心月流抜刀術を継ぐ者が行くIS 作:一刀斎
金髪、銀髪が来て最初の土曜日。
午後のアリーナにて簪の打鉄弐式のテスト飛行をするため、俺も参加する。万が一に備えて機体が墜落しても簪をキャッチするためだ。
二週間以上でこれだけ出来れば学生としては凄いだろうな。
端の方で織斑が巧く操作が出来ずに四苦八苦している。箒と鈴は簪のテスト飛行を見ているのでオルコットが織斑の指導をしている。
(アイス。簪の打鉄弐式のコア意識はどんな感じだ?)
〈意識はありますが、ワタシの様になるにはもう少し時間が掛かります。マスター、弐式からスラスターに違和感があると来ています〉
(了解。簪に伝えるぞ)
オープン・チャネルで簪に伝える。
「簪。スラスターに異常がないかもう一度確認してくれ」
「え、う、うん。見てみる…………あ、噴出の桁が間違ってた…これだと強すぎて吹き飛ぶかも……ありがとう、翡翠さん」
「どういたしましてー」
簪の事を見ながら、ハイパーセンサーで周りを確認する。
織斑の所にデュノアが現れたな……。
データ取りってところか?
……視たところ、ISの操縦に慣れすぎてるな。確かに代表候補生としてやっていくには十分なレベルだ。
だからこそ疑うってもんだ。
俺の操作技術が異常なのは分かる。鍛えているからな。そして俺にはアイスというサポートがある。
ISに触れてない一般人なら織斑の様にまだまだ慣れるのに時間がいるハズだ。
軽くみても一年以上は扱っているであろう熟練度だ。
もし、本当にデュノアが男だった場合、デュノアは一、二か月の訓練でそのレベルになったって事になる。それとも、もっと前から適性があることがわかっていたけど秘匿して訓練したことになるよな。
フランスとデュノア社は本当に何考えてんだか……。
ISのサポートがあるにしても一般人ってあんなに重火器の扱いが上手いかねぇ。上手い奴はいるだろうが少数だろ。
……おっと。簪がテスト飛行したな。
どうやら、さっきのスラスターの修正が上手くいった様だ。
この調子なら学年別トーナメントに間に合うかな。
〈マスター。男装女子がコチラを伺っていますが…〉
(無視一択で)
〈デスヨネ〉
テスト飛行を成功した簪らの労を労おうと移動しようとした時────。
〈マスター!後方から狙われています!〉
(ソードビット背後に全部展開!)
瞬時に自分の後ろにソードビットを盾の様に横並びで展開する。
ハイパーセンサーで確認してみれば銀髪の肩にある砲口がこっちに向いていた。
一体何がしたいんだアイツ……。
オープン・チャネルで織斑の会話しているみたいだが砲口は未だにこっちを向いている。一応、林墨を呼び出しておくか。
「(鈴、直ぐに箒や簪らをピットに避難させてくれ)」
鈴にプライベート・チャネルで指示を出す。
「(分かった。気を付けてよ、翡翠)」
「(分かってるよ)」
オープン・チャネルの会話を聞いていると切に思う。
小学生の言い争いかよ……。
織斑とオルコットの言い争いもこんな感じだったけ?
一触即発の雰囲気の中、今日のアリーナ担当者の声が響いて銀髪が帰っていった。
止めんのが遅いんだよ。ちゃんと視とけよ。
箒たちのいるピットに戻り、今度こそ簪らに労いの言葉を言った後、量子変換しておいたジャージを取り出してから寮の近くに勝手に作った鍛錬場に向かう。
全く、問題児共が……。
あぁ?ブーメラン?確かに俺も問題児に入るかもしれんが、それは石矢魔での事だ。
此処に来て問題は……二、三あったけ?机割った事……でもあれは巻き込まれてイライラしてたし。訓練機を専用機にしたことか?
あれだな。表面化しやすい問題を俺がやってるけど、表面化出来ない問題をしてるのがあの日独仏だな。
ストレス発散が終わって、部屋に戻って箒と鈴と簪、本音らと一緒に食べる事になっていたので食堂に向かって食事をする。
部屋に戻ってシャワーを浴びてから箒と鈴と一緒に一般教科の勉強をしていた時─────。
『翡翠!ちょっと話があるから開けてくれ!』
ドアを乱暴に叩きながら織斑の声が聞こえてくる。
まさか………デュノアの事か……。同室だからその内バレるだろうと思っていたが……。
「翡翠、どうするのだ?」
「どうするかねぇ。アイツに部屋の場所教えたことないハズなんだが……」
そう言って二人を見たが二人共首を横に振っているから白だな。
山田先生かな、教えたの……あの人なら言いそうだな。優しいから。
近所迷惑だから行くしかないか……。
「うるせぇ、周りの迷惑になるだろうがバカ」
「そんな事より部屋に来てくれ!話があるんだよ!」
「イヤに決まってんだろ。相談なら織斑先生にしてくれ。こっちは今勉強中なんだから……」
「いいから!」
面倒だ………。
無理矢理引きずられ1025の部屋に着いた。
(アイス、今からの会話全部録音しといてくれ)
〈仰せのままに〉
「そんで、話って何だ?」
「実は、シャルルが男じゃなくて、女だったんだ」
「ふぅ~ん。もしかしてそれだけか?」
「え?」
「は?!シャルルが女だって知ってたのかよ」
「知ってたけど何?」
「翡翠は何とも思わねぇのか!」
「うん?どうせ性別を偽る理由なんて俺とお前に近いてデータを取るなり盗むなりするためなんだろうなぁ、とは思ってたけど?」
「シャルルは、そんな事しない!」
誰もお前の思っている事なんか訊いてないっての……。
はぁ~。面倒だからさっさと終わらせたいな。
「デュノア、何で男装している理由とか嘘偽りなく全て話せ。話はまずそこからだ」
「わ、分かった……」
そんで聞かされるデュノアの境遇とか男装の理由とか。
そして、織斑とデュノアの話を黙って聞くけど、織斑の提案って要は問題を先伸ばしにするってことだよな?
