PSO2 ~煌々たる白明~   作:クビキリサイクル

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大遅刻申し訳ないです。


狂人に対する思考実験

 

 

 

 ザッカ―ドの生体反応はこれから順次追っていくとのこと。

 しかしただ待っているのも退屈なので、俺達一行はナベリウスに来ていた。

 別に手掛かりがあるわけではないが、手掛かりがないなりにザッカ―ドがいたここを調べるのが、一番だろう。

 というのもまぁ事件に臨むに当たっては、というだけで、主目的は俺達自身のレベルアップだ。二人は事件の方が主目的だろうけど、俺としてはまたあの大型ダーカーと相対するのはまだ避けたいところである。

 まぁ、何も対策を打ち立てていない訳ではない。

 しかしそれはまだ完成していないのでまだ、という事だ。

 森林エリアの木々に囲まれた広場。

 そこで俺は、フレアをダガンの群れに向けていた。

 

 

「ラ・フォイエ、並列起動10」

 

 

 一拍遅れて群れの周囲で10の爆発が起こり、それらが一つになって一際大きな爆発。

 黒煙が晴れた先にダーカーは影も形も残らずに消えていた。

 

 

「うん。これならもう逃がすことはないかな」

 

 

 ラ・フォイエは、任意の点に爆発を起こす炎系の中級テクニックだ。

 発動から少し遅れて爆発が起こるからタイミングが掴み辛く、素早い敵にはほとんど当たらない。が、それも単発ではの話。並列起動で取り囲むように放てばそうそう逃がすことはないだろう。

 このテクニックの良い所は、目に見える範囲ならどこまでも届くという事。

 初級テクニックでもゾンデやグランツに同じ特徴があるが、如何せん殺傷能力が高すぎる。単純にエネミーを相手にするならそれでもいいが、人間相手を捕縛するとなればそうもいかないわけで。その点、ラ・フォイエは加減が利きやすい。

 これであの時のようにザッカ―ドを逃がすことはないだろう。同じ状況であれば、だが。

 後ろで見てた二人へと振り返る。

 

 

「つーわけで、これがテクニックの並列起動だ。驚いたか?」

 

「「…………」」

 

 

 驚き過ぎて声も出ないようだった。

 そういやアフィンもこんな反応だったなぁ、と思い出しながら、フレアを仕舞う。

 

 

「まー、あれだ。こっちは法撃クラスにしか扱えないし、PD(フォトンドライブ)よか断然習得しづらいからな。ゼノさんに教わったわけでもなくオリジナルの技術だが、目につくのは変わりない」

 

『あの……それより、何故今になって披露する気になったのでしょうか?』

 

 

 通信からセラフィんさんの声。

 

 

「いや、ほんとならずっと黙ってるつもりだったよ? 奥の手はいくつも持っておきたい主義だからな」

 

「だ、だったらなおさらなんでだよ?」

 

「いやぁ」

 

 

 ポリポリと頭を掻く。

 あん時は厳しい所だったし、この三人に明かしても秘密は守られると判断したからってのもあるが……。

 

 

「お前ら相手に隠し事すんのも馬鹿らしくなったから」

 

「……あれ? もしかして馬鹿にされてます?」

 

「もしかしなくても馬鹿にされてるってば! こんにゃろー!」

 

 

 さて、雑談はこれくらいにして進むか。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「やあこんにちは。そしてさようなら」

 

 

 出会いと同時に別れを告げられた。

 

 

「えぇっ!? なんで会ったそばからさよならなんだよ!?」

 

「ああいやいや。気を悪くしないでくれ。何を隠そう、私は今調査中でね。他の事に気を割く余裕はないんだ」

 

 

 そう語る彼女はアークスであるが、いかにも研究者といった風貌だった。

 逆立ててあまりオシャレに気を遣ってないのが見て取れる黒髪と、理知的な眼鏡。これまたオシャレに気を遣ってないのが見て取れる簡素な戦闘服。総じて美容に重きをおいてないのが見て取れる。

 素材は悪くない、どころか美人の部類に入る。磨けば更に光るだろうに、それを怠っている感じでなんだか勿体無い感じだった。

 

 

「私とキミ達に縁があるのであれば、いずれ行動を共にすることもあるだろう。話などは、その時にまとめてしてしまった方が効率が良いと思わないかい?」

 

