連続投稿です、どうぞ。
向かって来る虎の特徴を有したトラアマゾンの群れ。
自らが従うべき幹部の号令に逆らおうとする者などおらず、100体の内、前にいた10体がアルファへと攻撃を開始。
基本的にこれがトラアマゾン部隊の戦法で、まずは様子見の為に10体ほどが先行として
突撃し、できる限り相手に手の内を見せさせる…というものだが、しかし相手が相手だ。
「まずは10匹か。フンッ!」
取り囲もうとする10のトラアマゾンの首を迅速に、その所作は何ら難しい動きをせず、ただ腕を振るう。
たったそれだけ。
しかしアームカッターにギガのエネルギーを集中させ、三日月状に飛ばした故にそれは死を与えるギロチンとなり、トラアマゾンたちの首を肉体から的確に切り離したのだ。
「フシャッ!!」
首を落とされ、地に伏した同胞に何ら感情を示さず、ただ目標であるアルファへ攻撃を仕掛ける個体が1体。その1体は他のトラアマゾンと比べて爪が長く、先端が釣り針の反しのように曲がっている『ネイルカーブ』と呼ばれる個体だ。
もし、これで切り裂かれでもしたら、確実に肉を抉り取られるのは必須だろう。
ネイルカーブがアルファの胸部へと爪を突き立て、腹部まで裂こうとした寸前、アルファは紙一重で身を捻らせるようにして横側へと移動。そうすることで爪による一撃を回避することに成功したのだ。
アルファは、すれ違い様にまるで意趣返しとばかりに自身の爪でネイルカーブの首元から肩を切り裂いた。
「ギャッッ?!」
まさか避けられ、しかも傷を負わせられるとは思ってなかったネイルカーブの顔は驚愕に
歪むも、すぐさま間を取る為に一旦退避しようとする。しかし、アルファはそれを許さず
、アームカッターで身体を斜め一線に上と下で真っ二つに泣き別れさせてしまう。
「ハハッ、いいねぇ……もっとかかってこいよ」
たった今、餌食となったネイルカーブを含めて11体。損失はまだ少ないがトラアマゾン部隊は隊長格であるジャガーを除けば、その全てがAランクのアマゾンだ。それを苦もなくノーダメージで11体。それが何の意味を成すのか、分からないほど低脳な彼等ではない。
アマゾン・アルファのランクが、ジャガーや他の幹部と同等の“Sランク”である可能性を
示唆しているのだ。
「おいおい、獲物を前にそんなビビって突っ立ってたらよ……逆にお前らが獲物になるぞ
」
静かに。冷たい殺意を込めた言葉。
それをアルファの口から聞いたトラアマゾン部隊の内、先頭に立っていた3体が一斉に血飛沫を撒き散らし、糸の切れた操りの人形の如く倒れ込む。
アルファの仕業だった。
瞬く間に近付き、中枢臓器に届くほどの斬撃を見舞ったのだ。
そこから更に10体。四肢を切断し、半ばバラバラにする勢いで物言わぬ肉塊へとトラアマゾンたちを加工していく。
これで100体から76体にまで数を減らせたが、まだまだ敵は多い。
故にアルファは一つ、賭けに出ることを選択した。
「これじゃあ、いつものスタイルでやってると不利だな。なら、多少エネルギー食うが…
…やるか」
アルファの基本的な戦闘スタイルは格闘術を自分流にアレンジしたものだが、そういった
戦法はこのような大群を相手にした場合ではあまり意味を成さない。
では、どうするのか?
そう問われれば、答えは一つ。大多数の相手に対し、有効的な戦法で臨めばいい。そして
その手段をアルファはいくつか持っている。
『バイオレント……ショック』
「オラァッッ!!」
手を地に付けて、灼熱の旋風を伴った衝撃波を発生させたアルファ。周囲が一瞬の内に超高温と化し、衝撃波をモロに食らった計15体のトラアマゾンたちが黒い液体へと変換されて命を落とす。
「シッ!」
と、ここで静観を決め込んでいたザジスが動いた。軽く息を吐き出すような声を漏らしし、両手が変化した2枚のブレードがまるでハサミのように一つに重なり、アルファの首へと狙いを定める。
このまま行けば2枚一つとなったブレードに首が挟まれ、そのまま千切られる結末が待っているがそれを容認するほど、アルファは廃人ではない。
「ぐっ!」
咄嗟に両腕のアームカッターで左右迫る刃を押し留め、自身の首が寸断されるのを防いだ
。
「チッ、防いだか。だが身動きできない状態でどーする気だ?」
シシシッと愉快げにアルファを嘲笑うが、その指摘は正しい。
敵はザジスだけではない。こうしている内に彼の手下であるトラアマゾンらが攻撃しない
道理はないし、考えられる方法としては一方的に打撃などの物理的な技で炙っていくか。もしくは火力を伴った強力な一撃で仕留めるか。
この場合、ザジスを除いて、トラアマゾンの部隊において強力な一撃を繰り出すことのできる者はいないし、いたとしても、それではザジス諸共に巻き込んでしまう。
ならば、時間は多少浪費するが打撃によってダメージを与えていき、力尽きるほど弱体化させた所でザジスのブレードで首を刈り取ればいい。
ただ、それだけのこと。
「……なるほど。確かにピンチって奴かもな、これは」
返って来る言葉はやけに穏やかで、先程のような殺意は見受けられない。
“諦めたか? ……いいや、違う! ”
ザジスは己の直感で把握した。
“こいつは、何かを仕掛けるつもりだ!”
