PSO2 ~煌々たる白明~   作:クビキリサイクル

17 / 46
才能なんて要は楽できるかどうかに過ぎない

 

 

 

 

『これで二人のバトルの適性試験を終了します。お疲れ様でした!』

 

 

 通信からセラフィさんの労い。

 ヒューイとの遭遇の後、幾度かの戦闘をした。ジェネは何度か危ない場面があったが、どれも俺のフォロー出来る範囲。結果的に俺達はほとんど傷を負わずに試験を終了したのである。

 まぁ大抵の怪我なら俺が治せるし。

 ジェネを見る。

 

 

「はぁ……っ、はぁ……っ、はぁ……」

 

 

 セラフィさんに返事も出来ない程に息も絶え絶えだった。

 怪我とかはないが、体力の回復となると継続的か集中的な回復が必要になるからなぁ。

 これから帰還だから、その必要もないが。

 

 

「うし、じゃあ帰るか。お疲れさん」

 

「はぁ……は、はい。お疲れ様でした」

 

 

 アイテムパックからテレパイプを呼び出し、足元に放ってテレポーターを出す。転移装置さえまともに動きゃ、これ一つで降りてきたキャンプシップに戻れる代物だ。

 テレポーターを起動して、元のキャンプシップへと転移する。

 シップの中の狭い空間に戻ってきたことを確認し、真ん中辺りに座って、書き物を始めた。

 少し遅れて、ジェネも転移してくる。

 

 

「それでは、帰りましょう……? ハクメイさん。何を書いているんですか?」

 

「ま、日誌ってやつだな」

 

「日誌、ですか?」

 

「俺がチームを作る時は、こうやって一日の出来事を紙に書き留めることを義務付けようと思っててな。当番制で。簡単に言えばメンバー間の交換日記みたいなもんだ」

 

「交換日記…………」

 

「データ入力の方がいいかもしれんが、紙媒体の方が秘匿性も保存性もあったりするしな。ま、今回はお試しチームだが、本当に作るチームに向けての練習……」

 

「じぃー…………」

 

「…………」

 

 

 めっちゃキラキラした瞳で見てくるんですがこの子。

 如何にも「交換日記っていうの、わたし憧れてたんです!」っていう顔だ。

 女の子はそういうの好きそうだもんなぁ。

 ああ、もう。

 可愛いなぁ、ほんとに。

 

 

「……今日の分はお前が書くか?」

 

「いいんですか!?」

 

 

 パァッと、花が開くように満面の笑みを浮かべるジェネ。

 いいも何も。

 ダメって言ったら泣きかねんくらいの期待感だったぞ。

 それはそれで見てみたい気もするが、笑ってもらった方が俺も気分が良い。

 日誌をジェネに渡す。

 白紙の本を買って、それにタイトル『チーム日誌』って書いただけだから、今消すようなものは書いていない。

 

 

「ありがとうございます! 今日の思い出、沢山書いてきますね!」

 

「次に書く俺のプレッシャーになるから、二言三言くらいにしといてくんない?」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 キャンプシップで開いていた反省会(と言ってもジェネから俺に言う事は無かったので、ジェネの反省点を上げる会だったが)を終え、俺達はゲートエリアに帰還した。

 一つ伸びをする。

 あー、そういやゼノさんもここでこうやって伸びしてたっけ。

 

 

「ハクメイさん。今日は、ありがとうございます。おかげでいつもよりのびのびと戦えました」

 

「ま、俺も前衛と組んだのはほとんど無かったから新鮮だったよ。アフィンはレンジャーだし」

 

「アフィン、さんですか?」

 

「俺の元ルームメイトな。金髪のニューマンなんだが、まぁその内会うこともあるだろ」

 

 

 さてと……マトイは検査終わったかね。

 

 

「これから出発前に話してた奴の様子見に行くけど、ジェネはどうする?」

 

「そうですね。それじゃあ」

 

「ハクメイ!」

 

 

 ジェネの言葉を遮るように、呼ぶ声。

 見れば、メディカルセンターの方からマトイが走ってきていた。

 今までにない程に活発な様子だ。

 俺達の目の前で立ち止まるマトイ。

 

 

「おかえりなさい。大丈夫? 怪我とか……」

 

「? おう、ただいま?」

 

 

 俺の身体を隅々までチェックするように見た後、隣のジェネを認識すると、マトイは黙ってしまった。

 ジェネもジェネで若干固まった様子。

 ? なんぞ?

