PSO2 ~煌々たる白明~   作:クビキリサイクル

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【Episode1-1】 『明日を待つ』
熱血な教え子ができてもた


 

 

「確か、この辺だったか?」

 

 

 後日。

 俺は再びショップエリアに来ていた。

 

 

(この辺に、俺の同期とかいうレダ……確か紫リーゼントしたお調子者だったかと思うが)

 

 

 士官学校で同期だったとはいえ、そんなものいちいち覚えてられない。

 しかし、その特徴的な頭を見れば遠くからでもすぐに分かる筈――――――ほらいた。

 近付いて話し掛ける。

 

 

「うっす。確かレダ、だっけ?」

 

「お、主席サマじゃんか。なあ、聞いてくれよ。オレ、この前のナベリウスで修了任務を受けてたんだけどさ……」

 

「…………」

 

 

 聞いてもいないのに語りだした。

 まぁ元々、こいつに話を聞くために来たっちゃ来たんだが……余程誰かに語りたかったんだろうか。

 レダは、右眉の上と鼻の頭に絆創膏を貼り付けた、リーゼントが特徴的なニューマンだ。

 見るからにチャラ男って感じなんだが、こいつも生き残ってこられたのか。

 

 

「現場で体験したから知ってる。ダーカーの大発生があったな」

 

「……ああ。お前もナベリウスで受けてたんだよな、修了任務。すごかったよな、ダーカーの数……」

 

「ああ……」

 

 

 結局原因は分からず仕舞いだったが、死亡者が幾人か出た中で、こいつがそのリストに入らなかったのは幸運だったのだろう。

 俺? 俺は実力だし。

 ゼノ先輩がいたから楽だったけど、アフィンを担いでもあの場を凌げる自信あるし。

 強い個体が現れたなら話は別だったが、そんな話は聞いてないしな。

 

 

「ただ……」

 

「ん?」

 

 

 レダは、顔を俯かせて言う。

 

 

「たださ、あの時、ダーカーの中に人を見た気がするんだ」

 

「あ? 人?」

 

「一緒に居た奴等、パートナーと合流した組の奴等は誰も信じてくれなかったけど、オレは確かに見たんだよ」

 

 

 人、だと?

 ナベリウスには、ダーカー以外にはエネミーとして扱われている原生種の存在しか確認されてない筈だ。

 同じアークスだとしたら、お互いが見える距離にいるなら、合流するために近付くだろう。

 それなのに、しかもあんな異常事態の時に、人?

 

 

「どんな奴だった?」

 

「……信じてくれんのかよ?」

 

「お前と一緒に居て、お前が見たってのが見えなかったわけじゃないしな」

 

 

 それに、俺だけに見えて他には見えなかった存在なら、俺も昨日体験した。

 

 

「それで? どんな奴だ」

 

「女の子、みたいだった……」

 

「……女の子?」

 

「あれは夢だったのかな……。いや、それであんなにハッキリ見えるわけがない! 間違いなくいたんだ、あそこに……」

 

 

 ……とすると、あの女ではないのか?

 若くない訳じゃないが、女の子と表現するには些か子供染みてなさすぎる。

 かといって大人っぽいかと言われても疑問だが。

 

 

「でも……連れて帰っては……」

 

「…………」

 

「いや、でも、しょうがねぇだろ! オレ達だって自分の身を守るのに精一杯だったし、オレ一人が言ってることに付き合う訳にはいかないって」

 

「別に責めてるわけじゃねぇし、俺に弁解しても仕方ねぇだろ」

 

「……そ、そうだけどよ」

 

 

 レダはまた顔を俯かせてしまった。

 もしかしたら、その女の子は本当に現実で、そうだとしたらあの危険地帯に一人でいるのを放っておいてしまったのかもしれないと、悔いているのかもしれない。

 しかし、他のメンバーの言う事ももっともだ。

 全員がその存在を確認したのならともかく、一人が言っている事のために全員を危険に晒す判断はするべきではない。夢や幻の類の線を捨てきれない状況で、救助のために動ける程余裕などなかったのであろうから。

 

 

(動けたとしたら、俺とアフィンの組くらいか…………)

 

