サポートチップの中身が出し入れ出来ないようになっているのは、エネミーを持ち運んで出してしまう危険を防ぐ為らしい。
それが故意であれそうでなかれ、無駄に危険性を広げるのは避けたい。なので、オラクル側でサポートチップにエネミーを入れた以降、アークス達の出し入れを制限することで、そのチップの使い道を限らせるというわけだ。
だが、ウェポノイドチップはウェポノイドの出し入れを制限していない。
どころかウェポノイドの意思でチップの中を出入り自由になっている程だ。
これは武器が擬人化した姿であるウェポノイド自身に人格が備わり、アークスに協力的であるからこそ。エネミーは出してしまえばチップ化させていたアークスと敵対するだろうが、ウェポノイドは自分の意思でアークスに協力しているのだ。故にチップの制限も必要ないのである。
ちなみにウェポノイドチップは、サポートチップと同じように、装備パレットに登録することでウェポノイドの力を一部引き出すことが出来るそうだ。エネルギーの変換効率はエネミーのものよりいいらしく、ウェポノイドがエネミーより弱くても、そのエネミーのチップよりウェポノイドのチップの方がアークスを強化することもあるという。
加えて、ウェポノイドもアークスと同じように戦う事が出来る。
体内フォトンの量もフォトン感応力も総じてアークスの平均より劣るそうだが、あくまで平均。中には下手なアークスより強いウェポノイドもいるとのこと。
擬人化した武器がどうやって戦うのかと思ったが、モアはその手にクレイモアを呼び出した。どうやらウェポノイドは、基になった武器を手にして戦うらしい。流石に元のクレイモアそのままだとモアの身体に合わなすぎるので、モアが持てるサイズのクレイモアだったが。
で、今な。
早速ナベリウスに降りて、モアの戦闘能力を確認する為にエネミーと戦闘を行ったのだが。
「……ふ、ふん! たいした、たいしたことないなっ!」
「…………」
「……モア? あれ? モア?」
戦闘が終わった時、モアはチップの中に入って俺の装備パレットに収まっていた。
……そりゃたかだかガルフが三体程度だから、大したことなかったんだが。
「ジェネ。ここだよ、ここ」
「ど、どうしてチップの中に隠れてるんですか?」
「ぷはぁっ!!! か、かくれてなんかないやいっ!」
チップの中から出てきて、モアは反論する。
「ちょ、ちょっと一休みしてたんだ! 子どもだからな! べ、べつに怖かったとかそういうわけじゃないんだ、から……な!」
「当然です! そんなこと思ってませんよ。共に戦う仲間に、臆病者なんかいるはずないじゃないですか!」
「……うぅ! そ、そんな、キラキラした目で見ないでくれってば!」
「そうだな! 俺達みんな勇気ある戦士だもんな!」
「リーダーはわかってて言ってるだろ!!」
まぁ、こんな調子なわけだ。
降りてすぐの内は勇んで前を歩いていたモアだが、ガルフが茂みから襲い掛かってきた時はすかさずチップの中に入りやがった。
ガルフ三体はジェネが一体、俺が二体を間髪入れずに狩ったが、モアの戦績は0である。
一応微力ながら俺の強化は為されたので足を引っ張ったわけじゃないが、これじゃあ何の為にナベリウスに降りてきたのか。
「マトイが言ってたとーりだな。いじわるだ、リーダーは」
「そらすまんね」
ちなみにモアの俺に対する呼び方はリーダーで決まった。
最初呼び捨てだったが、なんかムカついたので変えさせ、かといってかしこまってさん付けで呼ばれても気持ち悪かったので、敬いつつさん付けにならない呼び方である。
ジェネも俺の呼び方を考えてたようだが、名前を呼ぶのは変えてほしくないところだ。
「さて、気を取り直して先に進みますかね」
「はい。セラフィさん、ここから凍土エリアまではどれくらいでしょうか?」
