PSO2 ~煌々たる白明~   作:クビキリサイクル

38 / 46
狂乱の研究者・ザッカ―ド

 

 

 

 

 

「やぁほぉーーーうっ! さむくなーーーいぞぉーーー!」

 

 

 モアはウッキウキで歓声を上げる。

 セラフィさんから任務内容について聞いた後、俺達はキャンプシップから凍土に降り立ち、森林から凍土へ抜けた時と同じように、凍土を抜けて遺跡エリアへと辿り着いた。

 二人は羽織っていた外套を脱ぎ、アイテムパックに仕舞う。

 

 

「ようやく、寒い凍土を抜けられました! よかったですね、モア」

 

「目ん玉こおるんじゃないかってくらい寒かったから、ほーんとここ天国!!」

 

「まーその分ダーカー溢れてるけどな」

 

 

 事前情報でも聞いていたが、こうしてこの場に来てみるとよくわかる。ナベリウスの森林エリア、凍土エリアで原生種がいた分までダーカーに変わったかのような出現密度だと言えよう。

 このエリアに出てくる原生種は、森林と凍土にいたエネミーが入り混じって存在し、新しく出てくる個体は総じてダーカーとなっている。

 甲羅に覆われた亀型のダーカー、ミクダ。その上位種のオル・ミクダ。眼面魚のダーカー、ダガッチャ。その上位種、ダーガッシュ。巨大な体躯と身の丈程の大盾を持つ人型ダーカー、ガヴォンダとグヴォンダ。同じく身の丈程の打棍を持つ人型ダーカー、キュロクナーダ。それと同じ外見で、鉄球のようなボールハンマーを投げてくるサイクロネーダ。他にも惑星リリーパに現れる、人間サイズの蜂と蟷螂を足して二で割ったようなダーカー、エルアーダ。幼虫みたいなダーカー、クラーダ。その上位種の蟹と亀を足して二で割ったような、硬い甲羅が特徴のダーカー、クラハーダ。

 数え上げるだけで気が滅入るほど、ダーカーが数多く種類多く存在するのだ。

 おまけに―――。

 

 

(大型ダーカーの存在も確認されてる、とのことだと)

 

 

 出来ればまだ遭遇したくないところだが、状況によっちゃそうもいかないだろう。

 PDだけならばもうこの二人には披露した事だし、使うことに抵抗は無いんだが、テクニック並列起動はそうもいかない。

 ハンター(適性はレンジャー)のゼノさんに習ったという言い訳が利かないからだ。

 この二人なら適当言っても簡単に納得しそうだし、モアの報告書なら改竄すればいい。しかし、どうしても俺が『並列起動を使える』という事実は二人の中に残る。

 二人からして使うべき時に使わなければ反感を買うし、隠している理由に言及されても困る。しかもこの任務は常にセラフィさんが案内することになるから、後輩二人のように都合が悪いから通信を切るという事も出来ない。

 ……まぁ、遭遇しないで済むならそれがいい。今のところ探知範囲内には大型のはいないようだし。

 

 

「さっきまでとここ、同じ星だと思えないぜ! 不思議だなぁー」

 

「ほんと、不思議ですよね!」

 

 

 二人は呑気に会話中。

 ここ遺跡エリアは、遥か昔にナベリウスに文明が存在していた事を示すように、崩壊して苔の生えた建造物達が散乱としていた。俺達の立っているここも人の手で建造された床に緑が生い茂っているようで、その下は湖となっている。このエリア全体に広がり、凍土の山に囲われている巨大なものだ。山々が冷気を遮っているのか、このエリアの気候は温暖である。

 森林から凍土に来た時も思ったが、滅茶苦茶な気候だよな。

 そういえば、とジェネは続ける。

 

 

「アークスには惑星の探索や調査をする人もいるんですよ」

 

「え! じゃあ、ジェネやリーダーみたいな戦うアークスだけじゃないんだな!」

 

「そうです! 宇宙の不思議を追ってる人もいるんですよ」

 

