心月流抜刀術を継ぐ者が行くIS 作:一刀斎
Side織斑千冬
「凄いですね、邦枝君。オルコットさんの狙撃を簡単に避けてますね」
「ハイパーセンサーを上手く活用している様だ。山田君、邦枝の顔を見てみろ。アイツは、オルコットの目線と銃口とトリガーに掛かる指を視てタイミングを見計らっているぞ」
しかも、邦枝の顔を視る限り瞬きがほぼない。瞬きの一瞬で勝負が決まることを知っているから出来る芸当だ。
それからしばらく、邦枝はオルコットの狙撃を避けるだけで攻撃を仕掛けなかった。
しびれを切らせたオルコットがBT兵器を邦枝の回りに展開した。
手に持っていた近接ブレードを構え、抜刀の技を使ったと思ったら邦枝が何故か驚いていた。
「お、織斑先生!?みみ見てください!」
慌てる山田君を見て指差す所を見ると……。
「なんだと!?右腕の内部が破損しただと!?邦枝の奴どんな動き方したというのだ……」
いや、私も人の事言えないか……専用機だった暮桜はそんなことなかったが訓練機の打鉄が破損したことがあった。
「ど、どうしましょう……続けますか?」
「邦枝の顔をもう一回見てみろ。諦めておらず、倒す術を考えているぞ。右腕が完全に破損したら止めさせよう」
「わ、分かりました……」
的確に避けていたのに何度か当たっていた。
一体何を考えている?
……?今、邦枝の口角が上がった?
何かを思い付いたのか……それとも……。
「大変です!大変です!大変です!」
ミシッ……。
「五月蝿い」
「すすすすみません!」
「それで何が大変なんだ?」
「邦枝君が使っている打鉄の形態移行のロックが強制解除されました!」
……………………はぁ?
「すまない、真耶。もう一度言ってくれ」
「現実逃避しないで下さい!ですから邦枝君が使っている打鉄の形態移行のロックが強制解除されちゃったんです!」
どういう事だ……。
訓練機には全てに形態移行出来ない様にされている。
邦枝にロックを解除するスキルがあるとは思えないし、そんな事をする素振りはなかった。
つまり、ISが自らの意志でロックを解除したということになる。
アリーナの地面に降りた邦枝をオルコットのライフルの一撃が直撃した。
砂煙が晴れると……。
漆黒に輝く全身装甲型のISが佇んでいた。
//////////////////
Side邦枝翡翠
翠鴉に装備されていた左腰の刀、黒刀『黒蓮』を持って構え技を放つ。
「心月流抜刀術参式、飛燕燕子花!」
声に出して技を放ち、止まっていたファンネルらしきをスラスターの勢いで威力を上げた飛燕燕子花の斬撃が四つ全てを斬り裂く。
周囲を攻撃する飛燕燕子花は便利だな。
「どうした、オルコット?さっきから固まって、降参か?」
「あなた!?何ですかそれは!?」
「何が?」
「ですから、その全身装甲型のISは何なのかと聞いているんですの!?」
そこまで動揺することなのか?
ISが自分の意志を持って姿を変える事がそんなに珍しいのか?
〈その通りです、マスター〉
頭の中に直接言葉が響く。
お前がIS、翠鴉の意識ってことで良いのか?
〈はい、焱姫さんに奥底にあったわたしの意識を引き揚げていただきました〉
《主さまー、ワタシ頑張りましたー》
生きてたか、焱姫。
《ひどいですー、ワタシ主さまの為に頑張ったのにー》
分かってるから、安心しろ焱姫。
〈マスターそろそろ勝負を着けた方が良いのでは?〉
そうだな、そろそろ終わらせるか。
「オルコット、そろそろ勝負を終わらせるぞ。言っておくが瞬きは厳禁だぞ……」
「大きく出ましたわね。やれるものならやってみせてくださいな」
構えられるライフルよりも早く攻撃を放つ。
「心月流抜刀術八式……」
水平に持った黒蓮を鞘から刀身を少し出して、何時刀を抜いたか分からない速度の居合い……。
「神薙」
───チィン。
納刀の音がアリーナに響くと、オルコットが吹き飛ばされ壁に激突する。
「うぐっ……。な、なんですの今の……ハイパーセンサーでも剣を鞘にしまった様にしか見えないってどんだけ速いんですか……!?」
神薙が出来るまで一年近く時間を掛けてんだ。練度は葵ねぇより上なんだよ。
「おら、どうしたオルコット!まだ試合は終わってねーぞ!六式妖星剣舞!」
連続の斬撃をオルコットに放つがオルコットは動けずに攻撃をほぼ全部受けていた。
もうSEもないだろうから勝負を終わらせる為に近付く。
俺の斬撃を食らって装甲がボロボロになっていて、オルコットは俺を見て怯えていた。
せっかくだからテイルクローを使い、装甲を叩いた事でSEがゼロになりブザーが鳴る。
『ブルー・ティアーズSEエンプティ、勝者邦枝翡翠』
〈マスター、これが勝利ですか?〉
そうだ、これが勝利だ。高みに至る為に、蒼空を飛ぶためのものだ、翠鴉。
〈マスターを選んだ事は間違えではなかったようですね〉
翠鴉が俺を選んだ様に俺も翠鴉の願望を知って選んだ。だから間違えなんてないんだよ。
「オルコット、立てるか?」
ISの大きさが俺の身長までしかないからそのまま膝をついて手を差し出す。
「強いんですのね……」
「物心つく前から鍛えてるからな」
オルコットの手をつかみ立ち上げる。さっきの怯えていた顔よりはましな顔になった。
「武装とか装甲ボロボロにしたけど次の織斑との試合出来るか?」
「予備は一応ありますが確りと点検した方が良いですわね、ダメージが意外とありましたので棄権しますわ」
そう言って自分が出たピットに戻っていった。
俺も翠鴉で飛びながらピットに戻る。