ダリフラ22話……結構良かったのに23話のアレは……いや、トリガーらしい
と言えばそうなんですけど、なんかコレじゃない感があるのが否定できない
……でもなんやかんでダリフラ最高です!
「13部隊、応答せよ!」
作戦司令部では、外の様子を中継している中央の巨大モニターに映し出されている光景を見て、ハチは13部隊の安否を確認する。
「みんな……ッ!」
ハチの傍にはナナもおり、その顔は焦燥に駆られたもので、不安も見受けられる。13部隊だけでなく、鷹山もまたアルファとなって戦っている。
アマゾンと叫竜の両方における襲撃という、この最悪な事態の中ではただ無事を祈る他なかった。
《こちら、デルフィニウム! 13部隊は全員
無事です!!》
イチゴからの通信音声。
そこから得られた13部隊の無事という情報にハチとナナは安堵した。
やがて、モニターに目立った損傷のない13部隊のフランクスらが薄れた土煙から姿を現すが、ある存在に2人は目を見張った。
「やれやれ。ホ〜ントに危ないとこだったね
13部隊の諸君?」
ブラッド・スターク。
青みがかった翡翠色のコブラの意匠が見受けられるバイザーを顔に装着し、胸にはコブラのエンブレム。所々に水道管のような意匠の装飾が施された、ワインレッドの特殊スーツを身に纏った少女。
その彼女があの途方もないエネルギーの暴雨の中、どうやってストレリチアの右肩部位に平然と腰を下ろして座っているのか。
疑問はあるが、それよりも聞くことがあった。
「君が、助けてくれたのか?」
「ちょ〜っと訳アリだね。別に善意ってわけじゃないよ」
相変わらず飄々とした掴み所のない態度。間違いなく、ヒロが出会ったスタークという少女のそれだ。外見が同じなだけの別人なんて事はないだろう。
「そ、そいつが助けたって、どうやって…」
疑念を孕んだ言葉がゾロメの口から漏れるが、ゾロメも含め皆が自分達を覆う“ソレ”に
気付いた。緑色に染まる半透明の膜のようなものがドーム状に形成されており、その中に13部隊はスッポリと収まっていのだ。
『これって……バリア?』
クロロフィッツがソレに対し、最も当て嵌まるであろうワードを口にすると、スタークはさぞ面白いとばかりに笑い声を上げて解答を教授する。
「大☆正解! まっ、一か八かではあったけどね。アレ位の火力だと持たないリスクが
高いから、下手すりゃ〜ボクもキミたちもお陀仏だったかも♪」
かなり危ない発言を、何故こうも軽いノリで言えるのか?
そんな言葉が13部隊全員の心中へと飛来するが、余計な事を言わないのが吉だろう。
『で、オマエは何? 敵なの? 味方なの?』
やけに棘のある言葉でそう問いを投げるゼロツーだが、それが一種の警戒心から由来しているのであれば、この態度は致し方なしだろう。
確かにブラッド・スタークは自分達を助けてくれた。それは事実だ。
しかし、それで安易に味方と断ずるのは間違っている。何からの悪意を裏側に隠している可能性があるからだ。
「そんなトゲトゲしい声で質問しないでよ。
ステイメン喰いの獣さん?」
ステイメン喰いの獣。
それを口にしたスタークめがけ、勢いをつけて掴み取ろうと迫るストレリチアの手。だが捕らえること叶わず、空振りに終わる。
「怒るなよ。事実でしょ?」
ニタニタと。さぞ面白おかしいとばかりに口端を釣り上げて嘲笑うスタークは、いつの間にか地面へと着地しており、その姿を見て舌打ちを漏らすゼロツーは警告を促した。
『そんな風にボクを呼ぶな。次は容赦しないよ?』
「おー怖い怖い、なら気をつけないとね」
そんな言葉とは裏腹に大して怖気付いてなどいない。それが分かるからこそ、ゼロツーの中で余計に彼女に対する忌々しさが増幅されたように感じた。
「さてと。このままじゃ、キミらは仲良よく揃ってゲームオーバーまっしぐら。だから、ここは一つ知恵を貸してあげよう」
