PSO2 ~煌々たる白明~   作:クビキリサイクル

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【Episode1-2】 『不測の予測が見せるもの』
記録とは塗り替えられるために存在している


 

 

 

 

 オラクル。

 それは宇宙を自由に旅する巨大な船団。

 その中で、わたし達アークスはフォトンという力を操る事ができる者の宿命として、そして、この星々と生まれてくる命の為に、各々の胸の内にある正義に従い、宇宙を蝕む存在『ダーカー』と戦っていた。

 わたしはあの頃、わたしから全てを奪ったダーカーを殲滅するために存在していた。

 あなたに導かれたのは、その美しいフォトンに……引き寄せられたのかもしれない。

 

 

 

 誰よりも自分勝手で、意地悪で、強欲なあなたに。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 サポートパートナーというものがある。

 文字通り、アークスを支援(サポート)する相棒(パートナー)のような存在、と考えていい。

 姿(ナリ)はアークスのようなものだが、身長が小さく、平均的なアークスの半分から三分の一くらいしかない。

 主な役割は、アークスが任務に出ていて疎かにしがちなマイルームの生活における身の回りの世話。炊事洗濯掃除なんでもござれだ。

 そして驚くべきことに、サポートパートナーは戦えるのだ。

 アークスと同じようにフォトンを操り、武器を扱って、ダーカーを殲滅することが出来る。

 じゃあそのサポートパートナーを大量に作ってダーカー殺しとけば、アークス何もしなくていいじゃん。と考えるだろうが、そう簡単にはいかないのが世の常。

 サポートパートナーは、作るのに時間が掛かるのだ。

 マネキンのような素体さえあれば、後は外見のデータをアークスが個人個人で好きなように設定していけば出来上がりなのだが、その素体を作るまでが長い。ダーカーにやられる数より量産する数の方が多い、なんて体制になるには、まだまだアークスの技術は発展途上というわけだ。加えて言うなれば、サポートパートナーはアークスに比べて弱い。フォトンを操ることに関しては一般のアークスとそう変わりないのだが、戦闘の勘や肉体的成長に関して、機械であるサポートパートナーは及ばないのだ。

 キャストも機械の身体ではあるが、人格や感情を伴っていないサポートパートナーとはまた別物である。というか、キャストって元は別の種族が機械の身体に改造された存在だし。純粋な機械であるサポートパートナーとは違って、元々ヒューマンやニューマンなどといった肉体を持っていたのだ。20年くらい前に突然生まれ始めたデューマンは、最近過ぎてキャストにするにも足踏みしているってところだろう。

 デューマンとは、ヒューマンに角が生え、身体に紋様が浮かんだ、オッドアイの種族だ。

 まだまだ馴染み深いと言えるような歴史は無いのと、その特徴によって敬遠されがち。しかし、アークスになれる人員を輩出する比率は、他種族が3割にも満たないのに対して、デューマンは実に10割。希望すればその全員がアークスになれる優秀な種族である。

 話を戻すか。

 で、サポートパートナーなのだが。

 

 

「おはようございます、ハクメイ様」

 

 

 マトイと出会った翌日。

 いや……三日後なのか? でも時間遡行した時、マトイはずっと寝てたし。わからん。

 とにかく、申請していたサポートパートナーがマイルームに届いたのだ。

 外見はアークスが個人個人で好きに設定できると言ったが、大半のアークスはオススメセットをそのまま、もしくはちょろっと改造していくのがほとんどだ。それで過ごしてみて気に入らなければ、順次変えていくという手法を取るのだが。

 俺は始めから凝った。

 凝りに凝りまくった。

 アークスになる前から設計を繰り返し、実際に設定する時にも微調整して試行錯誤し、設定する声も多分一生分くらいの声を聴き、一番気に入るものを選んだ。

 イメージは、従者。

 サポートパートナーらしく俺に付き従い、命令を忠実に実行する、完璧な女従者だ。

 え? 当たり前のように女だなって? そりゃそうだ。ちっちゃくて愛でられるサポートパートナーを、何が悲しくて男にしなきゃいけない。

 種族はヒューマン。髪はストレートロングの黒。瞳の色はエメラルド。顔つきは鋭くも柔らかくもなく。身体つきは豊かだが、スラっとした面も忘れずにバランスよく。

 素体名『ハルカ』。

 それが俺のサポートパートナーである。

 

