可奈美の兄ちゃん   作:日々空回り

1 / 10
プロローグ〜原作前〜
俺の家ってやつは


記憶にある母はいつも笑顔で、剣を振りかぶってきた。ここだけ聞けばどんな母親なんだよ、と聞こえるかもしれないが、これが俺の家、衛藤家での普通だった。

 

幼少期は起きれば、幼稚園に行く前に、刀を抜かされボコられる。

幼稚園から帰れば、刀を抜かされボコられる。

おやつを食べれば、食後の運動ということで、刀を抜かされボコられる。

飯を食えば、おやつのときのように、食後に刀を抜かされボコられる。

休日なんてひどかった。お前いつ家事してんだよっていうぐらいに、刀を持ち出してして日が沈むまでボコられた。

それを見て父と妹は笑ってやがる。てめえらこの母を倒したら、次はお前たちの番だからな、とは思うがいっこうに母から一本が取れない。

だから、家の書庫にある本をかたっぱしから読んだ。俺の家、普通の一般の家だが、物置にある本が異様に多い。だが、その中にある本は子供の頃の俺が喜ぶような本はなく、すべて剣術の指南書であった。おいおい、衛藤家よ、子どもの教育上普通の絵本の一冊や二冊ぐらい置いておこうや。なんで、絵本も含めて、全て剣に関わるやつなんだよ…まあ、そのおかげもあってか、剣術の知識は増えた。それを母に隠れて、練習を繰り返した。本の多くは日本語なんだろうけど、いやもっとちゃんとした文字で書こうよ。全部書き方が適当すぎて、絵からどんな技なのかを推測するしかなかったよ。当時の俺は、幼児だからひらがなしか読めなかったから、ちょうどいいけど、妹はいまだに読めないだろうなあ…あいついまだに学業の成績は振るわないからなぁ。話が逸れたな、そんなわけで俺はメキメキと力をつけた。

そしてとうとう、あの母から一本を取ることができたのだ‼︎やったね当時の俺‼︎その時の俺は舞い上がり、両手を上げ万歳までして喜んだよ。父と母の顔を見ると、あんぐりと口を開けてたな。妹はというと、キラキラとした目で俺を見てきやがった。どんなもんだとサムズアップすると、ますます目を輝かせて手を叩くから、ついつい調子に乗っちゃってまあかわいい。しかし、逃しはしないと目を光らせたのは、剣バカの母だった。おもむろに俺の後ろに立つと手に持った剣が一振りから、二振りに変わっていて、それからの毎日は母から一本も取れなかった。また、母に一本を取れた日から「にいみたいにやる!」と妹が息巻き、母とのお稽古(?)に参戦してきた。俺的には母との稽古の時間が少なくなるので、万々歳であったが、それも母に見抜かれていたのか、稽古は密度の濃いものとなった。

 

 

さてと、俺はこの時の母親が嫌いだった。なんでかって?笑顔で刀を振りかぶる奴が好きって言うなら、ここに連れてきてくれ。俺がそんな奴にあったことがあるのは、そんな母親を愛した父親と、その二人から生まれた俺の妹ぐらいだろう。いやね、妹も刀が大好きなんだよ。それも母親同じくらいか、それ以上に。…まあ、そうなってしまった理由は心当たりがあるのだが、ね。

 

ある日、母が入院した。その日からは母との稽古はなくなったが、母との日常となってしまったので、やむなく一人で稽古を続けた。妹もにいといっしょにやる‼︎」って言いながら、稽古をしてたな。二人で稽古を続けたが、そこは兄の威厳を保つため母のように妹をボコボコにした。いい加減やめるとか言い出すかと思ったら、「もういっかい‼︎」って言うんだから、流石母の子だなあと思ったよ。

 

 

そして、何ヶ月後かに母が死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここから始まるのは、刀使となった妹、衛藤可奈美(えとう かなみ)と、その兄、衛藤剣(えとう けん)、そして、可奈美の友人たちと織りなす日本を駆け巡る物語である。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。