PSO2 ~煌々たる白明~   作:クビキリサイクル

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双子で胸の大きさが極端に違うって、エロゲみたいだよね

 

 

 

 

 

「ティアー! バテてきたから回復してー! お姉ちゃんもうしんどいよー!」

 

「分かってるってば!」

 

 

 わたしはティア。

 今あそこでロックベアと戦いながら騒いでる、バカ姉パティちゃんの双子の妹です。

 今のところ致命傷は無いけど、ロックベアの腕を掻い潜るためにバタバタ動くから疲れるんじゃないかなぁ。

 とは言っても、倒れでもしたらわたしもキツいので、とりあえずその背中に向けてタリスを投げる。

 直撃直前ぐらいで止まったタリスから、テクニックを発動。

 

 

「レスタ!」

 

 

 回復フィールドがタリスから展開される。

 フィールド内にいるパティちゃんから歓喜の声が。

 

 

「ああ~、癒される~。ありがとってわあああ!」

 

 

 立ち止まったパティちゃんに、ロックベアの右腕が横薙ぎに振るわれる。

 後ろに跳んで、紙一重で躱していた。

 着地に失敗して尻餅をついたけど、そこは流石にすぐ立ち上がる。

 そのまま走ってわたしの方に来た。

 

 

「もーやだー! なんでこんなおっきくてかったいの相手しなきゃいけないのさー!」

 

「「今日は調子いいね! 今ならロックベアなんかも楽々倒せる気がする!」とか言って、パティちゃんがロックベアの生息地に突っ込んでいったからでしょ」

 

「そだっけ?」

 

「自分で言ったこと忘れてる……」

 

 

 本当にどうしてくれようかこの馬鹿姉は。

 ただ、なにも倒せないわけじゃあない。

 わたしもパティちゃんも、戦闘は専門外とはいえ、もう新人からは卒業したアークスだ。登竜門のロックベアくらい、二人で倒した経験はある。

 楽々なわけじゃないけど。

 ものすごく苦戦して倒した記憶があるけど。

 

 

「それで? 今度はどうするつもりなの? パティちゃん」

 

「え~。あたしもう帰りたーい」

 

「まぁ逃げるのも選択肢ではあるけどさ」

 

 

 ロックベアがこっちに向かってのっそのっそと歩いてくる。

 正面に見据えながら距離を取るわたし達。

 ロックベアは異様に発達した上半身と岩に覆われた外皮を持つけど、それに比べて下半身は虚弱。バランスよく歩いてくるのにだって長い腕を地面に突きながらになる。それだけなら鈍間なエネミーなんだけれど、ロックベアは足の代わりに腕で跳躍してくるのだ。さながら高い高い爆転の如く。

 それが結構な距離を取ってくるものだから、迂闊に背中を見せるわけにもいかない。

 あの巨体だから森の中に入ればこっちが断然有利だろうけど、ここは広場。ロックベアがロクに動けなくなる森まで引き付けるのは一苦労。

 ……おいこら。ロックベアだけにロックに動けなくなるとか考えてないからな。

 

 

「ロックベアだけに、向こうがロックに動けなくなる所だったら、楽チンなんだけどなー」

 

 

 バカ姉が考えてた。

 なんてやっている間にも、ロックベアはこちらとの距離を詰めようと近付いてくる。

 わたし達も後ろに下がるけれど、ちらりと後ろを見てみればそこには壁。

 このままだと、壁際に追い詰められる形になる。

 

 

「ちょっとバカ姉、決めるなら早くして。倒すなら倒す、逃げるなら逃げるでもいいから」

 

「うー! 倒せそうな気がするんだけどなー! どーしよ―――」

 

「おーい、お二方」

 

 

 背中側から声が聞こえた。

 正確には後ろの壁上の方から。

 半身になって声が聞こえた背中にある壁の上を見ると、そこには戦闘服に身を包んだ、黒髪青眼の男性アークスがいた。

 

 

「あ! アークスの人? 見ない顔だね? 新人さんかな?」

 

「パティちゃん。呑気に分析してる場合じゃないから」

 

「まぁ新人っちゃ新人。ところで」

 

 

 しゃがんでこちらを見下ろすその人は、わたし達の先にいるロックベアを指差す。

 

 

()()、手間取ってるようなら俺が貰うよ?」

 

「え?」

 

 

 それって……あのロックベアを一人で倒すってこと?