 

「サポートパートナー『ハルカ』、只今ご到着いたしました。本日よりハクメイ様のサポートをさせていただきます」

 

「……ああ。よろしく頼むよ」

 

 

 起床し、俺の枕元に立つハルカの頭を撫でる。

 

 

「お前にはこれから存分に働いてもらわなきゃいけないからな」

 

「お任せください。私はサポートパートナー。貴方様のお役に立つことこそ、唯一の喜びです」

 

 

 ……そういう風にオラクルに設計されてるってだけなんだがな。

 まぁいいさ。

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「早速ですが、ハクメイ様にメールが届いています」

 

「メール?」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「ハクメイさん、よく来てくれました!」

 

 

 俺は、ショップエリアにて一人の管理官に呼び出されていた。

 美人のお姉さん、である。

 赤い髪を七三分けにして、後ろで編み込み状に纏めていて、職務に真面目感がありありと出ている。かといって近寄り難い感じはなく、むしろ柔らかい雰囲気だ。胸の大きさは並くらいだが、スタイルは良い方。

 マトイを見た時程の衝撃はやってこないが、間違いなく俺が出会った中で上位に位置する女性だと言える。

 そんな美女が、姿勢を正して俺を待っていた。

 なんつって、待ち合わせは俺だけじゃないんだけども。

 

 

「初めまして。確かセラフィさん、でしたっけ」

 

「はい。アークス管理官のセラフィと申します」

 

 

 ぺこりと一礼される。

 

 

「メールでもお伝えしたかと思いますが、あなたにアークス本部より、チームを組んでの特例が発令されました。そして、そのチームのリーダーをあなたにお願いしたいのです」

 

「特例、ねえ。なんだって本部様が、新人アークスの俺に目を付けたんだか」

 

「あなたは士官学校時代より、様々なクラスを扱って戦うとお聞きしています。これから新技術を導入するにあたって、ハクメイさんのように枠に囚われない方が適任なのだと判断されたのだと思います」

 

「……新技術」

 

 

 新技術。

 そう、新技術なのだ。

 アークスが開発したという新技術を、俺がいの一番に扱えるというのだ。

 試験的な導入とは聞いているが、アークスがそれを扱うということは、その活動に役立つ何かだろう。

 どういったものかはまだ聞いていない。

 開けてビックリのプレゼント待ちってことだ。

 

 

「きっとあなたなら、チームをまとめ、任務を成功させてくれると信じていますよ」

 

「ま、やったことはありませんがね。頑張りますよっと」

 

 

 俺のことをどれだけ知っているのやら。セラフィさんは期待を込めてそう言う。

 で、今回俺の部下という形で、チームメンバーがこれからやってくるというのだ。

 俺が申請していたチームとは違い、新技術の為のお試しチームとのこと。

 どんな奴かは聞いていないが……俺のチーム発足の予行演習と思って、ちっとの間面倒見ますかね。

 

 

「では早速ですが、共に戦うアークスを紹介させていただきますね。ジェネちゃーん!」

 

 

 セラフィさんが遠くにいる誰かを呼ぶ。

 俺もそちらの方を見てみた。

 その誰かはセラフィさんの声に気付いた様子で、こちらに走ってくる。

 シルエットがどんどん明確になり―――って、え。ちょっとなにあれ。

 この距離でもわかるくらいの揺れ方なんですけど。

 ばるんばるんしてるんですけども。

 

 

「ハクメイさん! 初めまして」

 

「…………」

 

「わたし、ジェネって言います。よろしくお願いします」

 

 

 礼儀正しく、ぺこりと頭を下げる少女。

 凄まじかった。

 可愛さも凄まじいけど、それ以上にある特定部位が凄まじかった。

 少女―――ジェネは、俺と同期らしき、同い年くらいのアークスだ。

 金髪のツインテール。それに前髪と左のテールに一房ずつ緑のメッシュが掛かっている。髪飾りにヘッドギアを着けていて、キツネの耳のようにも見える。瞳の色は海のようなサファイア。顔立ちはほんわかとしていて、優し気な印象。服装は白の面積を多めに、緑と黒の部分も所々にある、スカートの丈が非常に短いものだ。背中には羽根のようなマントを着けていて、足と腕には保護具のような黒いガードを着けている。

 で、だ。

 その胸部が凄まじかった。

 何が凄まじいって、サイズがだ。

 俺が出会ってきた女ベスト1のサイズは一昨日に会ったパティだったのだが、その記録が今日塗り替えられてしまった。

 いやほんと、なんつー大きさだよ。

 しかも俺と同い年くらいってことは、これがまだ成長する余地を残してるってことだろ?

