「ふーん。ジェネはファイターの両剣使いなわけだ」
「はい。ハクメイさんはあらゆるクラスを扱うと聞きましたが、今回はどんなクラスに?」
「俺はまぁ、ファイターメインで、サブにテクターだな」
「え? もうサブクラスを解禁してもらったんですか?」
「俺のクラスを万遍なく扱う姿勢が評価されたとかなんとかでな。今回みたいな特例なんぞも来るが、こういう特権は悪かねぇ」
「すごいです!」
「ふふん! そうであろう!」
俺とジェネはナベリウスに来ていた。
シップから惑星までの移動は、めんどいので省く。キャンプシップで二人きりだからって、何かするでも起こるでもなかったしな。
「セラフィさん。ダーカーの反応はどんな感じですか?」
本当は300m先に行ったところでダーカーが群れてるのは捉えてるが、それを口に出すわけにもいかない。
ちなみにルベルトとの通信は繋いである。
ジェネが同行する以上、晒してはいけない事項は通信の有無に関わらず晒してはいけないのだ。そんな状態で切り替えするのも面倒だし、ずっとつけっぱなしで行こうと思っている。ちなみにジェネには、ルベルトの依頼の旨は話してあるので、問題なし。
セラフィさんは、通信の先で俺の問いに応えた。
『はい! このままの道をまっすぐに突き進んだ先に、ダーカーの反応があります。強力な反応はありませんが、数は多数。気を付けてください!』
「この先に……ダーカーが」
隣のジェネが、右手に持った両剣をぎゅっと握り締める。
「ダーカーと戦うのは初めてか?」
「……はい。この前、ナベリウスでダーカー大発生があったことは知っています。でも、わたしは別の惑星で修了任務を終えたので、ダーカーと遭遇することはありませんでした」
「ふーん」
「ハクメイさんは、現場にいたんですよね? ダーカー……宇宙の敵は、どうでしたか?」
……この様子だとダーカーに何か思う所があるようだな。
差し詰め、両親をダーカーに殺されたってとこか。
アークスになるってので、そういう奴は多いからなぁ。
「ま、宇宙の敵って言われんのも納得って感じだな」
思想も知性も本能もなく。
ただ何かを浸食して、アークスを滅ぼす為だけに作られたような、純粋な害悪。
「強さ的には原生種とそう変わらんから、気負いすんな。なんなら最初は見学してたっていいぞ」
「いえ、そんな! わたしだって一人前のアークスになったんです! ダーカーを倒して、宇宙の平和を守るために!」
「そりゃ重畳」
アフィンと違って気後れした様子はないし、ちゃんと戦えそうかな。さて、それじゃあちゃんと連携を取っていく形でいきますか。
武器の装備は…………ダガーとタリスの組み合わせでいくか。並列起動を使えないから自作タリスは効果を十全に発揮できないだろうが、この前程度の個体なら問題ないだろう。右手でエレキを逆手に持ち、左手に自作武器のタリス、
(……?)
「ハクメイさん、どうかしましたか?」
「……いや、なんでもない」
心に浮かんだ疑問を打ち消し、前を見据える。そろそろダーカーの群れと接触する筈だ。戦闘前の打ち合わせはここらへんでした方が良い。
「俺が群れの上空にタリスを投げたら、戦闘開始だ。まずはジェネ、お前が突っ込め。その後ろを俺がカバーする」
「はい!」
本来ならリーダーの俺が特攻するべきと思うだろう。
だが、ジェネの実力は見ておきたいし、チーム戦なのだから全体を把握しながら戦いたい。その為のスプラッシュだ。気後れするようなら下がらせてもよかったけどな。
目に見えてきたダーカーの群れ。
ダガンが五体。カルターゴが一、プリアーダが二、か。
さて、あの凄まじいものを持っているジェネだが……戦闘は如何程のものか。
お手並み拝見といきますか。
「すぅー……」
ダーカーを見つけ、深呼吸をするジェネ。
吸った息を吐きだし、両剣をぐっと握った。
「……行けます!」
「じゃあ始めるぞ!」
ジェネの返事を合図に、俺はスプラッシュを群れの上空に投げた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ハクメイさんがタリスを投げたのを確認して、わたしはダガンに向かって走った。
ダガンを含めたダーカー達が、わたしに気付いて、一斉にこちらに意識を向けてくる。
(ダーカー……宇宙の敵)
わたしの両親は、アークスシップの市街地エリアに攻め込んできたダーカーに殺された。
優しい両親だった。父も母も。
戦う力はなくても、みんなの平和を守る為に、日々研究をする。そんな二人だった。
でも、殺された。
まだ小さかったわたしを残して、二人共。
だからわたしは――――――
(わたしと同じ想いをする誰かを、少しでも減らす為に……!)