「それもかっこいいな! そういえば、ザッカ―ドもアークスなんだっけ?」

 

『はい。ザッカ―ドさんも、E.M.A研究所の職員であり、アークスでもありました』

 

「研究をしたり、調査をしたりするアークスもいるんだ。なっるほどなぁ!」

 

 

 惑星に降りる以上、ダーカーやエネミーとの戦闘は避けがたいので、戦闘能力は必要になる。しかし、それだけがアークスの仕事ではなく、むしろ調査兵団と名乗っているのもあって本来はそっちの方が本職だ。

 とはいえ、惑星の調査など取り立てて急ぎ解明するようなこともなく、必然的に生命を脅かすダーカーの対処の方に力を注ぐのは当然と言えよう。

 

 

「セラフィさん。ザッカ―ドさんはその……研究所で、一体何の研究をしてたんですか?」

 

『あ! すみませんでした。詳しくお話していませんでしたね』

 

 

 コホン、と咳払いするセラフィさん。

 

 

『E.M.A研究所は、みなさんが使う武器の研究開発をしている機関でした』

 

「それって、わたしが使っている武器も、そこで作られたってことですか?」

 

『そうですね。E.M.A研究所が開発したものかもしれませんね。最近では、武器の使用データを集積、解析することにも注力していたようです』

 

「じゃあ、モアの元であるクレイモアも、そこで作られたのかもしれないですねっ」

 

「へっ? あー、うん。そうかもしれないな!」

 

「…………」

 

 

 モアの反応がおかしい。

 ……例の秘密に関係してるのか?

 疑問もそこそこに、俺達は先に進んでいく。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 慣れないダーカー相手なので動きが読み切れず、無傷とはいかなかった。

 しかしまともに貰う事もなく、二人のフォローもする余裕はある。時にはグヴォンダの大盾やキュロクナーダの打棍をブーステッドで割砕、パイロソーサーで熱切断しながら倒していく。

 多少の傷も俺の個別回復で治る。実質的には無傷だ。

 ここまで並列起動はもちろん、PDの出番もなく、難なく進んでいく。

 

 

「へへっ! 新しいダーカーもいっぱいだけど、オレたちの敵じゃないな!」

 

「…………」

 

 

 ……切れ味が悪いな。

 やっぱ、原生種共と同じようにはいかないか。

 

 

「……あの、ハクさん。大丈夫ですか?」

 

「あん? 怪我ならちゃんと治してるし、治してやってるだろ?」

 

「いえ、それもですけど、そうじゃなくて……。キャンプシップを降りてからずっと、口を開かないままだったので……」

 

「ん? あー……」

 

 

 そういや、ずっと考え事してばっかで会話にまるで参加してなかったな。

 戦闘では切り替えちゃいるが、ジェネからは不自然に見えたんだろう。

 普段の俺は結構喋る方だし。

 

 

「気にすんな。ちっと今回の件で気になる事があったから、考え事してただけだよ」

 

「? 考え事?」

 

「それって―――」

 

『! みなさん! ザッカ―ドさんの反応がすぐ先です』

 

 

 セラフィさんの通信が会話を遮る。

 

 

「ま、それもザッカ―ドとやらに話を聞けば解決するだろ。さっさと行こうぜ」

 

「それもそうだな! って、あー! ふたりとも、あれ!」

 

 

 モアが何か気付いたようで、俺達の行く先に向けて指差す。

 そちらに視線を向ける。

 

 

 

 

 

「…………どうしよう……どう……あぁ……ごめんなさい……ごめ……」

 

 

 

 

 

 ひたすら虚空に向かって謝り続けるデューマンの青年の姿があった。

 

 

「……あれ、か?」

 

「お、おいジェネ!」

 

「う、うん。ザ、ザッカ―ドさん……ですよね……?」

 

 

 

「…………どうしよう……どう……あぁ……ごめんなさい……ごめ……」

 

 

 

「おーい。聞こえてんのかー?」

 

