PSO2 ~煌々たる白明~   作:クビキリサイクル

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一つの結末。一つの始まり

 

 

 

 

 

 チームで行動し、戦闘するに当たって、そのリーダーに最も求められるものは何か。

 それは、戦略眼。

 敵の実力を見極め、味方の戦力とを照らし合わせ、素早く判断する能力である。

 先のブラックパウンドも、単純な実力より、リーダーの戦略眼が優れていたことが、チームメンバーを欠けさせることなく戦えていた要因だった。次元の違い過ぎた仮面の男と遭遇することさえなければ。

 勝てると思えば戦い、勝てないと思ったならば逃げる。逃げられない戦いならば、せめて工夫する。

 そうした判断を下せる能力を、チームリーダーには求められる。

 

 そしてハクメイも、この戦略眼は優れている人材だった。

 PMによる感知によって敵と味方の実力を計りやすいのもあるが、己の感覚を信用し、それに従う決断力も確かなものだ。

 今回の戦いにおいても、ジェネとモアならば周りの小型ダーカーを15~20体程ならば倒せると判断し、自分はそれ以外のゼッシュレイダを含むダーカー達を倒せると断じた。

 そして事実、ハクメイはゼッシュレイダを倒し、ジェネとモアも順調にダーカー達を倒していた。

 ハクメイの戦略眼に間違いはなかった。

 誤算があったとすれば―――

 

 

 

 

 

「ジェネ!!」

 

『!? ジェネちゃん!』

 

 

 キュロクナーダの棍棒で打ち倒されたジェネを見て、セラフィが叫び、モアが飛び寄る。

 

 

「……ぅ、く」

 

 

 ジェネから呻き声が聞こえ、生きていることを確認した。

 しかし、モアに安堵はない。

 少なくない血の量を初めて見た、というのもあるが、それだけではない。

 頭部を打たれ、いつも笑顔を浮かべていたジェネの顔が、頭から流れた血に染まっている。知識をそれ程持たないモアでも、頭への衝撃と流血がどれだけ危険かは知っていた。

 今は生きていても、このままでは死んでしまうのではないか。

 モアの顔から血の気が引いた。

 

 

 

 ―――誤算があったとすれば、それはプロメテウスを使った戦闘の影響が、二人の戦闘にも出た事だった。

 

 

 

 広場全体に行き渡る衝撃。それは足場を揺らされているとも同然であり、離れた場所にいた二人も例外ではなかった。モアは飛んで地に足をつけていなかったが、それでも腹の底に響く衝撃。足をつけていたジェネはそれ以上である。

 それでもダーカーが最後の一体となるまで油断なく戦っていたが……肝心な時。

 キュロクナーダが棍棒を振り上げたのを見て、ジェネがそれを回避しようとした時に、プロメテウスの『クリムゾンブラスト』によって足場が大きく揺れた。

 それによって後ろに跳ぼうとして出来なかったジェネの頭に、キュロクナーダが容赦なく棍棒を叩きつけたのだ。

 

 

「ジェネ! おい、ジェネ! しっかりしろよ! 今回復するからなっ!!」

 

 

 モアはアイテムパックからソルアトマイザー―――一定範囲内のアークスをまとめて回復させるアイテム―――を取り出し、すぐに使おうとする。

 が、それを待ってくれるようなダーカーではない。

 

 

『! モアくん、後ろです!』

 

 

 再びキュロクナーダが棍棒を振り上げる。

 セラフィは叫ぶが、当のモアはジェネを回復させることにしか頭になく、セラフィの声も耳に入らない。

 一秒先の光景を想像し、セラフィは目を瞑った。

 

 が、そうはならなかった。

 振り上げた棍棒が、ワイヤードランスに絡め取られたからだ。

 

 

『……え?』

 

 

 棍棒を引っ張られ、キュロクナーダの体勢は崩れる。

 そして絡めとったワイヤードランス―――刺爪『ブラッドクロウ』のワイヤーが急速に縮んでいく。

 

 

「グラップル……チャージッ!!」

 

 