ダーカーが戦闘態勢を整えるのを待たず、跳んだ。
一番近くのダガンが着地点になるようにして、
「サプライズダンク!」
ダガンに向けて、剣を振り下ろした。
兜割によって縦に両断されるダガン。それに留まらず、
衝撃波を受けただけでは倒せなかったけれど、仰け反りはした。その隙に二歩踏み込んで、ダガン一体に
「シザーエッジ!」
打ち上げの一撃で、ダガンを真上へと斬り上げる。
重力に従って落ちてくるのを、続く二撃の斬り上げで迎えて、ダガンは四つに分断。その姿を消す。
そして、目の前にはカルターゴ。
このまま攻め込みたいけど……。
(カルターゴは、正面からの攻撃に強いダーカー。羽根は硬くて、ロクにダメージを与えられない)
それでも力押し出来る人がいない訳じゃないけど、わたしはそうじゃない。
背中に回り込んで、コアを攻撃するのがセオリー。けど、今カルターゴの右に二体、左に一体、ダガンが控えている。
(こうなったら左のダガンを倒して、カルターゴの背中に回り込むしか…………っ!)
背中から、気配。
振り向くとそこには、プリアーダが地面スレスレを飛んで、わたしに突進してきていた。
上空にいたプリアーダが急降下して、攻撃を……!?
今からじゃ、防御が間に合わない。
「っ!」
来たる衝撃を予期して、思わず目を瞑ってしまった。
……けど、衝撃はやってこず。
代わりに、ゾンっと。
蟲を突き刺した音が耳に響いた。
「ボサっとすんな!」
「ハクメイさん!」
声を聞いて、目を開くと、そこにはハクメイさんがプリアーダの脳天を逆手に持ったダガーで突き刺した姿が。
最初に見た時から電気を帯びていたそのダガーは、次の瞬間には一際強い電撃を生み出し、プリアーダを感電させた。
全身に電撃を流されて、消えていくプリアーダ。
地面にまで刺していたダガーを引き抜いて、ハクメイさんは構え直す。
そして、わたしの後ろにいる、塔のような身体の上で光線を準備しているカルターゴを睨んだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ジェネが突っ込んだ時、二体いるプリアーダの内一体、俺が今刺し殺した奴とは違う奴は、ダガンエッグを産み出していた。
それが地面に落ちる前に、スプラッシュの機能を使って撃ち落としてやった。
スプラッシュは、拡散するタリス。
投げた後の操作によって、俺が望む数、最大10個までに分かれるのだ。分かれた後に飛んでいく方向も、俺が遠隔操作可能。今回はそれによって分かたれたタリスがダガンエッグに傷をつけた。
それだけの攻撃でエネミーを倒すようなものではないが、ダガンエッグは地面に刺さればエル・ダガンを産み出してしまうものの、エッグの状態なら少しの傷で霧散してしまう。なので、主に射撃を扱うクラスはひとまずダガンエッグを狙って撃ち落とすのがセオリーだ。
その後、ジェネに向かって走りつつ、ダガンエッグを産み出したプリアーダに、ゾンデで雷を落とす。
これで倒せはしないが、地面には落ちていく。
もう一体のプリアーダはジェネに突進しようとしていたので、後ろからエレキを振り上げ、脳天に突き刺してやった。
「ボサっとすんな!」
「ハクメイさん!」
ったく、安心すんのはまだ早ぇだろうが。
電撃をお見舞いして、引き抜いたエレキを構え直すと、カルターゴがジェネの後ろで光線を放つ準備をしている。
振り向き、避けるのは間に合わないと見たのか、ジェネはダブルセイバーを前に構えて、防御の体勢に入る。
カルターゴから遂に、光線が放たれようとしている。
が。
「ザン!」
「ギィッ!?」
風の刃でコアを傷付けられ、カルターゴの光線が霧散した。
スプラッシュは分散しようと、導具としての機能は生きている。
今回は分散させた時に、ダガンエッグを撃ち落とした分とは別に、カルターゴの背面に位置するようにスプラッシュの破片を飛ばし、停滞させていた。
こういう操作を演算して管理しなきゃいけないから、扱うのは難しい。しかし、使いこなせば便利なものだ。
(が、まぁ倒せねぇよな)
姿を消さないカルターゴを見据えつつ、その右に走る。
「左のダガンをやれ!」
「っ、はい!」
「レイジングワルツ!」
ジェネに指令を飛ばしつつ、
弾丸のように直進して、ダガン一体を斬り上げる。
