「うわぁああっ! 落ちるっ!」
「落ちるも何も飛んでるだろーがよ」
足元の床が抜けたのでモアがそう叫ぶが、元々重力に逆らってる奴だから無関係だった。
遺跡エリア。
最初にザッカ―ドを見失ったこのエリアの、前に来た所とは別の地点に、俺達は来ていた。
慌てるだけ慌てて、モアは姿勢を正して飛び直す。
『モアくん、大丈夫ですか? ここから先の遺跡エリアは、足場が悪く非常に危険です。注意してください!』
「おう! つっても、ザッカ―ドのやつさ。またここに来たんだな」
「惑星を彷徨ってるのは、目的の為なんでしょうか……?」
「どーだかなー」
生体反応の軌跡を辿ったところ、どうやらザッカ―ドは別の惑星に飛び立っていたそうだ。
キャンプシップを個人で持っていたとは思っておらず、ナベリウスで生体反応を追っていたばかりいたらしい。他の惑星に行っていたアークスの目撃証言から他惑星でも探査を行ってみたところ、今度はナベリウスに向かってザッカ―ドの生体反応が見つかったとのこと。
ナベリウス以外に行ってるなら、そら見つかるわけないわな。
「あんま考えねー方がいいと思うぜ」
考え込む俺達に、モアが言う。
「研究者って言っても、アイツはわるいやつだ! ジェネの家族とは、ちがう! だから、あんま気にするなよなっ!」
「……ふふっ。ありがとう、モア」
励まされたように笑うジェネ。
俺から話を聞いて、モアなりに考えた結果がそれだったようだ。まぁ、戦う分にはこれで問題ないだろう。
……あれだけ言ってまだそう事が単純だと考えてる辺り、まだまだガキンチョだがな。
「行きましょう! ザッカ―ドを捕まえに!」
意気揚々とするジェネと共に、遺跡の残骸達を足場に進んでいく。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「はぁ……っ、はぁ、はぁ……!」
「ジェネ、だいじょうぶかよ?」
「うん、大丈夫っ! ありがとう」
「ならいいけどさ……」
「まぁ、クールダウンに歩くくらいでいいだろ。これぐらいなら」
鎌を持った人型に近い蟲系のダーカー、プレディガーダを狩り、ジェネは息を上げていた。
あいつ高速移動でいきなり傍に現れてくるからなぁ。何度か戦闘してて、何度か危ない所があった。ドライブを使えばその動きも見切れるんだろうが、使用制限がある設定だからこんな何でもない場面でそう使いたくもないし。まぁ高速移動もクールタイムが必要そうだから、その間に攻撃したが。
「そうだ! リーダー。このまえの、ぱいろそーさー? ジェネに貸してやったらいいんじゃないか? そしたら楽に戦えるぜ!」
「今はダメだな」
「なんでだよ!? ケチ!」
「ケチるってんなら、そうだな」
いつでも振るえるようにエレキを腰に差しながら、モアに言う。
「あれ、普通の武器よりフォトンの消費が激しいんだよ。しかも流し込むフォトンのコントロールでオンオフ付ける仕様だから、普通のアークスなら持ってるだけでじわじわフォトンを奪われる」
「あ……じゃ、じゃあジェネはダメだな」
「?」
「強敵だとかで苦戦しそうな時には貸してやるが、今はその時じゃない」
そもそもあれ切れ過ぎるから、普通に持ち歩くには危険なんだよな。触れただけでスパッといくし。
当たり前だが俺の武器は俺が使う前提だから、俺が扱うに長けた機能を付けている。その多くはフォトンのコントロールに左右されるので、苦手なジェネには扱いづらいだろう。
それにしても……。
「二人共、そろそろ気ぃ締めてけ」
「え? なんでだよ?」
『今のダーカーも、もしかしたらザッカ―ドが操った可能性があります。出現の仕方が前回と酷似しています』
通信からセラフィさんの声。
操ったかどうかまでは分からんが、ウォルガーダの時と似たような感じはあった。計測器でもそう出たなら、そうなのだろう。
『詳しい事は分かりませんが、特殊な装置を開発したのかもしれませんね』
「ダーカーを、操るアークス……ですか……」
天敵を使役するアークスに対してか。天敵に使役されるダーカーに対してか。
疑問を投げかけるような言葉をジェネが吐いた時。
「褒めてください、ほめてください……とても、とても、いい、ものでしょう?」
「!?」
「ザッカ―ド!!!」
突如声が掛かり、エレキに手を添える。
こいつ、探知の中にもいきなり現れやがった!?
