PSO2 ~煌々たる白明~   作:クビキリサイクル

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ニューマンの長耳のメリットがフォトンを感知しやすいだけだと思うたか

「いやぁ……」

 

 

 唸った。

 よもやよもやだ。

 まさか―――

 

 

「まさかこうも完敗するとはなぁ……」

 

「なーにが完敗だこんちきしょうめ……」

 

 

 アークスの訓練施設、VRルームの一つ。

 正方形に区画されたフィールドど真ん中で、俺は大の字に倒れていた。

 顔を少し起こせば立っているゼノさんが見えるだろうが、今は顔を上げる気にならない。

 いやほんと、驕ってたつもりはないんだけどもね。

 

 

「攻撃を受け止めようとしたら電撃が流れてるわ。分裂したタリスからテクニックが雨霰のように飛んでくるわ。そのタリスに引っ張られるわ。砲弾が見えないわ。槍が伸びるわ。そもそもの本人の動きも新人のものじゃないわ……。お前さん、正直言って戦い方がえげつねぇよ」

 

PD(フォトンドライブ)も使ったそれら全部を出し切って、結果がこうだから完敗なんですけどね……」

 

 

 まさかどれ一つとしてクリティカルヒットしないとは思わなかった。掠る程度なら何度かあったが、その都度カウンター貰ったし。自己回復が出来ないゼノさんだから持久戦は無いと見てはいたが、息もつかせぬ攻防で回復間に合わねぇし。俺の弱点も速攻見切られたし。

 けどまぁ、あの仮面野郎とは違って、すっきりした負けだ。

 悔しい事には悔しいが、黒い気持ちが湧くようなことは全然ない。

 それに……感じた差が仮面野郎程じゃない。

 なんてのは言わないけどな。

 

 

「……なぁ、ハクメイ」

 

「はい?」

 

 

 徐々に回復して言ってるが、まだ立つ気にならんので、倒れたまま返事をする。

 

 

「お前さんから見て、俺は何に見える? ちゃんと、ハンターに見えるか?」

 

「ん? ああ」

 

 

 そのことか。

 なんだ。大して気にしてないと思ってたんだが。

 

 

「心配せずとも、あんだけ動かれてレンジャーにゃ見えませんよ」

 

「! ……気付いてたのか?」

 

「ええ、まあ」

 

 

 俺達第三世代と違って、ゼノさんはクラス適性が先天的に決まっている第二世代だ。

 ゼノさんのクラス特化傾向は、完全にレンジャー向き。

 武器はガンスラッシュで、あらゆるクラスで扱えるものだとはいえ、その戦い方は近接のそれだ。

 だが。

 

 

「最初に会った時の射撃……あ、いや。ゼノさんの戦闘を見るに、ハンター出身のガンスラッシュ使いにしては、妙に中・遠距離の射撃の腕が良いと思ったんですよ。元が近接のガンスラッシュは、狙いなんか気にせずとりあえずぶっ放す傾向ですけど、先輩は違う。狙いを定めようって時にはしっかり定めてた。だから、元はレンジャーなのかなって」

 

「まいったな……そこまで見切られてたのか」

 

 

 ……まぁ本当は、調()()()()()()()()()わけだが。

 流石にそれは言えない。

 信用出来る出来ない以前に、知らずの内に調べられてるって気味悪いと思うし。

 

 

「お前さんの読み通り、俺の適性はレンジャーなんだよ。今は無理言ってハンターやってるが、やっぱ向いてないクラスってのはきっついもんだな。何にでもなれるお前さんが、少しばかり妬ましいぜ」

 

「そっかー。向いてないクラスの人にやられたのか俺はー」

 

「……ま、ないものねだりしても仕方がないからな。俺は俺に出来ることをやっていくさ」

 

 

 無視られた。

 ちょっとショック。

 まー俺も言っててめんどくせぇ奴だと思ったけど。

 回復してきたので、起き上がる。

 

 

「ふぅ……。ゼノさんも、あれだけ動けるようになるまで向いてないクラスでやってきた経緯はあるんでしょうけどね。それでもレンジャーの方が強いってんなら、戻した方が良いと思いますよ。拘りで死んだら元も子もないですし」

 

「ヘッ、俺もそう思うよ」

 

 

