十六夜に引きずり倒され脅され等と初っ端から散々な目にあった黒ウサギだが、何とか顔の色を元に戻し、取り敢えず話は聞いてやる。と言うスタンスの三人の方へ顔を向ける。
「えー・・・、それでは説明を始めたいと思うのですが、よろしいでしょうか?」
「よろしいもクソも、俺達はそのために待ってるんだろうが、さっさと始めろ」
十六夜の言葉に同意を示すように他の二人も頷く。その様子に黒ウサギは若干あう・・・、となった後、気を取り直して告げる。
「それではいいですか皆様方。定例分で言いますよ?言いますよ?さあ言います!ようこそ〝箱庭の世界〟へ!
我々は皆様方にギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼンさせていただこうかと召喚いたしました!」
「ギフトゲーム?」
「そうです!既に気づいていらっしゃるでしょうが、皆様方は普通の人間ではございません!その特異な力は修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその恩恵を用いて競い合う為のゲーム。そしてこの箱庭の世界は強大な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活できるために作られたステージなのでございますよ!」
両手を広げて箱庭をアピールする黒ウサギ、そこで飛鳥が挙手。
「猛烈にアピールしている所に悪いのだけれど、初歩的な質問をいいかしら?
貴方の言う〝我々〟とは貴方を含めた誰か、という事でいいのかしら?」
「YES!異世界に呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって、数多とある〝コミュニティ〟に必ず属していただきます♪」
「嫌だね」
「属していただきます!そして『 ギフトゲーム』勝者はゲームの〝主催者ホスト〟が提示した賞品をゲットできるというとってもシンプルな構造となっております」
「・・・・・・〝主催者〟は誰になるんですか?」
「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏が人を試すための試練と称して開催されるゲームもあれば、コミュニティの力を誇示するために独自開催するグループもございます。
特徴として、前者は自由参加が多いですが〝主催者〟が修羅神仏なだけあって凶悪かつ難解なものが多く、命の危険もあるでしょう。しかし、見返りは大きいです。〝主催者〟しだいですが、新たな〝恩恵ギフト〟を手にすることも夢ではありません。後者は参加のためにチップを用意する必要があります。参加者が敗退すればそれらはすべて〝主催者〟のコミュニティに寄贈されるシステムです」
「後者は結構俗物なのね……チップには何を?」
「それも様々ですね。金品・土地・利権・名誉・人間・・・・・・そしてギフトを賭けあうことも可能です。新たな才能を他人から奪えばより高度なギフトゲームに挑む事も可能でしょう。
ただし、ギフトを賭けた戦いに負ければ当然、ご自身の才能も失われるのであしからず」
愛嬌ある笑顔に顔に黒い影を見せながら、徴発的に黒ウサギが喋る。それに応えるように飛鳥も徴発的に問う。
「そう。ならもう一ついいかしら。ゲームそのものはどうやったら始められるの?」
「コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期日内に登録していただければOK!でございます」
「・・・・・・基本的な物事はギフトゲームによって決まる。そう考え良いということですか?」
春日部のその言葉に黒ウサギは感心したような表情をする。
「鋭いですね。しかしそれは八割正解の二割間違いなのですよ。我々の世界とて強盗や窃盗は禁止。金品による物々交換も存在します。ギフトを用いた犯罪などもってのほか!そんな輩は悉く処罰します。
が、しかし!『ギフトゲーム』の本質は全く逆!勝者のみが全てを手にするシステムでございます」
「なかなか野蛮なのね」
「否定はしないのですよ。しかしギフトゲームは強制参加の一部を除けば基本的には任意参加となるのです。負けるのが嫌な腰抜けは最初から尻尾まいて逃げればいいのですよ。
さて皆さんの召喚を依頼した黒ウサギには箱庭の世界における全ての質問に答える義務がございます。が、それらをすべて語るには少々お時間がかかるでしょう。新たな同士候補である皆さんを何時までも野外に出しておくのは忍びない。ここから先は我らのコミュニティでお話させていただきたいのですが……よろしいです?」
その言葉に否定する理由も無い春日部と飛鳥は立ち上がる。
「待てよ・・・、俺はまだ何も聞いてねえぞ」
十六夜が待ったをかける。適当な岩場に座ったまま、刺すような視線で黒ウサギを視る。その視線に怯えたのか、少したじろいだ後、黒ウサギが問いかける。
「・・・どういった質問で?ルールですか?ゲームそのものですか?」
「そんなくだらねえ事聞くかよ。俺が聞きたいのは一つだけだ」
そう言って十六夜は視線を空に向ける。それから周囲を見渡し、それら全てを見下す様な目で問う。
「この世界は、俺の、俺達が人生をかけるほどの価値があるか?」
十六夜の言葉と同時に周囲を異常な緊張が覆う。
