申し訳ない限りです。
書き直しというか、前回の五話を分解して、加筆した状態が今回の話になります。
では、
□天地国首都森羅 恐山奥 【無職】龍洞寺芳乃
目が覚めた。
「またここですか……」
質素な板天井を見ながら、ポツリと呟く。
確か、この村の長とかいう人に会いに行って……ああ、そうだ。結界の中からデコピンされてぶっ飛ばされたんだ。
それで意識を飛ばしたと。情けないな。
だいたい、私が散々苦戦したあの鬼達を手玉に取る奴らの長だぞ?まず戦って勝てる相手じゃないだろう。それに歯向かって行くって……キレてたからって、考えが足りな過ぎるぞ私。
「仕方ありませんね。今度はもうちょっと平和的に話を進めてみましょうか」
そういえばさっきの話し合いも、最初から喧嘩腰だったからなぁ。相手が気を悪くするのも頷ける。
まったく、格上にはしっかりとした態度でいないと酷い目に合うってのは、あのクソ野郎の時に思い知った筈なのにな。
学習しないようだ。
さて、ここでいつまでも寝転がってるわけには行かないし、取り敢えず、村長に謝りに行かないとな。
……何か持って行ったほうがいいかな。菓子折りとか、甘い物とか。
現在、村長の家に来ているのだが、何やらおっかない顔したおっさんたちが扉を守っているように立っている。
話し掛けては見たものの、
「あのー、すいません」
「現在長は仕事中だ、用があるなら明日に来い」
「……どうしてもですか?」
「どうしてもだ。ほら、飴玉をやるから」
「むぅ……」
頑張って上目遣いを意識してみたが、駄目だったようだ。もう二度としない。
だいたい、こんな小さな村でする仕事ってなんだ。半日も拘束されないと終わらないような仕事なのか?……もしそうなら大変だな。意外と苦労しているのか。
しかし、村長(さっき聞いたところ、シオンというらしい)のところに行けなくなって、しかも次に会えるのは明日か……暇になるな。何かする事があればいいんだけど……あ、そうだ。
「そういえば
このままじゃ、戦っても戦ってもレベルが0のままだ。
特にレベルを上げる予定は無いが、就いておいて損することは無いだろう。未だエンブリオは発現しないし、今の貧弱ステータスじゃ心許ないからな。
そうと決まれば善は急げだ。
というわけでやってきました【鬼人】ギルド。
この村で就ける職業を探してたら、なんとびっくり、ここの村には【鬼人】ギルドしかないらしい。
必然的にこの村にいる住人達は皆、【鬼人】系統の職業についていることになる。
しかもどうやらこの【鬼人】という職業、天地の中でもこの村でしか就くことができない職業らしく、天地ではこの職業に就いていると一目置かれるらしい。
どうやらこの恐山という環境や、【鬼人】になる為の条件の厳しさがあるのだろう。因みに、条件は下記の通りである。
1、自分一人の力でこの村に着くこと。
2、村人三人以上に、自身の力を認められること。
うん、まぁ。
結構キツイのかな?これ。
まず一つ目、自分一人の力でこの村に着くこと。あの夥しい量の死骸共を乗り越えて来ないといけないこの村に、一人で辿り着くのは結構な難易度だと思う。実際私も何度か死にかけたからね。
二つ目、村人三人以上に、自身の力を認められること。これが思ったよりキツイ。まず初見じゃ絶対に防げないような技を平然と、三つくらい同時に出してくる。まぁ転生特典を持つ俺の前には効かなかったがな。
チート様々だぜ。
と言う訳で、無事【鬼人】に就くことができた。
「……お前さん、本当に見た目通りの年齢か?俺の三倍ぐらい生きてたって言ったほうがまだ現実味があるんだが」
「失礼ですね。私がそんなに長生きしている様に見えますか?」
「「「見える」」」
「………」
解せぬ。
確かに見た目以上に歳は食っているが、それでも三十歳だぞ?そんな四十かそこらの年齢のおっさんの三倍?冗談はよせよ。
取り敢えずそんなことを言ったオッサン三人には、全力で相手をしてもらった。
後半、ギラついた獣の目で師匠と呼んで満身創痍の状態で挑みかかってくる彼等に対し、戦慄を隠せなかった私は悪くない。
何でお前ら平然と外れた関節を付け直すんだよ、怖えーよ。ボロボロに打ちのめした筈なのに、何で何事も無かったかのように立ち上がれんだよ、何?訓練の賜物?一体どんな訓練を積めばそんななれるんだよ。もうヤダ怖いよここの村。というかこの国。
というか君等の技を数段どころか何十段も上の熟練度で使ったのに、心が折れるどころか、
「この技にまだこんなにも先があるのか……極めていたと思っていたのにな……感謝するぜ師匠!俺はまだまだ強くなれる!!」
とか言って来る始末。
もう常識とかそんなチャチなモンじゃアイツ等を測ることなんてできない気がした。
あとそのどっかで聞いた事あるようなセリフは何だ?君等一応此処の住人だよね?ワンピ◯スとか知らないよね?