 あのロックベアとはそれなりに長い時間戦ってきたけど、弱らせるどころかちゃんとしたダメージを与えてもいないから横取りされた気分にはならない。

 けれど、新人アークスが一人で相手する敵でもないのだ。

 もしかしてそこのところわかってなくて突貫しちゃう人?

 だとしたら一人で戦わせるわけにはいかないよね。

 手助けは有難いけど、せめて一緒に戦うように……。

 

 

「助けてくれるの!? ありがとー! ドカンとやっちゃって!」

 

「おい、プライドはないのか」

 

「はいはい。ドカンとやっちゃいますよ」

 

「あなたも安請け合いしないで! わたし達も―――」

 

「まぁ見とけって」

 

 

 わたしの言う事を聞かず、その人は立ち上がって手元に槍を呼び出す。アイテムパックから取り出したのだろう。

 使う武器はいつどんな場合にも対応できるように携帯しておくのが常識なのに、なんでアイテムパックに―――あれ?

 あんな槍、アークスにあったっけ?

 穂先や柄の区別なく、全体が白く染まった一本槍の先の照準をロックベアに合わせ、彼は突き出す。

 

 

「光槍『ライトランス』」

 

 

 

 

 

 白い槍から光の槍が伸びた。

 

 

 

 

 

「「ぅえ!?」」

 

 

 槍と同じ太さの光がロックベアに一直線に伸びていき、吸い込まれるように顔部分に刺さった。

 ドズゥッ、と肉が裂ける音。

 

 

「ガァアアアアアアア!!!」

 

 

 ロックベアが苦悶の雄叫びを上げる。

 位置的にあれ、多分目に刺さったよね。

 その巨大な両手でロックベアは顔を押さえる。その前に光の槍はフシュッ、と消えた。

 

 

「ま、やっぱ貫通はしないか」

 

 

 淡々とその結果を確認すると、彼は足元の地面に槍を垂直に刺し込む。

 

 

「刺爪『ブラッドクロウ』」

 

 

 彼の両手に自在槍が呼び出された。

 穂先が鉤爪のカーブ部分から針が伸びている、これまた見た事のない自在槍。

 鉤爪を摘まんでワイヤーを引き摺り出し、それを地面に刺した槍の柄に巻き付けていく。

 

 

「な、なになに!? 今度はなにするつもりなの!?」

 

「パティちゃん落ち着いて! まずはデバイス付属カメラを用意しないとでしょ!」

 

「撮影はいいから黙ってくんない?」

 

 

 許可が下りたので呼び出したスクリーン越しに彼を捉え、録画を開始する。

 柄全体にギッチリとワイヤーを巻き付けると、彼はその石突部分に右足を掛け、体重を乗せて槍を曲げていく。

 しなる槍―――ライトランス。

 限界が来たと思われるところまでしならせると、左足も石突に飛び乗る。

 しなった槍の反動で、彼は天高く飛び上がった。

 

 

「飛んだぁー!!?」

 

「静かにしろって言われたでしょ!」

 

 

 斜め上に飛んでいく彼は、ロックベアの上空に躍り出ると、そこで急停止した。

 見ると、彼は自在槍―――ブラッドクロウのワイヤーを掴み、逆側に引っ張っていた。

 槍の方もそれに合わせて地面から抜け、ワイヤーが彼の手元に戻っていくと、巻き付かれていた槍も手元に戻っていく。

 上空にいる彼はそれを掴み取り、二つとも手早くアイテムパックに仕舞った。

 

 

(そっか。だから、槍を地面に刺して、ワイヤーを巻き付けてたんだ)

 

 

 高く飛び上がるために槍の反動を使う必要があるけど、それだと槍は壁の上に置き去りになる。

 飛び上がっても、飛び過ぎてロックベアを通り過ぎてもいけない。

 だから、自在槍のワイヤーでブレーキを掛けると同時に槍を回収するために。

 

 

「剛剣『ブーステッド』」

 

 

 未だ顔を押さえて悶えるロックベアの上空で、彼は新たな武器を呼び出す。

 かろうじて刃が研がれている程度の身の丈程ある鉄塊だ。見るだけで重いとわかる。恐らくカテゴリとしては大剣だろう。これも見たことは無いけれど。

 その大剣のような鉄塊は、峰からブースターを噴射し、彼の身体ごと縦回転を始めた。

 さながら大車輪の如く回転する彼は、重力に身を任せてロックベアへと自由落下していく。

 頭頂部少し上へと到達したとき、その鉄塊を振り下ろした。

 

