心月流抜刀術を継ぐ者が行くIS 作:一刀斎
翠鴉のメンテナンスが終わり、簪と別れる。
簪はどうやら仲の良いクラスの子と親友の本音に声を掛けて専用機の開発を行うらしい。
俺が提案した事だから、俺も手伝う事を約束した。
簪はクラス代表でもあるけど流石に対抗戦までに完成は出来ないから打鉄で闘う様だ。
前向きになってくれて良かった。このまま姉妹仲の改善も前向きにやって欲しい。
寮に着いて自室前に来たが、飲み物を買いに一階に行く。
部屋のある階の自販機にヨーグルッチって無いんだよなぁ。
態々、階段で上り下りが面倒臭い。
「……箒と二組の凰か?どうした、その荷物……って何で凰泣いてんだ?」
「ひ、翡翠?!い、いや、その…これは……」
泣いている凰の背中を擦っている箒。
二人の足元には二人の荷物であろうスーツケースとボストンバッグが置かれている。
取り敢えず……。
「箒、なんか飲み物いるか?」
「あ…お茶を……」
「オッケー。……凰もいるか?」
「……ジュッ、スゥ…」
二人分の飲み物を買い、二人に何をしているかを訊く。
「それで?二人は荷物持ってどうした?」
「翡翠、ここでは…その……」
「話し辛いなら俺の部屋に来るか?」
「私は構わないが…鈴はそれで良いか?」
凰は泣きながら首を縦に振ったので、二人の荷物を持って自室に向かう。
「それで?凰が泣いてた理由と二人が荷物持ってる理由を訊いても良いか?まあ、言いたくないならそれでも構わんよ。この部屋に同居人居らんからな、好きに過ごしな」
「鈴はまだ話せる状態ではないから、私が掻い摘んで説明するが……」
「分かった。簡潔に何があったか言ってくれ」
「では、まず……」
放課後、アリーナでISの訓練をし終えて更衣室に戻った所に凰が現れ、箒と織斑が同室だと知ると部屋に荷物を持って現れて部屋を交換するように言ってきた。
箒は別段一緒に居たい訳ではなかった為、了承して荷物を片付けて凰が居た部屋に行く為に部屋を出ようとした時、凰と織斑の話を聴いた。
その内容が、中学の時に凰の事情で織斑と離れる事になった為、学校の屋上で織斑に『あたしの料理が上手くなったら毎日あたしの酢豚を食べてくれる?』という、凰なりの告白をしたらしい。
先程部屋でそれを覚えているか訊いたら、覚えていると言ったので確認したら『食べてくれる?』が『奢ってくれる』となっていたらしい。
凰は織斑が間違えて覚えていたのに自慢気に言っていた事に、自分の告白が何にも意味を成さなかった事、織斑が鈍感で女の子の告白を、付き合って下さい、を買い物に付き合うとしか思わない奴だった事、色々な感情が出てきて部屋から飛び出した。
箒は心配になって追いかけて話を訊いた後に俺がやって来たということらしい。
「聞いた限りだと織斑九割、凰一割で悪いな……」
「うー……」
「俺のダチにも鈍感な奴はおったからなぁ~。その鈍感さに四苦八苦してた人が身内におるからまあ、なんと言うか…悔しかったんだな」
王臣紋のある右肩を少し見て、未だに涙目の凰の頭を左手で撫でて落ち着かせてやる。
「うん…ゔん…」
「泣きたいなら泣きな。そんで気持ちを切り替えな。あのバカにまた告白するにせよ、ぶん殴るにせよ、そんな顔で行っても意味ねーからな」
「う、うわぁぁぁーー……!」
男鹿も鈍感ではあったが、バカ正直だから分からないなら、分からんや忘れたって言うだろうな。
一人は、歯向かう敵──女以外──は徹底的にボコって土下座させるドSな悪魔、いや魔王か……。
もう一人は、自分の正義を疑わない、女子の好意だけ踏み躙る、口だけのイケメン。
同じ鈍感なのにここまで違うか……。
織斑が男鹿に会ったら噛みつくだろうなぁ~、一方的な暴力なんて間違ってるとか言って。そして、男鹿にボコられて土下座させられそうだな。織斑は素で弱いからな、ベル坊に会う前の男鹿でも楽勝だな。
……織斑がIS使っても男鹿の
クラス対抗戦……織斑の勝ち無くなったな、これは……。
個人的には簪か凰に勝ってもらいたいからな。
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Side凰鈴音
あたしは、分かっているつもりで分かっていなかった。
織斑一夏という男がどれだけ鈍感なのかを……。
中学の時、女の子から告白されても買い物に付き合うとしか思わない奴なのに……。
約束を覚えていると言った。
期待してしまった。
まさか、奢ってくれる、なんて普通思うだろうか?
思考回路がおかしいと思えてきた。
箒と一緒にもう一人の男性操縦者の部屋にあがった。
箒の顔を見ると顔を少し赤くしている。
たぶん、好きなんだろう。
箒が一夏の幼馴染みと聞いた時、箒も一夏が好きなんだろうなと思ったけど違う……。
人の気持ちを分かってくれる。
これと容姿の良さ、野性的と言うのだろうか、友達の弾とはまた違った感じで男らしいと思う。
こんな思いするならもっと早く逢いたかった。
頭を撫でられるのって何時以来だっけ?
頭を撫でられる安心感と泣き疲れてきた……。
そういえば……名前……訊いてなかった……。
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Side邦枝翡翠
凰が泣き疲れて眠ってしまった。
更識が使っていた奥の方のベッドに寝かせる。
箒に頼んで制服が皺にならないように着替えさせてもらった。
ラッキースケベなんてしたくないので箒に呼ばれるまで脱衣所に籠ったよ。
「時間はもう遅いから箒もここで寝ていけ。手前の俺が使ってるベッドで悪いがそこで寝てくれ」
「あ、いや。なら翡翠はどうするつもりだ」
「ああ、大丈夫。実家から寝袋が送られていたからそれで今日は寝るよ」
「その……すまない、いきなり部屋に押し掛けてベッドを取って……」
「気にせんで良いって、ちょっとした諸事情で寝袋は馴れてるからな」
親父に魔二津で修行させられた時に馴れたって言えないなぁ……。
「ま、明日も学校あるからもう寝な」
「わ、分かった……その…おやすみ、翡翠」
「おやすみ~。箒」
明日の朝に会うかもしれない織斑先生にボロを出さない様に出来るか?
いっそのこと打ち明けるか?
でも凰に確認せんといかんよなぁ~。
胃が痛くなってきた気がする……。
織斑関連で……。