女主人公のカントー制覇旅   作:ムイコ

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第1話-② マサラタウン②

 

拝啓、おふくろ様。

私の人生初のポケモンバトルは不意打ちで始まりました。

 

「いけっゼニガメ!!」

 

グリーンから突然ポケモン勝負を挑まれ、私は固まってしまった。

いやいや、ちょっと待てグリーンくん。此処室内だぞ。

埃立てたら怒られるし、『極秘資料』とでかでかと判を押されている資料がそこら辺に落ちているだろう。

ほら、研究員の方がぞろぞろと集まって来たよ。

今だったらすぐ謝れば許してくれるだろうし、今すぐゼニガメをモンスターボールに……

 

「おや、グリーンくんとリーフちゃんの初バトルですか」

 

「録画の準備はできましたよ、この日の為にカメラを新調したのですよ……ふふふ」

 

「ヒトカゲとゼニガメも体調は万全。勝負はどう転ぶか分かりませんよ」

 

 

 

――ああ、そうだった。

ここには常識のある大人なんていなかったな。

 

 

 

「ほら、さっさとヒトカゲ出せよリーフ!!降参するなら別にいいけどよ」

 

 

よし、その喧嘩買ってやるぞ。

四年間ずっと『マンキーでもわかる!!ポケモン戦術入門書』読んでいたのだからな。

私はただの初心者ではないぞ……多分。

 

 

「……きゅーん」

 

モンスターボールからヒトカゲを出すと、ゼニガメに睨まれているのが怖いらしく、私の後ろに隠れた。

ちょっと待て。戦うのは私じゃない、君だぞ。

 

臆病者を前に押し出し、図鑑を開く。

わざ一覧ページを開き、我が幼馴染みをどう叩きのめすか戦略を立てる。

 

 

……覚えている技はひっかくとなきごえだけか。

レベル5であれば妥当だ。

おそらく、ゼニガメの方もそうなのだろう。

タイプ技が使えないとなれば簡単な事だ。

物理で殴りあって最後まで立っていた方が勝ちなのだ。

うん、取り敢えずひっかくだけやらせておくか。

なきごえなどでグリーンに媚を売る必要はないぞ、我が相棒よ。

 

「やれやれ……まったくしょうがないヤツじゃのう!リーフ!ポケモン勝負ははじめてじゃろう?ポケモンバトルは……うん?基本的なルールはもう知っているから必要ない?……そ、そうか……では、たたかってみなさい」

 

いらない解説を始めようとした博士を黙らせ、ヒトカゲに指示を出す。

 

 

―『ひっかく』だ。

 

 

「カゲ!!」

 

小さな爪をきらりと光らせ、ヒトカゲはゼニガメへと飛び掛かる。

重い甲羅を背負ったゼニガメと違い、ヒトカゲは身軽だ。

ゼニガメは避けられずモロにその一撃を食らう。

 

「ゼニガメ『たいあたり』!!」

 

 

――こうして、初心者丸出しのポケモンバトルが始まった。

 

 

 

* * * *

 

 

 

結果:初勝利

 

 

「あーくそっ!!お前に負けるとかありえねえって!!」

 

 

グリーンが地団駄を踏みながら悔しがる。

 

 

しかし、想像以外にポケモンバトルは大変で面白かった。

……別にキズ薬使うのは反則でもズルでもないから。ちゃんとした勝利である。

自分の準備の悪さを恨むんだな、グリーン!!

最終的にはただの殴りあい気味であったが、ちゃんとした勝利である。

この世にポケモンがいてくれて万歳である。

日常生活にも彼等の力はかなり影響しるし、切っても切れない存在だなと改めて実感する。

 

 

「カゲェ……」

 

 

傷だらけながらも、元気なヒトカゲが尻尾を揺らしながら甘えてくる。

嗚呼。我が相棒マジ天使。

思いっきり抱きしめて頭を撫でてやる。

ペロペロとかは周りの目があるので自重だ。

 

「うむ、見事じゃ!二人ともこれからが楽しみじゃな!!」

 

「録画もバッチリです!!いいデータが取れましたよ……ふふふ」

 

博士と研究員の人達が大いに笑っている。

多分、二匹が暴れてぐちゃぐちゃになった研究所の片付けという現実から目を逸らしているのだろう。

少し落ち着いたのか、グリーンは床に転がっているゼニガメを小脇に抱え、再び、私に指を突きつける。

バトルをする前とは全く違う種類の目をして。

 

 

「他のポケモンと戦わせてもっともっと強くしてやるから……それまで首洗って待ってろよ」

 

 

普段のおちゃらけたふざけた空気は何処に行ったのだろう。

このバトルは幼馴染を変えるきっかけがあったのかもしれない。

私はただグリーンの目を見る事しかできなかった。

 

 

「リーフ!じーさん!そんじゃ、あばよ!」

 

 

グリーンはひらひらと手を振って、研究所を出て行った。

多分、奴の事だからすぐにマサラタウンを飛び出すのだろう。

私も負けてられないな。

早く帰ってお母さんに話してすぐにでも出発しよう。

 

 

 

……あ。

グリーンから賞金貰うの忘れてた。

博士もそれに気付いたようだ。

仕方ないのお。と呆れた目をしていた。

 

「あやつ……普通に忘れておったな。まあ、今回は初バトルじゃ。グリーンの代わりにワシが賞金を出してやろう」

 

ポケットから財布を出して、博士は賞金をくれた。

その額、80円なり。

研究所にチャリンと軽い音が響いた。

……しけてるな。

 

「ば、馬鹿者!!最初はこんなもんじゃ……しけてるとか言うでないぞ、この不良娘が!!」

 

うっ、お世話になった博士から言われると耳が痛い……いや、別に不良娘じゃないけど。

え、スカートが短すぎる?

これはファッションだって。そもそも、私の服装注意するなら全国のを歩いているミニスカートの子を注意しなくてはいけなくなるよ、博士。

 

 

「ううむ、ああいえばこういう。屁理屈不良娘じゃ……」

 

 

よし、それくらいにしておいてください。博士、いい加減怒るぞ。

殺気を感じ取ったのか、博士は静かになった。

 

こうして、私の旅は始まった。

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