後日談、というか今回のオチ。
あの後すぐに木更さんのボディーガードたちが、現場に入ってきた。そのためにというか一応父さんに連絡しといた訳だしな。佐藤は悶絶してたところで捕まってて、何か言ってたなー。まあ、気にしてないけども。
さてそんなわけで俺は後処理に走っているのだけれども、そんな中で小事が一つ起きた。
「高校推薦が…取り消された?」
「やっちゃいましたね」
今回の旨を俺は木更さんに報告していた。そう、今回の騒動の噂がどこからか広まり、それは学校にまで広まった。そうして犯罪に片足突っ込むやつなんていらねーって感じで高校の推薦が取り消されたのよ。
「…君には申し訳ないことをした」
「いや、気にしなくていいですよ。俺がしたくてやったことですし」
木更さんは申し訳なさそうに頭を下げるが、別に俺は気にしちゃいない。父さんも木更さんと同じことを言ってたけど、これは俺の意思でやったんだから、別段後悔とかはない。それに可奈美と舞衣ちゃんが救えたんだから、これ以上望むなんてそれこそ高望みだ。
「…私のツテを使って高校の推薦を取るのこともできるが」
「そんな裏口入学まがいのことを木更さんにしてもらうわけにはいきませんよ」
「しかし…」
こうなったら別に高校に行こうとは思わない。今の時代、高卒認定とか大卒認定の試験もあるし学校に行かなきゃいけないっていうわけではないし。
木更さんは思いつめた表情をするから、俺は何個かのお願いをする。
「あー、実はその今日は木更にお願いがあってここにきました」
「…私に出来ることならなんでもしよう」
「そう言ってもらえると嬉しいです」
俺は苦笑いをしながら、木更さんにお願いをする。そうこれが俺が今日木更さんを訪ねた理由なんだから。
「それじゃあお願いのほどよろしくお願いします」
「ああ、柳瀬家の名前に代えても君の願い叶えさせてもらうよ」
「失礼します」
一礼すると、剣君は私ー柳瀬木更ーの前から退出していった。
「ふう…まさかあんなお願いとはな」
剣君はあの年で、いや年齢など関係ない。彼は所謂天才というものなのだろう。しかも妹の可奈美ちゃんが関わればその才能はさらに光る。
しかし、惜しい人物を逃したものと私は思う。
「とんでもないな、彼は」
窓から差し込む日差しを見ながら、私はそう呟く。
「しかし、本当に復活するのか…」
「ーあの大厄災…大荒魂は」
俺は家に帰ると、旅の用意を始めた。木更さんにしたお願いの一つは、この旅の費用を持ってもらうことだった。
「大荒魂か…」
手元に置いた母からの手紙を見る。そこには俺に記された、相模湾大厄災の真実が記されていた。
…まさかあの折神紫が荒魂を集めているのが、大荒魂の復活のためって言われてもにわかには信じ難いけど、あの母からの手紙ならば信じざるを得ないな。そして手紙には大厄災の真実と共にもう一筆書かれていた。
母の同期である折神紫を助けて欲しいと。
「母さんからのお願いなら、しょうがないよな」
「お兄ちゃん‼︎」
もの思いにふけっていると、俺の部屋に可奈美が勢いよく入ってきた。可奈美はあの事件がトラウマにならず、今は平穏な生活を送っていた。
「ん、どうした可奈美?」
「どうしたじゃないよ‼︎お兄ちゃん、高校に行かないって本当⁉︎」
「本当」
「…⁉︎」
俺の言葉を聞いて可奈美はへなへなっと力が抜けたようにその場に座り込んでしまう。心配して可奈美の近くによると、可奈美は俺に抱きついてきた。その目には涙がたまっていて、俺はあやすように可奈美の背を叩いてあげる。
「私が、誘拐されたから…?」
「んにゃ、違う。これは可奈美のせいじゃない」
「じゃあなんで…⁉︎」
「そうだな…」
これだけはいっておかないと。俺が今回旅に出るのは父さんにも言ったけど、可奈美のせいではない。それに母からの手紙からもあくまでキッカケでしかない。そうこれは、
「俺が為すべきことを見つけたからだ」
「為すべき…こと?」
「ああ」
俺はそう言って可奈美を抱きしめる。
…自分でも分かっていたが、俺は周りとは違う。だからいつもめんどくさいふりして、周りから逃げてきた。でもやっと見つけた。俺がやれること、俺の為すべきことを。もしかしたら、母さんもこのことを見込んで俺に刀の稽古をつけてたのかも…いやそれはないな。あの母だ、最初の方はそうでも、最後の方は自分が楽しかったんだろうな。
「だから、俺は行くよ。可奈美には悪いことしたけれど、一人で行かなきゃな」
「なら…」
「ん?」
「私も行く‼︎」
可奈美はそう言うと、俺の目をじっと見つめる。その目には力強い意思が込められていた。
「私も一緒に行く‼︎お兄ちゃんにはまだ勝てないけど、これでもクラスでは一番強いもん‼︎」
そう言うと思った。可奈美にならば俺についてくると、だから俺は可奈美に真実を突きつける。
「ダメだ、可奈美は連れていけない」
「…‼︎なんで、可奈美はついて言っちゃダメなの⁉︎」
「弱いから」
「…⁉︎」
そうあくまで可奈美の強さはクラスの中だけで測ったものだ。それが学年や学校はたまた全国レベルで比べると、まだまだ可奈美は弱い。それを可奈美は自覚しているのか、可奈美もおし黙る。
「それに可奈美はズボラなところが多い。だから、そんな女の子は連れていけません」
「 うぐ…」
痛いところを突かれて可奈美は俺の胸に頭をつける。俺は苦笑して可奈美の頭をポンポンとする。
「大丈夫。可奈美が十分強くなったと思ったら、俺の方から会いに行くから」
「…どれくらい強くなればいいの?」
「そうさな…可奈美が御前試合の決勝に出れるぐらいになったらかな」
「御前試合…」
「ああ、約束だ。俺が可奈美との約束を破ったことあったか?」
可奈美は俺の胸の中で首を横に振る。
「じゃあ約束だ、可奈美が強くなったら俺から会いに行く」
「うん、約束‼︎」
可奈美はまだ涙をこぼしていたが、笑顔で俺に約束してくれた。やっぱり俺の妹は可愛いな。
それから数日して、俺は家をひっそりと出た。その時に父さんから「手紙はいらん、だが必ず戻ってこい」っていう言葉をもらった。もちろん、だってここは俺の帰る家だから。
三年後
可奈美が約束を果たし、御前試合決勝に進んだ。そして決勝が始まった瞬間体験相手の平城館の女の子が、折神紫に斬りかかった。そして、それが失敗した時紫の切り返しに可奈美が彼女を守った。
「流石、俺の妹だよ」
そう呟くと俺は走り出した。
キィン
「あんまりいじめないでくれよ。俺の妹なんだから、さ」
「お前は…大鳥劔⁉︎」
「お、お兄ちゃん⁉︎」
「よ。久しぶりだな、可奈美。ますます可愛くなってるぞ?」
俺の言葉に可奈美は赤くなり下を向いた。
「お、お兄さん⁉︎」
「あー‼︎剣デス⁉︎」
「あいつなんでこんなところにいるんだ⁉︎」
「…うそ…⁉︎」
「やっと会えたぁぁぁぁ‼︎お兄さぁぁぁぁぁぁぁぁん‼︎‼︎‼︎‼︎」
…どうやらこの会場には可奈美以外にも知り合いが多いみたいだ。