もはや僕の青春ラブコメは終わっている   作:鐘の子

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黒瀬宏海という少年

 

『高校生活を振り返って』

 

結論から言うと、つまらなかったです。

そうとしか自分は感想を抱きえません。

 

自分は他人となにかをすることで幸福を得ることができません。

なぜなら、高校生活なんて一人でやろうと思えばできることばかりであるから。

なので、人間関係の煩わしさを作ってまで、一時の幸福を得ようとは思えません。

それよりかは、少し手間をかけてでも、リスクを背負わないで幸福を手にした方がマシだと考えます。

 

世の中は結果が全て。

それは正しいことです。ですが、この学校の生徒たちはそれよりも過程を重きに置いてます。僕はそれが理解できません。

 

結果が悪くても、その努力は無意味なものじゃない。

 

ーーーバカですか?

 

努力とはその結果をより良いものにするための過程に過ぎません。結果が悪ければ、その努力も無意味なものとなるのです。

だから、賢い人はその努力を無意味なものにしないためにも日々励んでいるのです。

 

それを、

努力することに意味がある。

みんなと努力したことで絆が深まった。

 

そんなことは、負け犬の遠吠えにも等しいです。

それどころか努力する資格さえもないです。

 

そんなに仲を深めたかったら、休みの日にカラオケ大会でも開いてレッツ、パーリー、ふぁーっ!!とでも叫べばいいと考えます。

 

ですが、それが正しいということが、今の社会です。

 

ある一定のコミュニティを築き上げないかぎり、非人のように弾圧されます。

一人でやってきた人達を否定して、たとえ失敗してでも仲間と共に苦楽を共にすることが正義らしいです。

 

自分はそういうバカ達と共に一年間を過ごしたと思うと、反吐が出そうでたまらないので、この一年間はすごくつまらないとかんじました。

 

 

黒瀬宏海

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

『生徒の呼び出しをします。二年B組の黒瀬宏海くん、黒瀬宏海くん、平塚先生がお呼びです。帰りのホームルーム終了後、職員室へ来てください。繰り返します……』

 

 

放課後。自分こと、黒瀬宏海は、帰りのホームルームが終わった矢先に校内放送で職員室に呼び出された。

 

平塚先生が僕に対して用件があるとのことだったが、今いち原因がわからない。

いや、訂正だ。原因はわかったが、理由がわからない。

 

もし、くだらない理由で、しかも説教だけで済む用事だったのなら、本当にやり方を変えていただきたいものだ。

こっちは校内放送終了後、クラスメイトに対して白い目を向けられたのだ、その結果が長い説教だったらうんざりだ。

今度からは授業終了後に一声かけるという形でお願いします。

 

 

「失礼します。平塚先生に呼び出されたので来ました」

 

 

と、言うと、平塚先生が自分の場所を知らせるために「黒瀬、こっちだ」と、いいつつ手をあげる。

その場所まで向かうと、開口一番に……

 

「君がなぜここに呼ばれたかわかるか?」

 

口から紫煙を蒸しつつ平塚静が言う。

 

さっきまでの平然とした口調とは違い、発した言葉に重みが感じられる。

 

ああ、予想通りだ。彼女は説教するつもりで僕を呼んだのか。

 

正直、生徒の前でタバコを吸う教師の説教なんざ聞いてられないのだけど。

というか、本当に職員室での喫煙が認められている学校なんてあったんだな。この嫌煙ブームの世の中では、めったにないとは思うのだが。

 

とりあえず、質問されたからには答えなければいけない。

 

 

「原因に心当たりはありますけど、理由がわかりません。もし、今日書いたあの論文で呼ばれたのなら、まずその理由を教えてほしいものですね」

 

 

我ながら小憎たらしい応答だ。

もし、カルシウムが足りない教師なら、今ごろ僕の頰に青痣ができているに違いない。

 

平塚先生が僕を呼び出した原因は、おそらく国語の時間にかかせた『一年間の高校生活を振り返って』というテーマの論文だろう。

成績は悪くないし、授業の態度はわるくないと思う。だから、自分と彼女の関係から考えれば、国語の授業しか考えられないので、今日書いたあの自分でも少しどうかと思う論文についてだろう。

 

 

「君のその態度から察するに、なにかの誤解をしているようだが、私は君を叱るために呼び出したわけじゃない」

 

はいはい。その言葉は説教を始める前の人の常套句ですよ。

このセリフを吐いて説教しなかった人はほぼいない。

 

しかし、言葉の重み以外、彼女は僕に対して苛立ちを込めた仕草を見せていない。

もしかすると、本当に説教ではないのだろうか?

