TS転生者はヒキゲーマー   作:猫の軍

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こんにちは、猫の軍です。
大変遅くなりました!最新話です。
待っていた方が居たらいいなぁ……べ、別に楽しみになんて、して無いんだからねっ!なんて方も、居たらいいなぁ……

久々なので、文体が変わってたりだとか、つまんなくなったりとかしてるかもしれません。許してください。

視点変更多めです。
では、どうぞっ


ep.6 夕闇の対話

 □恐山 山姥の村 【鬼人】龍洞寺芳乃

 

「エンブリオっていうのは、持ち主の気持ち――まぁ感情の爆発とでも言ったほうが分かりやすいのか?……それらが呼び水になって発現することもある」

 

 私の隣を歩く青年は、先程した質問に対する回答をしていた。

 辺りは夕暮れに差し掛かり、橙色に染まった景色に、濃い影が落ちている。

 

「では、危機的状況や強く欲しないと発現しないのですか?」

「いや、全てがという訳じゃない。さっきのはあくまで一例で、例えば何も特別な事なんてしていないのに、戦闘終了後とかにいきなり発現する例もある。感情がどうのっていう方が、稀だ」

「……なるほど、物知りなんですね」

「物知りじゃないさ、リアルで三日前から、ログインしてる間ずっと、エンブリオが発現してるやつに話を聞きまくってたからな……オレも発現して一日も経っていない」

 

 そう言うと、また黙りこくってしまう青年。

 ふむ、どうやらこれ以上何も話す気は無いらしい。まったく、寡黙と言っていいのかどうか……さっきのような熱い感じのほうが、好感は持てるぞ?

 

 どうも、現在シオンの後について何処かへ向かっている芳乃です。

 先程どうやったらエンブリオが発現するのか。と聞いたら、今のような答えを貰った。自分なりの考えを纏めて話してくれたらしい。顔と態度に似合わず、中々に気配り、心遣いができる青年らしいな。

 しかし……なるほど、感情の爆発か……

 あれ、私それ何度か無いか?

 狼の大群に襲われたときとか、ここに来る途中の戦闘とか。結構感情を爆発させてたんだが……?あれぐらいじゃ足りないのか。

 一体、いつになったら私のエンブリオは発現するのか。

 

 しかし、エンブリオ……embryo、か……

 胚、出産まで母体に入っている赤子の事だよな……その意味で行くと、エンブリオと言えるのは今私の左手にあるような卵型の第0形態だけじゃないか?いや、()()()()()()()()()()()()()()()、胚であり、赤子であるのか……?

 ……ふむ、まぁ深読みしていても仕方ないだろう。案外、適当に名付けたかもしれないしな。

 そう考えながら歩いていると、不意に、青年が話しだした。

 

「ああ、そうだ……もう一つだけ、オレが思ったことがある」

「なんです?」

 

 

 

「もしかしたらあんたは……無意識の内に、エンブリオを必要としてないんじゃないか?」

 

 

 

 ◇

 

 

 

 □恐山 戦場跡 ???

 

 未だにあの男から受けた傷が、癒えずにいる。あれから数ヶ月が経つというのにも関わらずだ。全く、憎たらしいことこの上ない。

 あの男――たしか、山姥といったか。あの種族の村落は何処にある?

 根絶やしにしなければ、我が王であるために。我がこの姿を保つ為に。

 

「敗北ハ……赦サレンノダ……」

 

 首に刻まれている傷が、熱が、癒えない。

 人を喰えば癒えるかと、迷い込んだ童女を喰おうとしたが、それも意味のわからない力を持つ男に阻まれた。

 憎たらしい。

 もはやそこらの獣では収まらん、この飢え。この疼き。

 喰わねば。喰い尽くし、根絶やしにせねば。

 我を殺しうる存在は全て、喰ってしまわねば。

 

「……ドコダ」

 

 山姥という種族は、何処にいる。

 

「ドコダ」

 

 あの憎たらしい男の種族は何処にいる。

 

「ドコダッ!」

 

 喰いそびれた獲物は何処にいる!

 喰わねばならぬ。

 何が何でも、この飢餓を収める為に。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 □恐山 山姥の村 【戦士】アベル

 

 驚いた顔をして、こちらを見る少女から目を離し、目の前を歩く女を見る。

 ゆるりと歩く姿からは想像もつかないが、彼女はこの村の長だという。常に薄く弧を描く顔からは、なんの感情も窺えない。果たしてこの女は人間なんだろうか、実は人の皮を被った鬼なのではないか。

 そんな疑問さえ湧いてくる。

 

「なんですの?人の顔をジロジロみはって」

「……いや、何でもない」

 

 何でもない。ことは無い。

 ただでさえ怪しい人間を、この状況がさらに怪しくさせる。可能なら、今すぐにでもあの子の近くに行ってあげたいが、それもできないだろう。変な動きをすればすぐさま、取り押さえられそうだ。