『まだまだですね。方向は間違っていませんが、相当な奥地になります』
今回の探索は、モアの諸々の確認の他に、ナベリウスの森林エリアから凍土エリアまでに行動範囲を広げる為のものだ。
ナベリウスの惑星全体の気候は滅茶苦茶で、暖かな森林エリアと凍てつく凍土エリアとが山を隔てて存在している。凍土エリアはまだ俺達は行ったことはないが、一面雪景色で、吹雪くこともあると聞く。森林エリアのど真ん中からそこを目指し、辿り着いて幾らか探索したら帰還する。森林に慣れつつ、凍土を目指すというわけだ。
わけなんだが……。
「…………はぁ」
「なんかしっけくさいな、リーダー。なんかあったのか?」
「湿気の臭い漂ってる? 俺から」
「そ、そんなことないですよ! モア! 根も葉もないこと言っちゃだめです!」
「ぅえ? オレ、なんかまちがったか?」
「悪気0なら、言葉選びを間違ったよ」
まぁ辛気臭いのだったら、俺も認める。
認めざるを得ない。
これから先を歩くのを思うと、気が重くなるからだ。
何せ、このまま行くとゲッテムハルトと遭遇するからだ。
お付きのシーナとやらとも一緒のようだから幾らか緩和されてるようなもんだが、一本道だから逃れることも出来ないしなぁ。
やだなぁ。
嫌いなんだよなぁ、アイツ。
「ん?」
また新たな反応。
このスピードと大きさ……あいつか。
「? リーダー、立ち止まってどうしたんだ?」
「モア、そこで止まっとけ。踏まれるぞ」
「踏まれる?」
俺の方を見ながら先に進んでいたモアが立ち止まる、というか飛び止まると同時に、その目の前に着地した。
ヒューイが。
前回と同じように遠方から一っ跳びでやってきた。
「うわぁぁぁあああ!!!」
急に空から目の前に着地したヒューイに悲鳴を上げ、モアはこっちに慌てふためきながら飛んでくる。
そのまま俺のデバイスのチップの中に入った。
……こいつ、この先ちゃんと戦えるのかな。
武器の強化に使うグラインダーを与えればウェポノイドは強くなれるそうだが、戦闘性能以前に肝っ玉が小さすぎると思うの。
これから経験を積み重ねて成長するのを期待するしかないか。
「ふはははははははは! そこな行き交うアークスの君達!」
「は、はいっ」
「オレの名はヒューイ! 六芒均衡の六をやっている!」
……この前も聞いたけど。
「……ん、んん? 何故だ、君達とは会ったことあるようなないような、そんな違和感を覚える。会ったっけ?」
「つい一昨日」
「まあ、細かいことは気にしない! それよりも人助けだ人助け! 何か困っていることはないか!」
流すなや。
会った奴全員の顔を覚えろとか言わんけどさ。
困ったことかー。
この先にいるゲッテムハルトを追っ払ってきてくれって言ったら、聞いてくれんのかね。
「六芒均衡になっても、オレには人助けぐらいしかできないし、他にやることもないしな!」
「そうなんですか?」
「六芒均衡と言ってもそんなもんだ! 結局やれることは人一人のもの! 両手に余る事は何もできない!」
「そらそうだろうが、そんなこと声高々に言われても……」
この男の平常運転とはいえ、胸を張り過ぎだろう。
まー、六芒均衡になったから部下を持たなければいけないってわけじゃないしな。そもそも六芒均衡自体が、一のレギアスをリーダーとした一つのチーム。六芒均衡じゃない奴に命令は出来るけど、指揮下に置く置かないは自由だ。アークス一斉参加の大規模任務でもありゃ話は別だが、んなもん十年前の大襲撃からめっきりだしな。
「力の強さで六芒均衡に選ばれるのは、生存率が高いかどうかを見てるわけだ! 士気向上の旗印というわけだ! うん!」
「成程……そうなんですね」
「お前ちゃんと士官学校出たの?」
「むっ、困っているフォトンを感じた!」
ヒューイは彼方の方角を見る。
困っているフォトンって何?