 ハクメイは勢いそのまま、キュロクナーダの一つ目にドロップキックを叩き込んだ。

 PDで強化された蹴撃はキュロクナーダの身体を大きく飛ばし、広場外の湖に退場させた。広場の端ではあったが、本来はここまで飛ばせるものではない。

 飛ばされただけで消滅したわけではないのだが、それに構う程暇ではない。湖に落ちたのを見届けもせず、ハクメイはジェネに駆け寄る。その背にいたプロメテウスは消えている。

 モアが使ったソルアトマイザーが効果を発揮し、血は止まったが、依然立ち上がる気配は見せない。

 

 

「ジェネっ! おい、しっかりしろ! 倒したぞ、オレたち!」

 

「……っ、はい。……ザッカ―ド……捕まえて……、みんなで……帰ろ……」

 

 

 朦朧とした意識でも笑って見せるジェネに、ハクメイは内心舌打ちした。

 ジェネを責めてる訳ではない。

 自分が下した判断を、自分の戦闘の影響で台無しにして、その結果ジェネが傷付いた。ハクメイはそれに気付いているのだ。

 本来責められるべきは自分の筈。

 だというのに、ジェネはそれを詰るでもなく、安心させるように笑っているのだ。

 わたしは大丈夫だと。心配しないでくださいと。

 今ここで立ち上がれもしない癖に。

 

 

「う、うわぁぁっ! なんだなんだっ!!?」

 

 

 広場の揺れが、唐突に大きくなった。

 

 

『今の戦いで、足場が崩れ始めています! 危険です! 今すぐ退避してください!』

 

「チッ、本格的になってきやがったな。モア!」

 

 

 ブラッドクロウをアイテムパックに仕舞い、ジェネを背負うハクメイ。

 あまり頭を揺らしてしまいたくはないが、急いで退避しなければならない。代わりに背中の部分でフォトンの光輪を作り、固定する。

 揺れる広場から外へと足を踏み出した所で、ジェネが弱弱しく呟いた。

 

 

 

「ハクさん……ザッカ―ドを……」

 

 

 

「…………」

 

「ばか! アイツつれてたらお前どうすんだよ! ジェネひとりじゃ動けねーだろ! リーダー! ジェネを連れてここからはなれようぜ!」

 

『ハクメイさん! 急いで脱出してください!!』

 

 

 モアは先んじて飛んでいく。

 ハクメイも、ジェネの呟きを意に介さず、走り出した。

 

 

「だ、だめです……! わたしは、大丈夫ですから……!」

 

「うるせぇ!!」

 

 

 

 

 

「命張って救われた命だろうが!! お前が大事にしないで、どうすんだ!!」

 

 

 

 

 

「っ!」

 

 

 目先の地面にヒビが入った。

 躊躇わず踏み出していく。

 

 

「……そうでした」

 

 

 足元の地面が崩れ、体勢を崩し掛けた。

 踏ん張って事無きを得る。

 

 

「……わたしを助ける為に、家族は犠牲になりました……。だから、わたし……まだ、死ねない」

 

 

 広場から出る道が崩落し、途絶えた。

 大きく飛び込んで、向こう側へと着地した。

 

 

「ハクさん……ごめんなさい」

 

 

 ハクメイの背中にいたジェネは、そう言って意識を手放した。

 

 

 

 

 

「は……ははははははは!!! こわれろこわれろこわれろ!」

 

 

 

 

 

 崩落していく遺跡広場の中、ザッカ―ドの狂笑が響く。

 それを背中に受けながら、ハクメイとモアはその場を後にした。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 後日、崩落した遺跡エリアに別働隊が再調査に向かったが、そこでE.M.A研究所爆破事件の犯人、ザッカ―ドの生存は確認できなかった。

 生体反応を広範囲におよんで調査するが、確認できず、上層部は犯人の死亡でこの事件を幕引きとした。

 多数の死者を出したE.M.A研究所爆破事件は、原因が解明されぬまま、後味の悪い結末となった。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「うええええええっ!!! なんでチーム解散しなきゃいけないんだよ!」

 

 

 ザッカ―ド捕縛作戦が失敗に終わってから、数日。

 俺達はショップエリアの一角へと、セラフィさんに呼び出されていた。

 内容はまぁ、モアが今叫んだ通りで。

 