その心中は的を得ていた。
アルファは自身のギザギザとエッジ要素の多いクラッシャーを開闢させ、その奥から何かを放った。何かはザジスの鳩尾へとめり込み、そのまま飛散。
思わず怯むほどの衝撃の後に続く鈍い痛みが襲うが、その刹那の間にザジスは見た。
透明な液体…“水”が弾き飛ぶのを。
「み、水鉄砲かよ……舐めやがって!」
悪態を吐くが、もう遅かった。
ブレードに込められていた力が、一時的に抜けてしまった。この隙をアルファは逃さず、ザジスのブレードを跳ね除け、更にはついでとばかりに腹部に蹴りを一発打ち込む。
ザジスは苦悶の声を漏らした。
「ぐぶぅッ!!」
蹴りのせいで、またしても鈍い痛みが襲う。今度は衝撃も強く間が取れるほど軽く吹っ飛ばされ、背から地面に叩きつけられる。
「くそ、たれっが!!」
然程ダメージにはなっていない。
すぐさま起きて態勢を立て直すが、その時には既にアルファがザジスの眼前に迫り、その固定された表情のない筈の仮面のような顔から、ザジスはもう一つの貌を見た。
獲物の命を刈り取る瞬間を楽しみ、喜ぶ。
1人の狩人としての狂気の貌。
それを嫌でも刮目してしまったザジスは恐怖に囚われかけるも、自分自身が何なのかを瞬時に思い出し、自身の首をかっ切ろうと斜め一線に振り下ろされたアルファのアームカッターをブレードで横にして防ぐ。
アームカッターが縦、ブレードが横に重なり合うことで十字形となり、両者は切迫する。
「死ねェェッ!!」
「テメーがくたばれ!!」
アルファの敵の死を願う声に対しザジスは、お前こそくたばれと言い返す。
「トラども!! さっさとコイツ殺せ!!」
ザジスからの怒号に近い指示にビクッと怖気付いたような反応を見せるトラ達だが、すぐ
さま与えられた命令を遂行する為、トラたちがアルファへと攻撃を仕掛ける。
が、トラアマゾンの爪や牙が自身の肉を抉り喰らう前に高く跳躍したザジスやトラアマゾンたちから一定の距離を作る為、彼等のいる建物からすぐ隣の別の建物へと移った。
「逃げる気かッッ!!」
「逃げねーよ」
激昂するザジスの言葉に、アルファは淡々とそう答える。
アルファが別の建物に移った理由はあくまで逃げる為ではない。
“自身に累が及ぶことを防ぐ為だ”。
「ッッ!!」
何かに気づいたザジス。しかし、その瞬間に霧状の物質が建物全体から放出され然程時間を労さず包まれていく。
異変はすぐに起きた。
トラアマゾンたちが苦の滲む声を漏らして次々と倒れ伏し、ある者は事切れて黒い液体へと変わり果てて。
そうならない者は、のたうち回る以外に成す術が見出せなかった。
唯一“少々息苦しい程度で済んでいた”ザジスは、そこから霧を払い退けて助走を付けず、一気に跳躍。アルファのいる建物へと移る。
「やってくれたなァァ……クソ魚野郎!!」
限りなくにジャガーに近い顔の眉間と鼻に皺が寄り、凄まじい怒気を放つザジス。
そんな彼を前にアルファは、フンと鼻を鳴らして物言う。
「予めいくつかの建物の中に仕込んでおいたんだよ。“トラロック・ミスト”をな」
トラロック・ミスト。
コロニーが開発したアマゾンにのみ効果を有する猛毒性物質を用いた、対アマゾン兵器の名称である。
形質としては、ガスを発生させる液体薬品の一種で人間には全く無害に作られている。
通常、無人機を用いて雨のように散布する方法が一般的だがこのトラロック・ミストは小型端末装置から霧状に散布する仕様になっている。
しかも。通常よりも5倍の威力を有しており、Eから数えて戦闘能力が高いAランク相当のアマゾンにまで効果を発揮することができるが、最高Sランクは殺し切ることはおろか
、ダメージすら与えることは不可能というデメリットがある。
しかし、アルファにしてみればどーでもいい話だ。
Sランクは、アルファやヴィスト・ネクロにおいて幹部の地位に就ける者だけが、持つ事を許される強さ。ある種の規格外と言ってもいい。
規格外には、同じく規格外を。
これでアルファは邪魔者なしに自分と同等の