転送装置でも使ったのか……? だとしたら、何の為に?
「ふふふ、はははっはあははははは!!」
驚きの表情を浮かべる俺達がおかしいのか、狂おしく笑う。
「……わざわざそっちから出向いてくれるたぁ、とうとう観念したか? それとも、自分が何をしてるのかも分かってねぇか?」
「ふざけるなよ! お前がしてることは悪いことだ!」
「割るい? ワルイ……悪い。なぜ」
目の焦点をモアに合わせるザッカ―ド。
「あぁ、あああ、そうそうそうか」
その姿を確かめて、納得するように頷いた。
……なんだ?
疑問が浮かぶ俺を差し置き、ザッカ―ドは言う。
「お前、何かと思えば……デキソコナイか……」
「っ!」
そう言うやいなや、ザッカ―ドは背を向けて逃亡を始めた。
転送装置で現れた癖に、逃げるのは自力……? 奥の方に誘い出す気か!?
「まちなさい……っ!」
「そう何度も逃がすか、よっ!」
その足に向けて、ラ・フォイエを放とうとしたところで―――
「っ! チィッ!」
その間に立ち塞がるように、大盾を持つダーカー、グヴォンダ数体が現れた。立て続けに、上空にエルアーダも数体。
奴への視界が塞がれ、テクニックが中断される。
目に見える範囲ならどこまでも届くとは言ったが、逆に言うと視界に入らなければどれだけ距離が近くても届かない。暗闇などで光がないから見えない、であれば問題ないが、障害物があるから見えない、では届かないのだ。
くっそ。下手に跳んで視界を確保しようにも、上空じゃあエルアーダのサンドバッグ。アークスだけあって、対アークスの備えはしてあるってことか。
「仕方ねぇ。こいつら片付けてさっさと行くぞ!」
「はい! モア! 追いかけましょう!」
「……あぁ、うん! 行こう!」
エレキを引き抜き、敵の群れに向かって先陣を切る。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「まさか、あいつ……」
―――
お前の役割はもう終わりだよ。
(ちがうちがうっ! ちがうんだ! オレは……デキソコナイじゃないっ!)
――――――――――――――――――――――――――――――――――
『平和の為に戦うアークスであるあなたが! たくさんの命を奪うだなんて……! あなたは……っ! 何の為に研究者になったの……!!』
頭に浮かぶのは、怒りの感情をぶつけてくる少女の表情。
「なんでなんで、怒るのでしょう。こわい……怒らないで……おこらないで」
ザッカ―ドは、逃げる。
逃げる。
逃げる逃げる逃げる。
逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる。
逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる。
逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる。
逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる。
「イタイ……痛いっ!! アタマが!! うわぁぁぁぁっ!」
頭を抱えた無茶苦茶なフォームで、逃げ続けて。
しかし彼の後ろについて回る恐怖。
「見つけたぞ、ザッカ―ド!! 逃げられねぇってばっ! あきらめろ!!」
「いや、そういうの周りを片付け終わってからにしてくれる!?」
その一つが声となって届いてくる。
先程の
同行するアークスは、進行上のダーカーを相手にしながら、ザッカ―ドへと迫ってくる。
「あ……あ……んんっ? 近寄るな。嫌いだ、おまえ……」
虫でも払うかのような口振りで吐き捨て。
「チッ……!」
ザッカ―ドはもう一度逃げ出す。
今度は無茶苦茶なフォームではなかった。
少なくとも、今何から逃げればいいかは分かったから。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……っのやろう! セラフィさんっ、ザッカ―ドのやつはどこだってば?」
『このまま北北東の方向に進んでください。そこまで遠くには行っていません!』
「よし! リーダー、ジェネ、行くぜ!」
俺らに押し付けといてよく言えたもんだな。
瀕死だったエルアーダの胴体に、エレキを突き立てる。電撃を流し、消滅させた。
周囲のダーカーの掃討が終わった事を確認し、一息つく。
「近くにはもういないようだが、いつまた出てくるかもわからん。武器は持ったままでいろよ」
「はい。…………」
「ジェネ? どうかしたのかよ?」
「いいえ、なんでもないですっ。……行きましょう」
そうは言うが、ジェネは周りの様子を探るばかり。
周囲に警戒を払っている……訳ではないようだ。
「ジェネ。今はザッカ―ドだ。考えるのは後にしろ」
「は、はい!」
過眠症の疑いがあるので、PSO2にログイン出来ないまま寝て過ごす作者です。
短めになりますが、ここで区切らないと変な感じなるので……