 

「いいじゃんいいじゃん! ずーっと三人でやればさ!」

 

「とても残念ですが、このチームは実験的なものでしたので……」

 

 

 セラフィさんの言によれば、ウェポノイドを入れた俺達試験チームの運用は成功とされ、単独で行動していたウェポノイド達もアークスチームの一人として扱うことになったそうだ。

 既に俺達以外にもアークスと共に行動しているウェポノイドもいて、今後はモア以外にもアークスにつけられるウェポノイドが増えていくとのこと。

 なので、試験としてウェポノイドのモアをつけていた俺達チームの存続理由は無く、これにてお役御免というわけだ。

 

 

「また、このメンバーで頑張りたいですね。本当にお疲れ様でした」

 

 

 不満だぜ、と言わんばかりの膨れっ面を見せるモアが、口で何かを言う前に。

 ジェネが口を開いた。

 

 

「モア、セラフィさん……ハクさん! 本当にありがとうございました!」

 

 

 ジェネは、笑って見せる。

 多分モアでもわかるくらいに、無理矢理。

 

 

「次に会う時には、わたしもっと強くなります!」

 

「…………ジェネ」

 

「…………」

 

 

 ……何かを言おうとして、何も言えなかったモアが、俺を見る。

 これでいいのかよ、と。

 

 まぁ、ジェネの考えてそうな事は大体分かる。

 今は傷跡も後遺症もなく治って何の別状もないとはいえ、ジェネが怪我をした事が原因であの作戦は失敗に終わった。

 ザッカ―ドを捕まえられず、崩落に巻き込まれて死んだ。

 事件の経緯を知ることなく、オラクルで裁きを受けるでもなく、人一人の命が失われた。

 それをジェネは、重く受け止めている。

 

 自分があの場で倒れるような事が無ければ、もっと強ければ。

 作戦は成功して、ザッカ―ドを捕まえられたんじゃないかと。

 そういう風に考えてるのだろう。

 

 

「だから、絶対にまた会いましょうね!」

 

 

 それを踏まえて。

 俺は言った。

 

 

 

 

 

「なにお別れムード出してんの?」

 

 

 

 

 

「えぇっ!?」

 

 

 驚愕の表情を浮かべるジェネ。というか三人。

 

 

「まさか、俺が『ああ、元気でやれよ』とか言ってお見送りするとでも思ったか?」

 

「で、ですがハクメイさん。先程も申し上げた通り、このチームは今回限りの実験的なものでして……」

 

()()()()()()()()()、でしょ」

 

 

 スクリーンを呼び出す。

 んで、ポチポチポチ……っと。

 

 

「? なにをして……!」

 

 

 ジェネの方に通知が来たようだ。

 スクリーンを呼び出し、ジェネはそれを確かめ、目を見開く。

 

 

「……これ、って」

 

()()()()()()として組むのにまで、口出しされたくないね」

 

 

 それは、招待状。

 オラクル上層部に組めと言われて組むチームではなく。

 俺がチームリーダーとして自主的に組む、俺のチーム。

 そのチームへの招待状が、ジェネの手元に展開されていた。

 

 

「――――――! なぁなぁリーダー! オレには!?」

 

「え? いや、別にお前はいいかなって」

 

「なんだよそれ! 仲間外れにすんなよな! オレもチーム入るってば!!」

 

「あーはいはい」

 

 

 モアの方にも送って、来たと同時に承認される。

 こいつが俺のチームメンバー第一号か……まぁいいや。

 ジェネは招待状を見続け、未だ承認をしない。

 

 

「なんだジェネ、嫌か?」

 

「嫌なんかじゃないです!」

 

 

 強くそう言われた。

 ジェネは続ける。

 

 

「でもわたし、ハクさんの足手纏いで……ザッカ―ドの時だって、わたしがもっと、もっと……!」

 

 

 だから。

 あれは俺の判断ミスで、お前はちっとも悪くないんだって。

 そう言ってもジェネには響かないんだろう。

 どうしてこう、履き違えてばかりなんだろうか。

 

 

「もしも」

 