 自嘲気味に、ゼノさんは笑う。

 

 

「けど、それじゃ守れないものがある。だから俺は、ハンターじゃないといけないんだ」

 

「そうですかい」

 

 

 それがゼノさんの『欲』なら。

 そうまでしてでも貫きたいなら、俺がどうこう言う話じゃない。

 

 

「……あー、駄目だな。なんだかお前さんと話してると、愚痴ばっかり言っちまう。すまんな」

 

「気にしなくていいですよ。俺も気にしないですし」

 

 

 さてと、そろそろ休みますかね。

 これ以上なんかしても明日以降に響くし。

 

 

「それじゃあゼノさん。模擬戦ありがとうでした。今日の所はこれで」

 

「おう。これからもしっかり励めよ」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 後輩がテレポーターに乗ってVRルームから出たのを確認して、ゼノは一人呟いた。

 

 

「しかし、何なんだろうな。この懐かしい感じはよ」

 

 

 出会った時からも感じていたものだったが。

 模擬戦と言って、ハクメイの全力を受け止めてからは、より一層強くなった。

 

 

「いや。なんか別の懐かしさも感じるようになった、だな……。どこだったっけか」

 

 

 先程の戦いを思い返す。

 槍を持った時。

 鉄塊のような大剣を振り回していた時。

 タリスを投げた時。

 こちらの攻撃を回避する時。

 大砲を構えた時。

 電撃が流れる剣を片手に持った時―――

 

 

「あ」

 

 

 思い至り、ゼノは掌をぽん、と叩いた。

 

 

「そういや、あの構え方が()()()と同じなのか」

 

 

 ま、偶然なんだろうけどな。と。

 ゼノはそのことを頭から追いやることにした。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 翌日。

 俺はショップエリアに来ていた。

 

 

「さーて、ブーストエネミーについてはどうすっかね」

 

 

 一応その辺を研究している機関もあるそうだが、公開している資料は昨日一通り見た。

 全く使えないことだけがわかった。

 士官学校時代に習う事の域を出てないというか……俺の求める情報が書かれていなかったのである。

 

 

(ま、どこまで本当のことを公開してるのかもわかんねーからな。それっぽいこと書いてても信用できんのだが)

 

 

 情報が無いのなら、調べる手立てを作ればいい。

 しかし、自分で一から十まで調べる程の余裕も関心もない。そもそも「ちょっと気になっただけ」なのだから、情報がないならそれでいいやとなってきてるのが本心だ。まだ探してるだけ、俺はまだ粘り強い方だろう。

 

 

(エネミーに関する研究者っぽい奴のCO(クライアントオーダー)でも探して、その伝手で調べさせるか? 部署に所属していても研究は個人でやる奴もいるし、自分の研究が出来ればいいってんなら都合がいいが――――――)

 

「先生! せんせーい!」

 

 

 アホみたいにうるさい声に思考を遮られた。

 

 

「……ルベルトか」

 

「はい! ルベルトです、先生!」

 

 

 こいつのテンションの高さ、ヒューイに次ぐな。

 ルベルトは俺の目の前にまで駆け足でやってくる。

 

 

「先生! 本日は改めて、お礼に参りました!」

 

「お礼?」

 

「はい! 先生のお蔭で、士官学校のレポートが捗りそうです!」

 

「あー。そういやあったなそんなん」

 

 

 アークスの士官学校では、アークスの活動、またはアークスシップの運営について役立つようなレポートを、一人一つ仕上げる課題がある。

 学校の入学から卒業までには最低でも二年かかるのだが、一年間過ごした後にはレポートの提出を求められる。このレポートが完成し、合格印を貰えるかどうかによって卒業できるかどうかが決まるのだ。まぁ、貰えたからって他の単位が足りなかったら卒業出来ないけど。

 その研究の為に、研修生がアークスに依頼をすることもざらにある。ほとんどは元々ある資料の情報を基に作るが。

 懐かしいなー。

 俺は髪の薄い教官に段々と自然に生えてくる育毛剤の開発レポートを提出して、技術的な事は露見しないままに合格印貰ったっけ。

 

 

「で、俺のデータを基にレポートを仕上げたいと」

 