 

「ツイスターフォール!」

 

 

 巨大な鉄塊の兜割。

 目をやられたロックベアはそれを防御することも出来ず、頭上からそれを受ける。それでも本来なら、ロックベアの岩石が邪魔して、岩に傷をつけるだけだっただろうと思う。それほどまでにロックベアの岩石は硬いのだから。

 しかし、その鉄塊は―――。

 

 

 

 ドカンッ、とその岩石を叩き割った。

 

 

 

 鉄塊自体の重量と重力と遠心力とが加わり、垂直に振り下ろされるそれは岩石を叩き割るに飽き足らず、その下の身体をも割っていく。

 その軌道に逆らわず、ロックベアは遂に頭の天辺から股まで両断されてしまった。

 一閃。というにはあまりに荒々しい割砕が地面にまで到達し、小さな地割れを起こしてようやく止まる。

 鉄塊から手を離し、腰に差していた青い杖を取り、両断された巨体に向けた。

 

 

「バータ」

 

 

 返り血防止だろうか。

 大量の血を噴出しかけていた身体が、断面を氷のテクニックによって凍らされる。

 氷柱を走らせてぶつける初級テクニックでそう簡単に凍ることはないのだけれど、割砕され、後は倒れるのみの死体に抵抗力がある筈も無い。

 右側に一発。左側に続けてもう一発バータが放たれ、ようやくロックベアは重い音を立てて倒れた。

 鉄塊―――ブーステッドをアイテムパックに仕舞い、彼は一言。

 

 

「思ったよかやわかったな」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 いやしかし、かなり状況が有利だったとはいえ、こうも簡単に倒せちゃうか。

 硬い硬いと噂のロックベアだったが、所詮は岩石の鎧。鉄塊であるブーステッドの重量とブースター起動の遠心力、プラス高所落下の重力とPA(フォトンアーツ)の四つが合わさったらこんなもんだろう。流石に一刀両断するとは思わなんだが。

 手に持った氷杖『アイス』を肩に担ぎ、ロックベアの状態を確認する。

 ……うん。完全完璧に死んでるな。

 身体を縦に両断されたロックベアは、両側ともピクリとさえ動く様子を見せない。流石に半分に割られても生きてるような気持ちの悪い奴じゃなかったか。

 さて、これでマターはコンプリート。

 後はこいつの素材を回収して、あの女にこれを見せて問い詰めるのみだが……、取り分はどうしたもんかね。

 とりあえず話し合いをしようと、後ろの二人の方へ振り向いて話し掛ける。

 

 

「俺がトドメ刺したけど、コイツ―――」

 

「ありがとぉおおおお!!」

 

 

 二人組の片方が飛びついてきた。

 

 

「ぐふぉっ!?」

 

 

 低空ミサイルと見紛うばかりの突進を腹に受けて、苦悶の声が漏れる。

 周囲に敵性反応が無くて完全に油断してた俺は、受け身を取る事も出来ず、為すがままに押し倒された。

 芝生に寝転がる形になる俺の胸板で、若干身体を登ってきた彼女にぐりぐりと顔を押し付けられる。

 

 

「ほんっとーにありがとぉ! あたし達じゃしんどいと思ってたおっきくてかったいエネミーだったのに、まさか一刀両断しちゃうなんてぇ! 感謝感激雨霰だよ!!」

 

「ご、ごっふ……」

 

「こらパティちゃん。助っ人してくれた恩人にダメージ与えてどうするの」

 

 

 パティと呼ばれた彼女は、もう片方のよく似ている女子に、猫のように襟首を摘まみ上げられる。

 しかしパティは依然として俺を離さず、持ち上げようとすると俺まで付いてきて、ちっとも浮かせられない。

 

 

「……おいこら。離しなさいっての」

 

「やだ! あたしのこの感激を身体で表すには、まだまだ足りてないもん!」

 

「もんって……はぁ。ごめんなさい。飽きるまででいいので、このバカ姉に付き合ってあげて」

 

「いえ、お構いなく……」

 

 