「……?」

 

「もしもの話だけどな」

 

 

 だから、それは言わない。

 響く言葉を選んで、言う。

 

 

「もしもお前が自分のフォトンを、身体に負担なく、最大限に発揮するようコントロール出来たら、どうなると思う?」

 

「えっと…………一人前に戦えるようになります?」

 

「三英雄を遥かに上回る最強のアークスの誕生だ」

 

「――――――え?」

 

「お前のフォトン感応力は、アークスとしての素質は、それ程までに天性のものだってことだ。そもそも感応力が高過ぎて身体に負担が掛かるアークスなんて聞いたことがあるか?」

 

 

 事実、六芒均衡最強のレギアスだって、ジェネ程のフォトンは携えていなかった。

 理不尽な話だろう。

 それだけの力を持っていながら、得られた結果が普通以下のアークス。

 俺のように弱いが故に操りやすい奴でない以上、独学でコントロールする努力をするのも限界がある。

 だからこそ。

 

 

「そんな桁外れのフォトンをコントロールする術をお前に学ばせるのに、俺以上の適任がいるか?」

 

「…………」

 

「そんな将来有望な部下を、みすみす俺が手放してやるとでも思ったか?」

 

 

 何もジェネだけが得する話じゃない。

 部下であるジェネが強くなれば、俺にだって得はある。

 俺の為に俺が鍛える。ただそれだけ。

 

 

「今力不足なことなんざ気に病むな。俺だって、才能がなくてアークスになれないって言われた自分を踏み越えて、今ここにいるんだ」

 

「……ハクさん」

 

 

 俯いて、スクリーンを見ながら逡巡するジェネが、ぽつりぽつりと問い掛けてくる。

 

 

「わたし……強くなれるんでしょうか?」

 

「お前にその気があるならな」

 

「ハクさんと並んで、戦えるようになるんでしょうか?」

 

「追い越されないように、俺も強くならなきゃいけないような時も来るんじゃねぇの?」

 

「誰かを守れるわたしに、なれるんでしょうか?」

 

「ああ。なりたい自分に、なってやろうじゃねぇか」

 

「……なりたい、自分に」

 

 

 そしてジェネは。

 俺の招待を、承認した。

 

 

 

「頑張ろうな、ジェネ」

 

「…………っ、はいっ!」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……っ」

 

 

 薄暗い闇の中、一人歩いていた。

 右目が痛い。とても。とても痛い。痛くて泣き出しそうだ。なんでこんな事になったんでしょう。誰が私の目を……目を!

 ああ……そうだそうでした。

 私が―――

 

 

「目的……研究……なすべき、ぐぅっ……ごほっ……!」

 

 

 血反吐を吐く。内臓を痛めたか……? いや、骨が内臓に刺さっているのか……?

 まぁいい。今はそれよりも、なすべき事がある。

 歩いて歩いて、ようやく辿り着いた。

 そこは見慣れた研究設備。研究室。研究、研究研究研究!

 

 

 

「ふ……これ、で……ダーク……ファルス……が……ふふ……」

 

 

 

 

 

 鼓動が、小さく鳴った。

 

 

 

 

 

 




文章力が迷走中。
ただ一つ言わせてもらいます。ここから二年もは絶対に必要なかった。

EP6始まりましたね。シバ様めっちゃイキりまくってて、でも敵だから最後は負けるんだなぁと思ったら、なんだか可哀想になってきました。原作のアークス達が今のところ太刀打ちできなさすぎなのですが、こっちで温めてるネタを考えると、開始時点で主人公楽勝かも……。どうしてくれましょう。

一応esストーリーは一旦終わりで、ちょろっと日常しながらリリーパに行きましょうかね。その前にブルージーさん辺りでも差し込むかな。
まぁ大半のウェポノイドがブルーノまで出てないという理由で出せないんですがね。
また色々(ファントムレベリング含め)忙しくなってきたので、更新は遅くなるかと思います(いつも)

最後になりましたが、☆10評価をつけてくださった
HNさん!
遅まきながら感謝を述べます。ありがとうございました!
これからも気長に作者とハクメイを見守っていてください!
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