ダーリン・イン・ザ・アマゾン   作:イビルジョーカー

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連続投稿です。
今回は本編でいうところの2話のフランクス同士の模擬戦に当たりますが、結構内容が変わってます。






アルジェンティアvsクロロフィッツ 前編

 

 

 

 

 

ブリーフィングルーム。

作戦指示や報告会、それらを目的として設けられた場所だ。

そこに13部隊のパラサイトであるコドモ達が全員、余すことなく集合していた。

何故か鷹山もいるが、特に問題はないのハチは咎めなかった。

 

「お、俺が正式なパラサイトに?」

 

「そうだ。今日、この時をもってCode016。

君を13部隊のパラサイトとして承認する。これはパパたちの総意でもある」

 

厳格に余計な感情を挟まず、淡々と紡がれるハチの言葉。

その内容は、ヒロが正式にパラサイトとして認められたというものだった。

 

「やったなヒロ!」

 

「よかったじゃん! これで一緒に戦えるね」

 

嬉しそうにゴローとイチゴは言う。ヒロもこれには喜び以外に何もなく、歓喜の笑みを浮かべる。

 

「あ、ああ! ありがとう2人とも」

 

「正式なパラサイトになる以上、016にはゼロツーと共にストレリチアへ搭乗し、今日の午後7時に模擬戦を行ってもらう」

 

模擬戦。

文字通り、互いの実力を確かめる為の実戦になぞられた戦いのことだが、この場合フランクス同士での訓練という意味合いを孕んでいる。

それ自体はさして珍しいものではなく、どこのプランテーションでも一般的に行われてるパラサイトの訓練項目だ。

しかし、ヒロはみんなとは違い、一足遅れてパラサイトになったせいとストレリチアのステイメンとしての実力を測るという、この二つの理由で模擬戦を行う事になったのだ。

 

「そして相手となるフランクスだが……」

 

「はい! 俺たちがやります!!」

 

挙手して名乗り出たのはゾロメだった。これに対し、ミクは反対とばかりに声を上げた。

 

「ちょっ、ゾロメ! なに勝手に決めてんのよ!!」

 

「いいだろミク! 一番乗りだからって、実力までそうとは限らないからな。だからここで俺様がヒロの実力をテストしてやるってんだよ」

 

「別にそんなの、ミク達じゃなくていいーでしょーが!!」

 

「俺様だからこそ、やる意味があるんじゃねーか!!」

 

「意味わかんないわよ!!」

 

あー言えば、こー言う。

そんな夫婦漫才のような口喧嘩を繰り広げるミクとゾロメだが、ここでゼロツーが挑発的とも取れる言葉で一石を投じた。

 

「へぇ〜ミクって意外と逃げ腰なんだね?」

 

「な、なんですってぇ?」

 

思いもしなかったゼロツーの言葉にミクは顔を痙攣らせながら問いを投げる。しかし、とうのゼロツーはそんなこと歯牙にもかけない、とばかりに煽り立てる。

 

「残念だな〜。ボク、ミクの実力見たいって思ってたんだよね〜。

それなのに既に負けを認めるなんて、あ〜残念」

 

「ちょ、ゼロツー! ダメだよ!!」

 

舐め腐った態度全開にそんなことを宣うゼロツー。そんな彼女にヒロは諌める声を上げるも、時既に遅し。ミクは堪忍袋の緒が切れた音を自分の耳で確かに聞き取った。

 

「上等じゃない! そこまで言うなら見せてやるわよ!! ゾロメ!