「人付き合いって、効率でするものでしたっけ?」

 

「ま、そういうことだ。それじゃあね」

 

 

 そう言って、名前を名乗りもせず彼女は去って行った。

 他の事に気を割く余裕はないという言葉通り、すたこらさっさとあっという間に俺達の視界から消えていく。

 その背を見送り、モアが一言。

 

 

「なんなんだあいつ……」

 

「ま、急いでるのもあんだろ。すれ違っただけだし、今後会う事もないだろうから気にしても仕方ねぇや」

 

「そういうもんかな?」

 

 

 しかし、意外にも縁があったらしく。

 彼女と再会し、行動を共にするのは、そう遠くない未来の事だった。

 この時の俺は勿論知る由もないが。

 

 

「…………」

 

「ん?」

 

 

 ジェネを見てみると、何かを考え込んでいる様子。

 

 

「ジェネ? どうかしたのかよ?」

 

「あ、いえ。今の研究をしてる人を見て、その……ザッカ―ドを思い出して……」

 

「え? あいつのことかよ?」

 

「研究者繋がりで?」

 

「はい」

 

 

 まぁ、他の繋がりなんて眼鏡くらいしかないしな。

 

 

「ザッカ―ドが思い出したと言っていた目的って……一体何なんでしょう? 研究所を爆破した事と、これから彼がしようとしていることは、繋がっているんでしょうか?」

 

「んんっ?」

 

「ふむ……」

 

「E.M.A研究所は、武器の研究開発を行っていたんですよね?」

 

「ジェネ……? もしかして、なにかわかったのかよ?」

 

 

 モアが期待の眼差しでジェネを見る。

 対するジェネ。

 

 

「え、いえ……ぜんぜん」

 

「うぇっ? なんだよー! わかったのかとおもったぜ!」

 

「いやぁ、えっと、その……! なんで、あんなことをしたんだろうって、思ったんです」

 

 

 爆破された研究所の映像資料でも思い出したのか、唇をきゅっと結んでジェネは言う。

 

 

 

「研究者は、多くの人の未来を幸せにするために、その為に日々研究に励むものだと……」

 

 

 

「…………」

 

 

 多くの人を幸せに、か。

 俺から見た研究者、科学者なんてのは、自分の知識欲を満たしたいだけの癖に正義面して命を奪っていく連中が多数なんだけどな。

 もちろん全部がそうとは思っちゃいない。ロジオのように真っ当な研究者だっている。

 皮肉なことにそれが少数なだけで。

 

 

「ジェネ??」

 

「あ、いや、家族の、受け売りなんですけど!! だから、その! 彼は何がしたいんだろうって」

 

「……何がしたいか、ね」

 

 

 目的さえも曖昧なまましっちゃかめっちゃかに行動するから狂人なんだが、しかし。

 

 

「理由もなく、たくさんの人の命を奪うなんて、そんな酷い事、出来るんでしょうか? 理由があれば良いわけじゃないですけど……」

 

 

 ジェネは、少し考え、頭を横に振って、そのまま下げる。

 

 

「ごめんなさい。変なこと言って……」

 

「……オレ、よくわかんねーけど。たぶん、そういうヤツは、いるとおもう」

 

「モア……?」

 

 

 俺としてもそれは同意見。

 が、それで片付けるにはあまりにも不自然だ。

 

 

「……じゃ、ちょっと思考実験してみようか」

 

「? しこうじっけん?」

 

「ザッカ―ドが、何故研究所を爆破するに至ったのか」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「ま、所謂発想の逆転ってやつだな」

 

 

 森林を抜け、凍土を歩きながら、俺達はザッカ―ドの目的について考える。

 本人の口から聞かない以上、仮定にしかならないだろう。

 とはいえジェネも気になる事だろうし、口にすることで整理出来る事もある。

 

 

「ジェネは『理由もなく、たくさんの人の命を奪うなんて考えられない』。そう言ったな?」

 

「はい」

 

「ならば、『ザッカ―ドにはE.M.A研究所を爆破して、職員を皆殺しにするだけの理由があった』と仮定出来る」

 

 

 字面するだけでもとんでもない事だ。

 人間の悪意に疎いであろうジェネには、想像も出来ない事だろう。

 

 

