「やっぱり……ここ、わたし……」
全力疾走して体力が尽きては本末転倒なので、適度に歩いてクールダウンし、落ち着いたら走る。それを繰り返す。
そのクールダウンで歩いている最中、ジェネは呟く。
……一体何がそんなに気になっているのだか。
『これ以上先は、アークスの先遣隊も足を踏み入れたことがありません。十分注意して進んでください。遺跡のかなり奥深くで、生体反応を感知してます』
「やっぱザッカ―ドは奥へ誘い込むつもりか。野良のダーカーに襲われない何かを開発したのか、或いはそれも即座に操れるのか……」
どちらにせよ、あいつがダーカーに襲われて、獲物を横取りされる心配はなさそうだ。
その分俺達に矛先が向くわけだが、強行軍する必要はないと見るとして。
「ジェネ。さっきからどうしたよ」
「……昔ここに、来たことが……」
……ここに?
周りを見回してみても、そこら中に苔の生えた施設の残骸があるのみで、人が住んでる気配は全く感じられない。
そもそもこの辺は今ほどでなくともダーカーがうようよしてるいる危険地帯なのだから、子供を連れてくる場とはとても思えない。
モアもそう思ったのか。否定する意見を口に出す。
「なーに言ってるんだよ! 子どもの頃に似たところに来たんじゃねーの? さっきセラフィさんが先遣隊も来たことないって言ってたじゃんか!」
「そ……そう、ですよね」
「…………ふむ」
まぁ、一応気に留めとくか。
「それよりジェネ、お前体調はどうなんだ?」
「えっ?」
「え? じゃねーよ! どうなんだよっ!」
『ジェネちゃんを心配しているんですよ。優しいのね、モアくん』
「モア……ありがとう。大丈夫よ。わたし、まだ戦えます!」
「ふ、ふんっ」
ぷいっと顔を逸らし、照れを隠すモア。
変な所で意地っ張りな奴だよなぁ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
遺跡の奥地。
ダーカーがそこら中にいる。
大型ダーカーこそ出なかったものの、数が数だ。二人も予想以上に頑張って戦っているからフォローは少なめとはいえ、頑張った分ジェネは疲労困憊。モアもミスが目立つようになってくる。
今は俺がラスト一匹のプレディガーダを相手している所である。
ガキンッ、と音が響く。
プレディガーダが下段から振り上げた鎌を、左に持つエレキで受け止めた音だ。
右に持つエレキで袈裟斬り。向こうのもう片鎌で受け止められる。
プレディガーダは鍔競り合いを嫌って離れようとしたが、その前にエレキの電撃が流れ、向こうの動きを止める。
左のエレキをアイテムパックに仕舞い、入れ替わりで風杖『ウィンド』を取り出し、左手でウィンドを持つ。
「ザン・並列起動2」
ブーメラン型の風刃がプレディガーダの両肘を切り裂く。
俺の感応力じゃ闇雲に放てば切り傷しか与えられないが、細身の部分を狙えば十分に切り落とせる。法撃武器が無かったらそれも出来ないんだけど。
武器を失ったプレディガーダの顔面に、エレキを突き立てる。
それがトドメとなり、プレディガーダは黒い靄となって消えた。
ウィンドを仕舞い、エレキを取り出す。
「ひとまずこれで終わり、っと」
「あぁ……ひどい人達だ……。私の下僕を、壊してしまったんですね……」
それを見ていたザッカ―ドが嘆く。
今いる場所は大きな広場となっている場所で、俺達の後方以外に道はない。
とりあえず一見は、俺達が追い詰めた形である。
「ザッカ―ド! もう逃げられねーぞ! ちょこまか逃げやがって!」
勇み立って前に出るモア。
それに並んでジェネも前に出る。
「どうして……? 研究者であるあなたが、こんなことを……! だって、研究者は……!」
「ジェネ! あいつはお前の家族とはちがうんだ。家族と重ねて、ジェネが悲しんだり……、そんなことしなくて、いいんだからなっ!」
「でも、わたし……知りたいし、信じたい。最初から、悪い人なんかいないって……」
「ジェネ……」
「……ま、どっちにしろだ。捕まえなきゃ碌に話も出来やしねぇだろ」
「そ、そうだな! まずは捕まえるぞ、ジェネ!」
モアもそう言うが、ジェネは乱暴な真似をしたくないようで。
刺激しないように、優しく強く、呼びかける。
「ザッカ―ド! わたし達と、オラクルに帰りましょう! そこで、ちゃんと裁きを受けて、罪を償いましょう!」
手を差し伸べるジェネ。
対して、ザッカ―ド。
「悲しい、かなしい、悲しい、悲しい! 愚かなアークス、愚かな! 罪を償いたいなら、私が与えてやろう……与えてやろう!」
「ザッカ―ド! ……どうして!」
どうして、とジェネは聞くが。
俺の頭には一つ、仮説が出来ていた。
「……一つ、聞いといてやる」
証拠も何もない、ただの当てずっぽう。
しかし一応聞いておいてやろう。
今も狂い悶えるようにしているザッカ―ドに届くかどうかは知らんが、最悪どっちかがここで死ぬわけだし。
別に大声で問い掛ける必要はないので、聞こえる程度の声量で問うた。
「お前は一体……
答えはなかった。
ただ、明確に反応があった。
それを覆い隠すように、ザッカ―ドは吼える。
「貴様らぁー……全員、ぜんいん!! 処刑―――!!」
「……図星か。まぁ、後でゆっくりと聞いてやる」
ザッカ―ドは大量のダーカーを呼び寄せ、広場があっという間に埋め尽くされる。
ひぃふぅみぃ……大体五十体くらいか。
小型のダガン、更に小型のクラーダなどが中心だが、五体に一体ぐらいの割合でエルアーダやグヴォンダ、キュロクナーダなどが見受けられる。
そしてその中央に聳え立つ、大型ダーカー。
『あの甲羅……ゼッシュレイダ!?』
通信のセラフィさんからその個体名を告げられる。
隣にいる二人があまりの多さと大型ダーカーの組み合わせにたじろぐ。
『みなさん、この戦力では勝ち目がありません! 急ぎ救援を呼びますので―――』
「お前ら」
撤退してください、と。
セラフィさんがそう言う前に、二人に呼びかける。
「二十体ぐらいなら、いけるか?」
「え……? は、はいっ」
「お、おおお、おうっ!」
「俺があのデカブツと三十体ぐらいを相手する。残りはお前らが倒せ。いいな?」
『!? 待ってください! それではハクメイさんがあまりにも危険です!!』
セラフィさんの待ったが掛かるが、俺は一歩前に出た。
『以前のウォルガーダとの戦いを忘れたのですか!? ゼッシュレイダはあれよりも更に硬く強いダーカーなんです! ハクメイさんの感応力では、あの鎧を貫くことは―――』
「俺が以前のままなら、ね」
『え?』
アイテムパックから
「こんなこともあろうかと用意しておいた、俺の新しい
普段使いのマグとは違う、専用のマグ。
「
そいつを鷲掴んで、叫ぶ。
「炎神『プロメテウス』!!!」
火炎の魔神が、その姿を現した。
引っ越しでドタバタしてました。
26日にエピソード6とのことですが、果たしてどうなるでしょうね。
敵方、最初からクライマックスみたいなことしてるみたいですけど。
41話、改稿しました。
マトイとセラフィさんは面識ありました。すみません。