そう言ってスタークは、腰に付けていた水道管のバルブのような部位が付属された銃らしき武器を手に取り、それを叫竜へと向け発砲。
銃口から吐き出されたソレは、赤色の光弾。
光弾は叫竜の本体である長方形の身体に命中し、赤い稲妻と化して駆け巡る。叫竜は稲妻状のエネルギーによって完全な活動停止とならずとも、その動きを停止させてしまった。
「あの叫竜は、数えて6個の四角い穴から首らしきものを出してる。しかも、その首らしき部位は常にバリアを張ってて耐久性や防御能力に秀でてるのお墨付き。だから、簡単には破壊できない。おまけに本体のあの広範囲に渡る火力を誇る攻撃手段も付け加えれば、
厄介なことこの上ない」
銃を肩にトンットン、とリズム良く当てながら目標が一時的に停止したのを確認しつつ、スタークは解説を続ける。
「今はボクのおかげでああやって活動停止になってるけど、一時的なものに過ぎない」
そして、腰を下ろして地面へと座り込んだ。
「だから、今の内に対抗策を教えといてあげるよ。首らしき部位は常に出ているわけじゃない。
時折、何個かがあの箱みたいな本体に引っ込むんだよ。たぶんバリアに使うエネルギーを補充する目的で戻ってるんだろうね。
ボクの見立てだとバリアは強力な分、攻撃を受ける度にエネルギーが消費されていく感じのタイプだ」
場所が場所であることを一切考慮せずに座り込んで、目の前の叫竜について呑気に解説を
述べていく彼女は豪胆なのか、あるいは狂人なだけなのか。その辺りの判断が難しいスタークに対し、13部隊はゼロツーを除き困惑やら戦慄などの感情を抱いていた。
ゼロツーの方はただ単に気に入らないという苛立ちを露わにするだけだったが。
「そして。首らしき部位が本体に戻ってからほんの数秒だけ……出入り口は開きっぱになる」
そこまで聞いて全員が気付いた。
つまるところ、スタークが言いたいのは開きっぱなしとなったその出入り口に攻撃を仕掛け、内部からダメージを与える。
いくつかある首らしき部位のいくつかが時折本体で戻っていくのを全員が確認済みな為、彼女が嘘を言っている可能性は完全に無くはないが、しかし低いと見て妥当と言える。
「私たちで、そこをやれって言うの?」
「いいんや? 決め手はボクがしてあげるよ。
君達はあくまで陽動……注意を向けてくれればいい。それと真ん中のワームのバリア消費もね。ボクの弾の速さなら数秒しか開かない穴にも確実に必中できる。
それにワームの数は9個でキミたちは5機。スピードで一気に決めるならストレリチアが適任だけど、ストレリチアを除いた4機で足止め+バリア消費なんてできる?」
「……」
「無理だよね〜? キミたちは今回が初戦。つまり実戦に基づく経験は皆無。と、なるとここはボクに頼らざる得なくなるよね〜?」
語尾を長くし、あからさまな挑発をして来るスタークにイチゴもそうだが、13部隊全員が苛立ちを覚え、ゼロツーに至っては舌打ちに加えて『蛇が…』と悪態まで吐いている。
スタークの真意は計りかねず、実行する場合のリスクもある。
が、やる他にない道はないと言うことだけは全員が自ずと理解していた。
「……ここはこの人の言う通りにしよう。他に打開策がない以上、
やるしかないよ」
リーダーであるイチゴが下した決断。
それは仲間を導き、指示する役目を担う者としてはあまり良い判断とは言えない。
しかし、これを否定できるだけの策も提案も無いのであれば、実行する他に道はなかった。
「へぇ〜、意外にすんなりボクの提案を受け入れてくれるんだ? イイ判断だよ。13部隊のリーダーさん♪」
持ち前のテンションを崩さず、茶化すように揚々と。
そんな言葉を紡ぐスタークに対し、イチゴは無視して部隊全員に指示を出し始めた。
「みんな、あの首っぽいワーム部分の一つ……真ん中のヤツに攻撃を集中しよう。
そうすればバリアのエネルギーが消費されて、本体の部分に戻る筈」
首らしき部位…仮称として“ワーム”としよう。