 

「質問があるから呼び出したんだ。まあ、答え次第では今の発言を撤回せざるおえんが」

 

「質問?」

 

「ああ。君は本気でこの論文の通りのことを考えているのかね?」

 

 

そらきた。

予想通り、僕がここに呼び出された原因はあの論文にある。

書いた当初、すごくくだらないテーマだったので「平凡でした」と、書いて終わらせてやろうかと思った。

 

しかし、昨年を振り返って、自分の高校生活を『平凡』といえるかどうか迷った。

高校生活における平凡。つまり、友人を作って楽しくいらたり、学校行事をほどよく楽しめたことだ。

僕は学校行事のほとんどがつまらないと感じているし、ただ自分を慰めるために作る友人関係なんていらないと考えている。

 

それを平凡と片付けていいのだろうか?

 

そんなことを思ってしまったために、嘘をつくことをやめて素直な気持ちを書いてしまった。

 

ーーーまさか、あそこまで筆が乗るとは思わなかったけど。

 

 

「まあ、そうですね。我ながらこれ以上ないと思うほど、バカ正直に書きましたよ?」

 

「考えを改める気は?」

 

「人ってそう簡単に変わるものではないですよ。僕みたいに自己が強い人ならなおさらです」

 

 

そう、人は変わらない。

 

僕みたいな頑固者ならなおさらだ。

 

友達はそもそも作るものではない、ああいう友人関係は勝手に出来上がるものなのだ。だから、無理やり作ろうとも思わないし、作ったところで人間関係の煩わしさに苦難する日々が待っているに違いない。そんな面倒はごめんだ。

 

学校がなんのためにあるか?

 

ああ、答えてやるとも。

 

それは、人間関係の煩わしさを今のうちに体験して、それを対処するための訓練のためだ。

 

あんな文を書いた僕に対して、平塚先生は額に青筋をたてて怒鳴ると思ったが、意外にもそうではなかった。

 

 

「君は賢いのに、思考回路がとんでもなく捻くれている。三年にも一人、君と似た生徒はいたが、君の場合は末期といっても過言ではないな」

 

 

そう言う彼女の顔には、呆れもあったが、それ以上に優しさがあった。

 

そのことを感じてもなお、僕は皮肉げに答える。

 

なおそうとは思ってるが、どうも人の揚げ足をとりたくなる性分なのだ。

 

 

「末期ということは、治る見込みがないというわけで話は終わりですね。

自分もやらなければいけない依頼があるので忙しいんですよ」

 

「ほう? ちなみになんの依頼かね?」

 

「とある古龍種の討伐依頼です。いやあ、仲間とは六時くらいに待ち合わせしているんですがね」

 

「モン◯ンじゃないか!?」

 

 

意外にも彼女はあの手のゲームをやるらしい。まあ、最近の女性も一人じゃやることがないからゲームで時間を潰すとは聞いてはいるが……

 

というか、この美貌で彼氏とかいないのか? 男なんてどんな綺麗事を並べても面食いばかりなんだぞ? 貴女がその気になれば、一人か二人すぐにできてもおかしくないんじゃないか?

 

タバコが原因で彼氏ができないのなら、すぐに禁煙をお勧めしたい。

 

そんなことを考えている僕をよそに、平塚先生が話を続ける。

 

 

「ったく、君のそのナメくさった態度を改めないと、あとで痛い目にあうぞ?」

 

「いやあ、自分、不器用なもんでして、取り繕うことを知らないんですよ」

 

「不器用で済むなら、この世に反省文なんてものは一行で終わってしまうものばかりだ」

 

 

たしかにその通りだ。

これは一本取られた。

 

 

「なにかやりたいことはないのかね? それに夢中になれば話が早いのだがーーー

ーーーそういえば、君はバスケができるそうじゃないか。体育の時間で君の活躍は好評らしいぞ?」

 

「遊びで褒められても嬉しくありません」

 

「ったく、可愛げのないやつだなぁ」

 

 

たしかにバスケは中学校までやっていたが、別段、突出して上手いというわけではない。それに、あれで自分は団体行動に向かないと自認したんだ、だから好き好んでやる意味もない。

 

そんなやりとりを繰り返して、平塚先生がしばらく思案顔になった。

 

生徒に対して、そこまで親身になってくらるなはありがたいが、相手が悪すぎる。

 

僕はこれほどまでにどうしようもない人間なのだ。

だから、改善することを考えるのも時間の無駄だ。

 

しばらくすると、彼女はゆっくり顔を上げて僕に告げる。

 

 

「ふむ、ならキミに延命処置を与えようじゃないか」

 

「延命処置? 治らないとわかっているのに改善しようとするなんて、ただの時間の無駄だと思いますが?」

 

「だれが治らないといった? 物理的に治らないのならともかく、キミの場合は在り方の問題だ。かなり手間はかかるが、治る見込みはわずかながらある」

 

「そう思っていただけるのならありがたいですが、これでも自分の性格はどうしようもないと思っています。

改善策を考えるのも時間の無駄だと思いますが?」

 

