色々と思い浮かばず気が付いたら伸びてしまいました。
それは、仕事中の事だった────
俺は授業が終わり、職員室で次の授業の準備をしていた。
今日の夜ご飯は何だろとか今日もまたいつも通りの日常を過ごすんだろうな、なんて思ってた。
物凄い魔力を感じた、その場に居なくても思わず平伏してしまうような力だ。俺はぐっと堪えて誰にも見られないよう学校の屋上へと向かう。
「この魔力は……まさかっ!?」
あいつがこの世界に来たのか! しかし何故……無闇矢鱈に他の世界を侵略するようなやつでは無いハズだが。
そんな事を考えていると、トールの魔力があいつの元に近付いて行くのを感じる。
トール!? 何をするつもりだ!……いや、待てあいつの魔力と似ている……まさか!?
「親子、なのか……?」
という事はトールを連れ戻しに来たという事だろうか。それならば納得が行く。
だが……俺が行ってもいいものか……トールはあくまで帰る場所が無いから俺の家に居ただけだ。親が来た今、帰る場所はあるんじゃないか?
「取り敢えずトールに聞いてみなければ」
そう思い、魔力を使って空を飛ぶと急いでトール達の元へ向かう。
全速力で飛ばすとトールとあいつ、終焉帝を見つけるが目の前で消えてしまった。
「トール!……消えた……帰ったの、か」
やっぱり、帰る方を選んだか。そうだよな……
「……戻るか」
俺はゆっくりと学校へと戻った。
それから俺は一日を終えて家へと帰った。そこにはトールは居なくて、カンナが1人座っていた。
「ただいま、カンナ……あれトールは?」
「トール様は帰った」
「帰った? でもいないじゃないか」
知っている癖に、知らないふりをしてカンナに尋ねる。
「帰った、向こうの世界に。多分終焉帝……トール様のお父様が迎えにきた」
「それって……?」
「多分もう帰らない、終焉帝には逆らえない」
「……そうか」
トールは帰るべき場所に帰ったんだ。何ら不思議なことじゃない、彼女にも居場所はあるんだ。
「シュンスケ、なんで追いかけない?」
「追いかける? 何を言ってるんだよカンナ、トールは帰ったんだろ? 俺にそんなことが出来るわけ……」
「出来る、シュンスケには魔力が沢山ある。出来ると知っててなんでしない?」
「……気付いてたのか?」
「トール様だって気付いてた。でも知らないふりしてた……シュンスケから話してくれるのを待ってるって」
気付かれてたのか……まあそうだよな、あんなに一緒に過ごしてたら身体から魔力が漏れ出てることもあるだろう。
「でもカンナ、トールを追いかけれても終焉帝には逆らえないんだろ? 俺が追いかけたところで無駄だよ」
「そんな事ない、シュンスケには────」
「無理だよ、カンナ……無理なんだ」
カンナの肩を掴んで言い聞かせるように呟く。確かにやろうと思えばトールを連れ戻せる、終焉帝とだってやり合える。
だけどそれをトールが望むか解らない。だって俺は神殺しの異端者である上に────
ドラゴンスレイヤーだと言われていたんだ。
そんな俺がどんな顔をして会いに行けばいい? 向こうからしてみれば同胞殺しの敵だぞ。それを隠したまま過ごしていける筈がない、いずれバレた時に殺し合いに発展する可能性もある。そんなの、耐えられない。
「シュンスケ……わかった」
カンナは納得してないような顔をして部屋へと戻っていく。
それからトールのいない日常は淡々と過ぎていった。カンナともあれ以降、気まずくてあまり話せていない。
それにしても……今まで1人が当たり前だった筈なのに、喪失感というか……日常に色が無くなったかのような感覚だ。
何千、何万回と繰り返して来たから……こういうのは慣れたというか、何も感じないとさえ思っていた筈なのに─────
「人間って弱いんだなぁ」
ポツリと呟くも部屋の中で響くだけで誰にも聞かれることは無い。
「シュンスケ、今日は才川の家に泊まりに行ってくる」
「ああ、気を付けて行ってきな」
そう言って出かけるカンナを見送る。今日は仕事も休み、やることが無い。前は隠れて鍛錬とか、トールと一緒に買い物に行ったり、どうでもいい事で駄弁ってたりしてたんだっけ……?