ワームが出てくる穴は位置的に長方形本体の上部にあり、一面につき1個ある。が、ある一面には穴が3個あり、イチゴたち13部隊が狙うのはその3個の内の2番目。
言葉通り“真ん中”の穴から出て来るワームだ。
ここを選んだのは単に分かり易いという理由もあるが、イチゴの見る限りだと他のワームと比べて本体へと戻って行く回数が多かった。
バリアの消耗が早いせいか、また他に原因があるのかは不明だが他と比べ頻繁に戻るのであれば、そちらに的を絞った方がやり易いだろう。
「でも残りが邪魔だから私達とストレチア。アルジェンティアで足止めする。ジェニスタとクロロフィッツは距離を測って、真ん中の穴の首を攻撃して。いいね!!」
イチゴの指示に全員が『了解!』と、力強く頷く。それを合図に行動が展開された。
自分達を守っていたバリアはどういう原理かは不明だが内側からは容易に通り抜けることが可能で、全機が外側へと出ていく。
『行くよ、ゴロー!!』
「ああ、行くぞイチゴ!!」
デルフィニウムが叫竜めがけ駆ける。
一時的な呪縛から解放された叫竜は鳴き声のような不気味な音を発し、向かって来るデルフィニウムへと二本のワームが口部を広げ、襲い掛かる。
しかし、それを見切って回避したデルフィニウムは自機に装備されている双剣型の武装『エンビショップ』でワームの一本に切り掛かるが、もう一本が凄まじい勢いで回転。バリアを発生させ、デルフィニウムに切られかけていたワームを庇う形で防いでしまった。
その為、エンビショップによる斬撃は無効化という形で終わる。
『やっぱり、バリアが邪魔だ!』
堪らず叫ぶが、あくまで標的は3個ある穴の真ん中。そこへは今まさにジェニスタ、クロロフィッツによる遊撃と砲撃の二重奏が展開されており、アルジェンティアとストレリチアは他のワームを相手に上手い具合に足止めの役目をこなしていた。
「うおおおおおりゃあああーーーーッッッ!
!!!!」
『ウリャァァァァッッッ!!!!』
ゾロメとミクが気合を込めて叫び、鉤爪型の武装『ナイトクロー』でワームを引き裂こうとする。
が、常にバリアを張っているワームの部位に意味を成す筈もなく、弾かれただけに終わってしまった。
「足止めなんて地味な役だがよ、やるっきゃねーよな!!」
『もっちろん!!』
それでも、注意を引かせる為に攻撃を止めることはない。正直なところ自己主張が強く、
目立ちたがり屋なゾロメの本心で言えば地味な足止めなぞもっての他だろう。が、それを言っても何も始まらないことはゾロメ自身がよく分かっている。
彼も決して馬鹿ではない。
ここで勝てなかったのなら、自分達に未来はない。パートナーであるミクもそれについてはよく分かっている。
だからこそ、2人は己が爪を振るうのだ。
「なんで、この時にッ!!」
一方、クロロフィッツに乗るミツルは真ん中のワームへと遊撃していく最中で、かなりと言っていいほどの憤怒を滾らせていた。
アルジェンティアとの模擬戦では自分が勝った。だから、ストレリチアへの挑戦権を獲得した筈なのに今回の叫竜の出現で水の泡。
完全に台無しにされたのだ。
ミツルは、ある一件からヒロを敵視していると言っても過言ではない怒りと憎しみを向けていた。
だからこそ、ヒロよりも自分が優れていると公の場で証明したかったのだ。ヒロの乗るストレリチアに打ち勝てば、それは証明され、ヒロの打ちひしがれる姿が見れる。
黒く湧き出る情念がミツルを支配していた。だが、今この時において怒りは叫竜に向けられている。
それを動力源にクロロフィッツはより集中力増し、的確に。迅速に。標的であるワームに攻撃を与えていく。
同時に砲撃を加えていくジェニスタもまた、的を外さず、的確に命中させていく。
「このまま行けば、バリアのエネルギーを減らせる筈! がんばろうココロちゃん!!」
『うん!』