 

 

「う……えっと……」

 

「…………か」

 

「か?」

 

「可愛いです……!」

 

 

 …………ほう。

 話が分かるじゃないか。

 ジェネはキラキラした瞳で、おどおどしているマトイを眺める。

 そんな様子も愛らしいのだろう。悶えるように身体をくねらせ始めた。

 男がやったらアレな絵面だが、美少女がやればそんな姿も可愛いものだ。

 

 

「あ、あの! わたし、ジェネって言います。あなたはマトイちゃん、でいいでしょうか?」

 

「うぅ……」

 

 

 少し興奮気味の自己紹介をするジェネに怯えるように、マトイは俺の背に隠れてしまった。

 横から少し顔を覗かせる体勢。

 

 

「あ……怖がらせてしまったでしょうか?」

 

「気にすんな。看護官のフィリアさんにもこうだし、お前が特別怖いってわけじゃねぇよ」

 

「? でも、ハクメイさんにはそうじゃないみたいですよ?」

 

「俺もその辺不思議でな。マトイ。こっちはジェネっつって、今日から俺がリーダーやるお試しチームのメンバー。見た目通りの人畜無害だから、噛み付いたりしないって」

 

「そうですよー。わたし、怖くありません。がうがうじゃなくてわんわんです」

 

「ぅ……」

 

 

 ジェネの必死の怖くないアピールも功を奏せず、マトイは警戒を解こうとしない。

 回り込もうとするジェネだが、マトイもそれに合わせて俺を盾にするように回る。

 再び回り込んでも、マトイも合わせて動く。

 そんなのを繰り返して、俺の周りを二人がぐるぐる回る形になった。

 なんだこれ。

 やがていたちごっこが終わり、ジェネは残念そうに言う。

 

 

「うぅ…………。しょんぼりです」

 

「んー。マトイも保護されて一週間経ってないし、時間が経てば警戒も解けてくると思うけどなー」

 

「保護?」

 

「ああ。ダーカー大発生の時にナベリウスで倒れてるのを、俺ともう一人で救助したんだよ。だからアークスシップの住民じゃなし」

 

「ええ!? だ、大丈夫だったんですか!?」

 

「保護した時は衰弱してたみたいだけど、今はこの通り」

 

「ほっ。良かったぁ……」

 

 

 自分のことのように安堵の息を吐くジェネ。

 ジェネといいフィリアさんといい、第一印象で無害ってわかるだろうに。なんでマトイは警戒してんだかね。

 俺には親鳥のように懐いているのに。

 悪い気はしないけれども。

 

 

「その……大丈夫?」

 

「ん?」

 

 

 俺の腕にしがみつくマトイが言う。

 

 

「余計な心配なら、ごめん……。でも、あなたはいつも戦ってて不安だったから……」

 

「ふぅん?」

 

 

 だから帰ってきた時、あんなに駆けてきたわけか。

 しかし……いつも?

 俺、そう言われる程マトイと会ってから長い間戦ってるか?

