TS転生者はヒキゲーマー   作:猫の軍

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お待たせしました。
今回も遅くなりました。すいません。

次回からは、次回からはしっかりします。

話は変わりますが、
皆様のおかげで、主人公のエンブリオが決定しました。
ありがとうございます。

どんなものになったかは、登場するまでお待ちください。

では、

※四月十五日、大幅修正


ep,3 恐山へ

 恐山へ続く、森羅の北門で俺は、遠くへ向かう小さな背中を見ていた。

 見知らずの俺の願いを、うどんの為と言って引き受け、かの将軍でさえ恐れをなすあの「恐山」へ遊びに行くかのように向かって行った、少女の〈マスター〉を。

 

「本当に大丈夫なんだろうな……」

 

 遠い昔話にある〈マスター〉は、常人には考えられない程の力を持ち、死を恐れず、また決して死ぬことの無い、「人に似たナニか」と語られている。

 だが少なくともあいつは、九は。そんなもんじゃないと思う。

 普通に話し、普通に笑い、そして情があった。

 そんな人間が物語の様な化物な訳がない。

 それこそ、最初にあったときは危険人物だと思いはしたが、ここに来る途中、話してみれば分かった。

 あいつは俺ら〈ティアン〉と変わらない、ただの人間だと。

 

 帰ってくる。

 なんでこんなにあいつの事を心配しなくちゃなんねーのかはわからない。

 だけど、帰ってきて欲しいと思う。

 マスターは死んでも蘇る。そんな伝承が嘘か本当かはどうでもいい、俺はあいつに死んで欲しくない。

 

 なんでこんな事思うんだ?柄でもねぇ。

 

 でもまぁ……あいつは、芳乃は死なずに帰ってくると思う。

 そんでもって、きっとあいつはさっきと変わらない、綺麗な笑顔で笑い掛けてくるんだろう。

 ニコリと笑ってその後で、

 

――お腹が空きました。約束です、美味しいうどんを食べさせて下さい。

 

 なんて言うんだろうな。

 ……………。

 

「何考えてんだ俺は」

 

 さて、さっさと家に帰って親父に謝らねぇと。

 そんでもって帰ってくるあいつの為に、うどんを作んねーとな。

 絶対に、美味いうどん食わしてやるからよ。絶対に、

 

「……帰ってこいよ」

 

 夕闇に隠れ、もう見えなくなった背中にポツリと呟いた。

 

 

 

▽▲▽▲▽▲▽

 

 

 

 □天地国首都森羅北部 恐山 【無職】龍洞寺芳乃

 

 すっかり夜になった山道を足早に駆け抜ける。

 乱立する木々の合間を、所狭しと並ぶ死骸の群れを、襲い来る亡者共を。

 走り、飛び越えながらひたすらに突き進む。

 

 月は雲に隠れ、明かりすら無い夜の森を自身の目が見通せるそれだけを見ながら軽々と、駆けていく。

 

「全く、その山姥の村というのは一体何処にあるんでしょうか?」

 

 軽く愚痴をこぼす。

 その間にも襲いかかってきた死骸が、私の首を食いちぎろうと大口を開けている。

 その場で軽く屈み、抜いた刀で顎下から突き刺そうと構えると、死骸は信じられないほどの反射神経で後ろへ跳ぶ。

 相手を見失い体勢を崩した私に、また別の死骸が襲い来る。

 横薙ぎ。当たり前のように避けられる。

 二体の死骸が離れたことにより、空いたスペースを利用して木の上に逃げる。

 当然、木の上に逃げるだけでどうこうできる相手じゃないっていうのは、これまで行った何度かの戦闘で嫌というほど理解している。

 すかさず別の木に飛び移ると、死骸を置いて木々を駆けていく。

 

「まったく。初心者に行かせる場所じゃないですね」

 

 ここには居ない青年に、呟く。

 言ったところで彼に届くわけではないし、現状が改善されるわけではない。

 しかしまぁ、本当にその通りだと思う。

 

 いくら初期装備だからといっても仮にも武器だ。それが刃も通らずに、見るからに柔らかそうな腐った皮膚や、ただの人骨と何ら変わりないように見える骨に、止められるのはおかしいんじゃないか?

