心月流抜刀術を継ぐ者が行くIS 作:一刀斎
Side篠ノ之箒
やってしまった……。
自分から打ち合い相手を頼んだのに……。
見透かされた。
あの時、他の女子と話す一夏の事を考えてしまっていた。
去年の時から何も変わっていない。
邦枝が言う通り、このままなら剣を置いた方が良いのかもしれない。
「箒、ごめん……」
「何故、一夏が謝る」
「箒にあんな酷い事を言った翡翠を謝らせられなくて……」
違う。全て事実だ 。
謝らなければいけないのは私だ。
それにしても何故、一夏は邦枝に攻撃したのだろうか……?
邦枝は攻撃が分かっていた様に絶妙なタイミングでかわしていたが、かわしていなければよくてたん瘤、悪かったら頭が切れていたかもしれない振り下ろしだった。
一夏は気付いていないのか?
一夏がした行動は、一夏自身が嫌いな暴力ではないのか……。後、下の名前を呼ぶなと言われてなかったか?
邦枝のお蔭で冷静になっている今、色々と考えないといけないな。
「すまない、一夏。少し一人になりたいから先に戻らせてもらう」
更衣室に置いた荷物を全部持って道場を後にする。
シャワーを浴びればこの気持ちは晴れるだろうか……。
…………ゥン。
………ブゥン。
…?何の音だ?素振りの音か……。
音がする方に行くと邦枝が木刀を持って抜刀の構えをしていた。邦枝の前にある木の棒に集中していた。
様になっている。そう言うしかないだろう。
フッ……。
「ふぅー……」
……カコン……。
木の棒が斬れて落ちたのか……今、抜刀したのか!?
見えなかった……。
……と言うより木刀って物、斬れるのか……。
「何の用だ、篠ノ之」
こちらを向く邦枝が訊ねてくる。
肩に
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△
Side翡翠
寮の近くで十蔵のじーさんにもらった木の棒を地面に差しておく。
十分に素振りをして構え集中する。
放つは……心月流抜刀術壱式破岩菊一文字!
本来は、突進して一撃を叩き込む技だが一歩の踏み込みで十分だ。
最近なかなか使ってないから腕が落ちたかと思ったがそうでもないようだ。
『主さま、篠ノ之さんが見てますよー』
俺の肩に留まる焱姫の言葉を聞きながら後ろにいる篠ノ之に声を掛ける。
「何の用だ、篠ノ之」
あれ?篠ノ之……俺の顔の横つまり焱姫を視ているのか?篠ノ之、霊感あるのか?
「あ、あの、その……先程は、すまなかった。邦枝の言う通りだった。私は最低限の礼儀すら出来ていなかった。邦枝、一つ訊かせてくれ」
「何をだ?」
「邦枝は何のために剣を握っているんだ?」
何のために、か……。そんなの決まってる。
「自分のためだ」
「自分の……」
「何だ?どっかの正義感だけの夢想家の様にみんなのためとでも聞きたかったか?生憎と俺は、不特定多数より身内だけと決めている。俺は自分のために剣を握る。強くなりたいから、覚えた技を研鑽したいから、自分より強い人に勝ちたいから……。篠ノ之だって俺が言ったことを思った事あるだろう?」
「それは……無い、と言ったら嘘になるが……」
「自分のためが悪いとでも思ってるのか?この世のあらゆる事は自分のためにやっている。篠ノ之の姉さんも自分のためにISを創った、違うか?」
「そ、それは……」
……顔を歪める程嫌なんだな姉の話題は……。
「すまん、無神経だったな。とりあえず、初心にかえってみたらどうだ?もしも初心にかえっても見つからないなら……篠ノ之が良ければ一緒に探してみるか?」
「い、いや!?だ、だ大丈夫だ!?自分で見つける!」
篠ノ之の顔が赤くなったが、元気になってくれたようだな、良かった。
「あ、後一ついいか?」
「ん?何だ?」
「邦枝の肩に乗ってる烏は何だ?」
あ、やっぱ視えてるやん……。