 

 

「わたし、待つだけしかできないから。……だから、心配だけは、させてほしい。やりたいことがあるのはいいことだ、って聞いたけど……無理をしちゃ、ダメだよ?」

 

「……心配は有難いが、それだけじゃちっと寂しいな」

 

 

 マトイの頭に手を置き、柔らかな髪を撫でる。

 

 

「今度は土産でも持ってくるから、期待もしといてくれ」

 

「……うん。ありがとう。……でもほんとに、無理はしちゃダメだからね?」

 

 

 それじゃあ、と言って、マトイはメディカルセンターへと戻る。

 向こうの方でフィリアさんが待っていた。多分、外出出来る時間が限られてるのだろう。

 その背を見送り、ジェネは感慨深く溜息を吐いた。

 

 

「可愛い女の子でした……。…………出来ればお友達になりたかったですけど、またの機会にですね」

 

「そうしてくれ。流石にこのシップで味方が俺一人って思ってんのも、マトイとしちゃ辛いだろう」

 

 

 次点でフィリアさんくらいか。

 

 

「さて。試験終わったら次の指令まで自由だそうだし、今日の所はお疲れさんだな」

 

「はい。お疲れ様でした!」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「おおっ、いいところに!」

 

「おん?」

 

「ちょいと一つ教えてほしいことがあるんだけど、いいかな?」

 

 

 ショップエリアに行くと、ウルクからそう声を掛けられた。

 相変わらずの活発さ、快活さだ。

 パティとはまた違うタイプである。

 まぁそれはいい。

 

 

「今は暇だから良いけど、なんか用か?」

 

「うん。ぶっちゃけ、フォトンを使うってどういう感じだったりするの?」

 

「感じ?」

 

「生地を練るような感じ? 流水を抑えるような感じ? んー、えーっと……」

 

 

 フォトンの扱い、か。

 それらとは違う感じなのだが……しかし。

 

 

「この前、才能ないから云々って言ってなかったか?」

 

「……いやさ、なんか感覚的にでもわかれば、わたしにも使えるようになったりしないかなーって……」

 

 

 ……ああ、そういう。

 要は、諦めきれないと。

 それもそうか。

 才能ないから諦めろって言われて、そう簡単に諦めるようには見えねぇもんな。

 簡単に捨てられる程、アークスの魅力は安くねぇもんな。

 

 

 

『あ、こ、こんにちは……。お元気そう……ですね』

 

 

 

『あの……すみません。質問なんですけど、どうやったらエネミーと戦わずに済むと思います?』

 

 

 

『アークスをやめる…………っていうのは確かにそうなんですけど。でも、ぼくにはこれしかなくて……。他には何も出来なかったけど、何故かアークスになれる適性だけはあったみたいで……』

 

 

 

『……ほんとうに、他のことは何も出来ないんで、アークスのままでなんとかエネミーと戦わずに……』

 

 

 

『……わかってます。そんなの無理、ですよね……。すみませんでした、失礼します』

 

 

 

 さっき会ったテオドールだって、そう言ってたからな。

 才能に満ち溢れようと、戦闘に消極的なテオドールだって。

 戦いたくないテオドールだって、アークスを捨てられないくらいに。

 

 

「……ああいや、気にしないで。他の人もみんな、なんとなくで使ってるって言ってたしね」

 

 

 俺が黙っているのを答えあぐねていると見たのか、ウルクはそう言う。

 

 

「多分、その「なんとなく」がわからないってのが、才能がないってことなんだと思う。……うー、残念だなぁ。とーっても残念」

 

「……才能、ね」

 

 

 嫌な言葉だ。

 所詮そんなの、楽して強くなれるかどうかに過ぎないのに。

 諦めて逃げる口実に容易く使う。

 出来ない奴が妬んで気軽に吐く。

 積み重ねた苦労を知らず。

 

 

「まー、ぐちぐち言ってもしょーがないよね。わたしはわたしで、別に出来ることを探しますか」

 

「……フォトンは」

 

「え?」

 

「フォトンは、大気中に漂う目に見えない粒子。それは知ってるな?」

 

「え、そりゃあ、うん。知ってるよ」

 

「肉体を構成する為に、体内にもフォトンが存在する。それも?」

 

「うん」

 

「この体内フォトンは、意識で操作できる」

 

 

 翳すように、右手を胸の高さへ持ち上げる。

 ウルクはその手を、首を傾げながら見ていた。

 突然何を言い出すんだと思っているだろう。

 俺もそうだ。

 何を突然教授なんか始めてるんだか。

 続けて言う。

 