 末恐ろしい。

 

 

「あなたの噂は聞いていました。主席卒業者の、すっごく優秀なアークスだって。共に宇宙の平和の為に戦えるなんて、とっても嬉しいです!」

 

 

 俺の視線にまるで気付いた様子は無く、ジェネは笑ってそう言う。

 ……こんな兵器みたいな凶悪ボディなのに、無防備過ぎませんかねぇ。

 しかしそんな思考はおくびにも出さず、俺は落ち着いて挨拶をする。

 

 

「おう、よろしくな。別にそんなかしこまんなくてもいいぜ。俺もジェネって呼び捨てにするし」

 

「ありがとうございます!」

 

 

 笑顔で応えられるが、敬語は変わらない。

 多分その口調で染み付いてしまっているんだろう。それなら別に無理に変えることもない。

 

 

「一緒に頑張りましょうね。優しそうな人でよかったです」

 

「…………」

 

 

 その優しそうな人に割とゲスい視線を向けられてたんですが。

 大丈夫かこの子。

 黙っていると、ジェネは俺の方に両手を差し伸べてくる。

 

 

「?」

 

「これからよろしくお願いします、の握手です!」

 

「ああ、そゆこと」

 

 

 両手だったからなんだと思ったわ。

 差し出された右手を右手で掴み、握手を交わす。

 ! ……こいつはまた、凄まじいな。

 握手した俺の右手を包み込むように、ジェネが左手を―――

 

 

「……あれ?」

 

「ん? ジェネ?」

 

「…………あの。もしかして、どこかで会った事ありますか?」

 

「は?」

 

 

 何を言っとるのかこの子は。

 そんな逆ナンテクみたいなこと言っても、俺には全く心当たりないぞ。

 

 

「さっき初めましてって言われた通り、これが初対面だけど? なんかあったか?」

 

「いえ、その……手を握った時、なんだかとても懐かしい感じがして……。気のせいでしょうか?」

 

「んー……悪いが、俺には全く覚えがないな」

 

 

 なんならこんなに柔らかい手、初めて握ったまである。

 

 

「おほん」

 

 

 置いてけぼりにされてたセラフィさんが、一つ咳払い。

 握手を解く俺達。

 セラフィさんに向き直ると、彼女はにこやかに笑う。

 

 

「きっとお二人なら、いいチームになれると思いますよ」

 

 

 皮肉とかはなかった。

 心からそう言ってる感じ……逆に気恥ずかしいなおい。

 

 

「早速ですが、チームを組むにあたり、お二人の適性をテストさせてください」

 

「テスト、ですか」

 

「はい。ナベリウスの森林エリアにて、原生種……と行きたいところですが、未だ大発生の余波があるのでダーカーを一定数討伐してきてください。その戦闘データより、適性を見させていただきます」

 

「了解です」

 

 

 本来なら原生種の討伐でテストしたかったんだろうが、ダーカーが溢れてるしな。

 ……そういや今更だけど。

 なんでこの人、旧式の管理官制服着てるんだろ。

 

 

「そんじゃ行くか、ジェネ」

 

「はい! 張り切っていきましょうー!」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 と意気込んでみても、そのまま任務と言う訳にはいかないので、一度解散して準備してから出発ということになった。

 俺は早々に準備を終えたので、集合場所であるゲートエリアに先に到着。

 さて、どうやって時間を潰そうか……。

 

 

「お」

 

 

 メディカルセンター前に行くと、マトイがいた。

 

 

「おっす」

 

「あ……ハクメイ」

 

 