獲物を狩れるというわけだ。
「その一つに偶然、お前らが着地したって訳だ。とんだ間抜けだな」
嘲笑気味な物言いで語るアルファだが、とうのザジスは気分良くなるわけがなく、むしろ
怒髪天とばかりに憤怒の情念が今にも爆発しそうな感覚に、身も心も支配されている。
だが、爆発の如く解き放つという真似はしない。
あくまで、アルファの首を取る為にその情念を刃として、向けるのみ。
「ハァァッ!!」
「シィッ!!」
両者は声と息を漏らし、同時に駆ける。狙うのは眼前の相手の命のみだ。それがこの2匹の獣達による戦いのルールなのである……。
※ ※ ※
一方、プランテーションの外側における戦場では第13部隊のフランクスと叫竜による、
攻防戦が展開されていた。
「おりゃああッ!!」
『てりゃああッ!!』
ゾロメとミクが叫び、アルジェンティアが両腕の籠手部位に装備された鉤爪型の主要武装
『ナイトクロウ』で、叫竜のいくつかある首らしき部位の一つをかっ切ろうとする。
しかし、アルジェンティアの攻撃を意に返すことなく、鋭くまるで禍々しさを表したかのような凶悪的な口部で、アルジェンティアのナイトクロウごと腕を捕まえ、そのまま遠くへと吹っ飛ばした。
直後。ジェニスタの主要武装である『ルークスパロウ』の砲撃に加え、クロロフィッツの主要武装『ウイングスパン』から放たれる遊撃の嵐が叫竜を襲うが、それがどうしたとばかりに口部を開いた状態で回転し、それによって生じたエネルギーのバリアで砲撃・遊撃を無効化してしまう。
「くっそ! 全然通用しねーぞ!!」
『一方的過ぎるわよコレ!!』
ゾロメとミクが苛立ちと危機感を孕んだ悲鳴を上げる。しかし彼等だけでなく、13部隊全員が同じ心中だった。
『どうにかして倒さないと!!』
『でも、どうやって?!』
イチゴ…デルフィニウムの使命感溢れた言葉に対し、イクノことクロロフィッツが問いを投げるように返答する。
実際、使命感だけでどうにかなる状況でないことは嫌でも分かるし、何かしらの策が無ければ話にならないだろう。
『クッ、ボクの槍でもダメなんてッ……』
「あのバリアを何とかしないと……けど、どうすればいいんだ」
ヒロは思考を巡らせて考える。しかし簡単に良策は浮かばない。だが、一つ策というわけではないが、もしかしたら……という手段はあった。
「ゼロツー。初めて乗った時のアレをやろう!!」
『アレを? ダーリンできるの?』
確証は無かった。何故ならあの時は本能の命じるままにやったと言うのが正しく、無意識の行動に近かった。今度は明確に意としてやらなければならないが、あの時と同じようにできるとは限らない。
「それでも、やってみないと何も変わらない!! アマゾン!」
事前に腰に付けておいたアマゾンズドライバー。そのグリップに手を添えて握り、叫びながら軽く回す。
『イプシロン…』
電子音声が起動の合図を知らせる。緑色の蒸気のようなオーラに包まれて、ヒロはアマゾン・イプシロンへと変身を遂げる。
そして意識を集中する。
もう一度、あの時の感覚を思い出すことで自らの肉体から出てきた触手を出す為に。
だが……。
「だ、ダメだ。あの時みたいにできない!」
結果は失敗。何も起きなかった。
『見て!!』
ココロ…ジェニスタが叫ぶ。叫竜が上部の平面部を開闢させ、そこから青白い光が輝きを漏らす。最初の時と同じだ。
“何かをするに違いない!”
全員が直感でそう悟った。
『各機、防御態勢!! 何か来るよ!!』
デルフィニウムの言葉に各機全てがこれから起こるであろう何かに対し、防御の構えを取る。
そして、それは“降り注いで来た”。
青白く発光しながら天高く昇る一つの光源。それは、ある程度の高さまで行くと数百か、
あるいは数千規模の雨となり、地上めがけて降り注いで来る。
そして着弾するな否や空高く、まるで天へと突き刺さんばかりの光柱が勢い良く上がり、そのまま大爆発。
爆風と高熱の嵐が13部隊を小粒の如く容易く、無慈悲に飲み込んだ。