心月流抜刀術を継ぐ者が行くIS 作:一刀斎
朝の鍛錬も終わり教室に向かった。
「ひーにぃー、聞いた?」
「何がだ、本音?」
初日の時、苺大福をあげた袖を長く改造した制服を着ている女子、布仏本音。
俺の事をひーにぃ、と呼んでくる。
なんか新鮮だからそのまま呼ばしている。
光太は何故か兄上って言ってくるからなぁ。妹がいたら本音みたいな子が良いなぁ。
「二組に中国の代表候補生が転入したんだって~」
「この時期に転入ねぇー」
クラス代表でもないなら関係無い、か……。
女子たちが騒いでいるな、クラス対抗戦で優勝したら半年間スイーツ無料になるらしい。
甘い物は食べる方だから魅力的だが……クラス代表織斑だからなぁ~。
優勝出来たら良いね程度にしておこう。期待して負けたら目も当てられんからな。
今から鍛えても遅いよなぁ……心月流は、基礎の基礎のド基礎の撫子が出来なきゃ始まらんしな。
それに、俺って感覚派だから教えるの下手なんだよなぁ……じぃちゃんにもダメ出しされたっけ……。
頭の悪かった男鹿と帝毛のハゲどもは理解出来てたからいけるか?ムリか……?
「その情報、古いよ」
…………ん?
教室の前の方のドアに仁王立ちしてる小柄でツインテールが特徴な女子が立っている。
そろそろSHRの時間だが……大丈夫か?
魔王……違った。
武神……違った。
朝の鍛錬の時によく組み手してるんだよなぁ~。ついでに撫子教えたけど習得したかな?
俺は、六歳の時に一日半掛かった。葵ねぇは、半日だった。
「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。中国代表候補生のこの鳳鈴音が、そう簡単に勝つ事なんて出来ないから」
「お、お前…鈴か!?」
「そうよ。中国代表候補生、凰鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ」
織斑の知り合いか……。アレか?織斑がここに入ったから追いかけてきたパターンか?
「何格好付けてんだ鈴?すげー似合わないぞ?」
「あ、アンタ!?なんてこと言ってんのよ!」
…………あっ、後ろに……金剛力士が。
「おい……」
「何よ?」
スパァァァンッ!
「いっぎゃあぁぁぁーーーー!?」
女の子が出しちゃあいけない
みんな顔を青くしてる。まさか、出席簿の威力が上がってるとは思ってもみなかっただろう。織斑の顔が面白いほど青くなってるな。
「頭から足までイッターいぃー!?どうなってんのーー?!」
あまりの痛さに蹲ってしまった中国の代表候補生。
流石は織斑千冬。
「もうSHRの時間だ。教室に戻れ、凰」
「ち、ちち千冬さん……」
「織斑先生だ。さっさと立って戻れ、邪魔だ」
「あん、……は、はい」
今、アンタのせいだ。って言いたそうだったな。
「またあとで来るからね!逃げんじゃないわよ一夏!」
ふらふらしながら消えていく中国代表候補生をしり目に、俺は織斑先生に話し掛ける。
「流石ですね、織斑先生。まさか一日で撫子を習得するなんて世界最強は健在ですね」
「フッ、まだまだ生徒に負けるつもりはないからな。それに、邦枝の教え方が良かっただけだ」
「そう言ってもらえると嬉しいですね。心月流現当主からお前は教えるのが下手と言われてましたからね」
クラスのみんなから、何教えてんだって視線がメッチャくるなぁ。
その後の授業で織斑に気がある子が出席簿の餌食になっていた。
断末魔が響く午前となった。
授業の合間に織斑が色々と言ってきた。アレは、俺と織斑先生の関係の事を勘繰る感じだったな。
アイツ、シスコンだな。彼処まで必死な感じだったら誰でもそう思うわなぁ。
俺?
俺は、越えるべき相手ぐらいにしか見てないな……。
暗黒武闘は勝つが、純粋な剣ではまだ勝てないからな。
昼になんか出来事があったようだが知らん。
屋上の方で箒と一緒に食べていたからな。
色々と話をしたな、何が好きで、何が嫌いか、食い物とか色々と……。
「うん?箒の家も神社で剣術道場なのか」
「…も?翡翠の家も神社で剣術道場をやっているのか」
意外な共通点があったりした。
放課後は、翠鴉のメンテナンスのために整備室に赴く。
別段、ダメージはないが自分が使う道具は手入れをしないと、いざって時に動作不良は笑えない。
誰かの機体が置かれている横に翠鴉を展開する。
「アイス。展開と点検箇所を出してくれ」
〈了解です、マスター〉
「えーっと、スラスターと装甲、翼と関節部分を見るのか……」
〈後ろの方にある棚から道具があるので持ってきてください、これが必要なものです〉
「分かった、すぐ持ってくる」
専門家でもないから取るのに時間掛かったな。
……翠鴉の前に誰かいるな。
水色の髪って更識か?似ているが、毛先が外に跳ねてないな。
更識の妹か?