 そもそもただの死体や人骨が、明らかにリアルの達人たちの技量を越しているのはいかがなるものか。

 しかも死んでモンスターとなってそれだ。

 生前は一体どんな化け物だったんだって話だ。

 

 私が思っているより、ずいぶんと人外魔境なのかもしれない。この天地は。

 

「さて、と……」

 

 ひときわ高い木にとまると、あたりを見回す。

 千次には山に入る山道をまっすぐ進んでいけば、村に着くといわれたのだが……

 

「見当たりませんねぇ」

 

 いくら見渡してもそれらしきものが見当たらないのだ。

 森の奥と言っていたし、まだまだ先に行かないと見当たらないのだろうか?

 しかし、かれこれ二時間ほど探索しているのにもかかわらず、見当たらないのはさすがに心に来る。

 痛覚設定をオンにしているせいなのか、疲労が溜まってきてる感じがするし、何より気を抜けば一瞬で死ぬようなそんな環境にずっと置かれていれば、精神的疲れも現れるというものだ。

 せめてもう一人、誰かいてくれたなら少しは楽になったものを。

 

「泣き言を言っても仕方ありませんね」

 

 そう言ってトンっとまた別の木に飛び移る。

 目指すは「山姥」が暮らすという村。できれば朝日が昇る前にたどり着きたいもののだがなぁ。

 

 そういえば、その山姥は一体どうやってこの山を越えて森羅へ向かっているのだろうか。

 あの大量にいる死骸もだし、地面は木々の根で相当な悪路だ。

 

「まさか大量の麦を背負って、あの死骸を倒しながら進んでいたなんて……そんなことありませんよね?」

 

 なぜか容易く想像できてしまった。

 そんなことはないと信じたい。

 

 自分の考えを簡単に否定できないまま、私はまた駆けだした。

 

 

 ◇

 

 

 あれからさらに二時間。

 私はついに山姥の村にたどり着いた。

 

「知らない天井だ」

 

 ……怪我人として。

 なぜ私が目的の村に怪我人として運び込まれているのか。

 

 三十分ほど前、この村を見つけた私は、度重なる死骸との連戦と一人で森をひた走る恐怖に、すでに参ってしまっていた。

 そこで気を抜いてしまったのだ。

 あろうことか木の上で。

 足を滑らし、しまったと思った時にはすでに遅く、真っ逆さまに落ちていく最中だった。

 そのまま地面に落ち、激突し、死にはしなかったもののステータスには【骨折】そして【出血】の異常状態が付き、まさに死に体で村に入ったところ、私を見つけた村人が慌てて村の診療所に連れてきてくれて、今に至る。

 周りにはだれもおらず、伽藍とした室内は、もの悲しさに包まれている。

 

「さてどうしたものでしょうか」

 

 寝かされていた布団から立ち上がり、扉へ向かう。

 どうやら気絶していた間に何かしらの処置をしてもらったらしい。

 ボロボロだった体は今や万全の状態である。

 ただ一つ気になることといえば、

 

「服が、着替えさせられてますね」

 

 ステータス欄を見ても、明らかに装備が変わっている。

 それもかなり上等そうなものにだ。

 

 確かに元の服はボロボロだったし、仕方ないと思うが、どうやって着替えさせたというのだろう。

 服は脱がせるだけで装備として着脱可能なのか?

 そんなことを悶々と考えてながら、扉を開け、外に出る。

 朝日が昇り始めたようで、東のほうの空が白んできている。

 

 村の人たちはどこにいるのだろう。

 まだ朝だし、寝てるのか?

 

 と思ったその時、

 

「――っ」

 

 悲鳴が聞こえた。

 雄叫びのようにも聞こえたそれは、数秒たってなお、途切れることはなくいまだ続いている。

 

「向こうからですねっ」

 

 声が聞こえるほうへ進むと、そこではすさまじい光景が繰り広げられていた。

 

「おらぁ!さっさとはけやぁ!」

『も、もうやめてくれぇ!死んじまうよぉ!』

「うちの家族に手ぇ出そうとしたんだ、死んじまっても文句言えねぇよなぁ!!」

「おい、こいつ縄解こうとしていやがるぞ!もっときつく縛ってやれ!」

『ぐわぁああああ!!』

 

 そこでは、逞しい男たちが縄で縛られた鬼に、尋問をしていた。

 

「こ、これは一体?」

 

 明らかにおかしい光景に、しばし放心してしまう。

 えーっと?

 たぶんあの男たちが「山姥」というか、この村の住人たちでいいんだよな?

 で、あの鬼は……モンスター、でいいんだよな?