『リーダー! ジェネちゃん! モア君! 彼がザッカ―ドさんで間違いありません! 保護をお願いします!』

 

 

 人違いではなかったようだ。

 ザッカ―ドは紫の髪を肩まで伸ばし、知的な雰囲気を醸し出す眼鏡と、長身を際立たせる黒い服を身に纏っている。

 デューマンの噂のオッドアイはここからだと窺えないが、特徴の一つである角は、一本角。男性デューマンは一本、女性デューマンは二本なのが普通らしい。

 もう一つの種族特徴でもある白い肌がインテリさを一層強くしていて、白衣でも着せれば一気に研究者っぽくなりそうだ。

 しかし、なぁ……。

 

 

「あの……でも、なんだか、様子が……」

 

「ジェネ! 確かになんか、ヘンだけど! やらなきゃダメじゃんかっ!」

 

「わ、わかってます! ……モア、なんでわたしの後ろに隠れるんです?」

 

「ヘタレめ」

 

「う、うるせ!」

 

 

 ホラーっぽいのは分かるけど、せめて俺の後ろに隠れろよ。ジェネの後ろとか情けなくならない?

 ジェネはそれ以上言及せず、ザッカ―ドに呼びかける。

 

 

「ザッカ―ドさーーーん! わたし、アークスのジェネです!」

 

 

 

「…………」

 

 

 

「うわぁっ! こっち向いたって! 向いたって!」

 

「わーかったから騒ぐなって」

 

「爆破事件の事とか、いろいろ……ええっと。とにかく、わたし達と一緒に戻りましょう!」

 

 

 ジェネのその言葉を受けて。

 ザッカ―ドは、再び謝り始めた。

 謝り、言った。

 

 

 

 

 

「ゴメンナサイ、ごめんなさい、ごめんなさい。もっと上手くやるはずだったんです、です。もっと綺麗に燃える筈だった……だった。計算を間違えたのか、天候の問題か……?」

 

 

 

 

 

「な……何、何を言って……?」

 

「……チッ」

 

 

 嫌な予感の方が的中しやがったか。

 ……こうなったら、やるしかねぇか。

 左手にスプラッシュを呼び出し、投げて拘束―――

 

 

 

 

 

「上手く出来ただろう……? 綺麗に爆発させてやっただろうがぁ!!」

 

 

 

 

 

 その時。

 

 

「!?」

 

 

 投げようとした手を、止めた。

 ……くそ! この反応…………遭遇したくないって思ってた矢先にこれかよ!

 

 

『みなさん! 注意してください! 強力な、ダーカーの反応が……!』

 

「え!?」

 

「な、なんだよ!?」

 

 

 セラフィさんが、キャッチした反応が示す個体の名を、通信越しに叫ぶ。

 

 

『あれは……ウォルガーダ!!?』

 

 

 巨大なゴリラのような体躯を持つ大型ダーカーが、立ち塞がるように出現した。

 その背にいるザッカ―ドが、そのウォルガーダに向けて。

 ()()した。

 

 

 

 

 

「壊せ! 壊してしまえ私の下僕!! 私をイジめる何もかもをなぁ!!!」

 

 

 

 

 ウォルガーダが、それに呼応して雄叫びを上げた。

 

 

 

 

 

 




短めですが、切りがいいのでここまで。
この辺はちゃっちゃか進めて次に行きましょう。薄味で終わらせる気はありませんが、本編はどうにも無駄が多い……。

執筆途中まで進めてたのがPCのフリーズで消えると、すごい書き直す気力がなくなる……(何度目)

最近は参加出来そうなPSO2の集会に顔を出して宣伝してますので、ご縁があればよろしくお願いしますね。
なお、感想には目を通して、見つけたらすぐ返信する心構えですので、質問などがあれば気軽にどうぞ。とは言えないですね。質問用の活動報告を作って、小説のトップページに載せておきます。


esに新しく出てくる女性キャラ、みんなえっちぃ……エロくない?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。