霧散したダガンの隣で、もう一体のダガンが足を振るって、その爪で空中の俺を攻撃しようとしてくるが、その足を横に蹴飛ばす。
バランスを崩されたダガンの目の前に着地し、前足二本を纏めて斬り落として、その身体をコアごと踏み潰す。
左右の守りを失ったカルターゴの背後に回り込むと、反対からジェネが同じように回り込んできていた。
どうやら同時に終わったらしい。
ジェネが両手を振り上げる。
「たあっ!」
ジェネがカルターゴのコアに向けてダブルセイバーを振り下ろすのに合わせて、俺も振り上げるようにコアを切り裂いた。
二つの斬撃をコアに受けたカルターゴは、鳴き声を上げる間もなく霧散していく。
残ったのはプリアーダ一体だが……見ると、地面からそう飛び上がってもいないにも関わらず、プリアーダは攻撃の体勢だった。
プリアーダの遠距離攻撃として、ダガンエッグを産み出す場所と同じ腹の先端から毒液を吐き出すものがある。
見るからにそれをやる姿勢。
近距離戦をやりたくないのはわかるが……。
「そんな高さでやってもしょうがねぇだろうに。所詮は虫か」
空いた左手を向ける。
プリアーダが毒液を吐き出すのに合わせ、テクニックを発動。
「メギド」
闇の球体が左手から放たれた。
弾速は遅いが、相殺が目的だから問題なし。
球体と毒液が正面からぶつかり、じゅわっと溶けるような音を残して双方消えていく。
お互いの攻撃が消え、晴れた視界の先でプリアーダを確認すると、ジェネはダブルセイバーを投擲した。
「デッドリーアーチャー!」
回転しながら飛んでいくダブルセイバーがプリアーダに直撃した。
一度だけでは飽き足らず、プリアーダがいる場所で回転を続け、その身体を微塵に切り裂いていく。
やがてその身体が霧散したのを確認して、ダブルセイバーはジェネの手元に戻ってきた。
「お掃除完了っと」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
『こんなに息がぴったりだなんて、すごいです!』
ダーカーの群れを片付けて、一時小休止する俺達に、セラフィさんからの通信が聞こえてくる。
『お二人のチームワーク、バッチリでしたよ!』
「はぁ……っ、はぁ……よかった、です……っ!」
「まぁなんとかなるもんですね」
……なんとかなったはいいが、ジェネがちょいと疲れ過ぎだな。
あんな凄まじいもの抱えてるんだから、それも仕方ない……か。しかし、それにしちゃ……。
ジェネは息を整えつつ、こちらに話し掛けてくる。
「ハクメイさん。フォローしてくれて、ありがとうございます。助かりました」
「お礼は受け取るが、お前さっき目ぇ瞑ったな?」
「うっ」
「前衛に立ってて視界を自ら塞ぐのは自殺行為。今回はフォロー出来たからいいが、今後の課題だな」
「……はい」
しょぼん、と顔を俯かせるジェネ。
落ち込ませたようだが、死なれるよりはいいだろう。
だろうが……フォローしとくか。
「ま、カルターゴに正面から攻撃していかなかったのはよし、だ。ちゃんと勉強してんのな」
「あ……はい! ありがとうございます! わたしも、あなたみたいにもっと……」
「俺みたいに、もっと?」
「あ、な、なんでもないです!」
「中途半端に切るなー、おい」
さて、ダーカーの反応は捉えてるから、今度はそっちに……って。セラフィさんの案内なしで目標捕捉してたら不自然か。俺も慣れないとな。
セラフィさんが補足するまでは、ジェネももうちょい落ち着いてって、ん?
「ジェネ、右手」
「え? あ」
ジェネの右手の甲は、少し血が滲んでいた。
本人も気付いていなかったようだから、小さい傷のようである。
……俺が見ている内では傷付いてなかったようだし、あの時にでもダガンの爪が掠めたか?
「いつの間に……で、でもこれぐらい大丈夫です。放っておいても」
「レスタ」
問答無用で回復フィールドを展開。
ジェネの右手の傷が、小さいのもあってたちまちに塞がっていく。
「あ」
「そういう遠慮、ほんっといらない」
「で、でも……」
「回復薬使うなら話は別だが、一回テクニックを使うくらいで勿体無いとかないから」
「……はい。ごめんなさい」
右手を左手で包み込み、きゅっと抱きしめるジェネ。
なんでごめんって謝っといて嬉しそうな顔してるのか。
うーむ。
わからん。
(…………ん?)