もっとも、こちらは純粋な信頼関係の賜物と呼ぶべき実力のそれだが
。
「うおおおおッッッ!!!!」
ヒロことアマゾン・イプシロンとゼロツーが乗るストレリチアは腰部に備わったブースターをフル稼動させて火を噴き、それによって生じる推進力を利用する。
それによってスピードが通常よりも数段増し、ストレリチアは流星の如く駆け抜ける。
その去り際には、クイーンパイクにより攻撃をワームに加えていく。
通常で行けばバリアによって無効化されてしまうが、ブースターによって増加された機体スピードとクイーンパイクに送るマグマ燃料の量を幾分か増やした事。
この二つの要因によって向上した攻撃力が功を成し、バリアを突き抜けるようにワームにダメージを与えることに成功した。
「あ、当たった!」
『まぁ、あくまで足止めだから意味ないけど』
命中したことに喜びを見せるイプシロンだが、対照的にゼロツーは
淡白なものだった。
無理もない。
彼女としては誰の手も借りず、自分とヒロの2人だけで叫竜を討ち取りたいのが本音だ。
だが。一応ではあるがリーダーとしてイチゴのことは認めているからこそ、この場は従うことを選んだのだ。
『ダーリン、来るよ!』
「ああ!」
とにかく、向かって来るワームにただやられないよう対応すればいい
。
そう心中で呟いたイプシロンはゼロツーと共にストレリチアを操り、クイーンパイクを振るう。
そうすることで、迫り来るワームへと一撃を見舞った。
「ほーほー、やるねぇ。他の部隊じゃ絶対に見ないあの戦い方。
それぞれの機体に個性があって、加えて自由過ぎて規則性がない……けど、それが急な状況の転換でも対応できる…まぁ、まだ経験が無いからアレだけど」
自らが使ったバリアの中で、相変わらず吞気な様子で胡座をかいて腰を下ろしているスタークは誰に言う訳でもなく、そんな言葉を紡でいく。
「でも。確実に強くなる。あのコドモたちが“真に人間である
のなら”……」
紡がれたその言葉にどういった意味があるのか、側に誰もいない他者が分かる術はない。仮に誰かいたとしても、理解できるのは他でもないスターク本人だけだろう。
『アンタ、聞こえてる?!』
イチゴからの通信がスタークの耳に届く。
「はいはいリーダーさん。聞こえてるよ」
スタークは立ち上がり、銃を構える。言わずともイチゴの伝えたい意図を察したからだ。
『もうすぐ標的が本体に戻ると思う! 戻る前に首全体を震わせるような動作をしてるから多分、間違いない!』
スタークは内心驚いた。
イチゴの洞察力に、だ。
戦闘慣れしているゼロツーはともかく、あのタイプの叫竜を相手に経験もなく、対応するだけでも精一杯という戦況の中でリーダーの
イチゴはきちんと敵の動きを見ていた。
これはもう、ある種の才能と言っていいだろう。スタークはニヤニヤとした笑みを更に深めた。
「グッレイトォォッッ! イイ目の付け所だよリーダーさん! 面白いもの見せてくれた以上その報酬はきちんと払わないとね〜」
そう言ってスタークは引鉄を押し、銃口から最初の時と同じように光弾を発射する。
先程のそれと比べて丸に近い形状だったが、
途中からその姿をある生物のそれへと変化した。
蛇だ。もっと正確に言えば、胴部位にまるで横に広げるつもりで潰したような独特な特徴を持つ蛇の一種“コブラ”。
その大蛇版とも言うべきサイズに大きさも変化した光り輝くコブラは、その長い身体をくねらせつつ、ありえない速度で叫竜へと向かっていく。
そしてワームが出入りする三個ある内の中央の穴……そこへワームが入ると同時にスルりと入っていく。
「チェックメイト、だね」
かつて、旧時代の人類がよく行っていた遊戯の名にチェスという、テーブルゲームの一種がある。
スタークはこのチェスの用語で“詰み”を意味する言葉を口にした。
それすなわち、こちら側の勝利であると共に叫竜の確定的敗北を意味していた。