「それでは、オレは行く! また会おう!」
そうしてまた一足飛びで、ヒューイは去って言った。
「まさしく嵐のような奴だな……モア、もう行ったぞ」
「ぷはぁっ! す、すっげーうるさい奴だったってば……」
「そ、そうかもしれないですけど……でもいい人だと思いますよ?」
「空回ってる節はあるけどなぁ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
「なぁなぁ、エネミー以外にも、ダーカーってやつもいるんだろ? どんな奴なんだ?」
もうすぐあんにゃろうと遭遇するという所で、モアがそう聞いてきた。
「モアは、ダーカーを知らないんですか?」
「ウェポノイドって事前に予習とかしないわけ?」
「う、うっさいな! 教えてくれなかったんだから、しょーがないだろ!」
「では、わたしが教えてあげますね!」
怒るモアを置いて、ジェネの講座が始まる。
六芒均衡の体制についてもさっき勉強してたようなジェネだが、果たしてダーカーに対してはどれだけ知識があるやら。
「エネミーには、さっき戦った原生種だけでなく、ダーカーと呼ばれるものがいます。ダーカーというのは、宇宙のいろんなところにどこからともなく現れるのです!」
「ふんふん」
「ダーカーは生き物にも機械にも浸食して、悪さをします。だから、アークスだけじゃなくって、全ての生物にとって良くない存在なのです」
「ほー」
昨日パティエンティアにも「とーっても大事な情報」と言われて話をしたが、ジェネもちゃんと勉強してるようだ。
ダーカーに浸食され悪さされた、凶暴化させられた生物は通称「浸食種」「ブーストエネミー」と呼ばれる。ダーカーの卵である浸食核が体のどこかに寄生しているのが特徴だ。生物が自らの身体を傷付けない為に、普段から無意識に掛けている身体的リミッターを外したのか、その力は強い。と聞いているが、その辺りのメカニズムは詳しく解明されていない。
そもそも、内側に溜まった筈のダーカー因子の塊である浸食核が、何故外側に出てくるのか。
その辺も含めて謎が多い。
「そしてーっ!」
キリっとした表情でジェネは語る。
「ダーカーを倒すことが出来るのは、フォトンを扱うことが出来る、アークスだけなんです! だから、この星や生き物を守るためにも、わたし達アークスはダーカーと戦うんです!」
「アークスってかっこいいなー! すげー!」
「……あー」
キャッキャとはしゃぐ二人の隣で、俺は遠い目をしていた。
ついに来てしまったか。
やだなー。
「んん……? あァ、お前か」
道の先の曲がり角から、シーナを伴ってゲッテムハルトが現れた。
前と会った時と変わらず、デカい図体で気持ち悪い感じだ。
いや、前と違って機嫌が良くないか? この前はあの仮面を見つけて楽しそうだったからな。
俺達の姿を見て、訝しげな眼をする。
「あ、初めまして! アークスの方ですね? ジェネって言います」
「おれ、モアっていうんだ! よろしくな!」
「…………」
「……ハッ!」
挨拶する二人を一瞥して鼻で笑った後、ゲッテムハルトは俺を見た。
「こんな雑魚共を連れてるたァ、笑わせるな。テメェもゼノと同じ甘ちゃんか?」
「なっ!」
「な、なんだとー!」
……ゼノさんと知り合いなのか。
俺とは違う方向で合わなそうな組み合わせだが、聞く限りでも仲悪そうだな。
憤慨してゲッテムハルトに食って掛かろうとしていたモアの頭を摘まむ。
「な、なんだよリーダー!」
「やーめとけって。殴り掛かったら雑魚だって認めるようなもんだぞ?」
「うぐぐぐ……」
「えっと、ガッテムハルオだっけ?」
「最初と最後を間違えてんじゃねェ。ゲッテムハルトだ」
「あっそ。ゲッテムでいいや。で、何の用? ゲッテム」
「……クソムカツク野郎だが、まだお前に用はねェよ。喰ってもつまらんしな」
まだと言わず永遠に用無しであってほしい。
「そんな雑魚共にかまけて、俺を焦らしてんじゃねェよ」
ゲッテムハル……いいや。ゲッテムはモアとジェネの二人を指差す。
「弱いヤツに価値はねェ。居る意味もねェ。唾棄すべき存在だ。それを無闇に守ろうとするヤツもな」
「………………」
「よく覚えておけよ。この時勢、この状況において、頼りになるのは己の力のみだぜ? 甘ちゃんなごっこ遊びにかぶれてるんじゃねェぞ?」
「……どうして」
「あァ?」
「どうして、そんなこと言うんですか?」
ジェネがゲッテムに問い掛ける。
一歩前に出て。
この男の狂いを感じたのか、足を震わせながらも。
「アークスは、みんなを……宇宙の平和を守る為に戦う戦士です。なのに、誰かを守ることを、そんな風に言うなんて」
「ハッ!」
一笑に付して、言う。
「俺に口答えしてェなら、まずテメェがコイツに守られなくてもいいようになってからにするんだな」
「……っ!」
「……行くぞ、シーナ」
「はい、ゲッテムハルト様」
俺達の横を通り過ぎていく二人。
(?)
なんだ?