 隣で考え込んでいる少女は気付いていないのだろうか。

 張り詰めた糸のようなこの緊張感を。呑気に会話なんて、している途中に殺されても疑問はない。

 そのぐらいの緊張感が、辺りを包んでいた。

 

「……あの、いいですか?」

 

 クイッと袖が引かれ、隣の少女が話し掛けてくる。

 ああ、これは駄目だ。気付いてない。

 

「なんだ」

「私がエンブリオを必要としていない。なんでそんなことがわかるんですか?」

 

 そんなことか。

 

「なんとなくだ。あんたは、なんとなくエンブリオを必要としていない。そんな感じがしただけだ」

 

 そう言うと、また黙り込んで考え出す少女。

 少女は強いんだろう。話を聞く限り、何とか攻撃が通じるレベルの相手を大群で相手取って、勝利したと言っていた。

 だったらそれは、自分より強者である存在に、自分の力だけで勝った。そういう事だ。

 詳しく言うと、『必要としていない』ではなく『必要ない』だろう。勝てる相手にさらに力を手に入れて勝とうなんて、思わない。最も、そんな話、見たことも聞いたこともないがな。

 

 暫くして、村の中ではかなり立派な家についた。

 どうやらここが目的地らしい。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 □恐山 山姥の村 【上級結界師】紙怨

 

 連れてきた二人と向かい合うように、睨み合うようにしながら少し。

 ぼんやりと薄暗い部屋の中で、蝋燭がちらちらと不規則に揺れる。

 

「なら、答えを聞きましょうか?」

 

 白。

 そう表現するのが一番的確だろう。

 目に付く、混ざりの無い純白の髪。暗い色の服装と相まって、余計に映える。その中に二つ、血が瞳の形をとったような紅緋の両眼。美しい顔を不快げに歪め、こちらを見つめている。

 対しての黒。

 刀の刃の様な眼付きをした男。

 漆のような黒髪に、灰の外套。真一文字に口を引き、決して途切れることのない警戒は、この部屋に入ってからずっとだ。

 この二人が、伝承に聞く『マスター』と言うものらしい。

 なるほど確かに、見れば見るほど奇妙な存在だ。

 人と寸分違わぬ姿形であるのに、人とは隔絶する異質をその身に宿している。死なぬ上に強力な力を持つというのは、事実らしい。

 白の少女が、この辺りのモンスターを貧相な装備で狩っているという話が本当だとすればなおさら、『マスター』というものは化物じみている。

 『アレ』に弱体化されてるとはいえ、並大抵の者なら手も足も出ずに貪り殺されるのが普通だというのに、逆に虐殺しているとは。驚きを超えて、もはや異常にしか映らない。

 

 だが問題はそこでは無い。

 もう一人、黒の青年が行った事が問題だ。

 

「……巫山戯るなよ」

 

 低く、ドスの効いた声が鳴る。

 青年が、射殺さんばかりの視線で睨みつけていた。

 

「巫山戯てなどありまへん。あンたがした事は、人を一人助けた代わりに、それを含めた全ての山姥を殺すのと、かわらんよ?」

「だから人を殺すのかっ!?自分達が助かる為に、未来も夢もある女の子を一人、ただ死ねって言って送り出すのかっ!?巫山戯るなよっ!」

 

「じゃあ、逆に……」

 

 青年を睨む。

 何も分かっていない。ただ甘えた事を言って、何も分かっていない餓鬼を睨みつける。

 

「それ以外の方法で勝てる筈もない相手に、死んでも勝てない様な相手に、勝てるような策が、力が、あるんですの?」

「全員で戦えばいいだろうっ!」

「阿呆が。それをして、全滅したと言ったはずですぇ?」

 

 言葉を飲んで押し黙る。

 なにせ目の前の青年は何も出来なかったのだ。それこそ、人柱となって種族を救うはずだった童女を、連れてくることしか。

 黙った青年から、白の少女に目を向ける。

 

「あンたは、どうですの?」

 

 そう聞くと、少女はゆっくりと言葉を絞り出すように言う。

 

「……私達に、山姥を狙う化物を、殺してほしい。そういう事ですね?」

「ええ、そうですぇ。それで、受けてくださるん?」

 

 ユラリと蝋燭が妖しく揺れる。

 もう外は暗闇に包まれているだろう。夜の帳が静寂を運んでくるように、良くないものもまた、来ている。

 手は打たねば、ここで種を絶やす訳には行かない。

 我々では勝てない。勝つ事ができない。

 もう既に我々は『喰われた』種族だ。『アレ』に対抗することは、出来ない。

 口を噤んでいた少女は、ようやくその口を開いた。

 