 

 だが、実際にあの時その女の子を確認できたのはレダであり、俺達は影も形も見ていない。

 言ってもしょうがないだろう。

 今からでもやれるとしたら、またナベリウスへ行った時に気に掛けるくらいだ。

 ダーカーの大発生があったあの地帯で、アークスでもない一般人が一日跨いでも生き残れるとは思えんが。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「君は、新人のアークスかね?」

 

 

 同じくショップエリア。

 道を歩いている最中、老獪のアークスに話し掛けられた。

 

 

「ええ。昨日ナベリウスで修了任務を終えました」

 

「そうか。では先日のダーカー大発生も体験しているみたいだな」

 

 

 ふむ。

 新人以外でも、あの話は知れ渡ってるのか。

 目の前のご老人は、歴戦の戦士という風体の皺の多い褐色の男だ。長めの白髪を後ろに一本に纏めていて、老体とは思えない程引き締まった体をしている。

 

 

「私は長年アークスとして活動してきたが、あそこまでの規模の発生はほとんど聞いたことがなかった」

 

「……そうなんですか?」

 

 

 資料は読む方だけど、そういう歴史的な事はあまり詳しく掘り下げないから分からんが。

 かなり歳いってるだろうに、そんな長い間でも稀なことだったのか?

 

 

「ああ。しかも、あれ以降断続的に発生するようになっているとも聞く。一体何があったのだろうな……」

 

「現場の俺にとっては本当に突然で、予兆みたいなのは全く感じませんでしたが」

 

「ダーカーとは元来そういうものだ。私も昔は、突如現れたダーカーに慌てふためき」

 

 

 ……話が長くなりそうだったので、適当に聞き流すことにした。

 そのおじいちゃんの話は、本当に長かった。

 なんでおじいちゃんおばあちゃんって、こう話が長い人ばっかなんだろうね。

 ボケてるのか、同じ話が三回目に突入したところで、彼は「そういえば」と言う。

 

 

「ダーカーの中に倒れている女の子を見たと、わめき、悔いていた馬鹿者もいたな……」

 

「……あー」

 

 

 レダの事か。

 

 

「非情な話だが、戦場に犠牲はつきものだ。あいつはいつになったら吹っ切れてくれるのやら……」

 

「…………」

 

 

 別に、わめいて悔いることが悪いこととは思わんけどね。

 助けられなかった命を「戦場に犠牲はつきものだから」なんて理由で簡単に諦めてしまうような奴が、この先長くやっていけるのか。

 戦う理由を持たず、ただ戦うだけの戦士が。

 戦う理由を、簡単に諦めてしまえる戦士が。

 果たして命の危機に瀕した時、「死にたくない」と思えるものか。

 まぁ、アイツの事はアイツが決めるといいか。

 世話焼く程親しくもねーし。

 

 

(それにしても、倒れてた女の子か……)

 

 

 レダに聞いたときは女の子を見た、としか聞いていなかったが……倒れてた、と。

 衰弱してたのか、気絶していたのか。

 そうなると、ますます生存は絶望的か。

 

 

(ま、どーでもいいか)

 

 

 別に、俺の知った人でもないしな。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 マターボードが少し埋まった。

 

 

(……どうやら、俺の行動を反映して自動的にマターってのが埋まっていく仕様のようだな)

 

 

 俺はショップエリアのベンチに座り、マターボードの検証を行っている。

 何のことは無い。あの女の言う通り、マターボードの導きのままにってことだ。

 よく分からないままに動く不安はあるが、しかしこのままどういうものかもわからないものをずっと持ち続けられる性質でもない。

 検証せずにはいられない。

 

 

(アークスはしばらくナベリウスで大量に溢れたダーカーを討伐するよう推奨されてる。俺もこの後ナベリウスに行くが、残りのマターとやらはその道中に集められるだろう)

 

 

 しかし、集めたところでなんだと言うのか。

 まるで宿題としてこういうのをやってきなさいと言われているようなもんだが、宿題ってのは学校の評価を得る為にやるものだ。

 物理的に報酬を渡されるものではない。

 このマターボードはその上、どういう意味を持つのか全く分からない。

 

 

(―――偶時を拾い集めて、必然と為す。か……)

 

 

 言葉をそのまま受け取るのであれば。

 偶然起こる事を集めて、必ず起こる事へと変える。

 偶然ではなく、必然に起こる事へと変える。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

(……馬鹿馬鹿しい)

 

 

 するってぇと、なにか。

 このマターボードとやらは予言書かなにかだとでも?