コブラの姿を成した弾丸が叫竜の長方形内部へと侵入を果たしてからほんの数秒。
凄まじい衝撃と爆発音。そして、それに伴う暴風と豪炎。それらは叫竜の心臓部に等しい器官たるコアを確実に砕き、その強固な肉体さえも内側から大破せしめてしまった。
※ ※ ※
「シャァァッッッ!!」
「フンッ!」
場所を変えプランテーション内部の都市群。その一画であるビルの屋上でヴィスト・ネクロの幹部『ザジス』ことジャガーアマゾンは
ブレードを振るい的確な筋で無駄なく攻めていく。
「どうしたァァ?! 大見得切って、逃げる
しかねぇーのかッッッ!!」
ハイテンションなザジスの挑発。嘲笑に満ちたそれに対し、先程から攻撃を躱すのみで反撃を実行しないアルファは不敵に言い返す。
「能ある鷹は爪を隠す……ってのを知ってる
か?」
「わざと爪を隠してるって言いたいのか?」
諺をしかと理解した上でザジスは吐き捨てるように問いかける。
この場合、爪とは切り札あるいは本気その物を言う。
「最初から全力なんて、アホのする事なんだよ。つってもさっきはAランクで100体だったから、半分出しちまってたが」
言うアルファは、そんなことを宣いつつも、ザジスの攻撃を的確に読み巧く回避していた
。
いつまでやっても当たらない事実に怒りを募らせるザジスは、ここで3つある内の切り札を使うことにした。
「自分だけが爪を持ってると思うなよ!」
ザジスの主力武器は両手が変形した二本のブレード。
この二本を重ねることでハサミのようにして相手の首を切断することができる他、分離・
射出する形で投擲し獲物を仕留めることや、敵の隠蔽を暴く一種のレーダーのような働きも可能とすることができる。
ザジスは隙を見計らい、ブレードを射出する
機能を用いてアルファを討ち取る算段を立てた。
「シッ! シャッ!!」
しかし、今すぐではない。
今のアルファに隙はない。
隙無くして、不意打ちに近いこの戦法を成功に収めることができないことをザジスは重々承知していた。
ならば、どう隙を作るか?
そうなるのだが、それが無いというほど間抜けではない。
ザジスは、ブレードを振るい続けていたが、
ここでスタイルを変更し両手から片手へとブレードを二刀流から通常のそれに戻し、再度
ブレードを振るう。
二刀流から一刀にするのには理由がある。二刀流状態はギガのエネルギーを共鳴させより威力を引き出すことができるが、その代わりスピードは半減し、隙を作り易くなる。
今までその隙をアルファに突かれなかったのは、スピードの半減を実力的技量でカバーし
ていたからだ。
二刀流での戦闘スタイルは攻撃を主軸に起きつつ、防御も兼ね備えたもの。
“攻防一体の二刀”の戦闘スタイルだからこそ
、アルファは決め手を打つことができなかった。しかし一刀での戦闘スタイルは、二刀流時に有していた防御を捨て去り、より向上した速度を発揮する。
そして、この速度の向上がアルファの隙を生んでしまった。
「!!ッ」
いきなりザジスの剣筋の速度が上がり、数段速くなったブレードにアルファは、対応こそできているが一歩遅れていると言う状態だった。
それが、仇となってしまった。
ブレードがアルファの左腕を肘の先半分から
切り落とした!
「グゥゥ、ガァァァァッッッ!!!!」
焼け付くような熱い激痛。それが脳に届いた瞬間、アルファは苦悶に満ちた声を滲み出した。
「これで終わりだァァッッッ!!」
ついにアルファに隙を作らせた。
この機を逃すものかとザジスは、ブレードを構えてほぼゼロ距離での射出を狙った。
まず外れることはありないし、隙を垣間見せたアルファでは射出時のスピードに対応することは不可能。
ブレードが見事にアルファの中枢臓器を穿てば、この戦いはザジスの勝利に終わる。
「!!ッ」
果たして。ザジスのブレードはアルファの胸部中枢を穿つように貫通せしめ、赤黒い鮮血が宙を勢いよく飛沫し、そして地面を染める
。
“やった!!”