「わかりました……受けましょう。ですが」

「なんや?なんか条件でもあるんですの?」

「はい。私がこの話を受けたら、麦の配達をまた始めてくれませんか?」

「それはできませんぇ?さっきも言った通りや、『アレ』が居る限り、私達は村から出れんのですぇ?私らに、無駄に死ねと?」

「ですが、私達にメリットが無さ過ぎます。ですから、これは約束して下さい」

「……良いでしょう。約束しまひょ。でも、あくまでそれは倒す事が出来たらの話ですぇ?言った通り、村から出たところで、私らが殺されては意味が無いでしょう?」

「…わかりました。ですがやはり、もう少し条件を緩和してくれませんか?知っての通り、私も彼も、まだレベル不足です。失敗しても、少しは……」

「あきまへん。それにあンたらは不死身やないの。死んでも、何度でも、何度でも蘇ってしまうんやないの?」

 

 何度でも戦えるやないの。

 そう付け加えると、俯いてしまう。

 はぁ、鬱陶しい。

 どうして死ぬことを恐れる?不死身なんだろう?死なないのだろう?なら何度でも戦ってくれてもいいだろうに。どうせ、死んでも死なないのだから。

 

「話は以上や。受けるんやったら、明日の朝にまた来てや」

 

 そう区切ると、私は二人を置いて部屋を出た。

 暗い廊下を灯りも持たずに歩く。床を擦る裾の音が、心の悔みを表すように引き摺る。

 決して、キツイ言葉を掛けるつもりは無かった。そう言ってももう仕方が無い。私が思っていたより、父を失って、継いだ長の責任や、種族ごと絶えるかもしれないという恐怖は、大きかったのだろう。

 何より心が、二度と『アレ』と戦いたくないとそう言っている。

 なんて自分勝手なんだろう。なんて卑怯で、臆病なんだろう。

 

 私は、そんな自分が、死ぬほど嫌いだ。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 □恐山 不浄林 【鬼人】龍洞寺芳乃

 

 夜の森を、刀すら持たずに歩いていた。

 さっきの対話が、ずっと頭の中から離れてくれない。どこか泣きそうな顔をしたシオンが言った言葉が、全部正しいと思えてしまう。

 確かにそうだろう。彼等とは違い、私達はプレイヤー――マスターだ。死ぬといってもHPがゼロになるだけだし、何らかのペナルティはあれど生き還る事ができる。

 青年、アベルが助けた少女は、身体の中に毒を仕込んでいたらしい。それも、ごくわずかでも体内に入れば、確実に死に至らしめられる猛毒だ。

 その毒を入れた袋を飲み、化物に喰われ、相手を殺す。それは確かに許されざる行為で、忌避すべき判断だろう。だがそれは私達の世界の話だ。ここは全く違う別の世界。ゲーム世界。だというのに、なぜ。

 この不安は消えないのだろう。

 ここはゲームなんかじゃ無い。本物の、嘘偽りない、完全無欠な、歪な現実だなんて。そう思ってしまう。

 軽く頭を振って、思考を追い出す。

 

「私でさえ、自分が本当に自分かなんて、分かりませんよ」

 

 ふいに口から溢れた言葉に、驚く。

 

 なんだって、こんなになっちまったんだろうな。

 

 そう思いながら、長い白髪を手に取る。

 サラサラときめ細やかな白絹のような髪は、手をすり抜ける。

 思えば14年。

 あの神をひたすら憎んで生きてきた。どうせこれも見てるんだろう?

 

「全く、嫌気が指す」

 

 心のままに、口に出す。

 繕った言葉は、今はいらない。一人、夜に呟く。

 

 それからしばらく、森を歩き続けた。

 そして、その場所に出た。

 

「人間……?イヤ、貴様ハナンダ?」

 

「え?」

 

 古戦場のような場所だった。

 折れた刀や槍が地面に突き刺さっている。草は枯れ、地面は所々焦げている。その真ん中に、それはいた。

 身長2mを優に越す、ヒトガタ。両手に巨大な刀――斬馬刀を持ち。異常に発達した虫のような顎を持つそれは、すぐに戸惑いを何か得体のしれない感情に変えて、こちらを見る。

 

「マァ、イイ。我ノ餌トナレ」

 

 それは、食欲。

 決して向けられるはずの無い感情が、自分に向けられている。

 全身が粟立つ。

 その時、視界の端に新たなメッセージが流れた。

 

 

【条件が揃いました】

【クエストが進行します】

【目的:UBM【喰種適応 クワズムシ】の討伐】

 

 

「……冗談、だろ?」

 

 三日月が、嘲笑うかのように、薄く光を放っていた。




どうだったでしょうか。
ようやくUBM戦に持ってこれた……
さて、武器もない状態で、芳乃はどうするのか……!

感想、お待ちしています

ではまた次回
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