 声を掛けると、マトイはこちらに気付いた。

 ……ジェネも大概だったが、マトイもマトイで際どい恰好してるよな。

 ジェネの服装は、上部分は布面積自体は多いもののピッチリしてて胸のラインが一目瞭然。下のスカートは一度風が吹けばめくれてしまいそうな危うさがあった。

 対してマトイは、胸の中心に穴が開いていて下側の谷間が露出する形。腰より下に至ってはインナーが丸見えだ。水着だから恥ずかしくないもん、の法則なのだろうか。腕部分はぶかぶかの袖に包まれているから布面積は多い方だと錯覚しがちだが、大事な部分だけ露出していて、逆に際どい恰好に思える。

 

 

「えっと……あのう……」

 

「ん? どした?」

 

「う、ええと……その……がんばって、ね」

 

「? まぁ確かにこれから任務だけども」

 

「……あ、違った。違うの。先に、ありがとう、だった」

 

 

 胸に手を当て、マトイは言う。

 

 

「ありがとう、ハクメイ。わたしを助けてくれて……」

 

 

 ……助けた。

 助けた、か。

 不思議だよな、全く。

 時間遡行する前にそれっぽい話を聞いてた時は、どうでもいいかとか思ってたのに。

 助けてって、聞こえる筈の無い声を聞いてからは、そりゃあもう必死に助けに走って。

 途中あの仮面野郎に襲われようと、捜索を止めずに。

 訳の分からない何かに導かれて、こうしてこいつを助けたのだ。

 今こうしてみれば可愛い可愛いマトイを助けられてよかったと思えるが、そんなのを知らない時点であんな必死だったなんて、普段の俺からすりゃ考えられないことだ。

 助けを呼ぶ声の方に向かっても、あんなハイペースで走る事はなかったろうに。

 仮面野郎に襲われた後、少し休憩を挟むくらいはしたろうに。

 

 

「まず、それを言わなきゃいけないのに……。ごめんなさい……遅くなって」

 

「…………気にすんな。礼はちゃんと受け取ったからよ」

 

 

 言葉と、目の保養的な意味で。

 目に入れても痛くない可愛さとはこのことだろう。

 言わないけど。

 一部は目に毒だけれども。

 

 

「それと、お前を見つけた功労者のアフィンにも礼言っとけよ。あの金髪のニューマン……って言って分かるか?」

 

「……うん」

 

 

 ありゃ。

 頷きはしたが、なんだか気が進まないご様子。

 助けたのはアフィンだっておんなじなんだが、俺と何が違うのかね?

 

 

「マトイちゃーん」

 

 

 話していると、フィリアさんの呼ぶ声。

 マトイを見つけると、そちらに向かって歩いてくる。

 

 

「あ…………」

 

「あ、ハクメイさんもご一緒でしたか。これから任務ですか?」

 

「ええ。ちょいと待ち合わせしてるところでしてね。待ってる間にマトイを見かけたもんで」

 

「そうでしたか。マトイちゃんはこれから検査があるので。では、行きましょうか」

 

「…………」

 

「? マトイ?」

 

「……行ってくるね。……行ってらっしゃい」

 

「お? おう」

 

 

 マトイは黙ってフィリアさんの背へと付いて行き、メディカルセンターへと去って行った。

 俺にはちゃんと言葉を返したが、フィリアさんにはろくな言葉を返さなかったな。

 気が進まないのかね、検査。

 まぁ進んで検査されたいってのも訳が分からんが。

 

 

「っと、来たみたいだな」

 

 

 ちょうど入れ違いになる形で、ジェネがゲートエリアへやってきた。

 俺を見つけ、駆けてくるジェネ。

 

 

「お待たせしました! 退屈していませんでしたか?」

 

「うんにゃ。ちょうど話終わったところ。タイミング的には良かったよ」

 

「……話? 誰とです?」

 

「ま、それは終わった後にな」

 

 

 さて、お試しチームの出動と行きますか。

 

 

 

 

 

 




ヒロインはエロい恰好しなきゃいけない法則でもあるんですかね……?
セラフィさんは制服だけあって低露出ですけども、逆にエロさを強調してるようにしか見えないのです。デフォの立ち絵が二の腕で寄せてるようにしか見えないのです。

冒頭のジェネは結構酷評ですが、ハクメイはそんな人間です。
es本編のジェネは欲望について悪いように語っていますが、果たしてこちらではどんな風に成長していくのか。



ep1-1の章タイトル、編集しました。やっぱうろ覚えのまま付けたらあかんね。

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