 俺がこのマターってのを集めていけば、この中にある本来偶然でしか起こり得ない事は、絶対に起こる事に変わるとでも言うのか?

 馬鹿馬鹿しい。

 馬鹿馬鹿しい、が……。

 

 

(だが、俺がこの通りに動いたら、そこにレダと……そういや名前聞いてなかった。あのじいさんがいたのも事実)

 

 

 そこでどういう話をされるかとはなかったが、その二人に話を聞けというマターがあった。

 そして、聞いた二人の話にあった共通点。

 

 

(昨日のダーカーの大発生。そこでレダが見た、倒れてたという女の子)

 

 

 それを、俺が知ったという事実だけがある。

 だが俺は生憎、知りもしない奴が知らない場所で死んだところで、嘆き悲しむほどお人好しじゃあない。

 愉快だと笑う外道でもないが……その辺は割とドライだと言える。

 

 

(まだ生きてるなら探してもやるが、ぶっちゃけ遺留品が見つかるかどうかもわからんってところだな)

 

 

 スクリーンを閉じる。

 さて、討伐ついでに朝カスタマイズしたディスクのお試しと行きますかね。

 と。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 キラッキラした瞳でこちらを見つめる研修生らしき制服を着た青年と目が合った。

 

 

「……なにか?」

 

「ハクメイさん、ですよね?」

 

「あ、うん」

 

「今期の士官学校で最優秀の成績を修め、主席として名高く」

 

「あー、うん」

 

「座学での成績もさることながら、戦闘訓練においてもトップを張り」

 

「あ? うん」

 

「修了任務で、勇猛果敢にもダーカーを相手に立ち向かったという、あの!」

 

「なんなん?」

 

 

 公式に出回っている情報を並べられた。

 果敢にも云々は……通信が死んでたことを考えるに、アフィン辺りが噂の出所だろう。

 技術や技能については秘密だが、それなしでの戦闘能力についてまで隠す必要はないので、アフィンや先輩方にもそう言ってある。まさか昨日今日とは思わなんだが。

 それを裏付けるのは、自動で記録されているという戦闘データなのだろう。

 例え通信が途絶えようと、アークスが戦ったエネミーやダーカーのデータは各々のデバイスに記録されている。わざわざ人が記録せずとも、自動でデータを収集してくれるというわけだ。

 戦闘の様子は通信が無ければ、加えて一方的に繋げてるだけでは見れないから、俺達の技術がバレてる不安はないが。

 で、この青年だ。

 

 

「申し遅れました! 自分は、アークス研修生のルベルトと言います!」

 

 

 青年は佇まいを正し、そう自己紹介する。

 青い短髪のヒューマン。研修生の帽子を目深に被って目立たないが、中々にイケメンだ。

 身長は俺より少し小さいくらいで、アフィンよりは高い感じ。

 

 

「先日のダーカー大発生の中、初陣にも関わらずダーカーを多数相手取ったとお聞きし、お話を伺いたいと参上しました!!」

 

「あー……うん。昨日のデータを見たのか?」

 

「はい! 士官学校でもお噂は聞いていましたが、先日のことで勇気もある方と知りました! あ、遅れましたが、アークス就任おめでとうございます!」

 

 

 こいつちょいちょい遅れてんな……。

 

 

「そんなハクメイさんを見込んで、お願いがあります!」

 

 

 ルベルトは、往来であるにも関わらず、頭を深く下げる。

 

 

「ハクメイさん……いえ、先生! 自分を弟子にしていただけませんか!?」

 

「嫌だけど」

 

 

 すげなく断った。

 しかし向こうもめげない。

 

 

「そこをなんとか! 不出来で未熟な自分ですが、先生のように勇気あるアークスになりたいんです!!」

 

