ようやく執筆活動を再開いたします。
おかしい所を指摘して頂いていましたので、修正、加筆をして再投稿と言う形で開始させていただきます。
では、
※十月一日 修正 【???】を削除
朝、ようやく日が登り始めた早朝の頃。
此処山姥の村で四人、流れる汗をそのままに戦う一人の少女と、三人の男たちがいた。
一見、大の大人三人が幼気な少女を寄ってたかって乱暴を働いているかと思うが、どうしたことか少女は汗はかいているものの、その白玉の様な肌には傷一つ存在しない。寧ろ運動で赤く上気した肌がいっそ艶めかしくもある。
その逆、三人の男達は息は荒く、目は充血し、着崩れた和服は今にも衛兵に連れて行かれそうな犯罪者然としているが、体のあちこちに見受けられる打撲や擦り傷、顔にある紅葉の跡や頭で膨らむタンコブが、何とも哀れを誘う。
つい応援の言葉を掛けてしまいたくなる程だ。
頑張れ、男性陣。
さて、この少女というのはおわかりの通り、芳乃である。
「まだ続けますか?正直私も疲れてきたのですが……?」
色濃く疲れの表情を見せ、肩で息をしながら言う芳乃。
しかし対する男達は、九以上に疲れが溜まり、芳乃以上に痛みも溜まり、正直見ている方が痛みを覚える程の有様だというのにも関わらず、何とも晴れやかな顔で、
「「「いえ、師匠、まだまだご鞭撻の程、宜しくお願いします!!」」」
と言うものだから呆れるものである。
芳乃もウンザリとした様子でため息を吐き、手にした木刀を構え、男達に聞こえないような小さな声で呟く。
――どうしてこうなった……?
小さな声は続く男達の気合いに掻き消され、薄霧の中に紛れる。
それぞれから向かって来る攻撃に、木刀を握る感覚を確かめ、振るう。人が為せる最短最速の一撃を、打ち込む。
しかしそれを予測していたかのように、男達は各々が握る木製の武器で受け止める。
一瞬、驚いたように目を開く芳乃。その様子に男達は「してやったり」とでも言いたげな表情を浮かべる。
そう、彼らは皆この瞬間を待っていたのだ。一見勢い良く突撃したかの様に見えてその実、全神経を芳乃の一挙一動に向けて九が放って来る最速の一撃を守り、驚いて硬直する芳乃に攻撃をあてるその瞬間を。
「「「うぉおおおおおおおっ!!」」」
烈迫の気合い。
この一瞬の好機を歴戦の武人である男達が見逃すはずも無く、すぐさま武器から手を離すと、拳を握り、芳乃に攻撃を放つ。
拳を握り攻撃するまでの時間。僅か数瞬。
全員に躊躇や加減などというものは存在しない。微かでも迷いが生じれば、一瞬で容赦ゼロの一撃が飛んで来ることは、今までの戦闘で学んでいる。
たとえ芳乃に今まで一度の攻撃すら与えられずに、反撃を喰らい続けた彼等だが、この人間を一歩超えた域にいる山姥の村でも一線を画す猛者たちだ。強者と争い、勝利する事を至上の喜びとする彼等には、未だ勝利の確信など無く、それどころか「気が付かぬうちに反撃を喰らうのではないか」という不安すらあった。
だが彼らはその攻撃を当てるつもりでいた。
当たる!