「特定の個人に殺意を抱くなんて良くある事だが、不特定多数の人間に殺意を抱くなんて相当なもんだ。それを実行に移すんだから、極まれりって感じだな」

 

 

 二人は俺程弁が立つ訳ではないので、この思考実験はほとんど俺の独壇場。

 俺の考えを述べる場となっている。

 とはいえ、この二人にも飲み込めるように話さないといけないので、その辺は注意が必要。

 

 

「或いは主目的は研究所の破壊そのものであって、被害者に関しちゃついでだったのかもな」

 

「ついでって……!」

 

「無いことは無いとはいえ、可能性は低い方だと思うけどな。その派生で行くと、施設ごとでも消し去りたい研究があったのか。それは自分の研究だったのか。研究所主導の研究だったのか。それが恐ろしく非人道的な研究だったのか」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれよリーダー!」

 

 

 モアが挙手をしつつ、口を挟む。

 

 

「それだと、研究所のひとのほうがわるいみたいじゃんか! あっちはひがいしゃなんだぞ!」

 

「だから『皆殺しにされる理由があった』って前提の話だっつったろ? 全く非の打ち所のないような人間がそうホイホイいると思うか? そんな奴に殺意を抱く奴も」

 

「そりゃ、そんなにいないけど……!」

 

「理由もなく殺されたなら、犯人が殺人鬼だったってだけの話だ。理由があるなら大抵は『被害者に何かをされた過去がある』ってことになる。侮辱を受けたとかなんやらな」

 

「ザ、ザッカ―ドのやつを見たろ!? あんなの、おかしいやつにしかみえねぇってば! だから」

 

「そこでチェス盤を引っ繰り返す」

 

「さつじんきでも、え?」

 

 

 指をバキンと弾く。

 特に意味はない。

 

 

「立場の置き換えってやつだな。ジェネ」

 

「は、はい」

 

「お前は研究所の、研究者を採用する立場の人間だとする。その上で考えてみろ。ある日、ザッカ―ドがE.M.A研究所で働こうと研究所にやってきました」

 

「…………」

 

「お前はあいつを見て、採用するか?」

 

「……しません」

 

 

 まぁそれはそうだ。

 これでするとか言われたら、俺はどうしたらいいだろうと思う。

 話を続ける。

 

 

「それはなんで?」

 

「えっと……あまり人を第一印象で決めつけるのは良くないとは思うんですけど…………ザッカ―ドは、一緒に働くにはちょっと……」

 

「あまりにも言動がおかしくて、何をしでかすか分からない。だよな?」

 

「その…………はい」

 

「? それがなんだよ?」

 

「最初からあんな狂人だったんじゃ、職員として働く前に門前払いを受けるってことだ」

 

 

 どころか、まずもってアークスになることだって出来ないだろう。

 狂人アークスは前例があるが、あれはまだ話が通じる方。ザッカ―ドは会話のキャッチボールさえ成り立たない。

 アークスにならなかったところで、社会に出て日常生活を送れるとも思えないレベルだ。

 だから。

 

 

「今のザッカ―ドは恐らく―――ん?」

 

 

 立ち止まり、前を見る。

 そこには―――

 

 

「やはり森林よりも凍土の方が数が多いね……」

 

 

 一人の女性キャストがいた。

 二人もそれに気付いたようで、話を中断して俺の隣で立ち止まる。

 彼女の方は背を向けているせいか俺達に気付かないまま、独り言をぶつぶつ呟く。

 

 

「でも交戦自体は少ない。まるで意図して避けられているみたい。いや、そっちのけで何かを探っている? 全くレギアスの言う通りだね。なんだか不気味な感じだ」

 

 

 ここからじゃ顔は見えないが、背中からでもその機械的ボディは窺える。女性キャストだという見立ては間違いないだろう。

 探知ではエネミーにだけ気を払ってたから気付かなかったが……こりゃまたとんでもねぇな。

 それに左腕パーツに描かれた花弁の紋章……女性キャスト……まさか。

 

 

「六芒均衡の二、マリアさんか?」

 

「ん……? ああ。アンタ、アークスかな?」

 

 

 俺の言葉でようやく気付いたらしいマリアらしき人。

 

 

「いやはや独り言を聞かれちゃったか。そいつは少しばかり恥ずかしいね。出来るなら忘れてほしい―――」

 

 

 振り向いて、その顔を認識した時。

 顔をガッと掴まれた。

 

 

「むおっ!?」

 

「えぇっ!?」

 

「うえっ!?」

 

「…………」

 

 

 驚き仰天の俺達にはまるで構わず、両頬を握るように掴んで至近距離から観察してくる。

 こちらはこちらで驚いて言葉もない様子。

 いや、いきなり顔を掴まれた俺の方が驚いてるんですけど!?