ザジスは完全に勝利を確信した。
自分達ヴィスト・ネクロの重要な作戦行動を悉く妨害して来た、忌まわしき男。
それが今、ここで命果てる。
ヴィスト・ネクロの幹部が1人、ザジスの手
によって!!
「よぉ、良い夢見れたか?」
ふと投げかけられた声。その声が形作る言葉を理解するより先にブレードから本来の手に戻していた片手が本人から離れ、黒い液体で円を描くように回りながら舞い上がる。
何故か? 簡単だ。
アルファが自身の胸へブレードが貫いた瞬間
、残された片腕のアームカッターでザジスの
片手を切り裂いたのだ。
「グッ、アアアアアアアアアアアアーーーー
ーーーッッッ!!!!!!」
激痛に耐えかね絶叫のように苦悶の声を解き放つザジスは、息を荒げつつ疑問を孕んだ目でアルファを見た。
「な、なんでだァァッッッ! なんで、死んでねぇーんだ!??」
「ハァ…ハァ…ハァ……俺の中枢臓器が1個しか無いなんて…ハァ…言っ…ゼェ…ゼェ…」
血が溢れ出て、戦いのエネルギーの消耗が激しいアルファは何かを言おうとするも、それより先に息遣いが荒くなってしまい上手舌が回らなかった。
だが、アルファが何を言いたいのか。
ザジスは確信めいて叫んだ。
「ま、まさか。 中枢臓器を二個もってやがる
のか!!」
中枢臓器はアマゾンにとって生命維持を司り
、ギガのエネルギーを生み出し身体中へと血と共に巡り回す働きを持つ重要器官。
更にこれは、純粋のアマゾンにとって脳としての役目も持っており、人間で言うところの
脳細胞に近い働きをする細胞が集中している
。
心臓であり、脳。
それがアマゾンにとっての中枢臓器。
基本的にそれは1個体につき一つなのだが、
中には二つ、又は四つも持つアマゾンもいるのだ。すなわち、アルファは“その例に当て嵌まるアマゾン”ということなのだ。
「ゼェ…ゼェ…ゼェ…まぁ、一歩ズレてたら
ヤバかったがな」
アルファの中枢臓器の一つ目には確実にブレードが突き刺さり、もう一つ目はすぐ側に寄り添う形であった為、もし位置がズレていれば二つ諸共刺さっていたかもしれない。
ともかく、一旦距離を取ったザジスは今この
状況を確認して見る。
自分を含め両者共に人体の一部が欠損する程のダメージを受けた。アルファは片腕のアームカッターを失い、ザジスは片手のブレードを失った。
ここまでは五分五分。しかしアルファはもう
一方のブレードによって中枢臓器に致命的なダメージを負ってしまった。
もう一つあるとは言え、安く軽いものではないのは明白。
ならば、今のこの現状は自身にとって有利。
そう判断した今度こそ決め手を打とうと片手のブレードを再び生成し、一気に駆け抜け迫る…
『待てザジス。任務は終了だ。直ちに帰還せよ』
ことはなかった。
壮年の男性の声がザジスの脳内に響いたからだ。その正体を察し声に出そうとするザジスだが、彼が声を出す前にその身に黒い煙のようなオーラが纏わり付き瞬く間も与えず、彼をこの場から消失させてしまった。
「ゼェ…ゼェ…ハァ…ハァ…どうやら、命拾いした…か…?」
そんな言葉を残しアルファは倒れ込む。ギガも血も大量に消費してしまった身体はその負荷に耐え切れず、アルファを元の鷹山の姿へと戻していく。
「ヤバかったな……まさかの幹部ご登場とか
……ハァ…ハァ……初めて、だからなぁ」
鷹山はこれまでヴィスト・ネクロのアマゾンを狩って来たが、幹部クラスのアマゾンは今回が初めてだった。初戦ながらも何とか生き残った自分にちょっとした優越感やら誇りを感じつつ、鷹山は次第に意識が薄まっていき
最終的に暗い暗い奈落の底のような、そんな
暗黒の中へと意識を沈ませていった……。