芳乃に拳が到達するまで僅か数センチ。
遂に勝利を確信した彼等は、ほんの僅かではあるが、油断してしまった。彼らでさえ気付かない程の、僅かな油断。
落ちた拳速に、瞬間、閃光のような一撃が振り抜かれた。遅れて脳に到達する痛みを認識したその直後、彼等の意識は暗転した。
何が起こったのか分からない。
そんな表情の男達が地面に倒れ伏す中、小太刀を手に、木刀を振り抜いた状態の芳乃は、フッと息を付いて両手に持った木刀と小太刀を下げると、意識がない三人の男達に言った。
「今のはヒヤッとしましたよ?でも、私は腰に小太刀を差していましたから、それは警戒するべきでしたね。それよりも攻撃の瞬間に気を抜くのはバツです。大バツです。攻撃は最後当てるまで、油断しない様にしましょう。それから……」
「「「…………」」」
「……ってあれ?起きてます?」
目を閉じ、左手の人差し指を立て、まるで教師が生徒に教えるように言う芳乃。
胸を張っているが、元よりなだらかな曲線を描く胸は僅かな主張だけをしている。
そこには微笑ましさがあった。
ともあれ、男達は気絶している。
おかしく思った芳乃は、倒れたまま動かない男達を不審に思い声を掛けるが、返事はない。
気絶させてしまったのだから当たり前である。
しかし気付かない芳乃はひたすら声を掛ける。
少女が男達が気絶している事に気が付くのは、あともう少し後の話である。
◇
□天地国首都森羅 恐山奥 【鬼人】龍洞寺芳乃
現在時刻午前九時、ようやく彼等から解放された。
「余りにも……疲れました……」
フラフラと歩きながら、村の端にある我が家を目指す。
この村の端にある生活拠点は私がこの村に着いて、村長と会っている時に、村人達が物置として使っていたものを、掃除をして、拠点として使えるようにしてくれていたらしい。
八畳一間に小振りな桐箪笥、囲炉裏、布団。
三点しかないこぢんまりとした小屋だが、随分居心地が良く、まだ一度しか寝ていないのにも関わらず、ずっとここで暮らしたいと思える程に安心感があった。
朝、まだ日が登らないばかりか梟さえ鳴く時刻に、昨日相手をした男達が、私の(寝ていた)小屋にやってきた。
寝惚けながら誰だろうと戸を開けた、その時。
低血圧のせいで頭が働いていない状態の私を、あろう事か奴等は囲い込んだ。
胴上げの様に三人がかりで持ち上げながら、村の外れにある森の開けた場所に連れてきた三人は、呆然としている私に叫んだ。
「師匠、どうか我々にご指導ください!!」
「「「宜しくお願いします!!」」」
凄まじい声量で叫んだ。
これには私もビクンっと驚き、フワフワと飛んでいた意識も一瞬で戻って来た。
「は?え?ど、どういう状況だ?これ……」
気が動転して素で答えてしまった私は、まだ現実をしっかりと認識できず、何でこんな所にいるのか、何で寝間着の白装束のままなのか、そもそも何でこの男達は私の事を師匠と呼ぶのか。
そんな事を茫然と考えていた。
やがて、混乱しながら絞り出した一言は
「あの……まず、着替えさせてくれないか?」
自分でもどうかと思うほど、女の子のセリフだった。
その後一旦小屋へ帰り、いただいた道着に着替え、木刀を二本持って先程の広場に行き、既に準備運動でもしていたのか、体から湯気が出るほど温まっていた三人と修練をしたんだが……
「本当にあの人達人間でしょうか……とても人間技じゃないんですが。特に最後の攻撃、武器を放してから次の攻撃まで一フレーム無かったですよね……」
明らかにあれは人間を超えていた。
というか、アレ?ここの村って「山姥の村」だよな?あれ?そもそも私は前提として間違っているのか?あの人達、もといこの村の住人全員人間じゃない?
そう考えれば昨日からたまに見る奇妙な光景の説明がつく。
私より年下の女の子が、私より大きいサイズの丸太をひょいひょい持っていったりとか、太い丸太を脚一本で蹴り折ったりとか、その他色々の不可解現象は、全て彼らが人間じゃないから、それだけでことが済むな。
なるほどな、ここの村の空気には能力値に直接作用するプロテインでも含まれているんだろうな。ははは……
「笑えないですよ……」
本当にな。
そこまで考えた所で、目的地である小屋についた。
睡眠時間が短かったせいか、さっきまで神経を極限まで張り詰めた状態で戦っていたからか、随分と体が重いし眠い。さっさと水浴びして寝たい。今日は何もせずに布団に転がってダラダラしたい。
そんな事を考えながら、引き戸に手をかける。
…………ん?