そんな具合で闘ってたら、いつの間にか【鬼人】のレベルが12に上がっていた。
凄いね、ここの村。
◇
やぁ、現在絶賛逃走中の芳乃だよ。
なんて事を言ってる暇があったらひたすら足を動かさなければ。
「ああもう、しつこいですね!私今怒ってますからね、それはもう今までに無いぐらい!」
『グルァッ!!』(訳:俺らもだよ!!)
時間は午後三時頃、ちょうど小腹が空いてくる時間だ。
そんな時間を、何故私はこんな薄暗い、いかにも何かが出て来そうな森の中を、巨大な狼達と鬼ごっこをしなければならないのか。理解できない。
「そもそも何で私をそんな執拗に追いかけ回すんですか!?獲物だったらそのへんに居るでしょう!」
『グルァッ!!』(訳:身に覚えが無いとは言わせねーよ!?)
「私がやった事なんて、貴方達が頑張って弱らせていた『爪兎』を横からトドメを刺してポーチに回収した事ぐらいでしょう!何でそんなに怒っているのですか!」
『グルァッ!!?』(訳:しっかり怨まれるような事してんじゃねーか!?)
「仕方無いですねっ!」
全力で走っていた足を、勢いをそのまま180度回転させ、居合いの要領で直ぐ真後ろにいた狼を両断する。
有り金をはたいて買った、この村の鍛冶屋が造った刀。やはり随分と良いものだったな、凄まじい切れ味だ。今着ている和装といいこの村の職人は腕がいいな。
突然2つに割れた仲間に驚いたのか、狼たちの動きが止まる。その隙を見逃さずに一番近かった一体を瞬時に切り裂いてから、体制を整えて油断なく構える。
相手は格下では無い。
一撃でも私にその牙が、爪が届けば私なんて紙細工のように死んでしまう程の力を持った強者だ。だから一切の油断を殺す。今から行うのは戦闘ではなく死合、命の駆け引きだ。
さぁ――
「死にたい方からどうぞ順番に、全員切り捨てて見せましょう」
――始めよう。
狼達がその言葉を皮切りに、雪崩のように飛び掛かってくる。
無数の凶器が、私に目掛けて振るわれる。そのことを何処か無感動に認識しながら、刀を走らせる。
喰いかかる牙を折り、斬りかかる爪をいなす。
何匹も何匹も繰り返して行われる地獄のような連携。
すぐ目の前に死が今にも私を呑み込もうと口を開けている。
足を落とし、胴を両断し、首を断つ。
ひたすらに繰り返す。
迫る牙を半身になって避け、そのまま刀を跳ね上げて首を切り落とす。振るわれる爪を屈んでよけ、飛び込んで来た狼の腹を蹴ってその牙を仲間に向かわせる。
飛び散った血が衣服を真っ赤に染めて、真白の髪が染めたように赤黒くなっても、止まることなく無心で刀を振り、命を奪う。
一度も私に攻撃を当てられることなく沈んでいく、大量の命に、思わず吐き気が込み上げてくるが、無視する。
もし止まれば、待ち受けているのは死。
まだ死んでやるものか、その一心で戦う。
どれぐらいの時間が経っただろう。
気付けば大地に飛び散った血も光の粒子に変換され、私は、あれ程斬り殺したというのに刃溢れ一つみせない刀を手に座り込んでいた。
全身はぐったりと弛緩し、動けという簡単な命令にも聞いてくれはしない。
常に新鮮な空気を求め、喘ぐように息をしながら、刀を杖に、辛うじて横になる事を抑えている私は、ようやくまともな思考を許された。
最悪の気分だ。
ネットゲームをやってた頃、MOB狩りに尋常じゃない程の楽しみを見出している奴がいた。
ソイツは、モンスターが死んでポリゴンになって砕けていくさまを見て、ケタケタと笑いながら悦に浸っていた。
――オイラはさぁ、死にこそ生きているっていう実感が湧くんだよね。
――それがリアルだろうとバーチャルだろうと、死があればそこには生があるんだ。
――生きてるって素晴らしい!
