する怒りが込み上げてくる。

 

 

「……はぁ」

 

「相棒、どうだ?」

 

「だーめだ。探知には何の反応もない」

 

 

 目一杯拡げて、細心の注意を払っても、未だにそれらしき反応を捉えることが出来ない。

 本当にあんな声が聞こえたのか。

 ただの錯覚だったんじゃないかと、台無しなこと思いつくようになってくるくらいだ。

 

 

「こうなると、むしろ俺の探知より、お前の感覚に頼った方がいいかもな。探し物は得意だろ?」

 

「そう言われたって、相棒の探知で見つからない奴を俺がどうやって―――ん?」

 

 

 こちらもこちらで辺りを見回していたアフィンが、唐突に動きを止める。

 何かを見つけたように。

 

 

「お、おい相棒! あそこ! 人が倒れてるぞ!!」

 

「マジか!?」

 

 

 駄目元で言ってみただけなのに、もう見つけたのかよ!

 アフィンが指差す方向に走っていく。

 確かによく見れば、草叢の方に人間の足のようなものがちらりと見える。

 背の高い草叢を掻き分けていくと、そこには―――。

 

 

 

 

 

 白い装束を身に纏った、白い髪の少女がうつ伏せに倒れていた。

 

 

 

 

 

「……誰だ?」

 

「女の子? アークス、って感じではないよな。大丈夫なのか、その子。なんで、こんなところに……」

 

 

 アフィンが状態を確認しようと近付く。

 が。

 

 

 

 バチィッ! と。

 弾かれた。

 

 

 

「なっ!?」

 

「うわっ!」

 

 

 アフィンの手が、電撃を纏った何かに弾かれていた。

 電撃自体は静電気にも満たないようだったが、突然のことに思わず下がるアフィン。

 ……なんだこりゃ?

 

 

「な、なんだよ。この子の周りに、見えない何かが……」

 

「……結界だな」

 

「結界?」

 

「ああ。どうやらフォトンで形作られた結界だ。多分この子が俺の探知に引っ掛からなかったのも、これが探知を阻害してたからだ。現に今も、俺の探知の中じゃこの子はいないことになってる」

 

 

 いないというか、大気中のフォトンと反応が変わらないようにされている。と言えばいいか。

 ……こうしてるとシオンを思い出すが、あれは探知に関わらず、気配が希薄だった。

 この子は気配はそのまま。探知に反応しないだけになっている。

 彼女は意識を失っているようで、生きている感じはするが、衰弱してはいるようだ。

 

 

「阻害って、なんでそんなこと……。まるで相棒に見つかってほしくないみたいに」

 

「それもあるだろうが、主な理由はこの子を守る役目だろう。さっきみたいに外敵を弾くように、な」

 

「それじゃあ、どうするんだ? このままじゃ保護も出来ないよな」

 

「……まぁ、問題ないだろう」

 

 

 今度は俺が、結界に手を翳す。

 

 

「俺がこの結界を解除する。多分攻撃すりゃ割れるんだろうが、そうするとこの子が危ないからな」

 

「そっか。気を付けろよ? いきなりビリっと来るからな」

 

「お前と同じヘマするかよ」

 

 

 さて、まずはこの結界の解析からだな。

 結界に触れて、内部情報を探――――――

 

 

 

 

 

『待ってたわ、ハクメイ』

 

 

 

 

 

「は?」

 

 

 結界が消えた。

 

 

「……………………」

 

「? 相棒?」

 

 

 割れるとか、そのまま消える感じじゃない。

 まるで、俺の中に吸い込まれるようにして消えた。

 いや、それ以前に、なんだ?

 誰だ? 今の声は。

 

 

(シオンとも違う。助けてと言っていた、恐らくこの子の声とも違う。別の女の声)

 

 

 それも、俺の事を知っていた。

 だが俺には、全く聞き覚えの無い声。

 

 

「相棒? 相棒ってば」

 

「……結界は消えた」

 

 

 アフィンにそう言い、倒れる女の子の前で膝を折る。

 呼吸はしている。心拍も問題ない。

 だが、早く連れて帰った方がいいだろう。

 念の為にここで一応軽く調べておいた方がいい。

 そう思い、うつ伏せの彼女を抱え起こす。

 

 

「この子は俺が背負っていくから、お前は援護を――――――」

 

 

 そして顔を見た瞬間。

 言葉が途切れた。

 

 

「…………相棒?」

 

「……………………」

 

 

 

 

 

 何この子めっさ可愛いんだけど。

 

 

 

 

 

 




満を持して、正妻登場。

ハクメイが見惚れたのは確かですが、一目惚れではありません。
念の為。
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