本気で行くわよ!!」

 

「お、おう……こぇぇ〜……」

 

やる気になってくれたのはゾロメとしては嬉しいのだが、しかし相当な剣幕な為にビビるゾロメの姿は正直ダサいの一言に尽きる。

とりあえず、ピスティル・ステイメン共に気合い満々なアルジェンティア組だが、ここでまたしても声が上がる。

 

「僕もいいですか?」

 

挙手を上げたのは、つい先程まで何か考えるような仕草で沈黙を貫いていたミツルだった。

 

「ミツル?」

 

「模擬戦、僕も是非お願いします」

 

パートナーであるイクノは疑問しかない、とばかりにミツルの名を呟くがとうの本人は彼女に反応することなく模擬戦への参加を強く要望する。

 

「おいおい、横入りするなよミツル! ヒロの相手は俺様がするんだよ!」

 

「黙って下さいゾロメ。どうせ間抜けな醜態を晒すのがオチですよ」

 

「んだとぉぉッ!!」

 

互いに顔を近づけては、睨みを利かせて牽制し合うゾロメとミツルの姿は誰が見ても一瞬触発と断言できるもので、そんな2人の間に入るには相応の覚悟が必要だろう。

 

「そこまでだ、Code666、Code326」

 

だが、それを必要とせず割って入れる例外がここにいる。ハチだ。

 

「ならばこうしよう。クロロフィッツ組とアルジェンティア組で前哨試合を行い、勝ち残った1組にストレリチアとの模擬戦を実施する

。異論はあるか?」

 

「面白れぇ、やってやろうじゃん!」

 

「面倒な……」

 

ハチの提案にゾロメは意気揚々と肯定し、逆にミツルは不満げながらも合理的な処置な為、異論はなかった。

 

「では、予定時刻まで自由行動とする。以上だ。各自解散せよ」

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

「ハチ。彼を…ヒロをストレリチアに乗せるのは、あまりに危険過ぎるわ」

 

作戦司令室。そこでナナはハチと向かい合う形で彼に意見を述べていた。

その内容は、ストレリチアへ搭乗させることで生じるヒロへの生命の危険性だった。

 

「だが、今のところ問題はない。ゼロツーは特別だ。一度でも乗ればすぐに異常は出る。しかしCode016の場合、それはなかった」

 

「偶々、ということもあり得るわ。とにかく今は時期尚早よ。もっとよく経過を見て考えても…」

 

「これはパパからの指示でもある。我々が何を言ったところで、無駄だ」

 

「だとしても! 何かあってからじゃ遅いわ」

 

ハチの淡々とした言葉と、幾許かの感情を匂わせるナナの言葉。この二つは明確な結論を出せず、話は不毛な平行線だった。

 

「おーおー、随分と険悪だな〜お二人さん」

 

緊迫した空気を当然の如く破る飄々とした男の声。その本人である鷹山が出入り口のドアで片腕をドア縁に当てながら怠気に立っていた。

 

「どーしたんだよ、ナナさん。声が廊下にまで響いてたぞ」

 

「じん……」

 

「失礼しました。Code016の件で話していただけです」

 

ハチは何でもないとばかりに答えるが、鷹山はヒロのCodeを聞いて、すぐに察した。

 

「なるほど。ヒロ絡みか。まぁ、ナナさんが懸念するのも無理ねーよな。なんせゼロツーと一緒に乗ったら命が縮むんだからよ…それに、下手したら死ぬ」

 

「だからこそ、私はヒロを乗せるのは得策ではないと思うの。確かに今の段階ではヒロに異常はないわ。でも、2回目でどうなるかは

分からない」

 

ナナは非情でも無情でもない。コドモたちに対し、情緒を介在させたコミニケーションで接しているのがその証拠だ。

しかし本来、それはコドモたちを管理・統制する上官職務に就いている立場の者として、あってはならない行為。

ハチが基本として、そうであるようにナナもコドモたちの上官としての立場である以上、それは当然の義務であり、そうしなければならない暗黙の鉄則なのだ。

だが彼女は違った。

 

「そんな危険性があって、ヒロをゼロツーと一緒に乗せるわけにはいかないわ!」

 

コドモを捨て駒として見ず、まるで“家族”のように接する。

オトナの感性で見ればとても歪に見えるが、ナナを敬愛する鷹山から見ればそれは尊いと言ってもいいものだった。

 

「ハハッ、いいね〜ナナさんは。そんな所が好きだよ俺」

 