招待状には書いてあった。家族を、財産を、友人を。前の世界の
だからもし、この世界がつまらなければ、前の世界よりつまらなければ、俺達は帰らせてもらう。十六夜の瞳はそう告げていたし、他の二人も同じ思いだ。それを感じ取った黒ウサギは満面の笑みで返す。
「YES。『ギフトゲーム』は人を超えた者達だけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと。黒ウサギは保証いたします♪」
その言葉に三人は何を思ったのかはわからないが、
春日部耀は静かに、
久遠飛鳥は愉快そうに、
逆廻十六夜は獰猛に、
全員、愉しげに笑った。
____
その後、絶好調なのか、スキップをしている黒ウサギの後ろを三人はついて行って居るのだが、
「俺ちょっと世界の果てまで行って来るわ」
「唐突ね、何故今なのか聞いてもいいかしら?」
「行ってみたいから」
「単純ね」
いきなりの十六夜の発言に飛鳥は笑い、春日部は我関せずと黙々と歩いている。
「なんだよ?行きたいのかお嬢様?」
「そうねえ、とても魅力的なお誘いだけど、私は遠慮しておくわ。春日部さんは?」
飛鳥の問いかけに、振り向いた春日部は無表情で、
「遠慮しておきます」
と告げ、再び黙々と歩き始めた。
「・・・私初対面の人に嫌われてるのかしら?って思ったの始めてよ十六夜君」
「多分アレがアイツの素なんだと思うぜお嬢様。気長に接してやればいいと思うけどね、んじゃあ行ってくる。
ああ、黒ウサギには言うなよ、その方が面白い」
「了解」
そう言った瞬間にはもう十六夜は飛鳥の隣には居らず、反対方向に向かって猛然と走っている。
「・・・彼意外と子供っぽい所もあるのねぇ、なんかだか親近感わいてくるわ」
「いいんじゃないですか、団体行動中に単独行動したくなるのと同じですよ」
「その例えはちょっとどうかと思うわよ?わからなくもないけれど」
相も変わらず無表情の春日部の意外な答えに少し戸惑いながら返事をする飛鳥。年も近そうなので飛鳥としては仲良くなっておきたいのだが、相も変わらず無表情な春日部の前に、簡単には行かないか、と溜息を吐く。
そうこしている内に街の入口らしき場所に着き、黒ウサギがローブ姿の少年に話しかける。
「ジン坊っちゃん!新たな同士候補の方々を連れてきたのですよ!」
「おかえり黒ウサギ。そちらの女性二人が?」
ジン坊ちゃんと呼ばれた少年の言葉に黒ウサギが振り返り、固まる。満面の笑みのままピシリ、と固まる黒ウサギを見て飛鳥は横を向いて笑い、春日部も無表情だが口元が僅かに歪んでいる。
「・・・もう一人居られましたよね?黒ウサギを引きずり倒したとんでもない力を持った金髪の殿方が」
「十六夜君なら、ちょっと世界の果てを見てくるぜ!って言って駆け出して行ったわよ」
そう言って飛鳥は十六夜の走り去った方向を指さす。それを見て綺麗に項垂れる黒ウサギと、慌てるジン。
「た、大変です!世界の果てにはギフトゲームの為に野放しにされている幻獣が!」
「幻獣?」
「は、はい。ギフトを持った獣を指す言葉で、特に〝世界の果て〟付近には強力なギフトを持ったものがいます。出くわせば最後、とても人間では太刀打ち出来ません!」
「あら残念。それなら彼はゲーム参加前にゲームオーバーという事になるのかしら?」
「斬新ってレベルじゃ無いクソゲーの誕生ですねそれ。電源入れたらゲームオーバー画面ですか」
電源?という言葉に首を傾げる飛鳥を他所に春日部はジンに向き直る。そして、
「まあ、大丈夫じゃないでしょうか。というか、
と、言い放った。この言葉に思わず呆然とするジンと黒ウサギ。
「まあ確かに、その程度の人間なら居なくなったって構わないものねえ」
クスクスと楽しそうに笑いながら、飛鳥が同意する。ジンは信じられないと言わんばかりに目を見開いて、問いかける。
「あの・・・、いくら何でも酷すぎませんか?少しは心配とか」
「あら、心配して何になるのかしら」
そう返した飛鳥の顔は本当に、何を言っているんだコイツ。と言わんばかりの表情で、
「私達は今日あったばかりだもの互いの事なんて何も知らない。言わば他人よ。そんな人間を気にかける意味も必要性も無いわ。それに彼は自分から行ったんだもの。つまりそれだけの力があるという事。だったら心配なんてする必要が無いじゃない?」
そう言ってクスクス笑う。それに続くように春日部も、
「逆に、彼が獣程度にも戦えない様なら所詮その程度。この世界で生きていける人間では無かったという事です。街中ですれ違った人が数時間後に死んでいた、なんてよくある話です」
淡々と口にする。あまりに酷い発言に、ジンも口を挟もうとするが、それは飛鳥によって止められる。
「それよりも、心配なら迎えに行ってあげた方が良いのではなくて?あんまりグダグダやってると、本当に彼、死んじゃうかもしれないわよ?」
その言葉に我に返った黒ウサギがジンに二人の案内を頼むと、跳躍し、十六夜のいた方へ跳んで行った。
「箱庭の兎は随分と素早く跳べるのね」
感心したように言う飛鳥と、相も変わらず無表情な春日部。性格に難がありそうなこの二人の相手を自分一人でしないといけないのだということを悟ったジンは密かに頭を抱えた。
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