「先生呼びを定着させようとすな。俺じゃなくても、既に第一線で活躍してるアークスとかいるだろ」

 

「確かにそうです! ですが、あらゆる武器に精通し、鍛え上げているアークスは過去にも現在にも先生の他にいません! その弛まぬ努力を積む姿勢こそ、自分が惚れこんだ所なんです!」

 

「っちゃぁ……」

 

 

 そういや士官学校時代ではそういう感じで通してたな。

 ちょくちょくクラスを変えてる体で、色んな武器やテクニックの練習してたっけか。

 第三世代でもそういうことする奴はいないけど、珍しい程度で済むかと思ったのに。まさかここまでのアクション掛けてくる奴がいるとは。

 

 

「……じゃあ、俺である理由はそれでいいとしよう」

 

「本当ですか!?」

 

「だが、お前を弟子にすることで、俺に何のメリットがある?」

 

「メ、メリット……?」

 

「熱意は買うが、生憎新人の俺にはお前に何かしら教えてやる程の余裕はないし、あったとしても顔見知りでもないお前に時間を割くようなお人好しじゃない。それでも弟子にしてくれっつーなら、お前が提示できる何か。それがないとな」

 

「む、むむむ……」

 

 

 ルベルトは、顎に手を添えて考え込む。

 優しくないって?

 馬鹿言え。尊敬される男にはなりたいが、ただ働きなんぞナメられるだけだ。

 知らん奴にこんな申し出されて、二つ返事で受け入れる奴の方が気が知れん。

 

 

「せ、先生が言うならば、雑用でもなんでもやります!」

 

「マンパワーが欲しくないわけじゃないが、弟子にする面倒抱えるにはちっとも釣り合わんな」

 

「先生に面倒はおかけしません! 先生の戦いをモニタリングして頂ければ、そこから見て学びます! 先生からは何もして頂かなくても構いません!」

 

「デメリットはほぼ無くなったが、メリットにはならん。ていうか、いい加減先生呼びは―――」

 

「で、では! 依頼という形でならどうでしょう!?」

 

「む」

 

 

 依頼。

 依頼か。

 意外と頭は回るんだな。

 

 

「……依頼だとして、研修生のお前がどれだけ出せる?」

 

「そうですね……」

 

 

 スクリーンをデバイスから呼び出し、何かを打ち込んでいくルベルト。

 

 

「出来高として、一体につきこれぐらいで如何でしょうか?」

 

 

 打ち込みが終わると、こちらにスクリーンを見せてくる。

 ……想定上限額の三倍くらいの値段が表示されていた。

 

 

「……お前、これ。研修生なのに、なんでこんな出せんの?」

 

「自分、実家から仕送りを貰っていますので! 自分が自由に使える金額から計算しました!」

 

 

 くっ。ボンボンか。

 うちの施設は年々ガキんちょが増えるから、比例して使える金額が下がる一方だってのに。

 しかし、これは割りの良い仕事だ。金払いはかなりいいし、相手がボンボンなら存分に働いて搾取してやれる。向こうも俺から学べてwin-winだ。

 流石にこいつの見てる前で俺の秘密の技術は使えんが。

 

 

「…………モニタリングのタイミングは俺任せ。許可がある時だけモニタリングして良し。報酬は、そのモニタリングしてる間だけ。それでいいなら依頼を受ける」

 

「十分です! ありがとうございます、先生!」

 

「じゃ、後で正式に指名のCO(クライアントオーダー)として依頼しといてくれ。俺のデバイスは登録しといていいから、依頼が出たらメールよろしく」

 

「了解しました! それでは、これからよろしくお願いします!」

 

 

 キッチリお辞儀をして、ルベルトは去って行った。

 小さくなっていくその背に手を振る。

 ……正しく嵐のよう奴だったが、良い顧客が出来た。

 しかし、何か忘れてるような……あ。

 

 

「先生呼び、訂正させてなかった……」

 

 

 これは、どうだろう。

 弟子を取ったってことになってしまうんだろうか。

 

 

 

 

 




ルベルトもそうですが、ロッティももうちょい本筋に絡ませてもいいと思うの。

イオはギャグパート担当のツッコミになってますけど。
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