〈その通りです。規約は、IS学園という敷地のみに適応されています。しかも彼女は代表候補生で専用機持ち、国から任命されている代表候補生で専用機がないならまだ楽が出来ましたが、国から貸与されている専用機があるから難しいでしょう〉
(国からの呼び出しに拒否したら借りパクになるよな。確かに面倒だな……デュノア社の令嬢でもあるし、フランス政府とデュノア社を敵に回すのは避けるのは当然。じーさんや織斑先生が何かしらの策を練ってるハズだから、この会話を渡せば何かしてくれるだろう)
〈餅は餅屋、ですね〉
(それな)
「翡翠は────」
「織斑、悪いが俺は何もしないからな」
「……は?」
「一学生のする許容量を超してる。政府や大企業が相手じゃあ無理だ。それに、俺の所属は
「嫌だ、千冬姉に迷惑かけたくない」
「お前本気で言ってんのか?」
「俺は本気だ!シャルルは俺が絶対守る!」
「一夏……」
デュノアの顔……まるで悲劇のヒロインを助けに来たヒーローを見ているみたいな感じだな。
確かこう言うのってシンデレラコンプレックスって言うんだったけな。
織斑、とっくにお前の姉には迷惑かけてんだから今更だと思うぞ。行き当たりバッタリで、織斑の頭じゃあ直ぐに崖崩れするぞ?政府や企業っていうのはズル賢いんだぞ。
権力と金。
学生がどうやって立ち向かうんだ?
姫川先輩の様に頭と金を持ってるなら多少マシだろうし、俺や男鹿とかの様に物言わせない力があるのか?もし、ISを持ち出したら一発アウト。
自分だけではほぼ詰みの状態なら人の手を借りろ。いつも人としてあーだこーだ言うのに大事なところでそれをしないのかよ。
……ってか織斑先生と話し合いしてねぇのか?あの先公、肝心なところでヘタレてんじゃねーよ。
(アイス、もう録音しなくていい)
〈了解しました〉
「はぁ~、もう好きにしろ。俺をこれ以上巻き込むなよ。じゃあな」
「おい、何でそんな酷い事が言えるんだよ…」
「酷い事だ?何言ってんだ、お前?何だ、ソイツの話を聞いて同情してやりゃあ良いのか?悪いが俺は同情せんよ。本気で嫌だったなら学園に入って直ぐに先生に言うとかあったハズだ。デュノアは何も行動しなかった、状況の改善をしなかった。ただ単に自身の行動の結果に過ぎんだろ」
「なっ…」
「それに、ヒャクパー本当の事を言ってるとは限らんだろ?デュノアが話を盛ってるかもしれねぇだろ」
はぁ~、何で殴って来てんだよ。どんだけ短気なんだよ……。感情移入し過ぎだろ、いくら自分の正義が正しいと思っていてもいきなり暴力か?
守る?結局は暴力だろ?否定しといて自分は暴力を振るうのかよ。矛盾野郎が語るな、お前の守るは自己満足で人を傷付けるモノ。現に鈴を傷付けたからなコイツ。
そんな軽い拳にやられる訳無いだろ。
殴って来た拳を掴んで捻って、背後に回って関節をきめる。
「ぐっ!?は、放せ!」
「一夏!?」
「人に殴り掛かってきて随分偉そうだな。ああ、そうだ、織斑。次から俺の事、名前で呼ぶなよ。俺はお前と親しくなったなんて一度も思った事ねーからよ。もし言ったら今回の事、お前の姉に言ってやるからな。言わなければ
関節をきめたまま蹴って離れさせてから部屋を出る。
(アイス~。録音した音声データバックアップしたらじーさんと織斑先生にポイしといてくれ)
〈了解しました〉
俺は言ってないからセーフだろ?
さて、織斑は本当にデュノアを守れるのかね?
ああ、織斑先生がストレスで自棄酒するかもな。
じーさんは揺するネタを見つけたって思うかな。
本当にこの学園厄介事ばかりだな……。
石矢魔に戻りてぇなぁ~。
はぁ~……。癒しが欲しいな、割りとマジで……。