そいつは、きっとやってみれば分かると言っていたが……
「無理、ですね……どうして、も……嫌悪感し、か湧きませんね……」
どうも私には理解出来ない。
他の生命を終わらす事でしか生を実感できないのなら、自分で一回死んでみて考えろ、今生きているっていう、幸福を。
「きっと、二度と殺す事で生を実感出来るなんて、思えなくなりますよ……」
そういうもんだ。
「…………ふぅ。さて、と」
多少ふらつきながら立ち上がる。まだ疲れが残っているらしい。まぁ、数分休んだ程度で疲れが抜けるなんて思ってもいないけどな。
「かえりますか」
フラフラと沈みだした太陽に照り付けられながら、村へ帰った。
途中、立ち止まってふと思い出す。
うどん屋の倅、千次はこの恐山を、
「この森羅で何十年もの修練を積んだ達人が、それでも年に何人も帰ってこないと言われる恐ろしい山」
だと言っていた。
何十年も経験を積んだ。ということは当然レベルはカンストしているはずだ。
いくつもの職に付き、研鑽に研鑽を重ね、技術を磨き、自身の力に絶対の自信がある猛者たちが、この山に向かい、敗れ、死ぬ。
だというのならば、あの山の中腹にある死体の山は彼らのものなのだろう。
「そういう事なら……おかしいですね……」
レベルが高いという事は、ステータスが高いという事。私より、何倍も高いレベルの者達。私が勝てるものと言ったら、それこそ技術だけだろう。
おかしい。
何かがおかしい。
私が今居るこの恐山は、余りにも弱い。
明らかに私よりレベルが高いモンスター達。
――なぜ私より速い程度の速度なのか。
――なぜ5000リルで買った刀で切り捨てることが出来るのか。
…………いや。
「今は考えないでおきましょう」
そう呟いて、今度こそ、村に向かって歩き始めた。
◇
その日の夜、簡易的な風呂で汚れを落とした私は、最大の問題に直面していた。
そう、全ての息とし生けるものが、決して逃れられない問題。それは――
グルルルルルルッ
「お腹、空きました」
食事である。
食材は有るのだ。だが調理道具がない。
知識はあるのだ。だが経験が足りない。
村の中をグルッと回ってみたが、どうやら飯屋のたぐいは存在すらしないらしい。ならば住民はどうやっているのか。
無論、自炊である。
そして私がこの村で生活拠点として借りている小さな小屋には、調理場なんて大層な物はなく、ただ土間と板張りの床と、囲炉裏が有るだけである。
囲炉裏があれば簡単な調理くらい出来ると思っただろう?
残念、火をつけるための道具がない。
「万策尽きましたか」
ガックリと頭を落として項垂れる。
このあと、様子を見に来てくれた青年住民に、狼肉あげるからご飯作ってと頼んだところ、顔を真っ赤にした青年は、とても美味しいご飯を振る舞ってくれた。
いやぁ、美少女って便利だね。
◇
□天地国首都森羅 恐山奥 【上級結界師】シオン
時刻は夜、草木も眠る丑三つ時。
頭上に上る月を見ながら、一人晩酌をしていた私のもとに、ある知らせが届いた。
最奥にて、不穏な動きあり。
姿を暗闇に隠した【上忍】が厳かに伝えてくる。
昔から知るその男の声に、僅かだが、同様が混じっていた。少なくとも大事にはなるだろうと予想し、「下がれ」と一声掛けると、すぐにその気配は霧散した。
ちびちびと酒を飲みながら考える。
今日、この村に〈マスター〉が訪れた。
随分と横柄な態度をとるその少女は、ひと目で分かるほど、強者だった。
左手に埋め込まれている卵は未だ孵化しておらず、その力は欠伸が出るほどの貧弱。だがどうしてか、力に見合わないほどの技術を持っていた。
〈マスター〉というものは、えてして弱いものである。
彼等の力の本質とも言える〈エンブリオ〉。それを使わなければ、恐れられている〈マスター〉など、力を持った赤子と同然。
だが彼女は逆だった。
力を持っていないのにも関わらず、強者足り得るその技。
「さて、どうやって頷かしたろうかなぁ」
上手く行けばあの憎き〈UBM〉を討伐して貰えるやもしれない。
技術を持っている我等をしても、力を持っているがために、あのバケモノには手も足も出ない。ならば力を持っていないが技術を持っているあの者だったら?
恐らく、上手く行くだろう。
幸い、彼女は麦の流通を再開させてほしいと言っていた。
ならばそれを交換条件に奴を倒してもらうのが良いだろう。
どうやら運は回って来ているようだ、よしよし。
早速、次の話し合いのときにでも、頼んで見るのも良いかもしれない。
「それじゃあ、準備しまひょうか」
上機嫌な鼻歌を歌いながら、廊下を歩く。
さて、果たして奴はどう行動するのだろう。
まぁ、楽しみだ。
どうだったでしょうか。
必死に書き上げたので荒があるかもしれません。
あったら言ってください。修正しますので。
それと、エンブリオの登場は次の話で一つ、出したいと思います。
因みに主人公のものではありません。
感想、批評、あからさまな煽りでなければ原動力になります。
では、