今、急激にコイツを殴りたくなったんだが。
コイツは確かにムカつくが、ジェネに対する言葉も、俺が怒る要素ではないし。
湧き上がる衝動を押さえ、通り過ぎる二人を見送る。
モアは怒りが収まらないのか、黙ってゲッテムを睨んでいた。ジェネは俯いたまま。
ようやく行ってくれるかと思ったが、シーナだけが途中で立ち止まり、こちらを振り向く。
「……唐突な無礼をお詫びします」
「無礼なのは分かってるんだ」
「ですが、ゲッテムハルト様に対して、貴方様のように振舞う方は初めてです。食って掛かるか目を合わせないようにするかのどちらかでしたのに、逆に挑発するとは」
「一応命の恩人だけど、感謝する気がサラサラに溶けちまったしな。そう思っとけ、シーナ……だったか」
「正しくは、メルフォンシーナと申します」
「そらまた長い名前―――?」
……くっそ。訳が分からん。
なんで今度はコイツを
「? どうか、されましたか?」
「……うんにゃ。なんでもない。早く行かないと、ゲッテムに怒られるんでねぇの?」
「……それもそうですね。それでは、失礼致します」
俺達に一礼して、シーナ。メルフォンシーナはゲッテムを追って、去っていく。
メルフォンシーナ、ね。
そらシーナって略されるわけだ。
かといって、あんにゃろうと同じ略し方もムカつくし……なんか呼び名でも考えとくか。
「…………」
「さて、ああいうアークスもいるって知れたところで、先に進むか」
「うん……。アークスっていっても、いいやつばっかじゃないんだな」
「人間千も万も集まれりゃ、狂人の一人や二人出てくるもんだよ。悪い奴ばっかでないだけ上等だ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
「だーかーら、何度言えばわかるのよ! それじゃなくて、こっち先! 二度手間になっちゃったでしょ!」
「うっせーな、どうだっていいだろ! 両方とも終わったんだからよ!」
「いつもいつもそんなことじゃ効率が悪いって言ってるの!」
「へいへいわかりました! すいませんでしたー! ていうか、元はと言えばお前が思いっきり依頼内容勘違いしてたせいだろうが!」
「うわ、自分で「まあ気にすんなよ」とかキザったらしい台詞吐いておいてすぐに翻意とか、かっこ悪っ!」
「キザとかいうな! さっきまで泣きそうな顔してたくせに!」
「そっ、それは言わないでよ! ……間違えちゃったのは事実なんだし」
「あのなあ、俺は別にそんなことを責めたりしないっての。ガキの頃からの付き合いなんだから、わかるだろ?」
「……わかってる、けど、ゼノのお荷物になるのは、いやだし……」
「「…………」」
「「「…………」」」
ゼノさんとエコーさんがいた。
二人共が黙った空間を俺達三人が眺めていると、ゼノさんがこちらに気付く。
「……あ。……ハクメイ」
「……あ」
「…………」
「……さ、さあ、エコー! 任務の続きと行こうじゃないか!」
「そ、そうね、任務残ってるもんね! 効率悪いやり方してるし、急いで終わらせないとね!」
「そうだな! 誰かさんが勘違いしてなければ、もっと早く終わってたけどな!」
何故蒸し返すのか。
「……ねえ、ゼノ」
「……おい、エコー」
そうしてまた口論を始める先輩二人。
「……はぁ」
ほんと、あの二人とは対照的な組み合わせだよなぁ。
一方のやること為すことに黙って付いて行くあっちと、お互いの意見を喧嘩になってでもぶつけあうこっちと。
見てて気持ちいいのはこっちなんだが。
ヒートアップしていく二人を避けて、探索を続けていく。
「なぁリーダー。ほっといていいのか? あれ」
「いーんだよ。あーゆー手合いは心の中で「結婚しろ」と呪いをかけ続けろ」
「それ、お
結婚しろ結婚しろ結婚しろ結婚しろ結婚しろ結婚しろ結婚しろ結婚しろ結婚しろ結婚しろ結婚しろ結婚しろ結婚しろ結婚しろ結婚しろ結婚しろ結婚しろ結婚しろ結婚しろ結婚しろ結婚しろ結婚しろ結婚しろ結婚しろ結婚しろ……。
ゼノもそうですが、ジェネとゲッテムハルトはどう会話させたものかと困るほどに合わないですよねぇ。
活動報告にも書きましたが、一話の設定に関わる一部分を改稿しました。さらっと読んでしまうところですが、重要な所なので……。
ところで、先の展開考えてる内にハリエットの正体(実際の歴史でどういう存在だったか)とか、ルーサーがなんで【敗者】で、なんで全知を求めたのかが自分の中で答え出ちゃった感じなんですけど……みなさんはどうでしょう? これで自分が外してたら赤っ恥ですけど。