 

「人間ってのは普段、自分の身体を隅々まで意識なんかしてない。でも、例えば右手。これを見ながら動かせば、当然意識はそこに向く。この意識があるところに、体内のフォトンは集まってる」

 

「……そうなの?」

 

「教科書に載ってるようなことじゃないけどな」

 

 

 どころか、これを知ってるアークスなんて俺くらいだろう。

 じゃなきゃ俺の技術なんざもっと流出してる筈だ。

 

 

「体内フォトンが集まった場所から、大気中のフォトンに干渉が出来る。そうしてアークスはテクニックを扱う。法撃武器を扱う時はその干渉を補助したり、増幅したりする。打撃武器は体内フォトンを武器に流して、大気中のフォトンを集めてそのままぶつける。射撃武器は弾丸に形を変えて、撃ち出す」

 

「ほうほう」

 

「ま、要はイメージだな」

 

 

 掌に大気中のフォトンを集める。

 集まって圧縮されたフォトンは、可視化する。

 それ程までに高密度のフォトンを見れるのは稀だが、俺に掛かればありふれたものに早変わりだ。

 「ああ、湧いて出るやつね」ぐらいの気軽さで。

 そうして、俺の右手には手の平サイズのフォトンの球体が浮かび上がっていた。

 驚き、見惚れたような顔でそれを見るウルク。

 

 

「綺麗……」

 

「意識して、体内フォトンが集まった場所から、イメージを大気中のフォトンに伝播させる。こうする場合は、大気中のフォトンに干渉して「俺の掌に集まれ」と念じた。イメージが電気信号となって、頭から意識している場所に向かって走り、そこからその信号を体外に送る。これがフォトンを扱うってことだ」

 

 

 球体を霧散させた。

 

 

「フォトンの適性、扱う力なんてのは、イメージ次第でどうにでもなる」

 

「イメージ、か。……じゃあ、才能がないってどういうこと?」

 

「才能ってのは、これの規模。フォトン感応力のことだ。こればっかりはどうしようもない。使ってりゃ増えてくもんだが、それも微々たるもんだ」

 

「え……」

 

「そこいくとお前は、最低ランク。才能ないってなら、それはそうなんだろう」

 

 

 目を見開き、その後顔を沈ませるウルク。

 ショックだろう。それはそうだ。

 何も教えてもらえず、ただ才能がないと言われるより、フォトンを確かに扱う俺に、理詰めで才能がないと言われるのは。

 しかし現実は変わらない。

 平均的なアークスのフォトン感応力に比べて、ウルクのそれは非常に小さい規模。

 テオドールともなれば、比べるのも烏滸がましい。

 

 

「が」

 

 

 が、しかしだ。

 

 

「俺が言ったことやっても、絶対に無理。なんて言える程じゃない」

 

 

 絶対に無理、と言えるような人間も、いないことはない。

 だが、ウルクはそうじゃない。

 やった結果駄目かもしれないが、やる前から駄目と決まったわけでもない。

 

 

「……ほんと?」

 

「ほんとかどうかは、やってみるしかねぇよ。駄目でも責任は取らん」

 

 

 ウルクに背中を向けて、去っていく俺。

 全く。最近らしくないことばっかすんな。

 なんで会って二度目の奴にこんな助言してんだか。

 ……あ。言い忘れてた。

 

 

「レッスン料はお前が稼いでからでいいよ」

 

「お金取るの!?」

 

 

 そらそうよ。

 

 

 

 

 

 




ハクメイは他のアークスとは一線を画していますが、天才かと言われるとちょっと違います。
まぁその辺の詳しい設定は後々。
うちのテオドールは色々パない感じになるので、ウルクと合わせて描写が増えそう。

ちなみに我が家のヒロインsはみんな仲良しなので、修羅場も女の戦いもありません。そういうのは他の作者に期待してください。平和が一番。
後々出てくる外伝(R-18)につけようと思ってますが、本編でもハーレムタグつけるべきかと思案中。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。