 

「どういう状況ですか、これ」

 

 もうわけがわからない。

 なんでこんなことが起こっているんだ?

 あの鬼って私がここに来るまでに遭遇したモンスターの中で、最強クラスに位置してた奴なんだけどな。

 なんであんな哀れを誘う格好で縛られて、恫喝されて、脅されて泣きかけてるの?

 そもそもあんな事を出来てるあの住民たちはなんなの?

 

「もうわけがわかんない……」

 

 しばらく放置しておこう。

 こっちに気付いたらその時対処すればいいや。

 

 南無。

 

 

 ◇

 

 

 □天地国首都森羅北部 恐山奥 山姥の村落

 

「どういうことですか」

 

 広々とした部屋に、静かな怒りをたたえた声が響く。

 その声の主は、部屋の奥に座る女性に対し、その抜身の刀のような感情をぶつけていた。

 真白の髪に真紅の目。絶句するほどの美しさを持ったその少女は、女性が何も言う気がないと悟ると、さらに言葉を繋げる。

 

「あなたは、今まであなたの先祖が行ってきた麦の配達を、止める。そう言いましたよね……それはどういうことですか、答えてください」

「どういうことも何も、そのままの意味ですぇ?……私たち山姥の里の者たちは、わざわざ遠く離れた、見ず知らずのうどん屋のために貴重な時間を使ってまで、山を越えて運びに行く理由はない。そういったのが、あンたには理解できなかったんですのぉ?」

 

 数々の武人が存在するこの天地においてさえ、ほとんどのものが震え上がるであろう少女の眼光を、女性は柳に風とばかりに受け流す。

 それどころが皮肉まで交えてくる始末。

 相対する少女――芳乃は、一層その怒気を強めてその女性をにらみつける。

 

「それでは今まであなたたちの麦を頼りに、経営を続けてきた彼らは、どうするおつもりですか」

「それこそ私たちの知ったことではありまへん。麦やったら勝手にどっか別のところから調達すればいい話やないんですのぉ?」

「彼らはあなたたちの麦を使い今まで経営してきました。一度もほかの麦を使うことはなく、あなたたちの麦だけを使ってです」

「しりまへんわぁ。相手が勝手に何の麦を使おうと、何度も言った通り、私らの知ったことではないんですぇ」

「このっ……」

 

 怒りに顔を赤く染めた芳乃が立ち上がり、女性に近づこうとするも、見えない障壁に阻まれて近づくことすらできない。

 その様子を滑稽だと笑う女性は、立ち上がり芳乃の前まで歩いてくると、明らかに見下したような表情で、せらせらと笑った。

 

「それで?遠路はるばるご苦労さん。私たちはあんたに協力する気はみじんもありませんし、麦もやる気はありません。さっさとお帰りになったほうがええんちゃいます?」

 

 必死になって障壁を破ろうとする芳乃だが、相手は各上。しかも下級職を六つ、上級職を二つカンストさせた【上級結界師】。今の芳乃に敵う相手ではない。

 そのことは重々承知している。

 だが諦めるわけにはいかない芳乃は、必死に結界を突破しようともがく。

 

「諦めたほうがええよ?あンたじゃどうやってもこの結界は敗れませんぇ」

「……嫌です」

「……強情やなぁ」

 

 依然として諦めようとしない芳乃に腹を立てたのか、女性は障壁の中から芳乃を指ではじく。

 それだけで小柄で華奢な芳乃の体は軽く飛ばされ、床を鞠のように跳ねる。

 

「帰んなさい。あンたも、麦のことは諦めてさっさと帰ったほうがええよ」

 

 その言葉を聞いた芳乃は、反論しようとするが、やがて力尽きたように気を失った。

 その様子を見ていた女性は、申し訳なさそうに結界を解くと、芳乃に近づき抱き上げる。

 そして先ほどまでの相手を馬鹿にした態度はどこに行ったのか、悲しく言葉をつぶやいた。

 

「ゴメンな。私らにも、守らないかんモンがあんのよ」

 

 そういうと、部屋に入ってきたまた別の女性に、芳乃を診療所に連れて行って休ましてやれというと、静かに部屋を去って行った。




どうだったでしょうか?

ちなみに、主人公のエンブリオは決まったものの、エンブリオの募集は続けております。
そちらもどうぞ。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=179736&uid=205408

感想、批評。お待ちしております。

では、また次回。
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