「え、な、何言ってるのよ?! そ、そういうこと言ってるんじゃ……」

 

顔を真っ赤にさせて、ゴニョゴニョと口元を忙しなく動かすナナの姿に思わず笑みを零す鷹山。

 

「だがな、乗るか乗らないか。決めるのは…ヒロ本人だ」

 

「え?」

 

「アイツは自分でゼロツーと乗ることを選んだ。

自分で選択して決めた以上、外野の俺達がとやかく言える義理はないさ」

 

「そんな……」

 

確かにストレリチアに乗ることを選択したのは、他の誰でもないヒロ本人の意志に基づく選択。だからこそ、鷹山はそれを誰よりも汲んでいるのだ。

しかし。それでも納得できないナナ。

哀愁とした顔で伏せてしまった彼女の頭に鷹山の手が乗っかる。

 

「え、じん?」

 

「そんな暗い顔すんなよ。まだどうなるかなんて分かんないんだ。

とりあえずはヒロを信じてやれ。な?」

 

よしよし、と。

まるで子をあやす父親か兄のようにナナの頭を撫でる鷹山だが、さすがに恥ずかったらしく、ナナはパシッと手を振り払った。

とは言え内心嬉しそうで、その証拠にほんの少しだが顔に赤味が増して、口元が綻んで見えた。

 

「と、とにかく! 何か異常があったらすぐに知らせて!」

 

そう言い残し、ハチや鷹山の返答を待たず、足早にその場を後にしたナナ。残された男2人に妙な沈黙が流れるが、それを破ったのは鷹山が先だった。

 

「相変わらず過保護だな〜ナナさんは。けど、そこが良い!!」

 

「あまり感情が過ぎるのもどうかと思いますが」

 

「おいおい、堅ってーよハチ坊。いい加減頭を柔らかくするってことを覚えろよ」

 

「必要であれば」

 

あくまで淡々と言うハチ。そんな彼に鷹山は思わず溜息を吐く。

 

「はぁぁ。ハイハイ、そーですねー」

 

「………鷹山博士。Code016について、どう思われますか」

 

気の抜けた皮肉げな態度をスルーし、問いを投げかけるハチ。

彼の問いに対し、鷹山はいつもの飄々とした巫山戯た雰囲気を取っ払い、いつになく真剣な面持ちで答える。

 

「色々検査したのは覚えてるよな? で、これがその結果だ」

 

鷹山はそう言ってヒロの検査に関しての詳細なデータが記載されている、タブレット式の端末を差し出す。手に取ったハチはすぐさまその内容を閲覧していくが読めば読むほど、彼特有の感情を垣間見せない筈の仏頂面は驚愕に染まっていった。

 

「鷹山博士、これはッ!!」

 

「内容に誤りはねーよ。紛れもなく、事実だ」

 

「……本人に、Code016にこの事は?」

 

「言ってない。まだ色々覚悟が付いてないんだ。今の段階でコレを明かすのは…さすがに拙いし酷ってもんだろ」

 

鷹山の言葉に押し黙るハチは、再度その内容を確認してしまうが何度見ようと内容自体に変化などある筈なく、ただハチとしては現実的に容認できないものだった。

 

「その時が来たら言うさ。絶対にな」

 

「“その時"とは?」

 

「ヒロが“何もかも全部思い出した時”だ」

 

それだけを言い残し、じゃあなと一言置いてそそくさと出ていく鷹山の背を、何とも言えない心境で見据えながら、只一人。

ハチは沈黙の空気の中で立ち尽くす他になかった。

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

空中移動要塞コスモス。

雲の上よりも更に上……大気圏外において存在するAEPの総本山であり、事実上トップたる七賢人が在留する場所だ。

 

「全く博士の甘やかしには困ったものだ」

 

「よりによって、あの獣の血を持つ特殊検体がいる13都市に『ι』を置くなど……」

 

「ありえないぞ!特殊検体との交わりは血を穢しかねない。即刻移動させるべきだ!」

 

