可奈美の兄ちゃん   作:日々空回り

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再会ってやつは〜ver.妹の友達〜

 

可奈美たちと別れてから数刻後、俺はとある公園に来た。ここに来たのはあの場で俺のことを知ってるあの子を誘い出すためだ。あ、ちなみにいつも差している刀はコートの背中のところに隠す部分があるからね。そのために全身包められるロングコートなんだから。

 

「ん、久しぶりだね舞衣ちゃん」

 

気配がしたので、振り返りそちらに声をかける。

柳瀬舞衣。三年前に俺が誘拐事件から助け出した女の子で、実に三年ぶりに再会する子でもあった。

 

「…お久しぶりです、剣さん」

「……ん、お、おう⁉︎」

「…?」

 

あ、あぶねぇ…舞衣ちゃんこの三年で何処とは言わないが、育ちすぎだろうが。これりゃあ立派な大和撫子だな。周りの男たちも放っておかないだろうな。

 

「剣さん?」

「…い、いやなんだ、随分可愛くなったなーと思って」

「そ、そんなことないですよ…⁉︎」

 

お、おう何かしらんが舞衣ちゃんが赤くなったから、俺もいくらか冷静になれるな。舞衣ちゃんは可奈美の友達、可奈美の友達…よし、これならいける。

 

「舞衣ちゃんがここに来たのってもしかして、可奈美のことかな?」

 

改めてそこを聞き出す。大体はわかってるけど、直接舞衣ちゃんの口から聞かないとわからないこともあるからな。

 

「…はい。それと剣さんに色々と聞きたいことがあって来ました」

 

舞衣ちゃんが重い口を開いて聞いて来たことは、まあ予想してたことだった。

 

「うーん、可奈美のことは可奈美に聞いたほうがいいと思うな」

 

それは俺の本意だ。いくら可奈美のこととはいえ、俺が勝手にいうのは筋違いもはなばなしいと思うからだ。

 

「…そう、ですよね」

「うん。舞衣ちゃんの聞きたいことは舞衣ちゃんが聞かないとね」

「じゃあ剣さんに聞きたいことがあるのですけれども、いいですか?」

「手短に、ね」

「この三年間何してたんですか?」

「お父さんに聞いてないの?」

「お父さんですか?」

 

木更さん舞衣ちゃんに話してないみたいだな、まあ俺のことなんて思い出さない方が一番だけど。

 

「いや、何でもないよ。この三年間かぁ…旅に出てたよ、所謂自分探しの旅ってやつかな」

「…旅ですか」

「うん」

 

嘘は言ってない。俺はこの三年間日本だけでなく、世界各地を巡った。自分探しも勿論だし、木更さんに言った目的も当てはまる。

 

「………」

 

あー、何でか舞衣ちゃん押しだまっちゃったよ。

 

「それだけ?聞きたいことは」

「……」

 

舞衣ちゃんは黙りながらも、腰に差している刀に手を伸ばす。

 

「…折神紫に何か言われたの?」

「…言われたんじゃなくて、言ったんです。可奈美ちゃんと剣さんを助けるために何をすればいいか」

 

舞衣ちゃんはそう言って構える。それは奇しくも、俺があの場で用いた構え抜刀術だった。

言った…ねえ。

 

「ふーん、じゃあ舞衣ちゃんは俺と可奈美のことを助けたくて、今俺の前にいると」

「…はい。今なら親衛隊の方達も情状酌量の余地はあr「おい」⁉︎」

 

俺は舞衣ちゃんの言葉を遮る。

助ける?俺をこの俺を?俺は一気に舞衣ちゃん目掛けてプレッシャーを高める。

 

「あんまり調子にのるなよ」

「ッ⁉︎」

 

舞衣ちゃんは俺のプレッシャーに耐えきれず、刀を持つ手が震えてしまっている。

 

「そんなもんで、俺のことを助ける?図に乗るな、俺と同じ舞台に上がりたいなら、せめて結芽と同じくらいになってから出直してこい」

 

俺の嫌いなこと、それのうちの一つが優しくされることだ。それが優しくされようが偽善だろうが、俺は気にくわない。

俺は背中から刀を取り出し腰に差し直し、舞衣ちゃんと同じく抜刀術の構えをする。

 

「来いよ。実力の差ってやつを見せてやる」

「…ハアハア」

 

舞衣ちゃんはプレッシャーに耐えきれないのか、呼吸を荒くし始める。

…実際のところ舞衣ちゃんの優しさが俺のことを思ってのことなのは十分に承知している。ごめんな、これが俺の性分なんだよ。

 

「来ないなら、俺から行くぞ」

「…‼︎」

 

反応してか舞衣ちゃんは俺目掛けて抜刀する。

 

ーだけども遅いー

 

「…え?」

「刀を抜くまでもないな」

 

俺がしたことそれは簡単なことだった。舞衣ちゃんが抜刀する前に抜刀元の刀を抜かせないように、柄の部分を手で押さえ込んだ。

 

「わかった?これが俺と舞衣ちゃんの実力の差」

「……」

 

舞衣ちゃんは何も言わず崩れ去ってしまう。俺は何も言わずに舞衣ちゃんの目の前にかがむ。

 

「ごめんね、厳しいこと言って」

 

舞衣ちゃんは目線を落とすが、耳は俺に傾けている。俺は苦笑し、舞衣ちゃんの頭を撫でる。

 

「俺から言いたいことは一つだけ。人と関わるなら、覚悟を持つこと。それがないと人と本気でぶつかるなんてできないから」

 

俺は頭から手を離し、舞衣ちゃんの手にハンカチを握らせる。雨まだ降ってるから、これで汚れを落としてほしいな。

 

「可奈美たちならまだこの辺にいるとも思うから、探すといいよ。…もし舞衣ちゃんがちゃんと答えを見つけられたら、もう一回話そう」

 

そして俺は舞衣ちゃんから離れる。

さあ、次はあいつらに会わないとなぁ…うわぁ、めんどくせぇ。特に…いや、考えたくもない…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

足早に公園から離れる剣だが、それでもー

 

 

 

 

ーそれでもまだ雨は降り続けるー

 

 

 

 

 

 

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