 なにせポヨポヨは正義ですからね。

 ポヨポヨと言うか、ボヨンボヨンですけどね。

 昨今のアークス女子界隈でも滅多にお目にかかれないサイズを余すことなく押し付けてくれますからね。

 大きくなくても押し付けてくれるのは同じくらい嬉しいけど、希少性ってもんがね。

 貧乳はステータス、希少価値だというけど、ぶっちゃけこのサイズの巨乳の方が希少価値あると思うの。

 しかし顔には出さない。

 だって出したら、この極上の感触が離れていってしまうもの。

 そうして彼女が飽きるまで、俺は腹上に広がる天国を飽きることなく堪能し、しかし決して顔には出さず、時間にして五分程経ってから二人一緒に立ち上がった。

 表情筋が攣るかと思った。

 でもごちそうさまでした。

 

 

「自己紹介がまだだったね! あたしはパティちゃんでーすっ!」

 

「ティアです」

 

「二人合わせてパティエンティア! アークス一の情報屋! 仲良し美少女姉妹アークスと名高いコンビですよー!」

 

「へぇ」

 

「名高いって程の活躍はしてないけど、名前だけでも覚えてもらえると嬉しいです」

 

 

 名前を忘れても今日の感触は忘れない。

 とは言わない。

 どうやら双子の姉妹らしく、彼女達はよく似た顔立ちをしていた。

 姉だと言われていたパティの方は、イエローブラウンの髪をゴムでツインテールに纏めたニューマンの少女だ。緑を基調とした背中側の露出が激しい服装を着ていて、その服に包まれた大きく膨らむ胸部は男の視線を否応なく惹きつける。

 ……あれがさっきまで俺に押し付けられていたんだな。

 明るくハイテンションな性格というのはさっきのやり取りで伝わったし、彼女の雰囲気もそれを如実に表してると言えよう。

 消去法で妹であろうティアは、ブラウンの髪を姉とは違ってヘッドギアでツインテールに纏めた、同じくニューマンの少女。姉程ではないが二の腕周辺の露出が多い、黄色を基調とした服装で、その胸部は姉と比べてささやかだ。

 いやほんと、姉と比べたらってだけで、普通サイズだとは思うけどね。他のパーツがほぼ一致する分、並んだら差が際立つってだけでね。

 どうやら姉のブレーキ役みたいな役回りのようで、どことなく苦労人な雰囲気を感じる。

 そしてどっちも自称に違わず美少女。

 双子でタイプ違う美少女が並ぶって、素晴らしい光景だと思わないか? 俺は思う。

 鑑賞終了。

 会話に集中する。

 

 

「俺はハクメイ。一応、昨日修了任務を終えた新人アークス。よろしく」

 

「ハクメイさん、ですね。改めて、さっきはありがとうございました」

 

「あたしと同い年ぐらいなのに、すごかったよねさっきの! ね! ね! さっきの武器って見たことないけど、どうしたの!?」

 

「ああ、これ?」

 

 

 さっきの武器は三つあるのだが、とりあえずブーステッドをアイテムパックから呼び出し、地面に突き刺す。

 

 

「ちょいと知り合いに腕の良い武器職人がいるもんでね。その人にオーダーメイドで作ってもらったんだ」

 

「へー、すっごいなーこれ。ちょっと持ってみてもいい?」

 

「持てないと思うけど、まぁどうぞ」

 

 

 俺の許可を得て、パティはブーステッドの柄を握り、地面から引き抜こうとする。

 が、まぁ当然―――

 

 

「ぬぎぎぎぎぎぎ……なにこれおっも!? これ引き抜けたら、あたし伝説の存在になれそうな気がするくらい!」

 

「何言ってんだこの姉は」

 

 

 両手でバーベルを持ち上げるかのようにしても、彼女の膂力ではブーステッドは持ち上がらない。

 むしろ重量によって地面にずぶずぶ沈んでいく。

 ていうか、女の子がそんなガニ股で持ち上げようとするのはどうなの……?

