「命はいらねえってことだよな?」
そう言って剣は、部屋へと侵入した。その腰には鞘が携えられ、すでに刀は手にあり抜かれていた。吹っ飛ばされたピエロは、ガラクタの中で悶えている。
「んん‼︎」
「ん…‼︎」
「可奈美、舞衣ちゃん、助けに来たよ」
剣はピエロの姿を確認すると、可奈美と舞衣のもとに向かう。剣は手の刀で可奈美と舞衣の拘束を解き納刀すると、口に付けられていたガムテープをはがす。その瞬間二人は剣には抱きついた。
「お兄ちゃん‼︎」
「お兄さん‼︎」
「うん、俺はここにいるから…」
二人の体は恐怖から解かれたのか、とても震えており涙を滲ませている。剣はその二人の体を優しく叩き、慰めている。
「くそガァァァ‼︎」
「ひっ…」
「うう…」
だが、そんな和やかな空気も、先ほどまで沈んでいたピエロの声で壊されてしまう。その叫び声を聞いて、可奈美と舞衣は再び震えてしまう。
「大丈夫だから、大丈夫。俺が来たからには、もう安心していいから。…すぐ終わらせるから、ね」
剣は二人を落ち着かせると、二人の前に立ち上がる。
「よう、久しぶりだな」
先程までの口調とは異なり、とても威圧的なものとなった。
「くそガキ、俺を吹っ飛ばすってことはわかってるんだろうなぁ⁈」
「知るか、クズ。それにお前こそわかってるんだろうな?俺の妹とその友達を泣かしたこと、忘れたとは言わせないぞ」
「くそくそくそくそ‼︎ぶっ殺してヤルゥゥ‼︎」
ピエロは拳を振りかぶって剣に近づく。しかし、それを容易にさせないのが、衛藤剣である。
「時雨蒼燕流 守式七の型 紫吹き雨」
「ヴ…目が…見えねぇ‼︎」
いつの間にかに剣を抜刀しており、そして剣は自分を中心に剣を振り抜き、細かい砂を巻き上げた。すると、ピエロの目に砂が入り走るのを妨げた。その隙を剣は見逃さない。
「続けて、時雨蒼燕流 攻式一の型 車軸の雨」
「グゥゥゥ…‼︎」
剣は刀を両手で持ち突進して、ピエロの水月を正確に貫いた。
「ん?なんか入れてんのか。さすが小悪党考えることが小せえ」
「ウゴゴ…」
剣はピエロに突きを入れたが、その感触に違和感を感じた。だが、それよりも困惑しているのはピエロである。剣の言う通り、体には防弾チョッキを入れている。その強度は折り紙つきであるが、剣の刀はそのチョッキを抜けた。
ピエロは腹を抑えて、呼吸を荒らげ膝をつく。剣は納刀はせず、ピエロの前に立ちじっと見つめている。
「可奈美、舞衣ちゃん。危ないからまだ近づくなよ」
「う、うん」
「でも、お兄さん。よくここがわかりましたね」
「ちなみに、こいつの正体もわかってるよ」
剣は可奈美と舞衣に振り返らずに、注意を促す。可奈美は剣を見つめ、舞衣は可奈美の腕を掴み剣にそう問う。
「ほざけ、ガキ…お前は、何もわからないはずだ…」
ピエロは未だ膝をつきながら、剣に聞く。
「じゃあ答え合わせだ」
剣はそう言う。
「まず、なぜここが分かったかだな。それもこれも全部お前が、木更さんに送った映像で全部わかった」
「なんだと…⁉︎」
「ヒント1」
剣は刀を持っていない左手で1を作る。
「映像の中での違い。可奈美達がいたのは廃工場だったのに、顔が照らされたのは横からだった。だがこの辺の工場は基本天窓だ。つまり映像の中での工場の風景は嘘だ」
剣は足元の機械クズを蹴飛ばし進める。
「ヒント2」
剣は左手で2を作る。
「続けて照らされた日。可奈美が連れ去られたのは朝で、映像の中で照らされたのは横だ。これで、撮影されたのは昼前ということがわかる」
「すごい…」
舞衣は羨望の眼差しで剣を見つめる。
「ヒント3」
剣は左手で3を作る。
「これはさっきの時間からくる話だ。映像の時間から、木更さんの元に映像が届くまでの時間を考えると、近隣だと考えられる」
「これらのヒントから考えられるのは、最近人が出入りするようになった、近隣の工場でない廃墟だということだ」
「まさか、あの映像から…」
「それだけわかれば後は、その辺を走り回って探すだけだ」
ピエロはマスクの下で、呆然としてしまった。何故なら、挑発のつもりで送ったものから、自分が潜伏している場所を当てられてしまったからだ。それも目の前の少年にだ。
「さあ次はお前の正体だ」
下に向けていた切っ先をピエロへと向ける。
「ヒント1、これも映像からだ。可奈美達のそばに置いてあった人のような、下半身。これを父さん達は付き人の佐藤さんだと言った。しかし、実際に人の遺体があるならば、可奈美達の表情は、もっと絶望に染まったり、粗相をしていてもおかしくはない」
剣はピエロへと近づく。
「しかし、ここで一つ疑問がある。そう近隣なら、柳瀬グループの力を使えば、見つけられないはずがない。しかし、舞衣ちゃん達は見つかっていなかった。つまりは、あの場に内通者がいるということだな。柳瀬グループのあそこにいられるものに近づくには、ある程度の地位にいないといけない」
また一歩ピエロに近づく。
「このヒントから分かる、答えは一つ」
そして剣はピエロのマスクに切っ先をつける。
「あの下半身は偽物。そして柳瀬グループの近くに入られて、今日の犯行を速やかに行えるもの」
剣の切っ先はマスクの面を切り上げ、そして面が敗れた。
「お前が犯人だ、付き人の佐藤」
そこには舞衣の付き人の佐藤がいた。
ー時雨蒼燕流 守式七の型 紫吹き雨ー
【登場作品】
家庭教師ヒットマンリボーン
【使用者】
山本武
【詳細】
時雨蒼燕流の七の型。刀で水を回転するように巻き上げ防御する。今回は、水の代わりに砂で代用。
ー時雨蒼燕流 攻式一の型車軸の雨ー
【登場作品】
同上
【使用者】
同上
【詳細】
時雨蒼燕流の一の型。刀を両手で持ち突進して相手に突きを入れる。