「────ん」
ははは、こんな無気力な姿をトールに見られたら何て言われるだろうな。連れ出されて何かさせられるだろうか、それとも休めって言われてお世話されるのだろうか。でももうトールは帰ってこない。
「しゅ──け────ん」
帰ってきたって一緒に暮らせるわけない。同胞殺しなんかと……どんな面して会えばいいんだ。俺は……
「俊介さん!!」
玄関の外から声が聴こえてくる。この声は……まさか────
「俊介さん! 私です、トールです! 開けてください!」
トールだ、間違いない。でも何で、彼女は既に帰る場所があった筈なのに。わざわざそれを蹴ってまで俺の元に帰ってきた、何で? なんで? なんで……
そんな事を考えながらも身体は勝手に動き、いつの間にか玄関の扉を開ける。するとそこにはドラゴン姿のトールがいた、少しするとトールは人間姿になって俺の元に駆け寄ってくる。
「俊介さんっお久しぶりです! 勝手に居なくなってごめんなさい!でもこれからは居なくなってた分までテキパキ働きますよ!」
何でそんなに嬉しそうな顔で居られるんだ。俺が同胞殺しだって知らないからだろうな。
「あれ、俊介さんどうしました? おーい」
「……あのさトール」
「はいっ! 何ですか?」
「俺の事なんだけどさ……実は────」
そう言おうとした矢先、外に物凄い魔力を感じる、また来たのか……!!
「トール、この世界に来ては行けないと言ったはずだ」
終焉帝が外から強烈な威圧感を感じる。
「嫌です……!!帰りません!」
「嫌だと? 何故だ……この世界は不干渉と定められているのだ」
「それでも……私はここに居たいです! 此処が私の居場所だから……!」
い、ば、しょ……? 居場所だって? 何故なんだ……何で俺の場所に居たがる?
「此処がお前の居場所にはならない、何故ならお前はドラゴンだからだ」
「この世界にドラゴンはいない、この世界はお前を認めないのだ」
「人間として慎ましく暮らしていても何れ何処かで綻びがでるぞ。戻ってこいトール、傷付く前に」
「嫌です、だって私は……俊介さんが好きなんです!!」
す、き……好き、Love? そんな理由で? それだけで此処に居たいと?
「ふっふふふ……はっはっは!!」
思わず笑いが出てしまう。単純な事だったな! だけどそれだけで理由になる。それを忘れていた。
「何が可笑しい、人間」
「いやすまない……ただトールは帰りたくないってさ!」
俺がそう言うと、終焉帝から魔力のレーザーが飛んでくるが俺は咄嗟に魔力で腕を強化して防ぐ。
「何……貴様何者だ? この攻撃を防ぐなど普通の人間ではあるまい」
「ああ、そうだ……俺は普通の人間じゃない」
胸元のネックレスに魔力を込めて剣に戻して握り込む。そうして秘めていた魔力を解放する。
「貴様……まさか!? ドラゴンスレイヤーか!」
「そうだぜ、久しぶりだな終焉帝」
「俊介……さん?」
トールは俺を見て驚いた顔をしている。
そうだよな、急に好きな人が同胞殺しだって知ったらこうなるよな。だけど今は────
「貴様はあの時、死んだハズ……其れよりもトールに何をした? ドラゴン殺しの貴様にトールが好きになるなど何かしたに違いない」
「さてな……俺は何もしてないぜ」
「抜かせ!!」
魔力砲を放ってくるも、剣で受け流して空へと飛ばして爆発させる。
「はははっ!その程度じゃ俺は殺せないぜ終焉帝!!」
「貴様ぁぁぁ!! ドラゴンスレイヤーァァァ!!」
お互いに接近して終焉帝は腕を、俺は剣を振り下ろそうとした瞬間、
「止めてください!!」
トールの大声に俺と終焉帝はピタリと止まる。
「お父さん、私は別に何かされたわけでもありません! 本当に俊介さんが大好きなんです!」
「……トール、こいつはドラゴンスレイヤーなのだぞ。同胞殺しを本当に好きだと?」
「関係ありません!! どんな俊介さんでも愛しています!それに私が何処かで外れたとしても俊介さんが止めてくれます!」
「……好きにしろ 私はもう何も言わん」
「ドラゴンスレイヤー、貴様がトールを傷付けるような真似をすればその時は殺す」
「あぁ……肝に銘じる」
そういうと終焉帝は別の世界へと帰っていく。
「……あのさトー」
名前を呼ぶ前に有無を言わさずトールが俺に抱き着いてくる。
「……俺のことを恨んでいないのか? お前の同胞を何体も殺してきたんだ」
「恨んでいないかといえば嘘になるかもしれません。ですが先ほども言った通り私は俊介さんを愛しています、例えドラゴンスレイヤーだとしてもこの気持ちに変わりはありません」
「そうか……ありがとうなトール」
「いえ、あなたの頼れるメイドですからっ」
「俺も好きだよトール」
「!! 俊介さん今もしかして!!」
「ほら、早く家に入って家事をしてくれよ。色々溜まっているんだ」
「俊介さーん!もう一回、もう一回言ってくださいよ!!」
トールが何度もせがんでくるが俺は恥ずかしいので逸らし続ける。
でもこの日常だけは大事にしていきたい、そう思ったんだ。