様々な猿の種類を象った仮面を被り、細いアームに固定された椅子に腰掛ける七賢人たち。色々と議論を交わしているが、その首席である法衣のような服装を纏った人物が宥めるように言う。

 

「まぁ待て。先の戦いで見せたストレリチアのあの輝きは興味深い。探ってみる価値は大いにあるだろう。それに特殊検体は『ι』と乗って今の所、異常は見受けられない。前例とは異なるケースだ」

 

「だから、このままにしておくと?」

 

賢人の一人からそう質問され、首席は肯定に頷く。

 

「既に特殊検体…Code016を正式なパラサイトとして認可した。

今後、様子見として観察するのも悪くなかろう」

 

「随分と悪趣味だね〜パパ様ァ?」

 

まるで意図して神聖なる空気を穢すかのような、そんな悪意を滲ませた少女の声が七賢人らが集う場に響き渡る。

その発生源は黒い蒸気のようなものと共に姿を現した。

 

「お前も言えた義理ではあるまいスターク。会議が始まる前からいたのだろ?」

 

「ハハッ、お見通しか」

 

黒い蒸気から現れたのはワインレッドの色に染まり、水道管のような管が全体的に見られるデザインの特殊スーツとバイザーを装着した少女…ブラッド・スタークだった。

そして、ヒロにアマゾンドライバーを与えた張本人でもある。

スタークは首席の指摘に対し、特に何を誤魔化す訳でもなく、笑いながら肯定の言葉で答える。

 

「スターク。報告を聞こう」

 

「はいはい。……チラチラとガーデンで動きを見せていたアマゾンのことだが、アンタらのお考え通り、ヴィスト・ネクロだったよ。

まぁ何匹かは釣られて来ただけの野生種個体だったけどね」

 

スタークの言葉に七賢人たちは顔は見えずとも、何処からか忌々しさが滲み出ていた。

 

「害獣め。相変わらずコソコソと……」

 

「連中のおかげで我々は甚大な損失を被った。早く対策を取らねば、今以上の損失となるぞ!」

 

口々に七賢人は言うが、スタークはバイザー越しでも分かるほど冷めた視線を送っていた。

それに気付かず、七賢人たちは互いの意見を述べるが首席が静粛の一言を上げた。

 

「静かに。対策の方は打ってある。明確な形となるまで今しばらく掛かるが、問題はあるまい」

 

「それに相手は所詮、知の足らぬ獣の衆だ。

我々が負けるなどありえんよ」

 

首席の次に権威を誇る副席の賢人が余裕に満ちた態度で、自分達の優位が不動のものだと断じた。

 

「あ〜ちと失礼。その知の足らぬ獣の衆ってのは、どーかと思うよ」

 

そんな副席に意見を申し立てたのはスタークだった。

礼儀など皆無とばかりに床に胡座をかいて座り、手首を少しダラりと。

まるでやる気などないとばかりの挙手をする姿は、見る者によっては不快の念を抱くだろう。現にそうなっている賢人が何人かいるが、それを気にせずスタークは弁を奔らせる。

 

「ヴィスト・ネクロは言うほど馬鹿じゃない。その計画性が優れていたからこそ、オタくらAEPは手痛い損失を被ったわけだ」

 

「ブラッド・スターク。何が言いたい?」

 

副席が僅かに苛立ちを言葉に滲ませつつ、問い質す。それを知っているのか、ニヤけた笑みを絶やさず、スタークは答える。

 

「油断するなってことさ。アマゾンそのものは人食いしか能がない烏合の衆でも、ヴィスト・ネクロは違う。せいぜい寝首を噛み付かれないよう気をつけてね? チャ・オ♪」

 

言うだけ言って満足したのか。スタークは自らの身体に黒い蒸気を纏い、その場から消えてしまう。

後に残った七賢人…首席はふと呟く。

 

「読めない所か、中々食えん奴だ……」

 

それは事実上“協力者”であるブラッド・スタークへの、不信と疑惑に満ちた言葉だった。

 

 

 

 

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