「どうした?全身装甲はやっぱり珍しいか?」
「ご、ごめんなさい……」
「いや、怒ってる訳じゃないから謝んなよ」
赤い目も一緒ということは家族か……性格は正反対な感じだな。
「あぁ、俺は一年一組の邦枝翡翠だ。所謂、二番目の男性操縦者だな。苗字は更識であってるか?」
「……合ってます。一年四組の更識簪です…何で苗字知ってるんですか?」
「お前の姉である更識楯無とは寮で同室だったんだよ。ま、あいつは妹がいるなんて言ってなかったけどな、髪の色と目の色が一緒だったからな姉妹だって思ったんだよ」
「そ、そうだったんですか……」
顔が暗くなったな……前にも似たようなことがあったような気がするぞ。……あぁ、箒に箒の姉の話した時か。
この学園、家族に対しての地雷多くねぇか?確か織斑姉弟とオルコットも地雷があった気がする。
家はろくに仕事と子育てせずに修行している親父とそんな親父を追っかけに行った母さん。じぃちゃんと葵ねぇがいるからまぁ、なんとかなっているけど……。
それよりも……。
「お前は姉と違って真面目そうだな」
「……え?姉と違って?お姉ちゃんって普段どんな感じだったんですか?」
「普段?意外とはっちゃけてるぞ?風呂場に突撃して来たり、水着エプロンの格好したり、裸ワイシャツだったり、露出狂紛いな事ばっかりでよぉー。あっ、後アドリブに弱かったな。そんで、ちょい前に虚って人にアイアンクローされて連れていかれてたな。確か書類が溜まってたからだったかな……」
「身内がご迷惑をおかけしました……」
なんか気不味い感じが全然抜けないんだが……。
「ま、まぁ、それがなければ面倒見の良いヤツだよ。お前が気にすることじゃあない」
「……はい、後…簪で良いです。更識だと被るから……」
「分かったよ、簪。そういえば、隣のISは、簪の機体か?作りかけにしか見えないが……」
「う、うん……。打鉄弐式、私の専用機…でも織斑一夏のせいで開発が凍結されて……」
織斑のせいで?……簪の専用機より織斑の白式を作っちまったのか……。作ってもそのまま凍結してんのかよ。屑過ぎねぇか?
「まさか、一人で作ってんのか?一人は流石にムリが過ぎると思うんだが……」
「で、でもお姉ちゃんは一人で作ったから私も!」
「うん?簪は、姉と同じ事がしたいのか?別に同じ事に固執する必要性は無いと思うんだが……そもそもISって専門家でもないのに一人で作れる物なのか?天災篠ノ之束博士なら可能だろうが、あの痴女にそんなスキルがあるのか?どうせ一人で作った、なんて見栄張っただけだろ」
「そ…うかな……(痴女呼ばわりされるお姉ちゃんって……やってる事がアレだけになにも言えないけど……)」
「そんなもんだと俺は思うぞ?簪、俺にも姉ちゃんがいるんだけどな…剣じゃあ姉ちゃんに勝てないんだよ」
「え…?」
「俺には剣の才能がある。でも姉ちゃんはそれを上回る天賦の才能があるんだよ。何度手合わせしても勝てない、俺が得意な技ならいいが総合的には負けるんだ。でも、俺には剣の才能よりも別の才能がある。それは姉ちゃんでも最後まで出来なかったモノだ。その才能は誰にも負けない自負がある。……長々と言ったが、つまり一つの事に固執するのは良くないってこった」
「一つの事に固執しない……」
「そうだ。姉が一人で作ったなら簪はみんなで作って姉を越えるのはどうだ?ボッチなお姉ちゃんより友達たくさんの私の機体のがスゴいんだってドヤ顔で言ってやんだ。友情の力の方がスゴいんだってな」
キャラじゃあないことをペラペラと言っちまったなぁ~。段々恥ずくなってきたな……。
「友情……良いかも。ヒーローみたいで……」
おっと?なんか簪の何かに触れた感じか?
あっ……そろそろメンテしないと。
「悪い、簪。ちゃちゃっとメンテしないと……アイスが機嫌を損ねちまう」
「あっ、ごめんなさい……。アイスってISの名前?」
「ん?ああ、アイスってのは、ISのコア人格の方の名前で、機体としては翠鴉って名前なんだよ」
スラスターの推進剤と汚れを確認っと……。
「愛称を付けてるんだ……」
「こいつらには自我がある。なら愛称で呼んだっていいと思うぞ?その方が愛着がわくと思うぞ」
翼の確認っと、デリケートなんだよな翼って。
「あの私も、手伝ってもいいですか?」
「良いのか?それじゃあ、関節の所に油を注してくれるか?」
「分かった……」
簪のお蔭で早くメンテが出来たな。……アイスが終始無言だったがどうしたんだ?
〈(焱姫さんが言っていた、フラグを立てるとはこう言うことなのでしょうか?)〉