「こうやって俊介さんと一緒に買い物出来るなんて嬉しいです!」
「本当は来る必要は無かったんだがな……」
トールは嬉しそうに言うが、俺としては頭が痛くなるような事だった。
「しかし、何故ガスコンロを信用しない?」
「火力が弱いと思いまして」
「炎じゃなくて火を使え」
料理にはファイア位でいい、エクスプロージョン級のを使うな。
「あれ? 商店街に寄っていかないんですか?」
そうして歩いているとトールに声を掛けられる。
「俺はデパートの方に行ってるけど、トールは商店街を使ってるのか?」
「デパートは城みたいで落ち着かないんです」
「城? ああ……なるほど」
「なんだか聖騎士共の本拠地を思い出すんですよ……」
「商店街はいいのか?」
「商店街はギルドのバザーに似てますね、向こうでも人に化けて買い物してたからまだマシです」
あぁ……言われてみれば確かに似てるかも……しかし昔はよくお世話になったなぁ、必死にポーション買ってたのが懐かしい……
「何考えてるんですかー?」
「いや、気にしないでくれ。それよりまずは魚を買わなきゃな」
「了解です!」
そう言って魚屋の所まで行く。……そういや、トールと一緒に買い物するの初めてじゃないか? やっべ緊張してきた……なんて考えてるうちに魚屋に到着する。
「こんにちは、戸田さん」
「いらっしゃいトールちゃん……おやその男の人は彼氏かい?」
「ご主人様です!」
「いやートールちゃんは面白いなぁ、今日は何にするかい? 安くしとくよ?」
「えっと……それじゃ、アジの干物とイワシを2本ずつください」
「あいよ、毎度ご贔屓くださりありがとうございます」
そう言ってトールと店主は会話をして魚を買い終わり他の場所に行く……あっイワシが1本おまけしてもらってる……
「なんで、トールは魚屋さんと仲がいいんだ?」
「え? 別に仲良くないですよ」
でも、さっき仲良さそうにしてたけど……違うのか?
「えぇ、なんか適当に愛想よくしたら向こうも愛想よくなっただけですよ」
「トールって人間の感情を理解してないよな」
「勿論俊介さんは別ですよ、相思相愛です!」
やっぱり理解してないじゃないか……そう呆れながら歩いていると精肉店に着いた。
「おおトールちゃん、今日は何にするんだい?サービスするよ」
「えー本当ですか〜?」
ここもそういうことか。というか……
「あら久しぶりね」
「どうもー」
服屋さんとも仲良くなってるし……
「あっコスプレのおねーちゃん!」
「よっスー」
なんか子供とまで気軽に挨拶してるし、
「儲かってまっか?」
「ぼちぼちでんなー」
占い師とも仲良くなってるし、随分、馴染んでるな〜。まあいい事だが……しかしトールってコミュ力高いんだな……俺も見習わないとな
「なぁトール」
「なんですか俊介さん?」
「デザートも買うけど何がいい?」
「え、デザートですか!? 私エクレアがいいです!」
トールが笑顔で答える。
「そういえばエクレアって稲妻という意味があるんですよ」
そうなのか……全然知らなかったな。
「稲妻といえば北欧神話に出てくるトールって奴と関係ある?」
「まったくないですね、私の親が言うにはこっちの世界の作家から取ったとか……」
ほう、そうだったのか……というか思えば俺はトールのことを何も知らないんだな……できれば知りたいと思うが……
『きゃあああああああ!!ひったくりよ、誰か止めてえ!!』
女性が叫んでひったくりが走って方向に指を指している。まったく、こんな事をする奴がいるとは……仕方ない、もう隠し事はできないか?
「俊介さん、あれ止めます?」
俺がそう思っているとトールがどうする聞いてきた。
「……じゃあ頼めるか? できればバレずに」
「はーい、わかりまし……たぁ!!」
すると、物凄い脚力でひったくり犯の所に飛んでいき、そいつの顔を殴り地面に叩きつける。少し地面はめり込んだ。
するとみんながトールを驚いた目でみる。……この空気は不味いっ!
「トー……!!」
「凄いぞトールちゃん!!」
「こんなに強かったなんて!!」
俺がトールを呼ぶ前に周りの皆が騒ぎ出す。よかったぁ……トールが変な風に見られなくて……
俺は思わずホッとため息をつく。
とりあえず、トールの手を掴み商店街から出ていく。
「なんか今……怖かったです」
トールがそう呟いた。何をしてるんだ俺は……! やろうと思えばいくらでも手はあっただろ……! バレるのを恐れてトールに任せたばっかりにこんなことになったんだろうが! 今回は良かったが、もし嫌われでもしたらどうする……! あんな想いをして欲しくないのに……俺は!!
「ごめんな、トール」
俺は思わずそう言っていた。するとトールは慌てて
「いえ、俊介さんのせいじゃないですよ! もう少し加減しとけばよかったんですから」
トールは俺のせいではないと言う。ごめんな、ごめんな。
「あの、その、手……」
「……もうちょっと握らせてくれないか?」
「……はい!」
俺は少しだけ甘える事にした。そしてそのまま家に帰った。しかし俺はその時気付いていなかった……
「……遂に見つけた」
トールではなく、自分に突き刺さる視線を……