「はい! 自分はエネミーの弱点や破壊できる部位についての調査を、レポートに纏めようと考えています。そのことも考えて先生の戦闘を見ていましたが、先生は流石です! エネミーの弱点を素早く見切り、的確に突いていく! 鮮やかなお手並みでした! なので、データを参考にさせて頂きたいと思いまして!」

 

「まーそれはいいんだけど―――あ」

 

「? どうかしましたか?」

 

 

 そうか。

 そういう方法もあるのか。

 

 

「なぁルベルト。確か似通ったテーマがあったら協力して研究できるように、研修生同士はお互いの研究テーマをキーワードで検索できるようになってたよな?」

 

「え? はい。そうですけれど」

 

「そんじゃ、ちょっち調べてくれや」

 

「何をでしょう?」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 わたしの名前はロッティ。

 アークス研修生の一人です。

 現在、課題であるレポートを作ろうと考えているのですが……。

 

 

(やっぱり、ダメだなぁ……わたし)

 

 

 ブーストエネミー。

 ダーカーに浸食されたエネミーについて調査するのが、わたしの研究テーマです。

 今ある資料を見るだけでは完成は目指せないレポートを完成させる為に、わたしはCOとしてアークスの皆さんに依頼を出したいと考えています。ですが、アークスの方に直接話し掛けて、依頼をお願いする。そのアクションが引っ込み思案のわたしには出来ず、受けてくれそうなアークスの方に声を掛けようとして、でも出来なくて、もう五日になります。

 話し掛けられたとしても、通常より凶暴になっているブーストエネミーの調査を、引き受けてもらえるのか。そんな考えばかりが堂々巡りします。

 

 

「……研究テーマ、変えるべきなのかなぁ」

 

 

 ショップエリアの椅子に腰掛けて、溜息をついて、一人呟きます。

 別に、この研究じゃなきゃ卒業できないわけじゃない。

 でもわたしは、この研究がしたいと思った。

 その研究結果をアークスの役に……お兄ちゃんの役に立てたいと思った。

 わたしの実家は、裕福でも貧しくもない、一般的な家庭です。

 わたしと兄、両親の四人家族。

 その兄はアークスの任に就き、特殊な任務で家があるシップから別のシップに移り、それからはほとんど会っていません。

 随分前に急に結婚したなんて話をメールで送ってきたものですから、その時は家族総出で押し掛けに行きましたが。

 後、子供が出来た旨もメールで送ってきたので、孫が出来た両親共々、姪っ子と甥っ子の顔を見に行きました。

 それっきり、会っていません。

 けれど、兄の為にも、その家庭を守る為にも、わたしの研究で役に立てたら。

 そう考えてこの研究テーマを考えましたが……それに拘って卒業出来なかったら、お笑い種だよね。

 仕方が無いんです。

 わたしも早く一人前のアークスになって、家族を守れるようになりたいんですから。

 だから、この研究はそうなってから、自分の力で完成させて。

 今は出来る研究を―――。

 

 

「もしもし?」

 

「ひゃわぁ!?」

 

 

 跳ねました。

 突然声を掛けられてビックリしたとはいえ、これは恥ずかしいです。

 

 

「は、はい! な、なんでしょうか!?」

 

 

 それを隠したい一心で、用件を尋ね、その人の顔を見ます。

 

 

「そんな声を荒げんでも……ま、いいや。ちょいと研究テーマについて話があるんだが」

 

 

 初対面のその男の人は。

 なんだか不思議な感じがしました。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 いやー。驚き桃の木山椒の木ってやつかね。

 とりあえずエネミー関連なら儲けもの程度に考えてたというのに、ルベルトにブーストエネミーに関連する研究テーマについて調べてもらったら、まさにジャストミートでその研究があったとは。

 しかもそれが掛け値なしに美少女。

 金の工面以外でもこういう方向に役立つとはな。将来本気で弟子にしてやってもいいかもしれん。

 まぁ今は、この子だ。

 

 

「まずは、初めましてかな」

 

 

 彼女とはテーブルを挟んで向かいの椅子に腰掛ける。

 

 

「は、初めまして」

 

 