「君が思っているほど、人の有り様は変わるものだよ。それにやらないよりかは、やってみたほうがいいだろう?」

 

「あいにくですが、僕はやっても意味のないと判断したらやらない主義です。時間の無駄な浪費は避けたいですから」

 

「家に帰ってゲームをするだけというのも、時間を無駄に浪費すると変わりないとおもうが……

まあ、いい。そこのところは置いておこう。なら、私と賭けをしようじゃないか」

 

「賭け?」

 

「ああ、そうだ。私が今から案内する部活に仮入部したまえ。まあ、今からじゃ遅いから明日からでも構わない。

そして、夏休み入る前に入部するかどうか聞く。そこで入部しないと、そう答えたら賭けはキミの勝ちだ。その場合は、キミが国語の単位をどれだけ落としても留年しないように私がなんとかしてあげよう。つまるところ、キミは国語の時間はサボり放題というわけだ。

安心したまえ。君のことだ、サボっても成績は落とさないだろう? なら、成績を口上になんとでも言いくるめれる」

 

「ーーーなっ!?」

 

成績を落とさない限り、サボり放題とは学生にとってかなりのアドバンテージじゃないか。

まあ、サボっている間は平塚先生の名誉を踏まえて隠れながらしなくちゃいけないが、留年の心配がないとなれば我慢もできる。

 

いや、これほどハイリターンの賭けをしてもいいのだろうか?

 

もしかしたら、その天秤につりあうハイリスクがあるんじゃないか?

 

 

「ただし、キミが負けた場合は、二年生の間、私の雑用を行ってもらう。なに、書類をコピーしたり、授業の準備を行ったりする程度だ。そんなに悪いようにはしない。

さて、このローリスクハイリターンの賭けを君は断るかね?」

 

「受けましょう。ええ、それはもう喜んで」

 

 

我ながら、呆れてしまうほどの即答。

 

だって仕方ないじゃないか、あんな好条件を出されたらどんな頑固者でも釣れてしまう。

 

平塚先生はこれまでの重い雰囲気を晴らして、嬉々として笑う。

 

「なら、賭けは成立だ。明日から放課後に今から言う教室に行きたまえ。あとのことは、そこにいる先輩たちが説明するだろう」

 

「わかりました。ところで、その仮入部する部活の名前は?」

 

「ーーー奉仕部だ」

 

かくして、僕は高校生活二年目にして、部活に入ることなった。

 

用件がおわり、職員室を後にする前に、僕は素朴な疑問を平塚先生に喋った。

 

「ちなみに、先程、僕と似た生徒がいた(・・)と仰いましたが、その生徒って転校したんですか?」

 

「……それは、君の想像に任せるよ」

 

 

微笑して平塚先生は僕の素朴な質問に答えた。

まあ、あまりにもどうでもいい質問だ。あんな曖昧な答え方をされても問題ない。

だが、その生徒が転校していなかった場合、彼女の言葉の意味は違うものとなる。

それはーーー

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

翌日、僕は言われた場所へ向かった。

 

校庭や体育館から運動部の掛け声が聞こえる。よくもまあ、好き好んで体にダメージを与えるものだ。青春の汗とやらを流して仲間と絆を育むなんて、頭が春真っ盛りのスポ根ドラマの見過ぎではなかろうか?

 

運動部にあるのは、熾烈なスタメン争い。優秀なメンバーに対する嫉妬、不出来なメンバーに対する侮蔑、そして青春ドラマを再現しようとするエセ熱血教師の自己満足しかないのに。

そんな、陰気臭いコミュニティに好き好んで入りたくもないな。

 

入るとしたら、ダラダラ自分のやりたいことをやれる文化部をお勧めしたい。

まあ、自分は特にやりたいこともないから帰宅部生活を送っているのだが。

 

 

「ーーーここかな?」

 

 

奉仕部。まあ、なんというか、ラノベでよくありそうな面白おかしな部活なのだろう。

プレートに貼られてあるシールをみれば、仲間と一緒に和気藹々と楽しむような感じに見受けられる。

その、あれか? 平塚先生は、僕にこの部活でドタバタコメディを演じて仲間がいる嬉しさを学べとでもいうのだろうか?

 

ーーーいや。最初から決めつけるのは良くないな。

聞くところ、その名前に相応しい実積をあげているらしいじゃないか。

その証拠に、今の生徒会長である一色さんがその座に立てたのは、この部に所属している生徒の功績だという。

 

だが、本当に僕はこの部活と関わることで……入部することで何か変わるのだろうか?

 

変わらない人間はいない。

だが、それは、自己が弱い人間のみに言えることだ。

僕は部活に入った程度で人柄が変われるほど、素直な人間ではない。

 

ああ、もし、僕が主役で青春ラブコメを作ったとしたら。

その物語は主人公が手に負えなくて終わっているに違いない。

 

ーーー僕は、教室の扉に手をかけた。

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