 

 

「ぬあ、ぬあにぬあにぬあに!?」

 

「……ああ、失礼」

 

 

 パッと掴んだ手を離される。

 力強いわこの人。まだちょっと痛い。

 黄色と黒のパーツで構成されたローズマリー・シリーズで身を固める青髪(頭部パーツ)のその人は、黒いマスクを着けているような口許で、窺える顔は目元だけだ。マスクと言っても布製のそれではなく、顔半分が黒いパーツで出来ているとでも言えばいいのか。

 二人がハラハラしてる様子で見守る中、事情を聞くことにする。

 

 

「なんですか? あなたに絡まれる謂れはないと思うんですが」

 

「いやすまないね。顔馴染みの昔に似てたもので」

 

「顔馴染み?」

 

「アンタ、両親は?」

 

「一人は知ってますが、不特定多数の遺伝子を混ぜたタイプの試験管ベイビーなので。あなたの顔馴染みっていうのも、それに混ざってるんじゃないですか?」

 

「ほー。聞いたことはあったが、実際に会ったのは初めてだね。不特定多数か……そうすると、まさかねぇ……」

 

 

 また考え込むかと思ったが、「ま、いいか」とあっけからんに言う。

 

 

「重ねて失礼、自己紹介が遅れたね。アタシはマリア。割と古参のアークスさ。ま、アンタはどうやら知ってるようだけど」

 

「そら六芒で女性キャストっつったら、三英雄と並んで40年前の大戦争を戦い抜いたマリアさんしか該当しないでしょ。なぁ?」

 

「え? も、もちろんですよ!」

 

「お、おう! オレも知ってるぜ! あったりまえじゃんか!」

 

「あ、もういいです」

 

 

 二人は知らなかったようだ。

 こいつらアークスの歴史に疎すぎる。

 

 

「三英雄じゃなくて四英雄でもいい筈だけど、本人が辞退したとか」

 

「よく勉強してるねぇ。で、アンタ達は?」

 

「わたしは、ジェネって言います。初めまして、マリアさん」

 

「オレ、モアっていうんだ! よろしくな!」

 

「で、俺はハクメイ。こいつらとのチームリーダーやってます」

 

『試験チームですけどね。申し遅れました。私は管理官のセラフィです』

 

 

 セラフィさんまで通信で割り込んできた。

 六芒の偶数番(イーブンナンバー)の長に偶然お目通りしたわけだし、管理官としちゃ挨拶しときたいのかね。

 マリアさんはふむふむと頷く。

 

 

「そっちの坊主は最近出てきたウェポノイドってやつだろう? アークスの相方として組んでるとか。アタシの方にはそういうのは来ないけどねぇ」

 

「そら、六芒均衡の相方が務まるのなんて早々ねぇ……」

 

「ま、アタシも一人の方が気楽だからそれでいいさ。それじゃあ失礼ついでに」

 

 

 俺達に再び背を向けるマリアさん。

 

 

「この先にデ・マルモスが一匹いるって話さ。目的は知らないけど、ここを探索するのなら気を付けな。老婆心からの忠告だよ」

 

「ほぅ……痛み入ります」

 

 

 そう言って、マリアさんは去っていく。

 デ・マルモス、か……。

 俺達でも戦うだけなら問題ないだろうが、そうだな……。

 

 

「よし。思考実験は中断して、行ってみるか。今日の所はそれまで」

 

「いくのか? きをつけろって言われてたけど……」

 

「みんなでなら、きっと倒せますよ! 頑張りましょう!」

 

「倒さない」

 

「え?」

 

「捕獲する」

 

 

 

 

 

 




血統があるから強いとかのジャンプ的な強さってありますけど、強さを納得させるよりそのキャラの血統で伏線を張ったり意外な人物との繋がりを持たせて読者に驚きを与える事の方が肝心かと思います。
なんでもかんでも才能で片付けられたらつまんないですしね。
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