 

 

「っあー! だめだー! あなた、よくこんなの振り回せたね!?」

 

「ま、これはちょっとコツがあってね」

 

「コツ?」

 

「コツというか、機能だな」

 

 

 柄から手を離したパティの代わりに右手で柄を持ち、ブースターへとフォトンを流し込む。

 ズドォッ! と音を立てて、俺達の横へと剣閃を描き、ブーステッドは引き抜けた。

 

 

「このブースターを使った遠心力でぶん回す感じ。破壊力は高いけど、小回りは全然利かねぇの」

 

 

 重力に従って刀身がまた地面に刺さる前に、ブーステッドをアイテムパックに仕舞う。

 正直言って、この鉄塊は重過ぎるのでまともに持つことさえ出来ないのだ。

 PD(フォトンドライブ)中は、普通の大剣のように扱うことが出来るのだけれども。

 

 

「ほへぇ……。こんなので叩かれたら、一溜まりもないね」

 

「……そんな職人さんの話、聞いたことありませんが」

 

「まぁ、腕は振るいたいけど名は売りたくない人でな。俺も製作者について話さないことを条件に作ってもらってるから」

 

 

 という設定である。

 

 

「情報屋だってんなら尚更だ。俺を介しての注文なら受け付けるけど、製作者に紹介は出来ないものと思ってくれ」

 

「えー? いいネタになりそうなのになー」

 

「しょうがないでしょ。そういう武器を作れる人がいて、この人越しなら注文できるってだけでも結構なネタだよ?」

 

「まぁ、値段その他は応相談ってことで。そんな多くは一気に捌けないだろうけど」

 

 

 よしよし。噂は広げられそうだな。

 これも俺の金策の一つだ。

 何事もまずは金。色んなことをしたい俺にとっちゃ、金は避けては通れない道なのだ。アイテムショップに用がないとはいえ、金は稼がにゃ貯まらない。

 普段の任務に加えて、素材集めやCO(クライアントオーダー)、そして武器の特別注文など。勿論俺の時間が取れなくなる程請け負うつもりもないが、かといって新人アークスが懇意にしてるだけの職人に、そこまで殺到することもない。

 

 

「ところで、このロックベアはどうする? この通りだけれども」

 

「あ、素材なら全部あげるよ。ね、ティア?」

 

「え。マジ?」

 

「そうだね。わたし達は全然ダメージ与えてなかったし。元々パティちゃんが暴走しただけで、ロックベアを討伐する気はなかったしね」

 

「そゆこと! って、それはバラさない約束でしょティアー!」

 

「そんな約束した覚えないけど」

 

「約束してなくてもお決まり的な!」

 

 

 じゃれあう双子の姉妹。

 それを尻目に、俺は振り向く。

 

 

「じゃあ、遠慮なく」

 

 

 ロックベアの死体に近付き、素材になりそうな部位をアイテムパックから取り出した解体用のナイフで切断していく。

 ロックベアの肉は、見た目に似合わず中々の珍味だ。

 ゴリラのように発達した上半身は元より、身が少ない下半身も、一匹当たりの量が少ない分、希少価値が付けられる程だ。

 閉鎖空間であるアークスシップ故に、惑星から素材を調達することが主流となるシップの乗客達にとっては、そう頻繁に手を付けられない物だと言えよう。

 うちの孤児院でも、月に二、三回出るのが精々ってところか。

 大部分は売って、美味い部位は俺と孤児院用に確保するか。

 こっちは秘密だが、ロックベアを覆う岩石には鉱石が含まれている。

 アークス側では岩石を提供すればそれを買い取ってくれるが、正直言って鉱石の価値を考えればぼったくりも良い所だ。抽出を施設任せにするにしても。

 俺も一度この岩石を買い取ったことがあったが、この鉱石は金銭的価値に限らず、武器の素材にするにも良い。

 そして俺なら、岩石から鉱石を探り当てることも、抽出も、フォトンの応用制御で可能だ。

 おお。こいつは当たりだな。前回よりも鉱石の比率が多い。

 二人からは俺の身体で見えなくなる角度で、岩石から鉱石を抽出していき、それを順次アイテムパックに仕舞っていく。

 

 

「ねえねえハクメイ」

 

 

 作業している俺の後ろで、パティが俺を呼ぶ声。

 

 

「助けてもらったお礼にさ、センパイのあたしがちょいと助言でもしてあげようか?」

 

「……パティちゃんより全然強いって今さっき証明されたけど」

 

「うるっさい! アークスに必要なのは実力じゃないの! 知識と情報なの! ね、アナタもそう思うよね?」

 

「まぁ、思うね」

 

 

 こういう解体の知識や岩石内部の情報がなけりゃ、大分損してるからな。

 情報様様。

 

 

「まず、あたし達アークスが気を付けなきゃいけないのはダーカーよね!」

 

 

 片手間に解体と抽出をしながら、パティの話を聞く。

 

 