 ガッチガチに緊張しているご様子。

 男と話すのに慣れてないのか。まぁ積極的に話すタイプにも見えんしな。

 ロッティとデータにあったこの子は、青髪を腰辺りにまで伸ばした、ニューマンの少女だ。

 長耳はテオドールのと同じく横に伸びているタイプ。

 士官学校の研修生、女子制服に豊かなその身を包んだロッティは、内気なのか引っ込み思案なのか。その幼さが残る顔を俯かせ、目線が前髪で見えなくなっている。

 うーむ。

 拒絶されてる感じはないと思いたいが、突然話し掛けてきた男相手に最初からオープンにされても、逆に心配になるしな。

 ジェネに大きく足りないのはそこだ。

 マトイは事情が事情だから仕方ない面もあるが。

 

 

「俺はハクメイってんだ。この前アークスになったばっかの新人だが、よろしく」

 

「ロ、ロッティです……」

 

「それは知ってる。プロフィールは見せてもらったからな」

 

「あ、あの……わたしのこと……。それにわたしの研究テーマ、どうして……」

 

「あー、ちょいと研修生に知り合いがいてな。その伝手で検索した」

 

「け、検索、ですか」

 

「ああ。ブーストエネミーについてな」

 

 

 ロッティはますます顔を強張らせる。

 自分の事は知られているのに、相手の事は知らない。そんな心境からだろう。

 ロッティの研究テーマはブーストエネミーについての調査。正に俺が欲していた情報、それを調べるものだ。

 その研究成果を見せてもらえれば、俺がデータを検証する手間が省ける。

 しかし、流石にタダで見せてもらえるなどとは思っていないし、そもそも研究が進まなければ話にならない。

 ので。

 

 

「サンプルを俺が狩るって形で研究協力しようと思うが、どうだ?」

 

 

 協力者としてレポートに関係すれば、見せろと言われても嫌とは言えまい。

 研究内容として戦闘の様子も見させてほしいとのことだが、ルベルトと同じ対応にすればなんら問題はない。

 協力の形について細かく伝え終わると、ロッティは逆に尋ねてくる。

 

 

「あ、あの」

 

「ん?」

 

「……どうして、協力してくれるんですか?」

 

 

 んー? 下心があるって思われてる?

 まぁ全く無いと言えば嘘になる。

 男なら浅い深いは置いといて、美少女とは良好な関係を築きたい気持ちは分かるだろう。

 ただし俺はナンパ男とは思われたくないので、数撃ちゃ当たる方針で目についた女を誘うなんてことはしない。

 デートだとかなんやらは、深い関係になってからだ。

 それまでの過程を楽しまずになんとする。

 

 

「強いて言うなら、知的好奇心を満たすくらいか。この前戦ったブーストエネミーに妙な反応があったから、それが何なのかってな」

 

 

 嘘ではないので、そう言っておく。

 

 

「…………」

 

「ま、一応依頼って形で受け持つから、報酬は用意しとけよ。どのブーストエネミーのデータが欲しいってなったら、その都度変えるでいいから」

 

 

 ルベルトはボンボンだから一体につきなんちゃらだったが、それを一般化するつもりもない。

 納得出来る金額なら、それでいい。

 あいつとは違ってこっちは研究のことだから、欲しいデータも変わってくるしな。

 

 

「と、そんな感じでやっていこうと思うが、どうだ?」

 

「わ、わかりました」

 

 

 研究に光明が見えた歓喜故か、長耳をぴこぴこ動かしつつ、ロッティは手を差し伸べてくる。

 こうやって感情が耳にも出てくるの、ニューマン女子の可愛いとこだよなぁ。

 ウルクとかの上に伸びてるタイプはあんまりそういうの出てこないんだけど。

 ロッティの手を取り、握手を交わす。

 

 

「これからよろしくお願いします。先輩」

 

「おう、よろしくな。ロッティ」

 

 

 先輩、か。

 良い響きだ。

 

 

 

 

 

 




ハクメイ的にはギブアンドテイクの関係のつもりですが、ロッティからしたらお節介焼きにしか見えないのでした。

PSO2の後輩キャラと言えば角っ子・イオと忠犬・ストラトスですが、ロッティはスポット当たらないだけで普通に可愛いと思います。
ところで後輩キャラが総じて青系統の髪色なのは、なんか意味があるんでしょうか……?

-追記-
正体不明のロッティ兄ですが、今作ではオリキャラとして登場させます。
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