「海……リラックス目的というか遊びで来るのって久しぶりだな」
今の親は山派だったから子供のころはよく家族で登山をしていたし、その前は海で訓練や海の魔物を討伐したりしてたから海=危険な魔物がいるっていうイメージが強い。
「っていけない……もう今世は戦いの日々じゃないんだ。今はこの平和な現世を楽しまなきゃ」
頭をぶんぶんと振って思考を切り替える。
「俊介さーん!」
遠くからトールの声が聞こえたので振り返ると、身体のボディラインが強調されていてそれでいて派手さをあまり感じさせないビキニの水着を着ていた。
そしてカンナはフリルがついていて露出は少ないものの、子供の可愛らしさがしっかりと活かされてる水着だ。
「おぉ……」
なんだか目のやり場に困るな……
「どうですこの水着?鱗を弄って作ってみました」
「あぁ……えっと、似合ってるよ」
「えへへ……あれ、俊介さんなんで水着着てないんですか?」
トールが俺の服装を見てそう言ってくる。今の服装は無地の半袖Tシャツと海パンを着ている。
「まぁ……俺は泳がないしいいかなって」
「ダメです! じゃないと俊介さんの水着姿が見れないじゃないですか!!」
「お前それが本心だろ」
トールが迫真の表情でそういってきたので呆れながらも
「はぁ……まあいいか」
そうしてTシャツを脱いで海パンだけの姿になる。
「おぉー!俊介さんの水着姿っ!」
ハァハァと吐息をしながら俺のほうを見るトール
「あ、そーだ俊介さん日焼け止めクリーム塗りましょうか?」
「あー……いやいいや。その顔見てると変なこと考えてそうだし」
口から唾液を垂らしながら手をわきわきするトールをみてると嫌な予感しかしない。
「トール様、シュンスケ。思いっきり泳ぎたい」
カンナが退屈そうな感じでそう言ってくる
「そうですね、泳ぎましょうか! 俊介さんも泳ぎましょう!」
そうして三人で泳ぐことになったがなぜか競うことになってしまい、結果としては……まあ当たり前というべきか通常の人間のスペックではドラゴンに勝てるわけがなく(なんか二人の泳ぐスピードが速すぎて魚雷みたい)トールが一位を取った
「いぇーいっいっちばんー!!」
「トール様凄い、流石」
トールが笑顔で手を振っている。
「トール達早いよ……」
「えへへ、ごめんなさい。つい張り切りすぎちゃって」
てへっ、と舌を出してやっちゃったっていう顔をしている。
「それより俊介さんっ私が一位になったので俊介さんに何か一つしてもいいですよね! なんたって俊介さんが最下位ですから!」
そもそもそういう約束すらしてないんだが……
「……で、トールは何したいの?」
俺が渋々諦めながらもそう聞くと
「さっき断られた日焼け止めクリームを……」
どっからか取り出した日焼け止めクリームを取り出してそう言ってくる
「はぁ……しょうがないな」
そうして陸に戻ってビーチパラソルを立てた場所にいって寝そべる
「これを塗らないと肌を痛めるなんて……下等生物っ♡」
そんなことを言いながら顔が緩んでいるぞ……
トールが日焼け止めクリームをたっぷりと手のひらに出して、俺の身体に塗りたくっていく
突然ひんやりとした感覚が伝わってくる。少し身体がぴくりと反応するもだんだん慣れてきて気持ちよくなってくる。
「うへへ……俊介さんの身体ぁ……引き締まっててきっちりとした身体ですね……」
「なんだか変態っぽく聞こえるな……」
そして全身に塗り終わるとトールは満足そうな顔をしている
「……満足した?」
「えぇ、勿論です!」
「ねえ、遊びたーい」
カンナが退屈そうに座りながらこちらを見ている
「ごめんごめん、じゃあ遊ぼうか」
そしてスイカ割りをしたり(スイカは爆発四散した) ビーチバレーをしたり(殺人バレーと化した) して楽しんだ。
「はぁ〜楽しかったなぁ……」
「そうですねぇ」
「うん、楽しかった」
身体を伸ばしながらそう言うと他のふたりも続けて言う
「海なんて誰かと一緒に行かなかったから余計楽しく感じたな」
「家族とは一緒に行かなかったんですか?」
「んー……両親は山に行くのが好きだから登山ばっかだったな」
「そうですか……あの、もっと俊介さんの家族のことを聞いてもいいですか?」
「いいよ。えっと……俺にこれをしろ、とか強制せずになりたいようにしなさいって言いつつもしっかりとサポートしてくれるっていうか……まあ愛してくれてたのかな」
言ってて恥ずかしくなりながらもトールに伝える
「それが……俊介さんの家族ですか?」
「あぁ」
俺がそう言うとトールは暗い顔をする。なんで暗い顔をしているかわからないけど……
「ねえ、トールの親はどうなの?」
「立派な親ですよ、感謝もしてますし……俊介さんのことを紹介してみたいも思ってます」
「紹介してみたら?」
「でも……俊介さんは殺されてしまうかなって……それだったらやめとこうかな、と」
「まぁ……それがトールの世界での常識だから、仕方ないかもしれないね」
「そうです……きっとおかしいのは私なんでしょうね、悲しいです」
ドラゴンと人間は争いあっている。自分の子が人間を連れてきたらおかしくなった、と思われるかもしれない。むしろ殺すだろう。
「……住む世界によってこんなにも変わるんだね。初めて知ったよ」
否、知っている。何度も生まれ変わって色んな家庭環境を見てきた。親に暴力を振るわれたり、捨てられたりされたことだってある。
なのに知らないふりをする。俺は嘘つきだ。トールには全然本当の事を話せてない。生まれ変わっていることも……ドラゴンと渡り合える力があることも……魔法を使えることも。
俺はこのままずっと言わないつもりだろう。だからトールとはこれ以上、関係性が深まることはないんだろうな、とも思う。
「……なんだか気だるくなってきました」
「じゃあ帰ろうか、また今度一緒に3人で遊びに行こっか」
「えぇ、帰りましょうか」
「おー」
そうして俺たち3人は帰る準備をしてから家に向けて帰っていく。
何だか寂しそうなトールを見て、俺はトールと手を繋いでおく。……俺にできることはこれくらいだから。
するとトールは驚きつつも、ぎゅっと握り返す。そしてカンナも俺の手を握って、傍から見ると家族のような構図になる。
そしてそのまま飛んで行かずに歩いて帰っていったのだった