「めっちゃこっち狙ってくるし、原生生物の凶暴性も上げてくるし、放っておいたらタイヘンよ! ここナベリウスは原生生物があんまり強くないからまだいいけど、他の惑星に……」

 

「……ごめんなさい。さっきから不出来な姉がぴーちくぱーちくうるさくて。伝聞情報を垂れ流すだけの頭でっかちさんなので、放っておいてあげて」

 

「君も中々姉に対して辛辣よね」

 

「あ……でも、ダーカーが危険というのだけは、重要な事実かも……。最近はここにも出てくるようになったみたいだし、気を付けて」

 

 

 正確には、昨日のダーカー大発生から。

 あの時大量に出てきた以外にも、今日までに続々と出現して、その数を増やしているらしい。

 

 

「頭でっかちとはなにさ!? じゃあさ、すっごいアークスって知ってる? 何がすごいって? とにかくなにもかもがすっごいの!」

 

「翻訳すると、アークスの中で絶対命令権を持つ六人、『六芒均衡』のこと」

 

「一とか二とかで数えられるあれだろ?」

 

「そうそれ! あたしこの前、生で見ちゃったっぽいだよね!」

 

「……なに?」

 

 

 ……六芒均衡が、来ていた?

 ここナベリウスに?

 

 

「なんかもー、どかーん! ずばーん! って感じで、すごかったよー!」

 

「見たと言っても遠めにだから、参考にしないでね。でも、図抜けた力は本当みたい。仰々しい名前をつけるだけはあるってことね」

 

「どこから見ても普通っぽいちいさな女の子だったのに、すっごいよねー! アナタもすごかったけど、あの子はもう、規模からしてすっごいからね!」

 

「…………」

 

 

 小さな女の子が六芒均衡、というのも聞いたことが無かったが。

 六芒均衡がここに出動する程、今回の件を重く受け止めているというのか。

 それとも、別件でもあるのか?

 

 

「あたしも頑張れば、あんな風になれるのかなぁ!」

 

「絶対無理」

 

「断言された!?」

 

 

 やはりこの妹、姉に辛辣だ。

 俺、というか多分他の人には丁寧なんだろうけど。

 

 

「まぁいいや」

 

「まぁいいのかよ」

 

「さて、六芒均衡繋がりだけど。アナタ、三英雄って知ってる?」

 

「奇数番の六芒均衡のことだろ?」

 

「そう! アークスの中のアークス! シンボルとも言える三人!」

 

「補足すると、六芒均衡のうち、更に有名な三人のことね」

 

「たしかメンバーはレギアスとー、カスラとー、えーっと……あと一人は……」

 

「クラリスクレイス」

 

「そうそれ!」

 

 

 長いよなー、クラリスクレイス。

 語呂がいいから略す気が起きないけど。

 

 

「三英雄は存在自体がシンボルだから、その名前を襲名していくんだって! 二代目とか、三代目、とか!」

 

「とはいえ、レギアスは初代そのまま。カスラが二代目、クラリスクレイスは三代目。まだまだ歴史は浅いの」

 

 

 士官学校の特別教導官としても顔を出していたから、レギアスは知っている。

 種族はキャストだから、機械の身体故に長寿。40年前の大戦争から三英雄と呼ばれながら、今でも第一線で活躍している六芒均衡のリーダーだ。

 しかし、カスラ、クラリスクレイスがどんな奴なのかは知らない。

 歴史が浅いのもあるが、あまり表に出てこないのだ。

 

 

「だからあなたも、活躍し続けていれば襲名されるような存在になれるかもね」

 

「アナタなら、もしかしたら二代目レギアス! なんてことになるかも!」

 

「やだよ。それだったら定例なんぞドブに捨てて俺が初代ハクメイになるわ」

 

「そんな意見は初めて聞いたな……」

 

「それにしても、襲名ってなんかもう字面がかっこいいよねー! あたしの名前も……」

 

「絶対無理」

 

「断言されたセカンド!」

 

 

 素材の回収も終わったので、姉妹との会話もそこそこに、帰還することにした。

 さて、マターボードとやらは埋め終わったが。

 これが一体俺にどんなお導きとやらをしてくれるのかねぇ。

 

 

 

 

 

 




いやほんと、ティアはお姉ちゃんと並ぶと際立つだけで、普通くらいだと思います。
あれで貧乳だったら、イオとかもう壁以外に表現しようがないかと。
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