心月流抜刀術を継ぐ者が行くIS 作:一刀斎
待機状態にした翠鴉から、焱姫らしき黒い塊がロッカールームがある方向に飛んでいった。
アイツ本当に体を置いてったのか……。
「邦枝。まずは、二試合とも勝利したことを祝おう」
ピットに織斑先生がやって来た。
偏見だと思うが、先生が褒めるって何か違和感があるんだよな。
「どうも。まぁ、不完全燃焼気味ではありますけど……」
「弟が迷惑をかけてすまない。邦枝が言ったことは正直に言って私は正しいと思っている。一夏は守る側に成ったと思っているようだが違う、邦枝が言った様に今も私の、ブリュンヒルデの名に守られている」
「危機感がまるでありませんからねー。俺の場合は逆でしたけど」
「逆だと?」
「そうですよ。俺の姉は、烈怒帝瑠っていうレディースの総長って言う、悪い方向な有名人なもんでね、姉がムリなら弟の俺を倒せば良いというくだらん理由で不良集団が来たことが何度もありました。まぁ、全員返り討ちにしましたけど」
初めて団体さんが来てから警戒心とか危機感とかが生まれたからなぁ。一人の時にしか来なかったから。
酷いときは、五十人は来たっけ?参式でグルグル薙ぎ払ったけど。
例え話だが、織斑先生は織斑を猛獣から守る檻なら、葵ねぇは猛獣たちが欲しがる肉と言ったら分かりやすいだろう。
「苦労していたんだな……」
「まぁ、その経験があるから技を人に向ける時の加減が出来るようになったから儲け物ですよ。後、弟とちゃんと話合った方がいいと思いますよ?考えが自分の中で自己完結しているから自分の考えが正しいと疑わない、人の話を聞かない。自分の世界しか見えてない、その内何か仕出かすかもしれませんよ?……あ、これがISの待機状態ですので、どうぞ」
待機状態の翠鴉を織斑先生に渡す。
マスタ~、という声が待機状態の翠鴉から聞こえた気がした。
「そう、だな。一度しっかりと話をした方がいいかもな。私から視ても今の一夏は危ないと思う。ISという兵器を手に入れたのを、まるで玩具を貰った子供の様に見える。私の力を手に入れたのも原因だろうな。邦枝のISは明日には返す様にする。……ああ、クラス代表はどうする?勝者が決めることにしていたが……」
そういえば、そうでしたね。
すっかり忘れていた。
「俺はクラス代表にはなりません、他二人で決めてください」
「分かった。クラス代表は他の二人で決めることにする。今日はもう帰って大丈夫だ」
体を元に戻した焱姫を連れて寮に戻る。肉体的疲労より、精神的疲労の割合が高い。
今日はとっとと寝て休むか……。
十蔵のじーさんに何か言われそうだな。ISの一つを専用機に変えちゃったからなぁ。
//////////////////
Side織斑千冬
「真耶、邦枝のISはどうだ?」
「先輩……あの、邦枝くんの専用機『翠鴉』を解析したところ、スペックが第三世代機を上回る性能です。織斑くんの白式と同じ近接格闘型なのに上を行く性能で、この展開装甲と呼ばれる機構は、現存するISにはない物です。一応第三世代という事にしてますが……第四世代と呼んでも良いものと思います」
「どの国も未だに第三世代機を開発している段階なのに第四世代機が現れるか……真耶、学園長には全て報告するが他の者に世代の事は言うんじゃないぞ」
「そうですね。邦枝くんとISを狙う者が現れるかもしれませんね」
邦枝の事だから襲撃者を返り討ちにするだろうがな……。
時間は過ぎ深夜の時間帯となった。
あまり電話をしたくはない相手だが仕方ない。
ぷるるるる……がちゃ。
『もすもす、ひねもす~?ちーちゃんが、大好きな束さんだ───』
ツー、ツー、ツー。
しまった。つい勢いで切ってしまった。
ブゥー、ブゥー……。
『ちーちゃん酷いよ!せめて最後まで言わせてー!』
「束、訊きたい事がある」
『おー、何が訊きたい?もしかして束さんのスリーサ───』
「展開装甲というのを知っているか?」
『それは、どこで聞いたのかな?ちーちゃん』
いつものバカな感じから態度が少し変わった。
「二番目の男性操縦者が乗っていた打鉄がロックを強制解除し、形態移行して出来たISに備わった機構だ。ハッキリ言って、白式の零落白夜よりも驚いたぞ」
『二番目?ちーちゃん、そのISのコアナンバー分かる?』
「137だ」
『137っと……。ああ、成る程。ちーちゃん、展開装甲というのは束さんがただいま絶賛開発中の第四世代のISに付けるモノなんだよねー』
「開発中だと?」
『後は組み立てるだけだったんだけど、どうやらコアネットワークのシステムに介入してデータを持っていったみたいだね。束さんもビックリな手際だよ、まさか娘に先を越されちゃうなんてね~』
「嬉しそうだな。怒ってないのか?」
『そこら辺の有象無象ならね~。でもコアナンバー137は、他の子と違って意識、自我を確立してる。どうやらその操縦者をとても気に入ったみたいだね。そこまでするなんて……もしかしていっくんより強い?』
「ああ、強いぞ。生身で私に勝つぐらいの剣の腕もある。お前でも油断したら負けるかもな」
『へぇー、益々気になってきたよ。ま、その内会いに行くからいっか!じゃあねー、ちーちゃん!束さんは娘のよりもスゴいの作らなきゃ!』
「おい、やり過ぎるなよ!……切れたか」
余計な事を言ってしまったな。
邦枝の苦労が増えるだろうが、我々も苦労するのだからおあいこだろう。
/////////////////
Side邦枝翡翠
翌日、しっかりと朝の日課を終えて朝のHRで織斑がクラス代表になったことが決まった様だ。
「……あの、俺…試合で負けたんですけど」
「私は、試合で勝った者が決めると言ったはずだぞ。邦枝はクラス代表にはならないと言った。そしてオルコットもクラス代表にはならないと言ったからな、残った織斑がクラス代表となった。理解したか?」
文句を垂れる織斑に有無を言わせない覇気を纏う織斑先生による説得で織斑は折れてクラス代表に……。
その後、オルコットの謝罪があり、明るい雰囲気になった後に、翠鴉が返ってきた。
後、専用機のルールブックが鈍器レベルに厚かった。