探知に高速接近反応。
前の仮面野郎とは違う何かのようだが、こちらに向かってかなりの速度で走ってきていた。
いや……これ、一直線だよな。
まさか、飛んできてるのか?
この距離を、これだけの速度で?
「セラフィさん、何か反応ありますか?」
『え? いえ、特にはないようですが……あ! これは!』
「?」
果たして、その何かは目の前に現れた。
俺とジェネの前で、シュタッと。
砲弾のように飛んできて、何事もなかったように着地した。
男だ。
燃えるような赤をトレードマークにしたアークスの戦闘服に身を包んだ、狼のように蒼い髪を逆立てた野性味溢れるヒューマンの男だった。
「ふははははははははっ!」
立ち上がったと思ったら、急に笑い出した。
「え? え? え?」
困惑するジェネ。
「そこな行き交うアークスの君達! そう、君達だ、君達!」
「はぁ」
「見たところ、何かお困りの様子だな!」
「は?」
「だが安心するといい! オレが来たからにはもう解決だ! さあ、なんでも言ってみたまえ!」
えぇ……いやそう言われても。
なんだかあっつ苦しい男だな。
悪い奴ではなさそうなんだが、善意の押し売りってやつだろうか。
「あの……わたし達、特に困ってることはないです」
「いやいやまさかそんなそんな……え、本当にない?」
「は、はい。ないです」
「うーん……まいったな。こうノリが悪いのは想定してないぞ。こりゃ出直しかな」
まぁ強いて言うなら、俺が女の子の扱いに困っていたっちゃいたが……この男に言っても無駄だろう。
……それにしても、この強い反応。それにあのシンボル……まさか。
「あんたは?」
「あ、オレ? オレはヒューイ。アークス六芒均衡の六をやってるの」
「ろ、六芒均衡!? 六芒均衡って、あの!?」
「そうそう。あの偉い連中の一人」
驚愕の声を上げるジェネ。
やっぱりか。
小さいが、胸に花弁のマークがあった。そこには数字の6がオラクル文字で描かれている。六芒均衡が他のアークスと見分けをつける為に、コスチュームに着けるのだそうだ。
……威厳的なのはこれっぽっちも感じないが、感じる強さは本物だ。
マークがなくとも、只者でないことくらいは分かる。
「そう見えないってよく言われるけど、実際なっちまったもんは仕方がないんだよ。ほぼ強制だし」
「は、はぁ……」
六芒均衡は、アークス上層部に見初められるか、六芒均衡に推薦されるかで成ることが出来る。
団体か個人かの違いはあるが、どちらにせよ成るに相応しい強さを見せなければ、成る事は出来ない。
つまり、それだけの実力を有しているということだ。
創世器は装備していないようだが、恐らくアイテムパックに仕舞っているのだろう。
「……ま、オレのやる事は変わらずいつも通り、人助けにあっちこっち! それだけだから、文句もないさ!」
「それでいいのか六芒均衡」
「いいともさっ! しかし、君は肝が据わってて面白い奴だな! またいずれ会おう! それではっ!」
そう言って、ヒューイは一度しゃがみ込むと、跳躍した。
跳躍。
そう、跳躍で。
一瞬にして遥か彼方まで消えて行ったのだ。
「わぁ……ただのジャンプで、すごい飛んで行っちゃいました。あれが、六芒均衡。アークス最強の六人、なんですね」
「まぁ、四は長期空席。残り五人も、俺はレギアスと今のヒューイしか知らんけどな」
「……わたしも、いずれあんな風に強くなれるでしょうか?」
「それは知らんが」
あっという間に探知範囲から外れたヒューイの姿を見送り、俺は言う。
「少なくとも俺は、六芒均衡を超えていくつもりだぜ?」
「…………はい! わたしも、そのつもりで強くなります!」
ヒューイって最初見てるとただのギャグキャラにしか見えないんですが、後々見てて「何コイツカッコよ!?」ってなりましたね。とてもあのブラコンえいゆうと同じ声だとは思えません。正にヒーローです。
それに比べて三英雄の体たらくよ……おうレギアス、テメェのことだよ。(個人の意見です)
そういやゲッテムハルトの古傷って、ゼノと左右対称じゃなくて、十字傷なんですね。
まぁいいか。ゲッテムだし。