「何か、聞こえましたね。これは……うめき声?」
小屋の入り口のすぐ後ろは、何も開拓されていない森林になっている。直径で10mはありそうな幹を持つ、巨木の森林だ。
ただどういう訳か、村が開拓されている場所に面した森は、標準的な森が続いている。
声は、そこから聞こえていた。
人か、モンスターか。
数秒間悩んだ後、行くべきだ、と囁く勘を信じる事にした。
直ぐに鍵を開けて小屋に入ると木刀を置き、代わりにここの村で買った刀を取ると、急いで声のする方へ向かった。
声の主はすぐに見つかった。
うつ伏せに倒れているから顔は確認できないが、兄と同じぐらいの背丈のその少年は、片腕で守るように幼い少女を抱いていた。
少年の左手の甲には私のような卵型の宝石は付いておらず、代わりに入れ墨のような紋様が、少年をマスターであると言っている。
そしてその腕に抱かれた少女は、
まるでそこには何も存在しないかのように、眼球の位置が、陥没していた。
血が、涙のように一筋、流れていた。
◇
□ 山姥の村
「…………何処だ、ここ」
知らない天井だ。相当な年季が入っている家ならではの味が、鼈甲色の天井にはあった。
「何処だ。ここ」
同じ言葉を繰り返す。
何処かの小屋の中で一人呟く。
ぼんやりと霞を帯びた思考を無理やり起こすように、体を動かそうとする。
だがそれは全身に巻かれた白い包帯によって、阻害された。
巻いたヒトが相当に几帳面なのか、関節が動かせないように巻いてある。両手両足が完全に塞がれいた。
動かそうとしても、節々に力が入らず、一向に身動きが取れない。
さて、どうしたもんか。そう考えたその瞬間。
「――――ッガ!!」
閃光のような感覚が頭の中を通り過ぎ、オレは全力で拘束から逃れるために暴れだす。
今まで俺は何をしていた!?どうしたものか?巫山戯るなよ、どうもこうもないだろ!何でだ、何で
「只今戻りましたー………って、え?」
ガラリと扉を開ける音に反応して振り向くと、そこにはオレを見て目を丸くしている少女がいた。
逆光のせいでうまく姿が見えないが、さっきの言葉から考えてここの小屋の主でいいのだろう。すぐさま食って掛かる。
「解けっ!この包帯を今すぐに!!」
「え、いやちょっと!?待ってください、危ないですから!ストップ、止まってください!」
慌てて静止させようと両手を前に出して、ストップ、止まって、さもなければ……と言う少女。
だが止まるわけには行かない。あの娘がもしまたあの場所に連れて行かれたのだとしたら。そう考えるだけでいても立っても居られなくなる。
無理に動こうとして、包帯がギチギチと音を立てる。クソッ、この包帯が邪魔だ。
「この包帯を解け、手荒い真似は、オレはしたくない」
「だめなんだ!君の状態はとても酷くて、動いたらいk「解けといっている!」話を聞いてくれ!」
くそっ、解く気はないか……
ならばもういい、無理矢理にでもこの包帯を解いて行かせてもらう!
「オレは忠告はしたぞ!」
「ああもう、人の話を……
少女が何かを言おうとしているが関係ない。
今は何が何でもあの娘のもとに行くのが最優先だ。ほんの少しの間、気絶するだけだ。恨むなよ!
「【ヘラクr「聞けぇええええええええええっっ!!」グォッ!?」
エンブリオを解放しようとしたその時、何か視認出来ない高速の物体が、オレの顎を掠めて通過する。
言うことを聞かずにグワァンと視界が揺れるなか、暗転するその中に、左脚をソっと床に下ろす少女の姿があった。
◇
□【鬼人】龍洞寺芳乃
目の前に倒れ伏す、長身の青年。
ギラリと光る刀のような眼光をたたえた三白眼は、今はキツく閉じられている。
「さて、どうしたものでしょう……」
部屋を見渡してみると、包帯に巻かれたままゴロゴロと暴れまわったのか、所々に散らかった家具が見受けられた。
倒れている青年の背には、ドス黒く変色した包帯が今もなおその色で白を侵食している。
痛覚設定をオフにしているのか。それとも単純に痛みに気付いていなかっただけなのか。どちらにせよ、こんな大怪我を負ってあそこまで動けるのは、正直ゾッとした。思わず顎を蹴り抜いてしまったぐらいだ。
青年には悪いことをした。だが、言う事を聞かなかったお前が悪いんだからな?
「取り敢えずは、診療所に運ぶべきでしょうか。それとも此処に寝かせておくべきですかね」
運ぶときに全身の傷が開いてもおっかないし、取りあえずここの小屋に寝かせておくべきだろう。
包帯も取り替えないといけないしな。これ以上傷が開いて流血したら、HPがゼロになって死んでしまいかねない。助けたのに、死なれては困る。
「しかし……どうしてこの人はあんなに慌ていたのでしょうか」
あの幼女と何か関係があるのか?両眼の無いあの幼女と。
……やめだ、かんがえても仕方が無い。この人が起きてから詳しく事情を聞いて、行動するのはそれからだ。
よし、診療所に様子をみに行こうかな。全体的に見れば、あの娘のほうが怪我は軽かったし、そろそろ起きてるかもしれない。眼が無くなっていて驚くかもしれないから、誰かが近くにいたほうがいいだろう。
医者や村の人達は、なんかすっごい形相してシオンの家に向かっていたしな。
一人ぐらいは残しとけよ、私治療なんて出来ないからな……
取り敢えず、診療所に行こう…………なんだか外が騒がしいな。
引き戸を開け、顔を覗かせるとそこにはシオンがいた。
「こんにちは。何かごようですか?」
「ええ、付いてきて欲しいんやけど。後ろのその子と一緒に」
手に持った扇子を青年と私に向けると、シオンは薄く唇を歪めた。
ど、どうだったでしょうか……?
頑張ってはみました。シナリオも一応まとめました。執筆は前よりは早くなる、はずです。
おかしなところなどありましたら、教えてください。
では、感想お待ちしております。
活動報告の方で、軽いアンケートもとっております。そちらもよろしければ。